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Entry 2020/12/15
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韓国映画『藁にもすがる獣たち』あらすじと感想評価レビュー。韓流キャストが原作・曽根圭介の犯罪小説の“お金にすがりつく人々”の末路を演じる|映画という星空を知るひとよ42

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第42回

曽根圭介による犯罪小説『藁にもすがる獣たち』が韓国スタッフ&キャスト陣で映画化されます。

映画『藁にもすがる獣たち』は2021年2月19日(金)よりシネマート新宿ほか全国にて公開予定。

ロッカーに忘れられた大金の入ったバッグを巡り、なんとしてもお金が欲しい人々があの手この手を使って、バッグの行方を追いその争奪戦を繰り返します。

最後にバッグを手にするのは誰? そして大金の行方は? 気になる結末は? 

欲に目のくらんだ人々のどこか滑稽で切ない姿をキム・ヨンフン監督が豪華キャストで描き出します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

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映画『藁にもすがる獣たち』の作品情報

(c)2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.(c)曽根圭介/講談社

【日本公開】
2021年(韓国映画)

【原作】
曽根圭介「藁にもすがる獣たち」(講談社文庫)

【原題】
지푸라기라도 잡고 싶은 짐승들

【監督・脚本】
キム・ヨンフン

【出演】
チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム、ユン・ヨジョン

【作品概要】
日本人作家・曽根圭介の同名小説をキム・ヨンフン監督が映画化。欲望を剥き出しにした人々が大金を巡って激しくぶつかり合う姿を予測不能な展開で描いたクライムサスペンスです。

ロッカーに忘れられた大金の入ったバッグを巡って豪華キャストが衝突。多額の借金の取り立てに追われるテヨン、暗い過去を精算して新たな人生を始めようとするヨンヒ、事業に失敗しアルバイトで生計を立てるジュンマン、借金のため家庭が崩壊したミラン。『シークレット・サンシャイン』(2007)のチョン・ドヨンがヨンヒ、『アシュラ』(2016)のチョン・ウソンがテヨン、『スウィンダラーズ』(2017)のペ・ソンウがジュンマンを演じています。

映画『藁にもすがる獣たち』のあらすじ

(c)2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.(c)曽根圭介/講談社

韓国のある漁師町でのこと。地元のサウナで働くジュンマンは、ある日、客がロッカーに忘れていったバッグを見つけます。

その客は、昨夜、外出したまま、帰って来なかったのです。

手に取るとズシリと重いバッグを前に、ジュンマンは中を改めます。バッグの中には、10 億ウォンもの大金が入っていました。

店の保管室に運び入れたものの、ジュンマンはバッグが……いや正確には大金が気になって仕方ありません。

ジュンマンは、軽い認知症の母スンジャとその母の世話に明け暮れる妻との3人暮らしをしています。

事業に失敗したジュンマンは、大学に通う娘の学費も思うように出してやれず、夜勤のあるサウナでのスタッフ仕事を終えると急いで帰宅して、パートに出る妻と交代で母の世話で毎日が過ぎていきます。

日々の暮らしはカツカツで、お金さえあればなあと思うこともたびたびだったのです。

一方、一見平穏な家庭生活をしているように見える主婦ミランは、自分が作った借金が夫にバレ、夫のDVに脅えながらも金の工面のために身体を売るようなバイトをしていました。

他にも、失踪した恋人が残した多額の借金を抱えて金融業者からの取り立てに追われるテヨンや、暗い過去を精算して新たな人生を歩もうとするヨンヒと、お金が欲しくてたまらない人々がいました。

バッグの中の大金は誰がどうして作ったのでしょう。バッグの存在をめぐり、その中にある大金の存在を知る人々が動き出します。

苦しみから抜け出したいがために獣にもなれる人々。地獄から抜け出すために藁にもすがりたい、欲望に駆られた獣たちの運命は……。

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映画『藁にもすがる獣たち』の感想と評価

(c)2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.(c)曽根圭介/講談社

貧しくも懸命に働く人がいれば、膨大な借金を背負ってしまい取り立てから追いかけられる人もいます。

大金が喉から手が出るほど欲しいそんな人が、札束がぎっしりつまったバッグを目にしたらどうなるのでしょう。

獲物を前にした腹ペコ狼のように、何とかして自分のものにしたいと思うのに違いありません。

本作『藁にもすがる獣たち』は、そんなあさましい人間の本質をユニークに暴き出しています。

同じような境遇で親身になって相談に乗っていた不幸な女性ミランをも巻き込み、借金返済のためには何でもしようとする輩のなんと多いこと。

悪魔の囁きに負けて、大金の入ったバッグを手に入れたジュンマンにも魔の手は迫ります。

最初から最後まで、誰も信じないし、誰一人として信じられなくなった人々の地獄絵図のような攻防劇が繰り広げられていきます。

誰が味方で誰が敵なのか。バッグを最後に手にするのは誰でしょう。

全く予想もしない出来事が次々と起こり、息をもつかない展開であっという間に109分がたちます。

大金は本当にお金が必要な人のところにあって欲しいと願いつつ、お金によって騙し騙される人間模様につい見とれてしまいます。

お金は自分には縁が無いと思っていても、実際に大金の入ったバッグを目の前にすると、どうしてもそれが欲しくなるというのが人間の性だということがよくわかります。

人の心の本質を試されるような作品に、自分もそうかなとドキリとすることでしょう。

まとめ

(c)2020 MegaboxJoongAng PLUS M & B.A. ENTERTAINMENT CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED.(c)曽根圭介/講談社

原作は日本の曽根圭介による犯罪小説『藁にもすがる獣たち』。この小説では、金への欲望をむき出しにした人々が激しくぶつかり合う様を描いています。

お金に執着する欲望とその結末を、韓国の『犯罪都市』『悪人伝』の製作陣が、豪華キャストを集結して映画化しました。

自らの過去を清算しようとする女・ヨンヒに『シークレット・サンシャイン』(2007)で第 60 回カンヌ映画祭主演女優賞に輝く名女優チョン・ドヨン、

恋人が残した借金に苦しむ男・テヨンに『アシュラ』のチョン・ウソン、大金の入ったバッグを拾った男・ジュンマンを『スウィンダラーズ』のペ・ソンウ。

さらには『ハウスメイド』(2010)で国内の賞を総なめにした国民的女優ユン・ヨジョンが、ジュンマンの認知症の母・スンジャ役で出演。

欲に目がくらんだ人たちばかりが出てくる中で、「身体さえあれば無一文になっても立ち直れる」と論する認知症のスンジャが、唯一人間らしいと言えます。

本作は、大金を巡って二転三転する予測不能の展開が観客を魅了し、韓国では興行収入ランキング初登場第1位を記録したそうです。

藁にもすがる思いで大金を追う人々の結末をじっくりとご覧ください。

映画『藁にもすがる獣たち』が2021年2月19日(金)よりシネマート新宿ほか全国にて公開予定です。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら



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