Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

【ネタバレ】胸騒ぎ|あらすじ感想と結末の評価考察。家族に”不穏なおもてなし”が次々と襲う⁉︎

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

家に招かれた家族を襲う恐怖の“おもてなし”

『アフター・ウェディング』(2006)などで知られるクリスチャン・タフドルップが監督、脚本を手がけ、本作が長編第3作目となりました。

ミッドサマー』(2020)、『イノセンツ』(2023)に次ぐ北欧ヒューマンホラーである本作は、『M3GAN/ミーガン』(2023)、『ゲットアウト』(2017)などで知られる米ブラムハウス・プロダクションズでハリウッドリメイクも決まっています。

デンマーク人夫婦のビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、旅行で訪れたイタリアで、オランダ人夫婦のパトリックとカリン、息子のアベールと意気投合します。

そしてパトリックとカリンに家に招待されたビャアンとルイーセは、オランダの田舎町にある夫妻の家を訪ねます。

ビャアンとルイーセは、パトリックとカリンの“おもてなし”に些細な違和感を募らせ、帰ろうとしますが引き止められ……。

映画『胸騒ぎ』の作品情報


(C)2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

【日本公開】
2024年(デンマーク・オランダ映画)

【監督】
クリスチャン・タフドルップ

【脚本】
クリスチャン・タフドルップ、マッズ・タフドルップ

【キャスト】
モルテン・ブリアン、ル・スィーム・コク、フェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダース、リーバ・フォシュベリ、マリウス・ダムスレフ、イシェーム・ヤクビ、イェスパ・デュポン、リーア・バーストルップ・ラネ、エードリアン・ブランシャール、サリナ・マリア・ラウサ、イラリア・ディ・ライモ

【作品概要】
監督を務めたのは、『アフター・ウェディング』(2006)などで俳優としても活躍するクリスチャン・タフドルップ。本作は長編監督3作目となります。

デンマーク人夫妻を演じたのは、演劇やドラマで活躍するモルテン・ブリアンと、『コールド・アンド・ファイヤー 凍土を覆う戦火』(2018)のル・スィーム・コク。

オランダ人夫妻をは、実生活でも夫婦であるフェジャ・ファン・フェット、カリーナ・スムルダースが演じました。

映画『胸騒ぎ』のあらすじとネタバレ


(C)2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

デンマーク人であるビャアンとルイーセ、娘のアウネスは、イタリアで休暇を楽しんでいました。そこで、オランダ人のパトリックとカリン、息子のアベールと知り合い意気投合します。

デンマークに帰国した一家の元に、オランダ人夫婦から家に遊びに来ないかと誘いがきます。ビャアンとルイーセは悩んだものの、折角の誘いを断るのも悪いと招待を受けることにしました。

家に着くと大きな肉を焼いていたパトリックにお肉を食べてみないかと言われ、ヴィーガンであるルイーセは戸惑ったものの言い出せず口にします。

また、アウネスのベッドと言って紹介されたのは簡易的な硬いベッドでルイーセは嫌な顔をします。アウネスは、夜になるとアベールが叫ぶ出すのが耐えきれず、ビャアンとルイーセのところに寝に来ます。

オランダ夫婦の言動に違和感を覚えたルイーセは夫妻の見えぬところで「嫌な感じがする、帰りたい」とビャアンに言いますが、ビャアンは「後1日半だから何とかなる」とルイーセをなだめます。

外食の身支度をしているとムハジドという男性がやってきます。カリンは、ムハジドはベビーシッターだと言い、子供の相手が上手だから大丈夫と言って、外食は大人だけで行くと言います。

ルイーセはもやもやしつつも言えずにいます。連れられたレストランでは、メニューが読めずどのような料理なのかも分からず、ルイーセは「私はヴィーガンだからお肉は食べられない」と言います。

すると、パトリックは「環境のために肉は食べないけれど魚は食べるのか、魚は環境破壊ではないのか?」と言います。ルイーセは答えませんでしたが、微妙な空気のまま料理が運ばれてきます。

食事が落ち着くと、パトリックとカリンは音楽に合わせて踊りながら、互いの体を密着させ始めます。ビャアンが誘い、ルイーセも立ち上がって音楽に乗って踊りますが、パトリックとカリンは更に密着し、キスをしているのを見て気まずくなったルイーセは、踊るのをやめて席に戻ります。

会計の際、パトリックは「派手に遊んだな」と言います。ビャアンは、「少し払おうか」と提案しますが、一向にパトリックはお金を払おうとしません。

「うちの奢りってこと?」とビャアンが言うと、パトリックは「頼む」と言います。家への帰り道、お酒を飲んだのに運転し、車の中で大音量の音楽を流し始めたパトリックとカリンに耐えきれなくなったルイーセは、音量を下げてと怒鳴ります。

一度下げたもののまたしても音量を上げるパトリックに、ルイーセは叫び、ビャアンも「少しでもいいから音量を下げてくれ」と頼みますが、音楽にかき消されてしまいます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『胸騒ぎ』ネタバレ・結末の記載がございます。『胸騒ぎ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

その夜、ビャアンとルイーセは、ベッドで体を重ねます。アウネスが部屋の外で「ママ開けて」と言っているのを、ルイーセは知りながらも行為を続けています。

ビャアンも、パトリックが見ていることに気づきながらもそのまま続けます。そのまま眠ってしまったルイーセは、ふと目覚めてアウネスの様子を見にいくと、アベールと同じ部屋にいるはずが、姿が見えません。

嫌な予感を抱きかながらパトリックとカリンの部屋をのぞくと、そこにアウネスの姿があります。その横で眠るパトリックは全裸です。

ショックを受けたルイーセはビャアンを叩き起こして「今すぐ帰る」と言います。ビャアンは、黙って帰るのはまずいと思いながらも、ルイーセの勢いに飲まれて帰り支度をし、車を走り始めます。

少し走り始めた時に、アウネスがうさぎのぬいぐるみのニヌスがいないと言い始めます。どうしても引き返したくないルイーセはまた新しいのを買うと言いますが、アウネスは残念そうにしています。

見かねたビャアンは引き返し、「探してくるからここで待っていて」とルイーセとアウネスに言います。しばらくして車の中からアウネスがぬいぐるみを見つけ、ルイーセはビャアンを呼び戻しに行きます。

するとリビングでパトリックとカリンとビャアンが話しています。「黙って帰っていくなんて」とショックを受けている様子のパトリックとカリンに、はっきり帰ると言えないビャアン。

痺れを切らしルイーセが、自分がヴィーガンなのに、ついてすぐに肉を食べさせられたことや、ベッドが狭いこと、外食時に密着していて気まずかったなど不満に感じていたことを口にします。

するとカリンは、「ヴィーガンだとその時に言ってくれればよかった。それに家はお金持ちではないから大きなベッドは用意できない。そしてあの時はあなたたちも楽しんでいたでしょう」と返します。

「残ってくれたら今度こそ楽しませる」と強く引き留めるパトリックとカリンを前に、断りきれずビャアンは残ることを決めます。ルイーセはどこか不安そうです。

パトリックと出かけたビャアンは、パトリックの開放的な生き方に羨ましさを感じます。「いい夫でいることに疲れた」とこぼすビャアンは、パトリックと共に叫び、距離が縮まったように感じています・

一方ルイーセは一層夫妻に対する不信感を募らせていきます。それだけでなく、何かとオランダ語でアウネスに指図するカリンに苛立ちを隠せません。

「娘に指図しないで」と怒鳴ったルイーセをカリンは鼻で笑います。食後アウネスがアベールと共にダンスを披露します。

すると、リズムが取れていないアベールにパトリックが厳しく指導し始めます。大きな声を出すパトリックにアウネスは怯え、「もう踊りたくない」と言います。

アウネスが怯えているのもお構いなしで、パトリックはアベールに厳しく何度も踊らさせ、その度に違うと怒鳴りつけ、アベールは泣き出します。

「どうかしている、相手は子供だぞ」とビャアンは驚きを隠せません。

「教育方針が違うだけでどうかしている?」とカリンは言い返しますが、「教育方針の問題じゃない、こんなのは間違っている。息子が泣いている時は愛を示すべき。怒鳴りつけるのは違う」とビャアンは言います。

ルイーセは部屋を飛び出します。追いかけてきたビャアンとアウネスに「1人にして」と言います。

ビャアンは、アベールの姿がないと家の周りを探していると、倉庫のようなところに大量のスーツケースやカメラが並んでいることに驚き、写真を見てアベールが夫妻の子供ではないことに気づいてしまいます。

そしてプールに浮かんでいるアベールの姿を見つけ、アベールのように自分の娘を連れ去るつもりだと悟ります。

ビャアンは、理由も言わず今すぐ帰るとルイーセとアウネスに支度をさせます。後ろから追ってこないか不安になりながらも車を走らせているとぬかるみにハマってしまい、ビャアンは助けを求めるため、近くの家に向かっていきます。

時間が経ってビャアンが戻ってくるとルイーセが助けを呼んだのか、パトリックの車に同乗しています。中にはカリンの姿も。

ビャアンは、ルイーセに帰ろうと言った理由を伝えておらず、ビャアン1人が自分たちの身が危ないことを知っています。

「俺たち家族に危害を加えないでくれ」と嘆願するも相手にされません。目の前から1台の車が止まったかと思いきや、アウネスを無理やり押さえつけて、舌を切り落としてしまいます。

成す術のないビャアンとルイーセは、アウネスが連れて行かれたショックもあり、抵抗せずいうことに従います。

すると人気のないところに連れて行き、服を脱ぐように言います。言われるまま全裸になったビャアンとルイーセに、パトリックとカリンは容赦無く石を投げつけるのでした。

映画『胸騒ぎ』の感想と評価


(C)2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

オランダ人の夫妻に招待され、休暇を過ごしていく中で感じた嫌な予感が、積み重なり、最悪の結末を迎える映画『胸騒ぎ』。

この映画を見て、不快に感じたり、気分が沈んだり…あまり良い気持ちがしない人も多いでしょう

ではなぜそのように感じるのでしょうか。何も悪いこともしていないのに、デンマーク人夫妻が理不尽な目に遭うから…それともオランダ人夫妻の目的が分からないからでしょうか。

本作が私たち観客に突きつけてくるのは、誰かが悪いと決めつけたり、同情したり、原因を探してしまうエゴイズムなのかもしれません

様々なところで自己責任論が展開されたり、善と悪といった単純な二項対立で物事をみようとしてしまいます

しかし、世の中は時になぜこのような目に遭わなくてはいけないのかと思うような理不尽さに晒されます。説明がつかないことも、誰のせいでもないことも沢山あります。

そのような“理不尽さ”に直面した時、どうすればいいのか…きっと正解はないでしょう。

理不尽さ”と共に描かれているのは、対話の難しさです。

招待されている側という引け目もあり、デンマーク夫妻は言いにくいことは母国語であるデンマーク語で話し、オランダ夫妻との会話は英語で話します。

また、カリンが娘のアウネスにオランダ語で話しかけると、ルイーセは怒りを露わにします。何を言っているのか分からないことに人は不安を覚えたり、苛立ちを感じたりします。

更に何を言っているか分からなくても、身振りや表情、話しているトーンで何を言っているのか察することもできます。だからこそ、ルイーセは不安と苛立ちが重なってカリン怒鳴るのです。

互いが歩み寄る気持ちがあれば、言葉が通じなくてもその会話あは互いにとって気持ちの良いものになりますが、そうではない場合もあります。

現代社会における理不尽さや、対話の難しさを提示しつつ、ショッキングな設定、展開によってジャンル映画としても確立しています。

そんな本作を見てミヒャエル・ハネケ監督の『ファニーゲームU.S.A.』(2008)、『ファニーゲーム』(2001)を思い出した人もいるのではないでしょうか。

ミヒャエル・ハネケのようなコミカルさもありつつ、理不尽で悍ましいラストへと向かっていく様子はヨルゴス・ランティモスの『聖なる鹿殺し』(2018)も彷彿させます。

オランダ人夫妻が、デンマーク人夫妻に服を脱がせて石を投げるという殺し方は、屈辱的で2人の命を弄ぶかのようです。

舌を切られた娘も一時的に生かされているだけの生贄であり、目的の分からぬ夫婦の行為は観客を陰鬱に引き込みます

本作が伝えているのは、警鐘か、それともエゴか……様々な思いが込み上げ、ゾッとする一作です。

まとめ


(C)2021 Profile Pictures & OAK Motion Pictures

映画『胸騒ぎ』の原題は“Gaesterne”で、客という意味ですが、邦題のように本作の中には様々な“胸騒ぎ”が散りばめられています。

それは冒頭のイタリアでのバカンスから始まっています。冒頭うさぎのぬいぐるみが映し出され、アウネスがなくしたぬいぐるみを父が見つけたという場面が描かれてます。

一度帰ろうとしたビャアンとルイーセが引き返すきっかけとなったのも、うさぎのぬいぐるみをなくしたからでした。

ジャンル映画として陰鬱さを掻き立てるために、理不尽な目に遭うデンマーク人夫婦も自分たちが“正しい”人間で、自分たちと価値観の違う人々を受け入れようとしていない姿勢もうかがえます。

しかし、そのような描き方はデンマーク人夫婦が悪くて自業自得の結果、ということではありません。

理不尽な目に遭うデンマーク人夫妻が正しい善良な人々で、オランダの夫婦は悪い人たちだという単純な二項対立としても描いていません。

普通の人々が突如巻き込まれる暴力性を描いているのです。それはまさに現代社会を映していると言えます。

デンマーク人夫婦の自分たちが正しい人間という価値観は、言い換えれてみれば、進んでいる、進んでいないといった自分たちの物差しで物事を見ようとする先進国の姿勢にもつながるところがあるのではないでしょうか。

映画的なショッキングさで不条理サスペンスとして描いている本作ですが、その背景には極端化する現代社会に対する視座も込められているように感じます。


関連記事

サスペンス映画

『おまえの罪を自白しろ』映画化原作ネタバレあらすじ感想と結末評価。キャスト中島健人×堤真一サスペンスは政界揺るがす誘拐事件の顛末を描く

真保裕一の小説『おまえの罪を自白しろ』が映画化に! 大物政治家を父に持つ主人公が遭遇する、身内の誘拐事件。犯人の要求は身代金ではなく、「政治家が犯した罪の自白」でした。 政治家が究極の選択を迫られると …

サスペンス映画

【ネタバレ】『首』あらすじ結末感想と評価解説。北野武が描く“戦国版アウトレイジ”は裏切りこそ真髄

北野武が戦国時代を舞台に描く仁義なき裏切り合戦! 漫才師「ビートたけし」として活躍しながらも、『その男、凶暴につき』(1989)で映画監督としての鮮烈なデビューを飾り、『ソナチネ』(1993)『座頭市 …

サスペンス映画

『プロミシング・ヤング・ウーマン』ネタバレ結末とラスト考察。復讐劇!性暴力への痛烈なリベンジとは?

キャリー・マリガン主演、性暴力への痛烈な復讐劇を描いた映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』 “プロミシング・ヤング・ウーマン=前途ある若い女性”に対する性暴力に対する怒り、憤りを主人公キャシーの視点 …

サスペンス映画

『ワイルド・ロード』あらすじ感想と評価考察。マシン・ガン・ケリーが長距離バスで逃亡するアウトローを熱演!

途中下車は許されない。それは、死線を走る片道切符―― 映画『ワイルド・ロード』が、2022年12月2日(金)より全国ロードショーとなります。 ラッパーのマシン・ガン・ケリーことコルソン・ベイカーと、名 …

サスペンス映画

映画『ファーストラヴ』のタイトル意味。ラブではない理由を相関図の恋愛模様から読み解く

映画『ファーストラヴ』は 2021年2月11日(木・祝)ロードショー。 島本理生の原作小説を『十二人の死にたい子どもたち』の堤幸彦監督が手掛けた映画『ファーストラヴ』。 父親を殺害した容疑で女子大生・ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学