映画『ボストン1947』は2024年8月30日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国ロードショー!
「祖国を名乗れなかった」オリンピックにおける韓国の悲劇的な歴史の一端から、現在の世界のスポーツの在り方を問う『ボストン1947』。
1947年に行われたボストンマラソンへの韓国人チームの挑戦という実話を基に、独立への長い道をたどったこの国の真実に迫ります。
ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウら実力派キャストが集結し、迫力のマラソンシーンとともに熱い人間ドラマを描き出します。
映画『ボストン1947』の作品情報
【日本公開】
2024年(韓国映画)
【原題】
1947 보스톤(英題:Road to Boston)
【監督・脚本】
カン・ジェギュ
【キャスト】
ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン ほか
【作品概要】
1947年のボストンマラソンにおける韓国の知られざる史事をもとに、祖国への思いを胸に困難を乗り越えながらもレースに挑んでいくマラソン選手たちの姿を描いたドラマ。
監督・脚本を務めたのは、『シュリ』(1999)『ブラザーフッド』(2004)などを手掛けたカン・ジェギュ監督。
キャストには『チェイサー』(2017)『白頭山(ペクトゥサン)大噴火』(2019)「神と共に」シリーズ(2017~)のハ・ジョンウが金メダル選手ソン・ギジョン、『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』(2017)『弁護人』(2013)『非常宣言』(2021)のイム・シワン、『藁にもすがる獣たち』(2020)『メタモルフォーゼ 変身』(2019)『スウィンダラーズ』(2017)のペ・ソンウらベテラン、若手、個性派とバラエティーに富んだ面子が出そろっています。
映画『ボストン1947』のあらすじ
1936年にベルリンにて行われたオリンピックのマラソン競技で、日本は世界新記録を樹立し金、銅メダルを獲得しました。
ところがその栄冠に輝いた選手は、「孫基禎」「南昇竜」という日本名を名乗って競技に参加した、韓国人のソン・ギジョンとナム・スンニョンでした。
第二次世界大戦が終わるとともに、韓国は日本の支配下から解放されたものの、二人の獲得したメダルと記録は、日本という束縛からは離れられないでいました。
そんな暗い過去を引きずり荒んだ生活を送っていたギジョンでしたが、ある日彼のもとにふとスンニョンが現れます。
スンニョンは「第2のソン・ギジョン」と期待される若手選手ソ・ユンボクを発掘。彼を1947年開催のボストンマラソンに出場させるべく、コーチとしてチームに参加するようギジョンに頼みます。
気の乗らなかった依頼に加え、マラソンに向けてのモチベーションが異なるユンボクの、クセの強さに困惑するギジョンでしたが、衝突を繰り返しながらも徐々に結束を強めます。
そしてチームは「祖国・韓国の記録」を取り戻すべく、さまざまな壁に立ち向かいます……。
映画『ボストン1947』の感想と評価
1988年のソウルオリンピックで、世界のスポーツというシーンにおいても大きな存在感を示した韓国。
一方、2007年に行われた北京オリンピックのハンドボール・アジア予選では、いわゆる「中東の笛」と呼ばれる不正疑惑が浮上。翌年に日本・韓国による予選の再戦が行われるという異例の事態になりましたが、「中東の笛」への抗議は日本よりも、どちらかというと韓国が最も強く声を上げた印象でした。
また2022年に行われた北京冬季オリンピックでは、男子ショートトラック1000メートルの準決勝の判定において韓国側が抗議を行っていた事件など、韓国はオリンピックなど世界のスポーツの舞台において、非常に強いアピールを示している印象もあります。
『ボストン1947』は韓国の知られざる歴史の1ページにスポットを当てた映画ですが、近代における韓国の心情の「原点」をスポーツという視点から探った作品でもあります。
1936年・ベルリンオリンピックで、韓国という祖国を持ちながらも「韓国が私の祖国だ」と胸を張って言えなかった人々。そして戦争が終わり、ようやく祖国を名乗れる立場になったはずなのに、また同じ歴史を繰り返しそうになる新たな悲劇。
そうした展開を通して、本作の物語は今という時代における世界や国の在り方を、スポーツを通して改めて問いているようでもあります。
2024年7月26日よりパリオリンピックが開幕しましたが、ある意味本作の物語は、近年の商業主義、成果主義に走りがちなこのスポーツの祭典に対しても、忘れてはならない過去の事実を突きつけ、痛烈なメッセージを投げかけています。
また、ハ・ジョンウ演じるソン・ギジョンは一人の韓国人として、悔しさに塗れた過去を知る人間であるのに対し、イム・シワン演じる若きマラソン選手ソ・ユンボクは、そうした過去の出来事を直接的には知らない「新たな世代」の人間として描かれます。
二人が当初は反発しながらも、徐々に歩み寄っていくその光景は現代における旧世代・若者世代間の分断と「世代間の分断はどうすれば解決できるのか」という答えでもあり、歴史的な物語というテーマに膨らみを持たせています。
そうした物語の構成には、世界が戦争などで激しく揺れ動く中に生きる人々のつながりを『ブラザーフッド』(2004)『マイウェイ 12,000キロの真実』(2011)などで描いてきたカン・ジェギュ監督ならではの作風も感じられます。
まとめ
本作の見どころの一つは、メインキャストの一人を務めた個性派俳優ぺ・ソンウの存在感にもあります。
彼が演じるナム・スンニョンは、ハ・ジョンウ、イム・シワンらのどちらかといえば本人のイメージに合ったストレートなキャラクターに比べると一癖も二癖もある人物像ですが、その癖の強い役柄をぺ・ソンウは嬉々として演じています。
テレビ・ドラマと強い個性を求められる役柄を演じ、その存在感を示してきたぺ・ソンウですが、2020年に起こした不祥事により活動を自粛。のちに2022年に映画『言えない秘密』(2008年公開の台湾映画の韓国リメイク版)で復帰を果たしました。
その意欲的な姿勢は、さまざまなアクシデントを乗り越えたからこそ見えてきたものであるとも感じられ、本作は「今後の出演作でも独創的なキャラクターを演じてくれるだろう」とぺ・ソンウの今後の躍進を期待させてくれる作品でもあります。
映画『ボストン1947』は2024年8月30日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国ロードショー!