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『さよならドビュッシー』ネタバレあらすじ感想と評価解説。《本格ミステリーおすすめ映画》橋本愛が美しいピアノの音色によって再生する少女を演じる

  • Writer :
  • 谷川裕美子

少女の心と本格ピアノ演奏が溶け合う極上ミステリー

「このミステリーがすごい!」第8回大賞を受賞した中山七里の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』(2012)の橋本愛主演で映画化。

自身も俳優として活躍する利重剛が監督を務め、苦難に立ち向かう少女の青春ストーリーと、ミステリー要素が混じり合った見応えある作品に仕上げました。

今回が演技に本格初挑戦となる現役ピアニストの清塚信也が出演。ピアノ演奏の美しい響きで切ない物語を盛り上げます。

美しいドビュッシーの音色に乗って、思いもよらない物語が展開します。困難を乗り越えようと努力する美しい少女の生き様に胸打たれる、本作の魅力をご紹介します。

映画『さよならドビュッシー』の作品情報


(C)2013「さよならドビュッシー」製作委員会

【公開】
2013年(日本映画)

【原作】
中山七里

【監督】
利重剛

【脚本】
牧野圭祐、利重剛

【編集】
掛須秀一

【キャスト】
橋本愛、清塚信也、柳憂怜、相築あきこ、山本剛史、ミッキー・カーチス、相楽樹、戸田恵子、三ツ矢雄二、堤幸彦、吉沢悠

【作品概要】
「このミステリーがすごい!」第8回大賞を受賞した中山七里の同名小説を原作に、名バイプレイヤーとして知られる俳優・利重剛が監督を務めて映画化しました。

火事に巻き込まれながら生きながらえた少女が厳しいリハビリを超えてピアニストの夢を追う姿を、感動的に描きます。ラストの大どんでん返しは必見です。

主演は『桐島、部活やめるってよ』(2012)『熱のあとに』(2024)の橋本愛。

ドラマ『のだめカンタービレ』のピアノ演奏吹き替えなどを担当してきた現役ピアニストの清塚信也が、演技に本格初挑戦。圧巻のピアノ演奏を披露しています。

映画『さよならドビュッシー』のあらすじとネタバレ


(C)2013「さよならドビュッシー」製作委員会

ピアニスト志望の香月遥は両親、従姉妹のルシア、大好きな資産家の祖父・玄太郎、叔父たちと楽しく暮らしていました。ルシアの両親は危険地帯での仕事中に行方不明となります。

ある日、屋敷は火事になり、ルシアも祖父も死んでしまいました。遥は奇跡的にひとりだけ生き残りましたが、全身に大火傷を負います。

心にも傷を負いながらも、遥は厳しいリハビリを始めました。退院した遥は、ピアニストになることを条件に、祖父の巨額の遺産を相続することとなります。

体が不自由になった遥は音楽学校の先生方に見捨てられそうになりますが、力を貸すと名乗り出てくれたピアニストの岬洋介の指導のもと、猛練習を再開しました。

そんな中、何者かが遥の松葉杖に細工をしていたことがわかります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『さよならドビュッシー』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『さよならドビュッシー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2013「さよならドビュッシー」製作委員会

素晴らしい演奏をするようになった遥は、学校からコンクールに推薦されました。学校の宣伝にされることや、傷だらけの姿を好奇の目で見られることに反発する遥でしたが、岬に諭されて出場を決心します。

いつかルシアのために弾くと約束した、ドビュッシー作曲「月の光」を遥は自由曲に選びました。

ある大雨の夜、遥の母が教会前の階段から落ち、路上で傷だらけで倒れているのがみつかります。母はそのまま意識不明になり、警察が過去の火事のことも含めて調査に乗り出しました。家族の誰にも事件当夜のアリバイがありませんでした。

刑事は香月家に出入りしている岬にも話を聞きに行きました。名古屋地検検事の息子で、司法試験をトップ合格しながらピアニストになった変わり者の岬を、刑事は以前から知っていました。

練習中に指が動かなくなって不安に襲われた遥に、岬は自分が突発性難聴で左耳が聞こえないことを話します。

そんなある晩、家のシャンデリアが遥の上に落ちてきます。危うく下敷きになるところでしたが、岬に助けられ無事でした。

遥が予選を通過した晩、家政婦のみち子が逮捕されました。シャンデリアや松葉杖に細工した犯人はみち子でした。祖父の遺産を管理する加納に、火事を起こしたのは遥だとそそのかされたことが理由でした。

コンクール本選の朝。遥の手はまったく感覚をなくし、動かなくなっていました。「魔法でなおしてほしい」と岬に泣きつく遥に、岬は遥が自分で自分に悪い魔法をかけているのかもしれない、と言いました。

遥は今まで言えなかったことを告白します。母がケガをした原因は遥にありました。

あの大雨の夜、苦しい記憶に追い詰められた遥は、自宅近くの教会の前で濡れながら祈っていました。心配して追ってきた母に、遥は自分が本当はルシアであることを告白します。

火事のあった晩、遥とルシアは服を取り替えていました。火傷がひどく、声もしゃがれていたため、ふたりが入れ替わってしまっていたことに誰も気づきませんでした。周囲が皆、遥が生きててよかったと言うのを聞いて、ルシアは自分が死んだことにしてこれまで生きてきました。

遥の母はだまされていたと言って激高し、勢いあまって教会前の階段から転落してしまいました。

実は岬は彼女がルシアだと以前から気づいていました。昔の写真で見た遥の手と、ルシアの手の大きさが違っていたからです。

その後、ステージに上がったルシアは美しい演奏を披露します。後遺症で長時間弾き続けることができず、いつも途中で手が動かなくなっていた「月の光」。しかし、彼女は立ち上がり、歯を食いしばって必死で弾き続けます。ステージ脇からは、岬が食い入るように見つめています。

すべて弾き終えたルシアは、そのままステージに倒れてしまいました。岬が彼女を抱きかかえて袖に下がります。会場からは割れんばかりの拍手が送られました。

順位発表を待つ間、ルシアは、岬に最後にキスしてほしいと頼みます。岬は、彼女が思っているほど重い罪にはならないと思うと言いました。

そこに叔父が電話を持って駆け込んできました。電話に出たルシアは、父から母が息を吹き返したという知らせを聞き、喜びに震えます。

そのとき、第一位として遥の名が呼ばれました。キスは君が晴れてルシアとして帰ったときに改めて相談させてほしい言う岬の言葉を聞いて、ルシアは微笑みます。

ステージに戻ったルシアは、大歓声に迎えられました。

映画『さよならドビュッシー』の感想と評価


(C)2013「さよならドビュッシー」製作委員会

美しいふたりの少女の切ない物語

美しいピアノの音色に乗せて描かれる少女の苦難と成長、淡い恋心、そしてラストの大どんでん返しに驚かされる極上ミステリー作品です。

幼い頃からピアニストを目指していた橋本愛演じる香月遥は、資産家の祖父の邸宅で両親、叔父、仲のよいいとこのルシアと暮らしていました。危険地帯で働いていたルシアの両親が行方不明になった後も、年が近い遥はルシアを支えて一緒に成長します。

しかし、ふたりの美しい少女は大きな悲劇に見舞われます。火事が原因で祖父とルシアは死んでしまい、ひとり遥だけが生き残ったのです。遥は不自由な体で懸命にピアニストへの夢を追い求めますが、ピアノ教師らからは見放されてしまいます。

そんな遥の前に現れたのが、ピアニストの岬でした。彼の指導のもと、遥は才能を開花させていきます。

岬を演じる清塚信也の演奏シーンは、本作の大きな見どころの一つです。これまで「のだめカンタービレ」などで演奏吹き替えを担当してきた清塚が、初めて演技に挑んでいます。清塚のピアニストとしての卓越した素晴らしい演奏が、本作を本格音楽ミステリーに昇華させています

動かなかった手をなおしてくれた岬を、遥は「魔法使い」と呼んで信頼を寄せるようになりました。やがて、彼に心を開いた遥は衝撃的な秘密を告白をします。亡くなったのは遥の方で、実は自分がルシアだという真実でした。

火事に遭った頃、危険地帯にいたルシアの両親は行方不明となっていました。親を失った自分よりも、遥が生きている方が家族にとって幸せだろうと思ったルシアは、遥になりかわって生きてきたのです。

親を失った子どもの身の狭さ、悲しみが浮き彫りとなり、胸が締め付けられます。複雑な思いを抱えて苦しみの内に生きる少女を、橋本愛が熱演しています。

ステージ上で「月の光」を弾きながら、実の母に抱きしめられた記憶を呼び起こすルシア。暗闇のような世の中を照らす月の光のような子になってほしいという思いからルシアと名付けられたことを思い出した彼女は、アイデンティティーを取り戻します

その姿を涙を浮かべて見守る岬。岬への淡い恋心が成就する兆しを感じ、ルシアは初めて心から微笑みます。

長年自分の名を捨てて、死んでしまったいとこのためだけに生きてきた少女が、温かで美しい光に満ちたステージで再生するさまに胸打たれる最高のラストシーンを見届けてください

まとめ


(C)2013「さよならドビュッシー」製作委員会

本格ミステリーを美しいピアノ演奏に乗せて映像化した秀作『さよならドビュッシー』

監督を務めた名バイプレーヤー・利重剛が、ピアノ講師役の現役ピアニスト・清塚信也との妥協ない演奏シーンを生み出し、本格音楽ドラマに仕上げました。

双子のように育った少女たちの運命が、悲しく枝分かれするさまに胸が痛みます。

ステージという現実と非現実の間にある空間が、美しいピアノ演奏の力によって飛翔するさまに圧倒されることでしょう。

もしかしたら、ステージはこの世とあの世をつなぐ橋となり得るのかもしれない。そう思わされる作品です。



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