サスペンス映画『追跡者』は『逃亡者』のスピンオフ作品!
スチュアート・ベアードが監督を務めた、1998年製作のアメリカのサスペンス映画『追跡者』。
ニューヨークで起きた殺人事件の犯人として緊急逮捕され、護送機が墜落した事故に乗じて逃亡したCIA特殊工作員を、連邦保安官代理が追跡していく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
映画『逃亡者』(1993)に登場した連邦保安官代理サミュエル・ジェラードと、その部下の活躍を描いたサイドストーリーであり、映画『逃亡者』(1993)のスピンオフ作品でもある、サスペンス映画『追跡者』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『追跡者』の作品情報
【公開】
1998年(アメリカ映画)
【脚本】
ジョン・ポーグ
【監督】
スチュアート・ベアード
【キャスト】
トミー・リー・ジョーンズ、ウェズリー・スナイプス、ロバート・ダウニー・Jr、ジョー・パントリアーノ、ダニエル・ローバック、トム・ウッド、イレーヌ・ジャコブ、ケイト・ネリガン、ラターニャ・リチャードソン、マイケル・ポール・チャン、ヴァイシアーレ・バンデラ、マーク・ヴァン、トレイシー・レッツ
【作品概要】
『エグゼクティブ・デシジョン』(1996)や『スター・トレック ネメシス/S.T.X』(2002)のスチュアート・ベアードが監督を務めた、アメリカのサスペンス作品。
本作は映画『逃亡者』(1993)のスピンオフ作品であり、映画『逃亡者』(1993)に登場する連邦保安官代理サミュエル・ジェラードを主役に配したサイドストーリーとなっています。
主演を務めるのは、『逃亡者』(1993)や「メン・イン・ブラック」シリーズ、『依頼人』(1994)などに出演するトミー・リー・ジョーンズです。
映画『追跡者』のあらすじとネタバレ
アメリカ合衆国連邦保安官(U.S.Marshals)から連邦保安官代理に昇進したサミュエル・ジェラードは、部下のノア・ニューマンとコズモー・レンフロ、サバナ・クーパーとボビー・ビッグズと共に、銃を不法所持していた犯人を逮捕しました。
しかしその際、手錠をした犯人がジェラードの部下に咬みついたことで、ジェラードは部下を救うために犯人の頭を殴りました。
捕まった犯人は27針も縫う大怪我を負わされたと訴えたことで、連邦保安局本部は世間からの非難を恐れ、ジェラードにある任務を言い渡します。
ジェラードの上司である連邦保安官キャサリン・ウォルシュから言い渡された任務は、ジェラードが捕まえた犯人を連邦刑務所まで護送し、記者団に良い印象を与えるように事情を説明することでした。
ある日の深夜。ジェラードは自身が捕まえた犯人と、他の囚人たちを乗せた囚人護送機に同乗しました。
一方、元海兵隊の特殊部隊隊員であるCIA特殊工作員マーク・シェリダンは、シカゴで交通事故に遭い、搬送された病院で治療を受けていました。
そこへ、シェリダンの恋人マリーが、シェリダンの治療費の支払いを兼ねてお見舞いに訪れます。シェリダンとマリーが談笑していると、突如現れた警察官によって、シェリダンは緊急逮捕されてしまいました。
今から半年前の1月12日、アメリカ・ニューヨークにある国連ビルで起きた外交保安局の捜査官が2人殺害された事件が発生。その殺害現場に残された犯人の指紋と、シェリダンの車にあった拳銃についた指紋が一致。
これにより、シェリダンは外交保安局の捜査官2人を殺害した容疑者として逮捕されたのです。ですが、それを知ったシェリダンは容疑を否認し、無罪を主張しましたが認められず、連邦刑務所に移送されることが決まりました。
しかし、囚人護送機が離陸して間もなく、シェリダンは突如ボールペン型銃を持った中国人の囚人に殺されそうになります。
その際、中国人の囚人が撃った弾が機体を一部破損させ、挙句の果てに囚人護送機のエンジン2基が停止。急降下した囚人護送機は近くの道路に不時着するも距離が足りず、オハイオ川へ墜落してしまいました。
破損した部分から川の水が浸水し、横転した囚人護送機がどんどん沈んでいく中、ジェラードが迅速に護送官に指示を出し、囚人たちを脱出させたおかげで無事機内から脱出。
その際、ジェラードは何故か手錠が外れていることが気になりつつ、シェリダンに他の囚人の救助をするよう指示しました。
しかし、シェリダンはこの墜落事故に乗じて逃亡。その後、駆けつけた救助隊員と郡保安官たちに救助されたジェラードは、消息不明の囚人がいると報告を受け、真っ先にシェリダンが逃亡したことに気づきました。
シェリダンを襲った中国人の囚人は、その後破損した部分から外に投げ出され、民家の屋根を突き破り風呂に墜落し死亡したことが判明。
そしてこの中国人の囚人について調べた結果、名前はヴィンセント・リン、中国人マフィアを殺して終身刑の判決を言い渡され、上訴に破れて連邦刑務所に戻る途中であることが分かりました。
ジェラードは駆けつけたコズモーたちと合流し、シェリダンが脱ぎ捨てた囚人服を見つけた郡保安官と州警察と協力し、シェリダン逮捕のためにオハイオ川周辺を捜索していきます。
するとそこへ、国務省外交保安局の局長ラムと特別捜査官フランク・バローズ、捜査官のジョン・ロイスがヘリに乗って登場。
ラムとバローズはジェラードの腕を見込んで、自分たちに捜査状況を知らせることと、ロイスを捜査に加えることを条件に、ジェラードたちにシェリダンの捜索を依頼しました。
実はシェリダンが殺したとされる、外交保安局の捜査官ハーモンとネイルはラムの部下であり、ネイルはロイスの相棒だったからです。
ラムたちが去った後、ジェラードは新たに捜査に加わったロイスの銃を確認。銀色の銃ではなく、ジェラードが愛用している44口径の拳銃グロック22を使うよう命じました。
川から引き揚げられた囚人護送機内を調査するジェラードたちは、ポールペン型の銃を発見。ジェラードは鑑識にまわして調べさせるよう言いましたが、ロイスは独自でポールペン型の銃が「XL-17 韓国製 22口径」であると調べました。
自分の指示に従わず、隠れてコソコソと調べるロイスにジェラードは怒り、公務執行妨害として彼に手錠をかけます。
ところがロイスは、コズモーがつけていた眼鏡を壊し、テンプルとモダンを上手く使い、まるでスパイのように自力で手錠を外して見せたのです。
クーパーたちがこぞってロイスを賞賛する中、ジェラードはどこかその手錠の外し方に既視感を覚えました。
一方シェリダンは、偶然トラックで近くを通りかかった夫婦を脅迫し、トラックに乗り込んで逃亡しようとしていました。
しかし、オハイオ川周辺はジェラードによって封鎖されており、危うく州警察に見つかりそうになったシェリダン。トラックを強引に走らせ封鎖網を突破し、ケンタッキー州パドゥーカから南に向かって逃亡します。
その場にいた州警察の警官からの報告を受け、ジェラードたちはすぐさまトラックを追跡。駆けつけた頃には、既にシェリダンがトラックを乗り捨て、沼地に手漕ぎボートで逃げ込んだ後でした。
それに気づいたジェラードは、ロイスたちと沼地に詳しい近隣住民と共に、モーターボートに乗って沼地の捜索を開始。ロイスは木の上によじ登り、身を隠していたシェリダンを発見します。
ロイスはシェリダンを逃がしてしまうからと言い、照明弾を撃たずに追跡を開始。見かねたロイスが乗るモーターボートを操縦していた男が、代わりに照明弾をあげてジェラードたちに知らせました。
ロイスは一瞬、シェリダンの姿を見失ってしまいますが、背後から襲い掛かってきた彼に銃を奪われてしまいます。
そこへ遅れてジェラードが到着。シェリダンは彼の取引には応じず、ロイスから奪った銃で彼を撃って逃亡。ジェラードはその後、病院に搬送されましたが、弾が当たったのが防弾ベストだったため、一命を取り留めました。
ジェラードが死にそうになったことを受け、病院に駆けつけたウォルシュは、シェリダン捜索の担当者を変えようかと進言しますが、ジェラード自ら捜査の続行を望みました。
映画『追跡者』の感想と評価
事件の真相に辿り着くジェラード
映画『逃亡者』(1993)同様、事故に乗じて逃亡した囚人を追跡することになった連邦保安官代理ジェラード。
冷静沈着に集めた情報を瞬時に把握・分析し、次に逃亡者がどこへ行くのか先読みしていくジェラードは、とても頼もしく格好良いです。
そんなジェラードだからこそ、実はシェリダンが事件の黒幕たちに罠に嵌められ、殺人罪で逮捕されてしまったという事件の真相に辿り着けました。ジェラードの素晴らしい推理力と洞察力の鋭さに感嘆します。
仲間に対する信頼が厚く愛情が深いジェラードは、物語の後半、ロイスに裏切られてニューマンを殺されてしまったので、誰よりも落ち込んだことでしょう。
若き連邦保安官の死にショックを受け落ち込むジェラードの姿は、彼の心情を察すればするほど胸が痛みます。
衝撃を受ける事件の黒幕の正体
シェリダンとジェラードたち連邦保安官チームは、スリリングな逃亡劇を繰り広げつつ、独自のやり方でシェリダンが逮捕されることになった事件の真相を調べていきました。
その結果、辿り着いた事件の黒幕の正体は、物語の後半までジェラードたちと共にシェリダン逮捕のために動いていた、ロイスとバローズでした。
ニューマンを殺し、ソーゼル郵船の甲板からシェリダンを殺そうとしたロイスの豹変っぷりは、背筋が凍りつくほど怖いです。
外交保安局のシェリダン逮捕の理由に矛盾が生じてから、外交保安局の捜査官も怪しいと推察できるものの、まさか一緒に捜査していた人物が黒幕だったとは、観ている誰もが大きな衝撃を受けることでしょう。
まとめ
自分の身を守るために、襲ってきた外交保安局の捜査官を射殺してしまったCIA特殊工作員と、逃亡した彼を追いかける連邦保安官代理が事件の真相を暴く、アメリカのサスペンス作品でした。
ジェラード率いる連邦保安官チームは、チームメイト同士が仲が良く信頼関係も良好で、連携プレイが完璧です。
それとは反対に、外交保安局の捜査官は任務に失敗すれば、トカゲのしっぽ切りみたいに見捨てられ、内々に始末されてしまうほど冷え切った関係性でした。
ただ組織とアメリカを裏切ったロイスとバローズですが、彼らにも仲間への情がないわけではありません。その証拠にロイスたちは、ハーモンたちを殺したシェリダンへの怒りを燃やしています。
何故ロイスたちがスパイ行為をしたのかは、劇中では描かれていません。事件の真相を解いていくのと同時に、その理由を考察する楽しみがあります。
罠に嵌められたCIA特殊工作員と連邦保安官代理による逃亡劇と、2人が事件の黒幕の正体に辿り着くまでの謎解きが楽しめる、ハラハラドキドキするサスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。