岸井ゆきの×宮沢氷魚が初共演!夫婦の15年の軌跡を辿るドラマ
結婚に憧れる人も現実を知っている人にも突き刺さる、ヒリヒリするほどリアルなマリッジストーリー『佐藤さんと佐藤さん』。
活発なサチ(岸井ゆきの)と真面目なタモツ(宮沢氷魚)。同じ「佐藤さん」という苗字の2人が大学で知り合い意気投合し、付き合い始めます。
同棲生活を始め5年後、弁護士になるための司法試験に落ち続けているタモツを支えるためサチも一緒に勉強を始めます。そして共に試験を受け結果を見にいくと……合格したのはサチ一人でした。
『ケイコ 目を澄ませて』(2022)の岸井ゆきのと、『エゴイスト』(2023)の宮沢氷魚が初共演で夫婦役を演じました。
監督を務めたのは、『ミセス・ノイズィ』(2020)の天野千尋。
映画『佐藤さんと佐藤さん』の作品情報

(C)2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会
【日本公開】
2025年(日本映画)
【監督】
天野千尋
【脚本】
熊谷まどか、天野千尋
【キャスト】
岸井ゆきの、宮沢氷魚、藤原さくら、三浦獠太、田村健太郎、前原滉、山本浩司、八木亜希子、中島歩、佐々木希、田島令子、ベンガル
【作品概要】
監督作『ミセス・ノイズィ』(2020)や脚本作『ヒヤマケンタロウの妊娠』(2022)などで知られる天野千尋監督がオリジナル脚本で贈る、とある夫婦の15年を描いたマリッジストーリー。
サチ役は『ケイコ 目を澄ませて』(2022)の岸井ゆきの、タモツ役は『エゴイスト』(2023)の宮沢氷魚が務めました。
共演には『銀平町シネマブルース』(2023)の藤原さくら、『彼女が好きなものは』(2021)の三浦獠太、『違う惑星の変な恋人』(2024)の中島歩、『お嬢と番犬くん』(2025)の佐々木希など。
映画『佐藤さんと佐藤さん』のあらすじとネタバレ

(C)2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会
佐藤サチ(岸井ゆきの)と佐藤タモツ(宮沢氷魚)は、同じ大学のコーヒー研究会に所属し、意気投合。22歳の時に付き合い始めます。
活発な性格のサチと、真面目でこだわりが強いタモツ。正反対の2人は互いに惹かれ合い、卒業しても同棲して付き合いを続けていました。
サチは会社員として働き、タモツは学習塾のバイトをしながら弁護士の夢を追い、司法試験に合格するため勉強をしていました。
東北で農家を営むタモツの実家に2人で遊びに行くと「いつまでもあちらさんに待たせるわけにはいかんからね」と、母に結婚のためにも司法試験に受かるようプレッシャーをかけられます。
独学で学んでいるタモツの助けになりたいと、サチは共に勉強を始めます。サチに教えることでタモツも再確認できると2人は共に勉強していましたが、共に試験を受けて受かったのはサチだけでした。
サチはどう慰めていいか分からず言葉を失います。そんなサチに素直におめでとうと言えないタモツ。それからサチは弁護士事務所で働き始め、忙しくなった代わりにタモツが主婦として家事のことを主にやるようになりました。
大学の同級生同士が結婚し、結婚式にサチは出席しましたが、タモツはしませんでした。結婚式から帰ってきたサチは、上機嫌で同級生のことを話しますが、タモツは不機嫌そうに聞いています。
「引き出物、タモツの分もあるよ」とサチが言うと、タモツは「ご祝儀払っていないけど」と言います。するとサチは「まとめて払っておいたよ」と答えます。
「払うよ」と引き下がらないタモツに、サチが「8000円、2人分だからそれくらいするよ」と素っ気なく言うと、タモツは財布を見て「バイト代入ったら払う」と言います。
些細な言葉から喧嘩になってしまった2人は物を投げ合い、タモツが投げた時に引き出物のグラスにあたり、割れてしまいます。
サチは一人で先にベッドに入り泣いていると、後からやってきたタモツも泣いています。2人は泣きながら笑い、互いの鼻水をふきます。
喧嘩をしたり、すれ違ったりしながらも2人は共に過ごしていましたが、サチの妊娠が判明します。するとタモツは「一応とってきてみました」と婚姻届を出します。
「結婚する?」とサチの答えで、2人は結婚し、息子のフクが産まれます。
『佐藤さんと佐藤さん』の感想と評価

(C)2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会
恋人の出会いと別れをエモーショナルに描いた映画『花束みたいな恋をした』(2021)や『ちょっと思い出しただけ』(2022)のようなエモーショナルさもありつつ、本作は夫婦の15年ということで、恋人同士の頃とはまた違った子育てや仕事など様々なことによりすれ違ってしまう姿を描いています。
そんなサチとタモツの物語は、日本版『ブルーバレンタイン』(2011)、または『マリッジ・ストーリー』(2019)と言えるかもしれません。
快活なサチと、真面目でこだわりが強いタモツ。正反対な2人は惹かれ合い共に暮らすようになりますが、互いの違いはいつしか欠点として映るようになっていきます。
『ファーストキス 1ST KISS』(2025)においても、最初は互いの違いを指摘し合うけれど、いつしか一緒に暮らしていても全く接点がなくなる指摘すらしなくなるという話が出ていました。
共に住んでいるからこそ見えてくるもの、同時に一緒に住んでいてもすれ違い続ければ一緒にいる意味も分からなくなってしまう……そのような夫婦の難しさに共感する人も多いのではないでしょうか。
好きで、一緒にいたいと思っていたはずだった、それなのにうまく行かなくなってしまう。互いのために頑張っていたはずなのに、互いに責任を押し付け傷つけ合うようになってしまう。
変わっていないはずなのに何かが変わってうまく行かなくなってしまった。そんな風になるなら最初から結婚しなければよいじゃないか、そう思う人もいるでしょう。
しかし、本作が描いているのは、そのようなヒリヒリした苦しさだけでしょうか。結婚なんてするものじゃない、と釘を刺しているのでしょうか。
そうではありません。サチとタモツの15年間は決して悲劇でも、後悔だけの日々ではないのです。
別れを選んだからといってその結婚は失敗ではない、それも含めて2人が歩んだ道であるということではないでしょうか。
誰もが未来を予想することはできませんし、人と人の関係が永遠であると保証することもできません。
本作は決して恋や結婚に対する夢や憧れを否定する映画ではありません。一方で本作に自分を重ねて苦しくなる人もいるでしょう。
それぞれが歩んだ道、選んだ選択はその過程で楽しいことも苦しいこともあるはずです。どこか勇気をくれる映画と言えるのではないでしょうか。
まとめ

(C)2025「佐藤さんと佐藤さん」製作委員会
岸井ゆきのと宮沢氷魚が夫婦役で初共演し、夫婦の15年の軌跡を演じた映画『佐藤さんと佐藤さん』。
本作において興味深いのは、夫婦の家計を支えているのが女性であるサチという点です。前時代的な家庭観ではジェンダーによる役割分担があり、男性が家計を経済的に支え、女性は子育てや家事を担うという分担がなされていました。
しかし、サチは育休も取らず仕事に復帰し、タモツが主夫として家事を主に担っていました。そのようなジェンダーロールを意識し、あえて前時代的なものとは異なる家庭像を映し出していると言えます。
一方で、サチが離婚調停を担当する顧客の男性は、皆女性に対し前時代的なジェンダーロールを押し付けている男性ばかりが登場します。
さらに、サチとタモツが外で喧嘩をしていて2人が交番に補導される場面があります。聴取されている場面でサチが職業を聞かれ「弁護士」と答えると警官は「逮捕するわけじゃないから弁護士は呼ばなくていい」と言います。
外見を見て、サチの職業が弁護士であると思わなかったのです。無意識の偏見がそこに現れているのです。
タモツが抱える葛藤や息苦しさも、そのようなジェンダーロールの規範に囚われているが故に苦しく感じている部分はあります。だからこそサチが何気なく言った「トイレットペーパーないよ」という言葉に引っかかり喧嘩になったのです。
「トイレットペーパーないね」はその事実に対する同意を示しますが、「トイレットペーパーないよ」は命令的にも聞こえます。そのことをタモツが指摘すると、サチは「そんなつもりはないし、私が買ってくることの方が多いじゃん」と反論します。
サチは時に無自覚に、時に自覚的に自分が働いていて、タモツの方が家にいることが多いのだからやってほしいということを言動で示しています。
これはサチとタモツの立場が同じでも、似たような状況になったでしょう。しかし、タモツが主夫であることの方がより現代においては親や世間からの抑圧を感じるのではないでしょうか。
そのようなジェンダーにも意識した映画であることが、本作の魅力の一つであり、今の時代だからこそ作られた映画と言えます。


































