Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

Entry 2017/12/14
Update

映画『南瓜とマヨネーズ』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【臼田あさ美×太賀×オダギリジョー出演】

  • Writer :
  • 鈴木彩子

漫画家の魚喃キリコの代表作で、1998年から1999年にかけて『CUTiE Comic』にて掲載された漫画『南瓜とマヨネーズ』。

キネマ旬報ベスト10にもランキングされた『ローリング』の奇才・冨永昌敬監督、臼田あさ美主演で実写映画化は、2017年11月11日より劇場公開中。

今回は2017年を代表する恋愛映画『南瓜とマヨネーズ』をご紹介します!

1.映画『南瓜とマヨネーズ』の作品情報


(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

【公開】
2017年(日本映画)

【監督】
冨永昌敬

【キャスト】
臼田あさ美、太賀、浅香航大、若葉竜也、大友律、清水くるみ、岡田サリオ、光石研、オダギリジョー

【作品概要】
漫画『南瓜とマヨネーズ』は、魚喃キリコの代表作の1本であり、恋愛漫画の金字塔として知られています。

魚喃キリコ作品としては『blue』(2001年/安藤尋監督)『ストロベリーショートケイクス』(2006年/矢崎仁司監督)に続く3本目の映画化。

この他にも『ハルチン』や『Water.』といった作品を発表していますが、いずれの作品も、作者自身の経験によって生み出されてきました。

本作『南瓜とマヨネーズ』ですが、この作品も例外なく、作者の体験から紡ぎ出された痛ましい恋愛模様を描いた作品です。

2.映画『南瓜とマヨネーズ』のあらすじとネタバレ


(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

主人公のツチダは、恋人であるセイイチの「ミュージシャンになりたい」という夢を支えるべく、キャバクラでお金を稼ぐことを決意し、面接を受けます。

それまで夜の仕事の経験がないツチダは、初めてつくお客さんに対して嫌悪感を隠すことが出来ません。

同僚の可奈子からはこの仕事の厳しさを諭されたツチダ。

そんな彼女の前に、客として店を訪れた安原が現れ、愛人の契約を交わさないかと迫られます。

お金に困っていた彼女は彼の誘いに乗り、ホテルへとついて行ってしまうのでした。

ツチダがそのようにしてお金を生み出していることを露ほども知らないセイイチは、家でギターを弾いたり、日曜大工に励む日々を送っています。

「いつかライブをやる」という言葉は何度も更新されていき、次第にはアパートにある大量の機材を売り払おうとするまでになってしまうのでした。

かつて自分が所属していたバンドがレコード会社と契約し、ボーカルにグラビアアイドルを迎え入れてデビューを果たそうとしている傍ら、セイイチは複雑な思いを抱えながら日々を暮らしているのです。

ある日、安原から渡されたお金をセイイチは発見してしまい、ツチダが愛人の契約を交わしていたことを知ります。

その出来事をきっかけに働きに出ることを決意したセイイチ。

ツチダの方もかつて働いていたライブハウスに戻りますが、そこで嘗ての恋人であったハギオに再会してしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『南瓜とマヨネーズ』ネタバレ・結末の記載がございます。『南瓜とマヨネーズ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
ハギオとの再会を果たしたツチダは、昔のように彼にのめり込んでいきます。

一方のセイイチはアルバイトに力を入れるようになっていき、二人で過ごす時間はどんどんと減っていくのでした。

仕事を始め、バンド仲間との交流も再開したセイイチは、ある日、ツチダに別々の場所で暮らしたいと告げます。

音楽以外の仕事に携わることで、失いかけていた音楽への情熱を取り戻したセイイチ。

風呂場のガラス越しに交わされた別れの言葉を、ツチダは涙ながらに受け入れ、それは次第に、ハギオとの関係を清算する決意へと変わっていくのでした。

ツチダが働いているライブハウスでライブをすることが決まったバンド。

彼女が昼休憩中のメンバーの荷物を楽屋へと運んでいたその時、仕事を終えたセイイチが、顔を見せにやって来ます。

久し振りの再会で照れくさそうな表情を見せる二人。セイイチはツチダに、新曲が出来たから聴いてくれないか?と問いかけます。

二人以外誰もいない楽屋で披露されるささやかなライブ。

それはセイイチが次のステップに進んでいくことを意味していると同時に、嘗てのツチダが最も望んでいたことでもあったのです。

3.映画『南瓜とマヨネーズ』の感想と評価


(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

この映画を乱暴にも一言で纏めてしまうのなら、“服の脱ぎ着の映画”と言うことができると思います。

ツチダは、わずか93分という上映時間のなかで、一体何回脱ぎ着を繰り返したのでしょうか?

例えば、初めてキャバクラのコスチュームに袖を通したとき。

客にホテルへと連れていかれ、彼が差し出す衣装に着替えたとき。

着たものを脱がされるとき。

そしてまた、セイイチの元へ戻るために、普段着を身に付けるとき。

時には服の上から煙草の煙を纏いながらも、ツチダは何度も何度も脱ぎ着を繰り返します

それはまるで服を着ることが、自分に何かしらの役割を与えることとイコールであるかのようでした。

そして彼女が服を脱ぐたびに、彼女を支えているエネルギーさえも同時に剥ぎ取ってしまっているかのように思えてしまうのです。

セイイチと一緒に幸せに生きていくことを願う彼女。

キャバクラという本名以外の「源氏名」で働かなければいけない彼女。

愛人のためにスクール水着や制服を身に纏う彼女。

元彼のハギオとこっそりと関係を復活させてしまう彼女。

……その四人の「彼女」は同じ「ツチダ」という一人の人間である筈なのに、「服の脱ぎ着」という行為を介して、彼女は別の人間を生きているかのようでした

前述したように、彼女が行なう「服の脱ぎ着」は、彼女自身を消耗させる行為です。

素敵な服を身に纏い、ヒロインが幸せの道を歩んでいく物語は沢山ありますが、彼女は服を身に纏う度に不幸になっていくとしか考えられません。

この映画を観ている間、彼女に対して思うことはたったの一つ。

「幸せそうな顔をして彼女が服を着ているシーンがあればいいな」ということです。

それこそが救いなのだ……そんな気持ちで、スクリーンを見つめていました。

セイイチがアパートを出て行った後、彼が残したパーカーをツチダが着るシーンがあります。

そのときの彼女は、前述した四人の「彼女」の誰にも当てはまることのない、新たな自分を獲得しているかのようでした。

セイイチのパーカーを着てハギオに別れを告げたことからも、彼女はそれまでの自分と決別したかに思えます。

服を纏うことによって消耗していた以前までのシーンとはうって異なり、その行為は彼女に力を与えていたのです。

幸せそうな顔をしていたわけでは決してありませんが、これからの幸せを仄かに予感させる場面として「服の脱ぎ着」が示されたことは、この物語に於いて確実に「救い」として機能していたように感じました

また、映画の終盤で、印象的な回想シーンが、不意に挿入されます。

それは、セイイチがまだバンドのメンバーの一員であり、まだ二人が同棲していないと思われる時期を切り取った場面です。

セイイチがライブハウスの舞台上でマイクテストをしようとして、スタッフのツチダにやんわり注意をされるという、とてもささやかなそのシーン。

ツチダが着ているTシャツには「仁義なき戦い」という文字がプリントされています。その絵柄を、セイイチに嬉しそうに見せる彼女……。

紛れもなく、「幸せそうな顔をして彼女が服を着ているシーン」です。

かつては彼女にも、こんな顔をして服を着ていたことがあったのか、と思わずにはいられませんでした。

過去と現在、そして未来に於いても、何度も何度も繰り返されることになるであろう、「服の脱ぎ着」という行為

そんなささやかな、日常的な行為に焦点を当てることによって、映画は立体的になってゆくのかもしれません。

まとめ


(C)魚喃キリコ/祥伝社・2017「南瓜とマヨネーズ」製作委員会

決して派手ではないけれど、1つ1つのシーンに誰もが首を縦に振ってしまう日常が込められている本作は、恐らく、作者の実体験を基にしたという原作の力と、監督の人間観察力が見事にマッチしたからではないでしょうか。

今回は「服の脱ぎ着」のみに焦点を絞ってお伝えさせて戴きましたが、観るたびに新たな発見のある一本である気がしてなりません。

2017年を代表する日本映画として、更にはこれからも末永く映画ファンに愛される恋愛映画がまた一本誕生したと感じました。

さて、冨永昌敬監督は次回作である『素敵なダイナマイトスキャンダル』の公開が2018年3月17日に決まっています。

次は一体どんな作品を届けてくれるのでしょうか?

今から期待が高まりますね。

関連記事

ラブストーリー映画

吉沢亮映画『あのコの、トリコ。』あらすじとキャスト。公開日はいつ?

キラキラ映画『あのコの、トリコ。』は、10月5日(金)より、全国ロードショー! 主演に吉沢亮を迎え、ヒロインには新木優子、そして最強ライバルを杉野遥亮と、若手俳優たちがそろった、ドキドキの恋とキラキラ …

ラブストーリー映画

【ネタバレ】今夜、世界からこの恋が消えても|結末あらすじ感想と解説評価。道枝駿佑×福本莉子主演で「前向性健忘症」を題材に覚えていなくても“確かにある想い”

福本莉子が前向性健忘症のヒロインを演じた切なくも美しい恋 交通事故により前向性健忘症となり、一度寝てしまうとその日のことを忘れてしまう日野真織(福本莉子)。 味気ない日々を送っていた神谷透(道枝駿佑) …

ラブストーリー映画

映画『ニセコイ』あらすじネタバレと感想。キャスト中条あやみの銀幕に輝く違和感が素敵すぎる⁈

映画『ニセコイ』はラブコメ作品としては、週刊少年ジャンプ史上最長連載記録を作った古味直志の同名原作を映像化。 監督は『映画鈴木先生』『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』『 …

ラブストーリー映画

『溺れるナイフ』ネタバレあらすじと結末の感想評価。原作から菅田将暉×小松菜奈で描く切なすぎるハイティーンラブ

映画『溺れるナイフ』は、ジョージ朝倉による人気少女コミックの映画化作品。 映画『溺れるナイフ』は、菅田将暉と小松菜奈の2度目の共演となる青春ラブストーリーで、10代の若者の恋愛と成長を描いています。 …

ラブストーリー映画

映画『ぐるりのこと。』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【木村多江×リリー・フランキーと橋口亮輔監督の傑作にして代表作】

「ステキだな〜!」「めんどうくさい!」「一緒にいたな〜!」 このような夫婦生活の様子を描いた映画は、数え切れないほどありますが、近年公開された邦画で特に秀でた傑作といえば『ぐるりのこと。』。 今回は、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学