Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

Entry 2021/12/10
Update

『溺れるナイフ』ネタバレあらすじと結末の感想評価。原作から菅田将暉×小松菜奈で描く切なすぎるハイティーンラブ

  • Writer :
  • 山田あゆみ

映画『溺れるナイフ』は、ジョージ朝倉による人気少女コミックの映画化作品。

映画『溺れるナイフ』は、菅田将暉と小松菜奈の2度目の共演となる青春ラブストーリーで、10代の若者の恋愛と成長を描いています。


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

原作は、映画化された『ピース オブ ケイク』でも知られる漫画家・ジョージ朝倉の同名少女コミック。

『あの娘が海辺で踊ってる』『5つ数えれば君の夢』などで注目を集めた女性監督・山戸結希が取りまとめ、「MOON CHILD」の井土紀州が共同脚本を手がけました。

あやうい魅力を持つ少年と美しすぎる少女の恋の行方を、菅田将暉と小松菜奈が熱演しています。

映画『溺れるナイフ』の作品情報


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

【公開】
2016年(日本映画)

【監督】
山戸結希

【原作】
『溺れるナイフ』ジョージ朝倉

【キャスト】
小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、上白石萌音、志磨遼平、斉藤陽一郎、伊藤歩夢、堀内正美、市川実和子、ミッキー・カーチス

【作品概要】
『溺れるナイフ』は、『ピースオブケイク』(2015)のジョージ朝倉による同名漫画の映画化作品。原作は、2004年から別冊フレンドにて連載が始まり、2014年まで休載を挟みながら連載され、単行本は前17巻で完結しています。

監督の山戸結希は、独学で製作した短編『あの娘が海辺で踊ってる』(2012)で第24回東京学生映画祭で審査員特別賞を受賞します。

その後、『5つ数えれば君の夢』(2014)で商業映画デビューを果たし、乃木坂46の「ハルジオンが咲く頃」、RADWIMPSの「光」などのミュージックビデオを手掛けています。

女性監督やキャストを起用した企画のプロデュースも行っており、映画『21世紀の女の子』(2018)を製作しました。2019年には『ホットギミックガールミーツボーイ』を監督しています。

主演の小松菜奈は、本作と『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)『黒崎君の言いなりになんてならない』(2016)『ヒーローマニア-生活-』(2016)で第90回キネマ旬報ベスト・テンで新人女優賞を受賞しています。

カメラマン役で出演したのは、音楽ユニットであるドレスコーズの志磨遼平。本作の主題歌「コミック・ジェネレイション」も手がけています。本作で映画初出演を果たしました。

映画『溺れるナイフ』のネタバレとあらすじ


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

中学生の望月夏芽(小松菜奈)は、家族の事情で田舎の浮雲町へと引っ越してきました。

雑誌モデルの仕事を続けたい夏芽は東京に戻りたいと思っていましたが、海辺で出会った同級生の長谷川航一郎(菅田将暉)に恋をします。

航一郎は地元一帯を取り仕切る神主一族の跡取り息子で、自由奔放です。航一郎の気を引きたい夏芽は、写真家の広能晶吾(志磨遼平)に写真を撮ってもらいます。

撮影中に、突然現れた航一郎は、夏芽は自分のものだと言い放って去っていきました。

出来上がった写真集を見せたのをきっかけに急接近した航一郎と夏芽は付き合うようになります。

火祭りの夜、東京から来た旅行客の男に騙されて車に乗せられた夏芽は山奥に連れて行かれ、強姦されかけました。

助けにやってきた航一郎も殴られて倒れこみます。町の大人たちが止めに入り大事にはいたりませんでしたが、夏芽は心に傷を負いました。

高校生になった夏芽は、レイプされたとネットや学校でも噂されてふさぎこみながら生活していました。

中学のころからの同級生の大友勝利(重岡大毅)と松永カナ(上白石萌音)はふたりの仲を心配しています。

一方で航一郎は高校に上がってからは不良連中とつるんでいました。下校帰りに航一郎の姿を見かけた夏芽は追いかけて港までやってきました。

ボートにのりこむ航一郎を追いかけて夏芽も乗ります。「あの時助けて欲しかった」と伝えるものの、「自分たちは幻想を見ていたんだ」と言って取り合いません。そんな航一郎を押して一緒に海に飛び込んだ夏芽。

お前の人生に俺を巻き込むなと、航一郎は夏芽を突き放しました。

ずぶぬれになって帰宅した夏芽を大友が慰めます。一緒にバッティングセンターに行って将来の夢のことなど話します。

距離を縮めたふたり。翌日風邪で寝込んでいるところに大友はお見舞いに来ました。

元気が出るCDを持ってきた大友は、航一郎との仲を知っているので遠慮していましたが、夏芽のためになんでもしてやりたい、笑わせたいと言われて付き合うことになりました。

下校中突然、映画の話をするためにカメラマンの広能が現れます。シナリオではレイプシーンがあり、そのことを理由に広能に断ります。

がっかりした様子の広能は、もう会うことはないだろうと言って去って行きました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『溺れるナイフ』ネタバレ・結末の記載がございます。『溺れるナイフ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

山の中で遇然、夏芽と航一郎は会います。互いに思いをぶつけあい、体を重ねます。

しかし、航一郎は夏芽に芸能活動に戻るよう勧めます。航一郎と一緒に居たい夏芽でしたが、もう来るなと言われて出ていきます。

カラオケに行った夏芽と航一郎。映画のオファーを受けるために東京に行くからと大友に別れを告げる夏芽。泣きながら歌って頑張れと、夏芽を元気づける大友。

火祭りの夜。夏芽に乱暴した男が再び現れます。また無理やり羽交い絞めにされ、抵抗する夏芽。夏芽は、そのまま気を失ってしまいました。

目を覚ますと誰もおらず、夢だったのだと思いました。しかし記憶が蘇ると航一郎がその場に駆けつけて、その男に殴りかかったのでした。その男を殺そうとする航一郎でしたが、カナが止めに入ります。

暴行犯は、こうすることで夏芽と自分は一緒に報道される、運命を共にするんだと言って自ら自分の首をナイフで切って死んでしまいます。

そのナイフと遺体は次の日に遺棄するから、もう航一郎に会わないでほしいとカナに言われました。

映画祭で主演女優賞のスピーチをする夏芽。いつも航一郎のことが胸にある夏芽。

バイクに2人で乗る夏芽と航一郎。航一郎にずっと見ていてねと伝えた夏芽でした。

映画『溺れるナイフ』の感想と評価


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

漫画の実写映画化ということで、非現実的な映像とポップな音楽が独特の世界観を築いた作品となっていました。

特に、2カ所ある水中のシーンはとても幻想的です。菅田将暉と小松菜奈のふたりの表情と演技を、水中で見事に捉えています。

原作の舞台でもある和歌山の熊野で撮られた本作、撮影期間はたった17日間という限られたスケジュールだったそうです。

撮り直しのきかない状況で困難を極める水中、そして海面に顔を出してやりとりする場面もいくつかありました。

セリフはアフレコのようでしたが、波に揺られながら目線を合わせて演技するふたりには注目です。

また、無数の水の泡がのぼっていく様子や、海上から水深部に差し込む光の度合も絶妙な美しさで、音楽とマッチしています。 

また、本作の魅力はなんといっても小松菜奈の唯一無二の存在感です。

漫画原作の本作が映画化されることになり、漫画ファンが「神キャスト」だと歓喜したそうですが、漫画から出てきたようなオーラのある雰囲気と、少し物憂げな表情がはまり役でした。

原作者の朝倉ジョージは実写映像化できないような漫画にしようと描いていたと語っています。

本作の映像化にあたって、主演の小松菜奈なしでは成立しなかったのではないでしょうか。また、ミュージックビデオを思わせるような楽曲の使い方にも注目です。

まとめ


(C)ジョージ朝倉/講談社 (C)2016「溺れるナイフ」製作委員会

2016年に『ディストラクション・ベイビーズ』で初共演した小松菜奈と菅田将暉。本作で2度目の共演を果たし、その後『糸』で3度目の共演となっています。

ふたりが息の合った演技で、10代の切ない恋心と夢に向かって成長していく姿を熱演しています。主演のふたりに注目して観てみてはいかかでしょうか。


関連記事

ラブストーリー映画

映画『ポルト』あらすじネタバレと感想【アントン・イェルチン出演】

ジム・ジャームッシュが製作総指揮を務め、ポルトガル第2の都市ポルトを舞台に、異国の地で巡り合った男女を描いたゲイブ・クリンガー監督の『ポルト』をご紹介します! CONTENTS映画『ポルト』作品情報映 …

ラブストーリー映画

吉沢亮映画『あのコの、トリコ。』あらすじとキャスト。公開日はいつ?

キラキラ映画『あのコの、トリコ。』は、10月5日(金)より、全国ロードショー! 主演に吉沢亮を迎え、ヒロインには新木優子、そして最強ライバルを杉野遥亮と、若手俳優たちがそろった、ドキドキの恋とキラキラ …

ラブストーリー映画

『わたし達はおとな』感想結末あらすじと解説評価。恋愛ドラマの若き男女の出会いとすれ違いをリアリティで描く

2人にとっての「おとな」とは何なのか? 映画『わたし達はおとな』は、「劇団た組」で注目を集める若き劇作家・演出家の加藤拓也の、オリジナル脚本による長編監督デビュー作となっています。 主演は、『菊とギロ …

ラブストーリー映画

『傲慢と善良』映画化原作ネタバレあらすじ感想と評価解説。辻村深月の恋愛ミステリー小説を藤ヶ谷太輔と奈緒が演じる

辻村深月の小説『傲慢と善良』が待望の映画化! 『朝が来る』(2021)『かがみの孤城』(2022)などが映像化されたことで知られる辻村深月。 このたび執筆されたさまざまな作品から、恋愛ミステリー『傲慢 …

ラブストーリー映画

映画『ディナー イン アメリカ』ネタバレ結末あらすじと感想考察。ラブストーリーを孤独な少女とパンクなバンドマンで“純愛とは何か”を描く

超過保護な過程で育った孤独な少女が出会ったのは、好きなバンドのボーカルだった!? 俳優としても活躍するベン・スティラーがプロデュースを務め、アダム・レーマイヤーが監督を務めた異色のラブストーリー。 過 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学