映画『幸せのイタリアーノ』は2024年7月26日(金)より全国順次公開!
2018年に公開されたフランス映画『パリ、嘘つきな恋』(2018)の、イタリア版リメイク作品『幸せのイタリアーノ』。
本作は、一人の男性があるきっかけで、健常者ながら車いす生活を送る障がい者を装って一人の女性に猛烈なアタックを仕掛けるさまを描いたラブコメディー。
イタリアのベテラン俳優ピエルフランチェスコ・ファビーノと、テレビドラマ、映画と意欲的に取り組む人気女優ミリアム・レオーネの、ちょっと可笑しくも美しい恋の駆け引きが光る物語であります。
映画『幸せのイタリアーノ』の作品情報
【日本公開】
2024年(イタリア映画)
【原題】
Corro da te
【監督】
リッカルド・ミラーニ
【キャスト】
ピエルフランチェスコ・ファビーノ、ミリアム・レオーネ、ピエトロ・セルモンティ、バネッサ・スカレーラ、ピラール・フォリアティ、アンドレア・ペンナッキ、カルロ・デ・ルッジエーリ、ジュリオ・バーセ、ピエラ・デッリ・エスポスティ、ミケーレ・プラチドほか
【作品概要】
シューズブランドを経営するプレイボーイの会社社長と、車いすに乗った美女による恋の駆け引きを描いたラブコメディー。
監督は『これが私の人生設計』(2014)『マイ・ライフ:インポッシブル』(2019)などを手掛けたリッカルド・ミラーニ。
メインキャストには『シチリアーノ 裏切りの美学』(2019)『ラッシュ/プライドと友情』(2013)『ワールド・ウォーZ』(2013)などのピエルフランチェスコ・ファビーノ、『インビジブル・ウィットネス 見えない目撃者』(2018)『ディアボリック』(2021)のミリアム・レオーネらが名を連ねています。
映画『幸せのイタリアーノ』のあらすじ
有名なシューズブランド会社を経営する49歳の独身男性ジャンニは、社内では障がい者に対するモラルを欠くことさえいとわぬ、徹底的な商業主義を貫く鬼社長。
しかし一方でプライベートでは、女性を口説くためなら手段を選ばないプレイボーイぶりを発揮していました。
ある日、ジャンニの母が亡くなり、その遺品を整理しようと訪れた母の家で彼は一人の女性と出会います。その魅力に彼のプレイボーイ心はうずき、ひょんなきっかけで彼は車いすを操る障がい者を装い、彼女の誘惑に挑戦します。
ところが彼の当ては大外れ。彼女から自身の姉で、足が不自由なキアラを紹介されます。当初は困惑していたジャンニでしたが、車いすテニス、バイオリンと自身の才能を発揮し輝きを放つキアラの魅力を目の当たりにし、彼は「隠し事」を抱えながら、キアラに対し本気の恋に落ちていくのでした……。
映画『幸せのイタリアーノ』の感想と評価
フランス映画『パリ、嘘つきな恋』(2018)の作品の原題は『Tout le monde debout』。これは日本語に訳すと「全員が立っている」という意味でした。
一方でのリメイクである本作の原題は『Corro da te』。これは「イタリア映画祭2023」で上映された際につけられた邦題『あなたのもとに走る』そのものの意であります。
物語の大筋はリメイクということでほぼ共通したものでありますが、この原題の違いは物語が示す社会的テーマへの言及の仕方という部分で違いが感じられるものであります。
前作がわりにオシャレで優雅なイメージを見せる一方で、本作は登場人物の情熱が強く伝わる、どちらかというと生々しい雰囲気を覚えることでしょう。
単にこれがフランス、イタリア「お国柄の違い」による作風の差と片付けられるものであるかといえば、それにとどまらないものが見えてきます。
span class=”fontBold”>『パリ、嘘つきな恋』(2018)の主人公ジョスランが恋した女性フロランスは、どちらかというと「車いすに座りながらも、何をするにもどこか優雅な雰囲気を醸す」女性であり、その女性に近づくべくジョスランはさまざまな策に出るわけですが、そのさまからはどこか普遍的なテーマ自体への言及が感じられました。
つまり健常者の男性が障がい者の女性に近づいていくさまから「障がいという垣根を超える」という社会的なテーマに、直接的に言及しているような印象も感じられたわけです。
一方で本作で見えてくる、情熱的な男女の顛末からは逆にその直接性よりも「人として、女性としての魅力に障がいなどの有無は関係ない」「恋、愛というテーマは障がいという壁をも乗り越え、消し去っていく」というラブストーリー的な主題への訴求要素が強く感じられます。
もちろん本作も『パリ、嘘つきな恋』(2018)で見られるメッセージ的なポイントも同じように持ち合わせている本作でありますが、より見る側の感情に訴えるような力のある作品でもあり、通り一辺倒な社会的メッセージとは異なる「心より素直に愛を感じる」人への、尊敬の念を覚えさせるような作品であります。
まとめ
見落としがちなポイントでありますが、本作の注目ポイントはヒロイン、キアラが車いすテニスの試合に挑戦するシーン。
『パリ、嘘つきな恋』(2018)に登場するヒロイン、フロランスのテニスシーンは、前述のとおりどちらかというと優雅に「スポーツを楽しむ」という雰囲気のものでありましたが、本作でミリアム・レオーネが演じたキアラが見せるのはアスリート然とした表情、「勝ちを目指す」という厳しさに満ちた目線を感じさせます。
物語では主人公ジャンニがこの時見せたキアラの姿にすっかりやられ、徐々に本気の恋へと向かっていくわけですが、ある意味キアラの表情は一般に健常者が見落としてしまいそうな障がい者の芯の部分、彼らも自分たちと全く同じ人間であるということを、青天の霹靂のごとく彼に知らせるわけであります。
どちらかというと物語を通してそれほど起伏のある表情をしない、そして強気の表情をしないキアラですが、このシーンだけは特別なもので、ある意味キアラという女性の本質のようなものを見せつけるわけです。
このポイントはまさしくリメイクながら強く主張するポイントを持つ本作ならでは。同時に2008年にミス・イタリアに輝いた美しさもさることながら、レオーネ自身の女優としての個性が最も光ったポイントでもあります。
映画『幸せのイタリアーノ』は2024年7月26日(金)より全国順次公開!