事件の鍵を握る少年と女性弁護士が巨大な組織に追い詰められていく法廷サスペンス。
ジョエル・シューマカーが監督を務め、ジョン・グリシャムの小説『依頼人』を映画化させた、1994年製作のアメリカの法廷サスペンス映画『依頼人』。
偶然自殺の現場を目撃し、全米を震撼させた事件の内容を知りすぎてしまった少年が、過去に傷を持つ女性弁護士と一緒にさまざまな利害の渦巻く社会の中で戦っていく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
事件の鍵を握る少年と彼に1ドルで雇われた女性弁護士が、巨大な組織に追い詰められていく法廷サスペンス映画『依頼人』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『依頼人』の作品情報
(C) 1994 Warner Brothers Productions, Ltd. and Monarchy Enterprises, S.a.r.l. All rights reserved.
【公開】
1994年(アメリカ映画)
【原作】
ジョン・グリシャム:『依頼人』
【原題】
The Client
【監督】
ジョエル・シューマカー
【キャスト】
スーザン・サランドン、トミー・リー・ジョーンズ、ブラッド・レンフロー、メアリー=ルイーズ・パーカー、アンソニー・ラパリア、J・T・ウォルシュ、アンソニー・エドワーズ、デヴィッド・スペック、アンソニー・ヒールド、ウォルター・オルケウィック、ウィリアム・リチャート、オシー・デイヴィス、ウィリアム・H・メイシー、ウィル・パットン、ジョン・ディール、ブラッドリー・ウィットフォード、キム・コーツ、ロン・ディーン、ミコール・メルキュリオ、キンバリー・スコット、エイミー・ハサウェイ、ジョー・ハーヴェイ・アラン、ダン・カステラネタ、マーク・キャバス、ウィル・ザーン、トム・ケイジー、ジェフリー・バックナー・フォード、ルビー・ウィルソン、トミー・クレスウェル
【作品概要】
「バットマン」シリーズや『フラットライナーズ』(1990)、『ブレイクアウト』(2011)などを手掛けた、ジョエル・シューマカーが監督を務めたアメリカの法廷サスペンス作品。
原作は、ジョン・グリシャムの小説『依頼人』です。本作の製作担当アーノン・ミルチャンがゲラ刷り(印刷物の校正をするための試し刷りのこと)の段階で原作を読み、すぐさまジョエル・シューマカー監督に話を持ちかけたことで、映画化されました。
『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)や『死を処方する男 ジャック・ケヴォーキアンの真実』(2010)、『オーバードライヴ』(2013)などに出演するスーザン・サランドンが主演を務めています。
映画『依頼人』のあらすじとネタバレ
(C) 1994 Warner Brothers Productions, Ltd. and Monarchy Enterprises, S.a.r.l. All rights reserved.
アメリカ・テネシー州メンフィス郊外。11歳の少年マーク・スウェイは、母親ダイアンと弟のリッキーと一緒にトレーラーハウスで暮らしていました。
マークは好奇心から、ダイアンの煙草を2本盗んで、ダイアンが仕事で出かけた隙にハウスの裏手にある森で吸おうとしますが、それを見ていたリッキーも一緒についてきてしまいます。
兄弟が森で煙草を吸っていると、突如森の窪地で1台の高級車が停まり、中にいた酩酊状態の中年男性が排ガス自殺をしようとしている場面を目撃しました。
マークはリッキーの制止を振り切り、排ガス自殺を止めようと排気パイプからホースを抜こうとします。
しかし、サイドミラーで彼の姿を見た男に見つかり、車内に引き摺り込まれ、自殺の道連れを強いられてしまうのです。
その男、弁護士ジェローム・”ローミー”・クリフォードは、雇い主であるマフィアの殺し屋「剃刀」バリー・マルダーノの上院議員殺しを知っており、警察が躍起になって探している上院議員ボイエットの死体を埋めた場所も知っていました。
そのためローミーは、マルダーノに口封じのため殺されることを予見し、アメリカ・ニューオーリンズから故郷であるこの場所に戻り、懐かしい思い出が詰まった森の中で自殺しようと考えていたのです。
この間、リッキーは恐怖に怯えながら、殺されそうになっている兄を助けるために、森の茂みから出て排気ガスからパイプを取り出そうとしました。
その瞬間、ローミーは秘密を明かしたマーク目掛けて、38口径の拳銃を発砲。窓ガラスに当たったため難を逃れたマークは、すぐさま車から脱出し、蹲っていたリッキーを連れて隠れます。
ローミーは兄弟を探すのを諦め、彼らが隠れている場所のすぐ近くで、銃を口に銜えて拳銃自殺を遂げました。
その日の夜、マークはリッキーを先に家に帰し、警察に通報。駆けつけた警察官のハーディ巡査部長に、「森の中を弟と歩いていたら、男の自殺現場を目撃した」と証言しました。
ハーディの配慮により、トレーラーハウスでダイアンと一緒にいたリッキーは、病院へ搬送されました。
医師のグリーンウェイによる診断の結果、リッキーはローミーの自殺現場を目撃したという極度の恐怖が原因で、心的外傷(トラウマ)後遺症となってしまいました。
リッキーの診察を待っている間、病院のテレビでニュースを見たマークは、自分が知った秘密は、マフィアが絡んだ危険なものであることを認識します。
ニューオーリンズの首席検事ロイ・フォルトリッグは、ボイネットを殺害したマルダーノを断罪するべく、死体の隠し場所を知るローミーを証人として法廷に出廷させる予定でした。
そしてフォルトリッグの指示のもと、ルイジアナ州検事局の検事補フィンクや、FBIのメンフィス支局長ジェイソン・マクスーン、FBIのニューオーリンズ支部の捜査官ラリー・トルーマンらFBI。
FBIに協力するハーディたち警察が、ボイネットの死体の隠し場所を血眼になって探していました。
ニュースの報道でそれを知ったマークに、ハーディは「本当はローミーが死ぬ前に一緒にいたんじゃないか?」と尋問しましたが、頑なに答えようとしません。
そのためハーディは、マークにあげたソーダ缶を押収し、彼に無断で車内に残った指紋と照合しようとします。
同時刻。ニューオーリンズからメンフィスにやって来たフォルトリッグは、フィンクやトルーマン、ハーディを引き連れてマクスーンと合流。
マクスーンから、「車内に残っていた指紋と、マークが飲んだソーダ缶の指紋が一致した。車内にいたはずなのに、ローミーと一緒にいたことをマークは頑なに話そうとしない」と聞いた彼は、マークはローミーから死体の隠し場所を話されたけれど、身の危険を感じて怖くて話せないだけだと推測しました。
すぐにでも法廷に出廷できるように、マルダーノやマフィアをFBIに見張らせているフォルトリッグは、マークを尋問し、死体の隠し場所を吐かせようと企みます。
翌日。自分と家族を守るため、弁護士を雇うことを思いついたマークは、病院で拾ったチラシ広告から弁護士事務所のあるビルを訪ねました。
マークはやり手の女性弁護士レジー・ラブと出会い、警察に話していないことと、嘘をついた理由を告白します。
「僕は自殺しようとしていたローミーと話をした。でも警察にそれを言わなかったのは、それを話してはいけない恐怖を感じたから」
そう話すマークの話を信じ、弁護士を雇う必要性を感じたレジーは、彼に弁護士を雇う金はあるかと尋ねますが、彼の手持ちの現金は1ドルしかありませんでした。
映画『依頼人』の感想と評価
(C) 1994 Warner Brothers Productions, Ltd. and Monarchy Enterprises, S.a.r.l. All rights reserved.
マフィアとFBIに狙われた兄弟
母親不在の隙に、こっそりトレーラーハウス裏の森の中に入ってしまったが故に、マフィアに命を狙われているローミーの自殺現場を目撃してしまうマークたち兄弟。
しかもマークは、酩酊状態のローミーから、マフィアの殺し屋が殺した上院議員の死体の隠し場所を教えられたせいで、上院議員殺害事件を追うFBIにもマフィアにも命を狙われてしまうのです。
極度の恐怖が原因で心的外傷(トラウマ)後遺症となり、昏睡状態に陥ってしまったリッキーの姿は、思わず目を背けたくなるほど痛々しくて、胸が痛くなります。
真実を証言すればマフィアに口封じのために殺されてしまうし、証言しなければ司法妨害として拘留されてしまうという究極の選択を迫られたマーク。
11歳の少年である彼が、マフィアの殺し屋に命を狙われ、FBIとフォルトリッグから強引に尋問されるのを、自分と家族を守るために何とか回避しようとする姿は、彼の恐怖が画面越しに伝わってきてハラハラドキドキさせられます。
たった1ドルで弁護してくれるレジー
(C) 1994 Warner Brothers Productions, Ltd. and Monarchy Enterprises, S.a.r.l. All rights reserved.
夫に裏切られ、愛する子供たちに面会も許されないという辛い過去を持っていたレジーは、同じく家族に裏切られたマークの心の痛みが人一倍理解できます。
それとおそらく、会えなくなった子供たちとマークを重ねて見ていたのでしょう。いつしかレジーは、マークに親身になって話を聞き、彼を守るためにフォルトリッグたちの尋問や訴えを回避する方策を講じてくれるようになりました。
子供のなけなしの全財産である1ドルで、フォルトリッグたちFBIや検事と法廷で戦ってくれるだけでなく、最後までマークとその家族のために動いてくれるレジーは、まさに弁護士の鑑であり感動します。
まとめ
(C) 1994 Warner Brothers Productions, Ltd. and Monarchy Enterprises, S.a.r.l. All rights reserved.
男の自殺現場を目撃した11歳の少年と、辛い過去を持つ女性弁護士が、上院議員殺害事件とマフィアを追うFBIと検事と法廷で戦い、暗躍するマフィアに追い詰められていくアメリカの法廷サスペンス作品でした。
本作の見どころは、マークとレジーがマフィアとFBIという巨大な組織と戦っていくという、終始息をもつかせぬスリリングな展開です。
父親のいない家庭に育ったマークと、辛い過去を持つレジーが互いに過去を告白して以降、ただの依頼人と弁護士という垣根を越えて、特別な関係を築いていく心の触れあいに引き込まれ、感動します。
最初は人権を無視してでも、名声のために事件と関連付けてマークを尋問していたフォルトリッグが、物語の最後でレジーに捜査協力の感謝を述べ、証人保護制度でマークとその家族の安全を守ったギャップにも心打たれること間違いなしです。
辛い過去を持つ少年と女性弁護士の心の触れあい、対峙するFBIと検事とマフィアとの攻防にハラハラドキドキさせられる、スリリングな法廷サスペンス映画が観たい人に、とてもオススメな作品となっています。