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【ネタバレ】マッシブ・タレント|あらすじ結末感想と評価解説。ニコラス・ケイジ映画主演作は“俳優ニック・ケイジ”の最強セルフパロディ作品

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

ニコラス・ケイジが“どん底俳優”を演じるコメディムービー!

『リービング・ラスベガス』(1996)でアカデミー賞主演男優賞を受賞し一躍ハリウッドスターとなるも、次第に出演作の興行不振などから借金までも抱え、低予算映画に何本も出演するようになった名優ニコラス・ケイジ。

そんなニコラス・ケイジが、自身の半生と重なる“どん底俳優ニック・ケイジ”を演じ、世界中で大絶賛されたの映画『マッシブ・タレント』です。

ハリウッドスターである俳優ニック・ケイジは多額の借金を抱えてしまい、娘には愛想を尽かされていました。

そんな失意のニック・ケイジの元に、「スペインの大富豪ハビの誕生日パーティーに参加してほしい」という高額のオファーが。渋々向かったニック・ケイジでしたが、彼の大ファンだというハビと意気投合していきます。

そんな矢先、CIAのエージェントがニック・ケイジに接触し「スパイをしてほしい」依頼が。友情を守るか、国家を守るか、ニック・ケイジは究極の選択を迫られます。

映画『マッシブ・タレント』の作品情報


(R), TM &(C)2022 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

【日本公開】
2023年(アメリカ映画)

【原題】
The Unbearable Weight of Massive Talent

【監督】
トム・ゴーミカン

【脚本】
トム・ゴーミカン ケビン・エッテン

【製作】
ニコラス・ケイジ、マイケル・ナイロン、クリスティン・バー、ケビン・チューレン

【キャスト】
ニコラス・ケイジ、ペドロ・パスカル、シャロン・ホーガン、アイク・バリンホルツ、アレッサンドラ・マストロナルディ、ジェイコブ・スキピオ、ニール・パトリック・ハリス、ティファニー・ハディッシュ、リリー・シーン

【作品概要】
ニコラス・ケイジが自身と重なる“どん底俳優ニック・ケイジ”を演じた本作では、「若き日のニコラス・ケイジ本人が空想の中で登場する」「富豪ハビのコレクションの中には『フェイス/オフ』(1997)のニコラス・ケイジの蝋人形が」など、ニコラス・ケイジをよく知るファンにはたまらない演出が多々あります。

監督を務めたのは、『恋人まで1%』(2014)で監督デビューを果たし、本作が長編監督2作目となったトム・ゴーミカン。

またニック・ケイジの大ファンである富豪ハビ役を、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズ、「マンダロリアン」シリーズなどのペドロ・パスカルが演じました。

映画『マッシブ・タレント』のあらすじとネタバレ


(R), TM &(C)2022 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

ハリウッドスターの俳優ニック・ケイジは、かつてスターとして栄華を極めたものの、今は借金を抱えている始末。妻・オリヴィア(シャロン・ホーガン)とは離婚し、娘のアディ(リリー・シーン)には愛想を尽かされていました。

ニックはある役を得ようと必死になり「その役を演じられたら、再びスターに返り咲ける」と思っていました。そんなニックに、エージェントのリチャード・フィンク(ニール・パトリック・ハリス)は「スペインの大富豪の誕生パーティーへの出席」という高額オファーの話をします。

オファーを受けることを渋っていたニックでしたが、後日電話で「君のことは好きだが、別の役者に演じてもらう」と連絡が来てしまいます。

そのまま娘の誕生会に参加したニックでしたが、酒で酔っぱらうと自作の歌を披露し、誕生会を台なしに。自身が滞在するホテルまで送り届けてくれたオリヴィアには「娘には父親が必要で、こんな父親ではない。しっかりして」と釘を刺されてしまいます。

ホテルに戻ったニックでしたが、エージェントが料金支払いを止めてしまったため、ホテルの部屋に入ることはできませんでした。失意のニックは部屋の前でうずくまり、誕生会に参加するオファーを引き受けること、それを最後に俳優を辞めることをリチャードに電話で伝えました。

あまり乗り気ではないが、借金返済のためスペインに飛んだニックをハビ(ペドロ・パスカル)が出迎えます。その頃エージェントのリチャードの元には「ニックに出演してほしい」という脚本が届いていましたが、リチャードは「届けなくていい」と答えました。

実はその脚本は、大富豪のハビが書いたものでした。ハビはニックの大ファンだったのです。色々ニックに今までの役について話したそうにしていたハビに、ニックは「役者はもう辞めた」「引退する」と告げます。

映画について話していくうちに、ニックとハビは打ち解けていきます。ハビは「好きな映画」としてニック主演の映画の他に『パディントン2』(2018)を挙げ、当初は「子供向けの映画だ」とバカにしていたニックでしたが、ハビと一緒に観ると感動で泣いてしまいます。

ニックと打ち解けたハビは「送った脚本は読んでくれたか」と聞きます。しかしニックの元に脚本は届いていないため、ニックは「送ってくれたらすぐ読む」と答えます。ハビはすぐにニックに脚本を送ります。

その後街で飲み直したニックでしたが、バーを出てすぐに突如身柄を抑えられ、車の中に連れ込まれます。驚くニックに車の中にいた人物が、事情を説明します。彼らはCIAのエージェントであり、ハビは国際的な犯罪組織のボスだというのです。

選挙立候補者の娘が誘拐される事件の犯人がハビの組織ではないかとCIAは疑っていましたが、ハビの館は監視が厳しく、潜入し監視カメラも取り付けることが難しい状態でした。そのため、ニックにスパイをしてほしいと頼みます。

「役者だから人の顔を見てその人となりがわかる」「ハビはそんな悪人ではない」と拒むニック。しかし長年ハビを追ってきたCIAに「誘拐された娘はニックの娘と同じ年頃だ」「そんな子供が殺されても良いのか」と問われ、仕方なく協力することにします。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『マッシブ・タレント』ネタバレ・結末の記載がございます。『マッシブ・タレント』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(R), TM &(C)2022 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

CIAエージェントのマーティン(アイク・バリンホルツ)とヴィヴィアン(ティファニー・ハディッシュ)は、ニックに停電を利用して監視カメラを設置するように指示します。

何とか潜入し指示に従っていたニックでしたが、触れると気絶してしまう装置に誤って触れてしまい、意識が朦朧としてきます。

思わず倒れ込んだニックにヴィヴィアンはすかさず「アクション!」と口にし、その言葉に役者魂を刺激されたニックは何とか任務をこなします。

任務を終えてホッとしていたのも束の間、ニックは新たな任務を言い渡されます。その一方で、ハビとはさらに意気投合し、二人で映画の脚本について盛り上がります。

「地下室に攫われた娘がいるかもしれない」とニックが地下室を探っていると、そこにハビがやってきます。「ここを見られたら引かれてしまうかも……」と心配するハビに、ニックは構わないと地下室に入ります。

するとそこにあったのは、大量のニック・ケイジのグッズでした。中には『フェイス/オフ』(1997)のニックの蝋人形まであり、それを見たニックは思わず「グロテスクだな」と口にします。

またハビは、ニックが任務と友情の板挟みで悩んでいる様子を「家族とうまくいっていないことで悩んでいる」と勘違いし、ニックに内緒で彼の元妻オリヴィア・娘アディをスペインまで呼び寄せてしまいます。

家族は何が起こっているのかわからず、ニックが説明するも混乱したままです。アディには「いつもそう、自分のことばっかり」「自分が好きな映画を観せて、それが気に入らないとパパに嫌われるのではないかと怖かった」と言われてしまいます。

そんな時、ハビの従兄弟がやってきて「ハビの友だちはCIAが送り込んだスパイだ」と言い出します。「そんなことあり得るはずはない」と動揺するハビでしたが、従兄弟は「お前が殺さないと、俺がお前を殺す」とまで告げます。

ニックも家族を巻き込まれたことで「ハビを殺すしかない」とハビのコレクションから銃を盗もうと地下室へ向かいますが、同じく銃を取りに来たハビと鉢合わせしてしまいます。しかし、互いに殺したくない思いが強く、引き金をひくことができません。

そこに従兄弟の手下がやってきて、二人に銃を向けてきます。従兄弟は端から、ハビはニックを殺せないとわかっていたのです。かろうじてハビとニックは協力し脱出しますが、ニックの娘は捕らえられてしまいます。

ハビとニック、オリヴィア、そしてハビが想いを寄せるガブリエラ(アレッサンドラ・マストロナルディ)の4人は、アディと誘拐された選挙立候補者の娘を救出すべく作戦を立てます。

元ヘアメイクアップアーティストのオリヴィアの助けを借りて、ニックは姿を消している犯罪者の男になりすまし、従兄弟のアジトを訪れます。そして恋人役としてニックと一緒に潜入したオリヴィアの機転もあって、何とか苦境を切り抜けて娘たちの救出に成功します。

アジトから脱出しようとしたニックたちでしたが、後もう少しのところで従兄弟とその手下に囲まれてしまいます。絶体絶命に陥る中、アディが近くにあったナイフをニックに投げ、ニックは従兄弟をナイフで刺し危機を脱します。

ところがその瞬間、オリヴィアが女優のデミ・ムーアに切り替わり、アディも女優に変わってしまいます。全ての出来事は、ハビが脚本を執筆した映画の中の出来事であったかのように……。

映画がエンディングを迎えると、ニックは拍手喝采を浴びます。“ハリウッドスター”ニック・ケイジは見事に復活を成し遂げたのです。そこにはハビの姿もありました。

パーティーに向かうハビとは別れ、家に帰ったニックはオリヴィア、アディと家族での時間を過ごします。やがて「映画でも観ようか」という話になると、ニックは「自分の観たい映画ではなく、アディの見たい映画を観よう」と提案します。

すると、アディは笑顔で「『パディントン2』が観たい」と答えるのでした。

映画『マッシブ・タレント』の感想と評価


(R), TM &(C)2022 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

俳優ニコラス・ケイジはなぜ愛されるのか?

ニコラス・ケイジ自身と重なる“どん底俳優ニック・ケイジ”を見事に演じた映画『マッシブ・タレント』は、製作陣の“ニコラス・ケイジ愛”がこれでもかとつめ込まれた作品です。

作中、ニック・ケイジは何度も自虐かのように「落ちぶれてはいない」と口にします。自虐すらも吹き飛ばすニコラス・ケイジのスターっぷりは、観客に「これぞニコラス・ケイジなのだ!」と力強く伝えてくれます。

そもそもニコラス・ケイジが、世代を超えて愛される理由は何でしょうか。その答えの一つが、どんな映画に対しても“一生懸命”であることではないでしょうか。

『初体験/リッジモント・ハイ』(1981)で映画デビューしたニコラス・ケイジ。フランシス・フォード・コッポラの甥でもある彼は、当初「ニコラス・コッポラ」という芸名で活動していましたが、のちに改名し「ニコラス・ケイジ」として活動を開始しました。なお、本作内でも「コッポラ」と呼ばれる場面がありました。

デビュー後、順調に大作映画へ出演していったニコラス・ケイジは、『月の輝く夜に』(1987)でゴールデングローブ主演男優賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭でパルムドームに輝いた『ワイルド・アット・ハート』(1991)に出演するなど、スター俳優へと駆け上っていきます。

そして、アルコール依存症の男を演じた『リービング・ラスベガス』(1995)でアカデミー主演男優賞を受賞し、『ザ・ロック』(1996)、『コン・エアー』(1997)、『フェイス/オフ』(1997)と大作映画に主演し続けたのです。

ニコラス・ケイジの“全力”っぷりが全開!

しかしその後、徐々に大作映画の出演は減り、浪費癖も相まって借金を抱える身となったニコラス・ケイジは、低予算映画に数多く出演することに。低予算映画にはクセのある、万人受けしない映画も数多くある中、それでも彼は嬉々としてどのような役も演じ切る、全力の役者魂を出演作で見せ続けてくれました

ゴシップに事欠かない私生活と、どのような役でも演じ切る飾らない全力さ。それが、ニコラス・ケイジが人々に愛される所以の一つであり、そんな彼の魅力は本作においても全面に表れています。

「アイアム、ニック・ファッキーーーーーン・ケイジ」と凄まじいキメ顔で叫ぶ姿などの全力っぷりはもちろん、セリフパロディーも“なんてことはない”と、あろうことかイマジナリーフレンドのような若い頃の自分とキスまでしてしまうのです。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2015)では、マイケル・キートン演じる元スター俳優リーガン・トムソンが、若い頃の自分と対話をする場面が描かれます。

本作においても、ニック・ケイジがかつてスターとして輝いていた頃の自分と対話する場面が描かれます。そのように、かつてのニコラス・ケイジの映画に対するオマージュから他の作品に対するオマージュまで、映画好きにはたまらない小ネタが随所に散りばめられています

またニックとハビの映画談義も、映画好きの心を絶妙にくすぐってきます。ニックが娘に観せて嫌がられた『カリガリ博士』(1920)から、ニックが「子供向けだ」と侮っていたら大号泣してしまう『パディントン2』(2018)まで、話題となる映画の“幅の広過ぎさ”には思わず笑ってしまいます。

ここまでのセルフオマージュを、ここまで全力でやりきってしまう。そんな俳優はニコラス・ケイジにおいて他はなく、まさにニコラス・ケイジの真骨頂といえる映画になっています。

まとめ


(R), TM &(C)2022 Lions Gate Ent. Inc. All Rights Reserved.

「ニコラス・ケイジファンのための映画」ともいうべき本作ですが、一方で映画ファンの夢を映画にした作品ともいえます。

ペドロ・パスカル演じるスペインの大富豪ハビは、ニコラス・ケイジの大ファン。そんな大ファンの俳優を主演に自分の脚本で映画を制作する、こんな夢のような映画は他にありません。しかも脚本の段階から、大好きな俳優と映画について語り合えるのです。

監督を務めたトム・ゴーミカンも、最初ニコラス・ケイジの本作の話をした際に断られたものの、それでも手紙を出し続けたことで出演を承諾してもらえたと語っています。

また作中、ニックに「あなたの方が足が速いと思う」と言ったハビは『ナショナル・トレジャー』(2005)の話を出します。「スタントだ」と言うニックに、ハビは「特典映像ではスタントじゃないと言っていた」と特典映像までチェックしている生粋のファンっぷりには、思わずニヤリとした人も多いでしょう

またハビを演じるペドロ・パスカルも、ニコラス・ケイジに影響を受けたと話しています。そんなペドロ・パスカルが演じるハビは、彼が今まで演じてきた役とは違う、新たなペドロ・パスカルの一面を見られたような役になっているのにも注目です。

大ファンのスターを前にして、そわそわしたりなんて言えばいいのか分からないと、彼がいないところで友人に相談する姿などキュートで、映画ファンとしてはとても親近感が湧きました。そして次第に意気投合し、友情を深めていく姿には思わず胸が熱くなります。

ニコラス・ケイジの真髄が表れている映画であり、極上のエンタメムービーでもある映画『マッシブ・タレント』。今後のニコラス・ケイジの活躍にも期待したくなる1作でした。





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