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映画『ピッグ/PIG』ネタバレ結末あらすじと感想評価の解説。ブタを探すニコラスケイジ演じる謎の男が自身の人生と対峙する深い人間ドラマ⁈

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

山奥で静かに暮らす男ロブ、彼の閉ざした過去とは?

山奥で静かに暮らしていた男が、大切にしていたブタが盗まれたことで、奪還する為の戦いに身を投じる映画『PIG』

山奥で暮らす、謎だらけの男を中心に展開される、独特の展開と雰囲気が印象的な本作。

出演作品の独自性で、昨今では他の追随を許さないレベルに到達している、ニコラス・ケイジの長編映画100本目となる作品です。

ブタを盗んだのは誰なのか?その目的は?謎が謎を呼ぶ展開の先に辿り着く、独特のクライマックスが印象的な、本作の見どころを紹介します。

映画『PIG』の作品情報


2020 Copyright (C) AI Film Entertainment, LLC

【公開】
2022年映画(アメリカ)

【原題】
Pig

【監督・脚本・原案】
マイケル・サルノスキ

【キャスト】
ニコラス・ケイジ、アレックス・ウルフ、アダム・アーキン、カサンドラ・バイオレット

【作品概要】
山奥で静かに暮らしていたロブが、盗まれたブタを奪還する為に戦いを開始するリベンジスリラー。

主役のロブを演じるニコラス・ケイジは『フェイス/オフ』(1997)『ナショナル・トレジャー』(2005)など、メジャー大作に出演するだけでなく、近年では『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』(2021)『マッド・ダディ』(2017)など、独自路線の映画に多数出演し、唯一無二の存在感を放っています。

監督は本作が監督デビュー作となる、マイケル・サルノスキ。

映画『PIG』のあらすじとネタバレ


2020 Copyright (C) AI Film Entertainment, LLC
山奥で1人暮らしをしているロブ。

ロブは、トリュフを探し出す「トリュフ・ハンター」として暮らしており、見つけたトリュフを料理に使用したり、業者に売ったりして生活しています。

トリュフを探し出すには、トリュフの臭いを嗅ぎ分けるブタが必要で、ロブは飼っているブタを家族同然に溺愛していました。

ある夜、覆面を被った謎の2人組がロブの家に侵入し、ブタを盗み出します。

2人組から暴行を受け、気を失っていたロブは、目覚めた次の日の朝からブタの捜索を開始します。

数年ぶりに街に降りたロブは、トリュフを取引している販売業者のアミールを呼び出し、故郷のポートランドに戻ります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『PIG』ネタバレ・結末の記載がございます。『PIG』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


2020 Copyright (C) AI Film Entertainment, LLC
ポートランドに戻ったロブは、販売業者を辿り、ロブを襲ったカップルを探し出します。

ですが、カップルは「ブタは売りさばいた」と語ります。

ロブは、かつての友人を訪ね、ブタの消息を訪ねますが、誰の協力も得られません。

ロブは、廃業になったホテルの地下に向かいます。

ここでは、数分間殴られ続け、それに耐えることができれば、お金を得られるゲームが行われており、ロブはブタの捜索に必要な資金を稼ぐ為に殴られ続けます。

ロブのブタへの執念を見せつけられたアミールは、当初は乗り気ではありませんでしたが、率先して、ロブのブタ捜索に協力するようになります。

ロブは、かつてはポートランドで、その名を知らない者はいない程の、有名シェフでした。

ロブは、過去に自分の店で働いていたシェフで、現在は大成功しているデレク・フィンウェイを訪ねます。

ブタの行方を尋ねるロブを、当初はぐらかそうとしたデレクですが、ロブの追及に耐えられなくなり、黒幕の名前を口にします。

ロブのブタを連れ去ったのは、アミールの父親でした。

アミールは何も知りませんでしたが、このことに怒ったロブは、アミールの車を蹴飛ばして去っていきます。

直接、アミールの父親を訪ねたロブですが、アミールの父親は「何も知らない」と、ロブを追い返します。

ロブが家の外に出ると、アミールが待っていました。

ロブは「ブタはいなくても、トリュフは見つかる。ブタを探すのは愛だ」と語ります。

再び、ロブに協力することになったアミールは、ロブに言われた食材を集め始めます。

ロブに指定されたワインを取りに行った際、アミールは、亡くなったロブの妻のことを聞かされます。

その夜、アミールは父親を、自宅に用意した夕食に呼び出します。

夕食の調理を担当したのはロブで、その時のメニューは、かつてアミールの父親と、今は亡きアミールの母親をもてなした際のメニューでした。

妻のことを思い出し、取り乱すアミールの父親。

ブタを家族同然に考えている、自分の想いを伝えたロブは、再びブタの行方を聞きます。

アミールの父親は、自分の思惑とは違い、アミールがトリュフの事業で成功したことが気に入らず、トリュフの事業に必要なブタを盗んだのです。

ですが、アミールの父親が雇った男達が、ブタを乱暴に扱った為、既にブタは死んでいました。

ショックで泣き叫んだロブは、1人山奥に戻って行きます。

そして、かつてテープに録音した妻の声を、レコーダーで聞きながら眠るのでした。

映画『PIG』感想と評価


2020 Copyright (C) AI Film Entertainment, LLC
盗まれたブタを探し出す、ロブの戦いを描いた映画『PIG』

本作はかなり風変りな作風で、まず主人公のロブは「トリュフ・ハンター」という、聞き慣れない仕事をしています。

「トリュフ・ハンター」は実際に存在する仕事で、作中にあるようにブタを使い、トリュフを探し出し業者に売っている人達です。

この、トリュフ探しに不可欠なブタを、何者かに盗まれたことで、本作の物語は始まります。

ですが、物語の主軸は「誰がブタを盗んだのか?」ではなく「そもそもロブは何者なのか?」という部分です。

本作は3部構成になっており、各パートがロブの心情に合わせた内容となっています。

まず第1部は、山奥でブタと共に暮らすロブの姿が描かれています。

この第1部では、ほとんどロブは喋りませんし、トリュフを買い付けに来るアミールとの関係も、いまいち分かりません。

ただただ、人間関係を閉ざして生きる、ロブの謎が際立つパートとなっています。

そして、ブタが盗まれたことで始まる、第2部。

アミールと共にブタを探すロブは、裏世界にも精通しているようで「かつては、街で知らない者がいない存在だった」ことが分かります。

裏社会の殺し屋同士の掟や争いを描いた『ジョン・ウィック』シリーズのような展開ですが、ここから『PIG』は独特の展開を見せます

ロブにはジョン・ウィックのような無敵の強さは無いですが、かつて3000人以上の人間をもてなしてきた経験から、人間を見抜く洞察力が優れていることが分かります。

さらに、第1部では完全に心を閉ざしていたアミールと、次第に協力関係が築かれていき、2人は相棒のようになっていきます

第2部は、謎だらけだったロブの過去が徐々に明かされる、第1部からの急展開を見せるパートになっています。

そして第3部では、ブタを盗んだ黒幕である、アミールの父親と対峙します。

ロブは、過去にもてなした人のことを全て記憶しており、アミールの父親の心を開く為の料理を作ります。

ですが、ロブが探していたブタは死んでしまっていたことが分かり、失意のロブは再び山奥へ戻ります。

救いの無いラストのように感じますが、人を避けていた第1部の時のロブとは違い、ブタを探す中で、ロブは閉ざしていた心を開くようになります

ロブは自身の過去を見つめ直し、これまで閉ざしていた人間関係と、再び向き合う決心がついたのかもしれません

ブタを探す男を描いたリベンジスリラーと見せかけて、実は1人の男の人生を追体験させ、精神的な成長を描いた構成の『PIG』

実に風変りですが、味わい深い作品だと感じました。

まとめ


2020 Copyright (C) AI Film Entertainment, LLC
ブタを盗まれたロブと、ブタを盗んだ黒幕のアミールの父親。

2人は対照的に見えながらも、最愛の人間を失った悲しみから、過去を閉ざし、心を失った状態で現在を生きているという部分は、共通しています

この一見接点が全くないように思われた、2人を繋ぐのが料理。

かつては、もてなす側だったロブと、もてなされたアミールの父親、2人の共通の記憶が互いの閉ざした心を再びこじ開ける、クライマックスは残酷ながらも感動的な展開です。

本作において、ロブを演じたニコラス・ケイジが役にはまり過ぎており、黙って料理を作り、ブタと共に食事をする冒頭の数分だけで、世捨て人の風格が、凄いぐらい出ています

また、冒頭にしか登場しないブタが可愛くて、連れ去られる際の泣き声が悲鳴のようにも聞こえ、ロブが「家族同然に愛している」というのも納得できます。

映画『PIG』は「ブタを探す謎の男」という設定を、最終的に重厚な人間ドラマに仕上げた、職人技の光る珍味的な作品でした。




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