Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

Entry 2016/12/06
Update

映画『顔のないヒトラーたち』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

戦後70年を過ぎ、外国映画の中には、アドルフ・ヒトラーやアウシュヴィッツを題材にした作品が多く製作され、次々に日本でも公開されています。

その中でも、『顔のないヒトラー』は、ちょっと物々しい邦題からは意外かも知れませんが、エンターテイメントな作風に仕上げられた娯楽作品。オシャレなラブストーリーも盛り込まれた、必見のスマッシュヒット作です。

今回は、ドイツの若きイケメン検事官が活躍する、『顔のないヒトラー』をご紹介します。

映画『顔のないヒトラー』の作品情報


(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG

【公開】
2015年(ドイツ映画)

【監督】
ジュリオ・リッチャレッリ

【キャスト】
アレクサンダー・フェーリング、フリーデリーケ・ベヒト、アンドレ・シマンスキ、ヨハン・フォン・ビューロー、ゲルト・フォス、ヨハネス・クリシュ、ロベルト・ハンガー=ビューラー、ハンシ・ヨクマン、ルーカス・ミコ

【作品概要】
アウシュヴィッツで非人道的に強行されたホロコースト。その隠され続けていた事実をテーマに製作されたドイツ映画。この作品の特徴的に挙げられるのは、長く俳優活動をしてきた、イタリア・ミラノ出身のジュリオ・リッチャレッリが初監督を務めた点にあります。ドイツでの出来事をイタリアに出自を持つ監督が演出したこで、イタリア映画のような映画的な豊かさを魅せることに成功をしています。

映画『顔のないヒトラー』のあらすじとネタバレ


(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG

1958年のドイツ。ある日、画家のユダヤ人らしき男が、学校の校庭で厳しく生徒指導をする教師から、柵越しにタバコの火を借ります。差し出された教師の特徴的な手に見覚えがあった男は、教師の顔に震えあがります…。

フランクフルトの検察庁に勤める、主人公の若き検事官ヨハン・ラドマン。父親のように理想的な検事官になりたいと使命感に燃えています。しかし、日々の仕事といえば、交通違反の裁判をこなしてばかりいました。

そんな彼に、交通違反をした女性のマレーネ・ウォンドラックは、裁きの温情を求めてきます。しかし、ラドマンは、「法は法だ」と罰金刑を下します。だが、マレーネには現金の持ち合わせがなく、嫌々ながら融通のきかないラドマンに借金をします。

一方で、検察庁の廊下では、ジャーナリストのトーマス・グニルカが、友人の元収容所に収監されていたシモンが、目撃した元ナチス親衛隊員が、違法に教職に就任していること猛抗議を検事たちにするのですが、誰ひとり取り合おうとはしません。

戦後から復興する中で、収容所の記憶は、もうすでに過去の出来事となり、若者たちの誰もが知る余地のない歴史の沈黙へと忘れ去られていたのです。しかし、日々の交通違反の裁判に飽きていたラドマンのみは、トーマスの話に興味を持ちます。尊敬する父親の「常に真実を」という教えに従うかのように調査を始めていきます…。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『顔のないヒトラー』ネタバレ・結末の記載がございます。『顔のないヒトラー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
検事官ラドマンは、誰も見向きもしなくなった膨大な資料を調査しながら、訴訟を起こせる糸口を探していきます。また、元収容所に収監され生き残ったユダヤ人たちの耳をふさぎたくなるような証言を熱心に集めていきます。

その真実に迫っていく中で、ラドマンにとって最も大きな障害となった敵は、非人道的なホロコースト指揮を行ない国外逃亡をしている元ナチス党員の収容所所長だけではありませんでした。

法を司る立場の尊敬する父親や、愛する恋人マレーネの父親さえも、元ナチス党員であった事実。その真実に苦悩する場面です。これらの歴史の影に多くの一般人が煽動され加担していたことも、アウシュヴィッツでの事の重大さを引き起こした原因だったのです。

そこに目を背けないこと、それこそが父親の教えである「常に真実を」だからです。

ラストシーンは、苦渋と重圧を乗り越え成長したラドマンが、すべての元ナチス党員たちに訴訟を起こす裁判の扉を開けていきます。

映画『顔のないヒトラー』の感想と評価


(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG

『顔のないヒトラーたち』の原題は、『沈黙の迷宮の中へ(Im Labyrinth des Schweigens)』。「沈黙の迷宮」が意味するものは、1958年当時のドイツでは、誰もが人種差別のホロコーストが強行された、元アウシュヴィッツ収容所について公言せずいた事実を指しています。

尊敬する家族や親の世代が、戦時中に何をしてきたのか。また、そのことに口を噤んでいる姿を描きつつ、過ちを犯した親の世代と、それを引き継ぐ若者たちが、真摯に歴史の事実に向き合いながら、誇りを取り戻そうとすることが真の戦後復興ではないかと、問いかけたヒューマンドラマ。

また、この作品は、過去の過ちを指摘するだけではなく、娯楽的な豊かさが加味されて国際的な映画祭など評価も高く、「トロント国際映画祭」への出品や、「レ・ザルク・ヨーロピアン映画祭」では、観客賞と審査員特別賞の2冠を受賞した傑作です。

まとめ

(C)2014 Claussen+Wobke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG

これがデビュー作となった、ドイツ在住でイタリア出身のジュリオ・リッチャレッリ監督。

その才能の豊かさは、物語の中で描いた事実の重圧と緊張感だけを前面に見せるのではなく、食事とお酒のあるシーンを様々に取り入れる事で、ドラマの緩急をつけて表現の豊かに満たされています。

また、ラドマンとマレーナの恋模様を粋な会話劇で見せるなど、イタリア人らしいエッセンスにあふれていています。ぜひ、ご覧いただきたいお薦めの1本です!


Warning: Use of undefined constant php - assumed 'php' (this will throw an Error in a future version of PHP) in /home/demachi2026/cinemarche.net/public_html/wp-content/themes/stinger8-child/single.php on line 150

関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『HERO 2020』あらすじと感想レビュー。舞台版キャストの廣瀬智紀×北原里英が“厄介さと可笑しさ”を演じる

映画『HERO 2020』は、2020年6月19日から、シネ・リーブル池袋他で、全国順次公開予定 「2年限定の交際」を条件に、恋人として付き合っていた広樹と浅美。 約束の2年目を迎え、広樹が浅美との別 …

ヒューマンドラマ映画

映画『愛されなくても別に』あらすじ感想と評価解説。キャスト南沙良&馬場ふみかが“毒親の呪縛”にもがく女子大生を清々しく演じる

映画『愛されなくても別に』は2025年7月4日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開! 日本最年少でカンヌ国際映画祭への出品を果たした井樫彩監督が、吉川英治文学新人賞を受賞した武田綾乃の同名小説を実写映 …

ヒューマンドラマ映画

映画『洗骨』あらすじと感想レビュー。キャストが信頼するガレッジセールのゴリ(照屋年之)監督が描いた祖先と家族の絆

映画『洗骨』は、2019年1月18日(金)より沖縄先行公開、その後、2月9日(土)から丸の内TOEIほか全国公開! お笑い芸人「ガレッジセール」のゴリとして活躍する、照屋年之監督が制作した映画『洗骨』 …

ヒューマンドラマ映画

【ネタバレ】『ぼくが生きてる、ふたつの世界』あらすじ感想と評価レビュー。五十嵐大の自伝小説の映画化は”お涙ちょうだい”にしない

「ふたつの世界」があると感じた大が、ひとつの世界に生きていると知った実話 今回ご紹介する映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は 、『そこのみにて光輝く』(2014)、『きみはいい子』(2015)の呉美 …

ヒューマンドラマ映画

映画『ボブという名の猫』ネタバレあらすじ感想とラスト結末の解説。実話ノンフィクションを“実際の猫ボブ”が演じる!

今、日本は空前の猫ブーム。猫がテーマの映画は邦・洋問わず見られます。 そんな中、今回は実話でベストセラーにもなった、ホームレス同然のミュージシャンと野良猫の運命的出会いを描いた『ボブという名の猫 幸せ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学