映画『早乙女カナコの場合は』が、2025年3月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
男勝りで、常に周りにどう見られているか気にする自意識過剰なカナコ。
大学進学で上京した彼女は、入学式で知り合った演劇サークルで脚本家志望の長津田と付き合うことに。次第にすれ違うも、なぜか別れられないカナコの10年にわたる不器用な恋を、様々な登場人物を通して描き出します。
柚木麻子の小説『早稲女、女、男』を、『三月のライオン』(1992)『さくら』(2020)の矢崎仁司監督が映画化。
主人公カナコ役には、同じく柚木麻子の小説の映画化作品『私にふさわしいホテル』(2024)に出演した橋本愛。
長津田役を『チャチャ』(2024)の中川大志が務めるほか、山田杏奈、臼田あさ美、中村蒼らが共演。
また『私にふさわしいホテル』でのんが演じた主人公の作家・有森樹李が、同じ役で登場します。
映画『早乙女カナコの場合は』の作品情報
(C)2015 柚木麻子/祥伝社(C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
【日本公開】
2025年(日本映画)
【監督】
矢崎仁司
【原作】
柚木麻子
【脚本】
朝西真砂、知愛
【キャスト】
橋本愛、中川大志、山田杏奈、根矢涼香、久保田紗友、平井亜門、吉岡睦雄、草野康太、臼田あさ美、中村蒼、のん
【作品概要】
柚木麻子の小説『早稲女、女、男』を、『三月のライオン』(1992)『さくら』(2020)の矢崎仁司監督が映画化。
主人公・カナコ役は、同じく柚木麻子の小説を映画化作品『私にふさわしいホテル』(2024)にも出演した橋本愛。また『私にふさわしいホテル』でのんが演じた主人公の作家・有森樹李が同じ役で登場します。
長津田役には『チャチャ』(2024)の中川大志。『ひらいて』(2021)の山田杏奈や『室町無頼』(2025)の中村蒼、『南瓜とマヨネーズ』(2017)の臼田あさ美のほか、インディーズ映画に引っ張りだこの平井亜門、根矢涼香らも共演。
映画『早乙女カナコの場合は』のあらすじ
(C)2015 柚木麻子/祥伝社(C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
大学進学と同時に友達と二人暮らしを始めた早乙女カナコ。
入学式で様々なサークルが勧誘活動をする中で劇が始まり、劇だと気付かないカナコは巻き込まれる形になります。そこで出会ったのが、演劇サークル「チャリングクロス」で脚本を担当しているという長津田でした。
SNSに上げられた写真について聞くため演劇サークル「チャリングクロス」の扉をノックしたカナコ。そのままサークルに入ったカナコは、長津田と付き合い始めます。
それから時が経ち、カナコは念願の大手出版社に内定が決まります。長津田とも3年の付き合いになりますが、口ばかりで脚本を一本も書くことなく、卒業もしていません。
「今度こそ卒業して」とカナコが言っても長津田にその気はなく、先に進んでいくカナコとのすれ違いはひどくなる一方。その上、新しくサークルに入ってきた女子大の1年生・麻衣子と親しげにしています。
ある時、カナコは内定先の先輩・吉沢から告白され、友人には長津田と別れて先に進むべきだと言われます。長津田への思いを捨てきれない、真面目で不器用なカナコ。そんな彼女の周りの人々も、どこかうまく行かない人生の中で前に進もうとしています。
大学時代、そして社会人へ。さまざまな人との出会いを通した見えてきた、“早乙女カナコの場合”とは。
映画『早乙女カナコの場合は』の感想と評価
(C)2015 柚木麻子/祥伝社(C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
自意識過剰で真面目で、それゆえに不器用な早乙女カナコの、10年にわたる恋と選択を描いた映画『早乙女カナコの場合は』。本作は、大学時代というモラトリアムからの脱却を描いた映画といえます。
大学という新たな世界に飛び込んだばかりのカナコにとって、まさに長津田は“刺激的な存在”でした。
編集者という現実に基づいた明確な夢に向かうカナコにとって、当初は刺激的に思えた長津田の無計画さや野趣的な一面。しかし時が経つ中で、それらは次第に長津田の情けなさへとつながっていきます。
そんな時、内定先で働く大学の先輩・吉沢から告白されたカナコ。吉沢は長津田とは正反対の大人で、カナコにとっては“完璧すぎる存在”でした。
一方で長津田は、新しく入ってきた女子大の1年生・麻衣子と親しげにしています。大学に入学し、地味だった高校時代から脱却しようと必死になっていた麻衣子。何者にもなれず殻も破れずにいた彼女は、型にハマらない長津田に出会い、惹かれます。
そんな麻衣子が抱く長津田と、カナコから見た長津田には違いがありました。それは、麻衣子とカナコの違いでもあります。またカナコにとって完璧に思える吉沢も、他の人の目から見たら違うのかもしれません。
自分は誰が好きで、その人にとってどんな存在でありたいのか、どんな道を進みたいのか……。
明確な答えを持っている人は少なく、明確な答えだと思っていたことも、ふとしたことで簡単に揺らいでいきます。
本作を観終えた時、ふと心が軽くなったり、かつての悩んでいた自分を愛おしく思うかもしれません。誰もが通り過ぎたであろう、あるいは今も歩み続けているであろう、“人生”を描いた作品なのです。
まとめ
(C)2015 柚木麻子/祥伝社(C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
不器用で真面目なカナコを、友人はあえて険しい道を選んでいると言います。
しかし、カナコにとってそれは、こうと思ったら曲げられない生真面目さゆえなのです。だからこそカナコは、内定先の先輩である亜依子にも、どこか親近感を抱いているのかもしれません。
編集者の夢という選んだ道にまっすぐ突き進む一方で、恋に関しては自分の進むべき道が分からず先に進めないでいるカナコ。そんなカナコが前に進むきっかけを与えてくれたのは、麻衣子や吉沢などの他者の存在でした。
中でも麻衣子は、大きな存在と言えるかもしれません。長津田への思いが断ち切れないカナコは、その気持ちを正直に麻衣子に伝えます。そんなカナコを見て麻衣子は「なんてピュアで不器用なんだろうと思った」と言います。
麻衣子も、悩みを抱えていました。大学に入って変わろうと所謂“モテる女の子”になり、長津田に好かれようと必死になっていました。そうして自分を見失っていた麻衣子に変化をもたらしたのも、カナコをはじめとする他者の存在でした。
人は思わぬところで、誰かにその人生を変えられることがある。そして自分もまた思わぬところで、誰かの人生を変えていることがある。そんな人生の妙も、本作は改めて気づかせてくれます。