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Entry 2021/11/25
Update

映画『ずっと独身でいるつもり?』ネタバレあらすじ結末と感想解説。田中みな実初主演で“30代独身女性の特徴”を描く応援歌

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

フリーアナウンサーの田中みな実初主演
結婚、独身……私らしく生きるために悩み、闘う女性らのリアルを描くドラマ

10年前に執筆したエッセイが大ヒットするもその後ヒット作は書けていないライターの本田まみ。

36歳、独身。事あるごとに「いつまで独身でいるつもり?」と心配され、将来への不安と仕事のやりがい、年下の恋人の狭間で揺れ動く女性のリアルを描きます。

夫への不満を感じながらも言えずに、子育てと家事に追われる彩佳(徳永えり)。本田まみのエッセイを支えに自立した生活を送ろうとする由紀乃(市川実和子)。パパ活とギャラ飲みで生計を立てて必死にしがみつくも、若さを失うことを恐れる美穂(松村沙友理)。

さまざまな事情を抱え、泣きながらも日々生きていく女性の姿を描くリアルで力強いエンターテイメント。

映画『ずっと独身でいるつもり?』の作品情報


(C)2021日活

【公開】
2021年(日本映画)

【原作】
おかざき真里

【原案】
雨宮まみ

【監督】
ふくだももこ

【キャスト】
田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えり、稲葉友、松澤匠、山口紗弥加、藤井隆、橋爪淳、筒井真理子

【作品概要】
監督をつとめたふくだももこ監督は、若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)に選出され、短編映画『父の結婚』(2015)を監督、脚本します。

『父の結婚』(2015)を自らリメイクした『おいしい家族』(2019)で長編監督デビュー。ほか監督作はオムニバス映画『21世紀の女の子』(2019)、『君が世界のはじまり』(2020)など。

本田まみ役を演じたのは、フリーアナウンサー、モデル、女優として幅広く活躍する田中みな実。ドラマ『M 愛すべき人がいて』(2020)の開演が話題となり、今回映画初主演を果たします。

2021年7月に乃木坂46を卒業した松村沙友理がパパ活女子を演じるほか、『青葉家のテーブル』(2021)の市川実和子、『月極オトコトモダチ』(2019)の徳永えりなどが顔をそろえます。

映画『ずっと独身でいるつもり?』のあらすじとネタバレ


(C)2021日活

10年前に執筆したエッセイがヒットし、一躍有名作家となった本田まみ(田中みな実)、36歳。

自立した女性の幸せ、生き方を赤裸々に書いたエッセイで読者の支持を得たまみでしたが、続くヒット作がなく迷走中。

「ずっと独身でいるつもり?」という独身女性に辛口のコメントをする配信番組のコメンテーターに選ばれたまみは、本来求められていた辛口のコメントではなく、一人で生きていくのは寂しいという気持ちでした。

年下の恋人・公平(稲葉友)との交際においても、自分の気持ちより可愛い彼女でいようと、自分の気持ちを素直にいえないでいます。

しかし、番組でのまみの言動が反響を呼び、出演する機会も増えました。迷走しつつもコメンテーターとして活躍するまみの姿は様々な女性たちに影響を与えていきます。

まみのエッセイを支えに一人で自立した生き方を貫く由紀乃(市川実和子)はまみの番組でのコメントにショックを受け、寂しさから誰とでもくっついちゃう女が本当の可哀想な女とまみについての批判をSNSに呟いてしまいます。

ある日、同窓会に参加した由紀乃は、赤ちゃんを連れた彩佳(徳永えり)がInstagramでフォロワーも多く話題になっている話を聞き、自分とは違う彩佳の人生に嫉妬のような言葉を漏らしてしまいます。

独身の友人らとこのまま一人だったらみんなで一緒に住もうよ、と冗談ぽく言う由紀乃を彩佳は見つめます。

結婚し、出産。インフルエンサーとして話題になっている彩佳ですが、実際はなんちゃってイクメンのパパ(松澤匠)に、経済的に依存している引け目もあり不満を口に出せないでいます。

パパ活女子として生計を立てている美穂(松村沙友理)はしがみつこうとしても若さを失い今の生活ができなくなることに不安を感じています。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ずっと独身でいるつもり?』ネタバレ・結末の記載がございます。『ずっと独身でいるつもり?』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2021日活

ある日、公平の家で手料理を振る舞ってもらったまみは公平からプロポーズされます。

戸惑いながらも了承したまみでしたが、公平との些細な温度差に自分の中で不安が広がっていくのを感じていました。

公平の友人が主催するパーティに向かったまみ。公平が結婚相手だと友人らに紹介し、まみが公平よりも年上ということを知ると、「公平心が広いね」と悪気なく言います。

また、36歳という年齢のまみは当たり前のように子供を持つことに不安を覚え、結婚の前に検査を受けようとに公平に相談します。

行ってきたらいいという公平にじゃあ予約するからいつがいいかとまみが切り出すと自分は必要かな、と言ってまみだけ行けばいいと言います。

法事でまみの実家に向かった公平。

結婚の報告をすると親戚一同祝福しますが、やっともらってもらえてよかったね、など売れ残りのように言う親戚の言葉にまみは疑問を感じます。

幸せそうではないまみの様子に母は心配します。

無理して結婚することはないという母に、今まで結婚しろと言っていたのにいざ結婚するとなったら反対するのとまみは怒ります。

そんなまみに母は、結婚しても一人で生きていく覚悟は必要だ。旦那の言いなりになっていいことなんてない、まみはお母さんみたいになっちゃいけないと諭します。

公平の両親に挨拶に行くと、公平の母は仕事はもちろん辞めるんですよねとまみに対して言います。

続けたいと言おうとしたまみを遮って勝手に公平はまみが仕事を辞める前提で話を進めます。

家に帰り、怒りをあらわにしたまみに公平はそんな怖い顔しないで。笑ってるまみが好きとなだめようとします。

まみは、仕事辞めるつもりないのに辞める前提で話されたことが嫌だったと告げると公平は大した問題でもないと取り合いません。

まみはそんな公平に意を決して、結婚、やめようと言います。今更。じゃあ何でプロポーズをOKしたのだと怒る公平。

まみは声を震わせながら「魔が射したの」と言います。

後日、番組の収録に眼帯をつけて登場したまみに周りはざわつきます。そのまま始まった収録。

突然、結婚は破断になったと告げるとまみはおもむろに立ち上がり眼帯をとります。

目の周りは腫れ、あざになり痛々しい姿でまみは自分の思いの丈を語り始めます。

30半ばになり、周りはいつまで独身でいるの?と結婚の予定は?とありがたいアドバイスをくれる、ありがとうございます。

「でも、うるせえよ。そんなの一番私が考えています」

ありのままのまみ自身の叫びは番組を見ていた、由紀乃、彩佳、美穂に突き刺さります。

いつまでも恋人と住む予定だった部屋で一人暮らしていた由紀乃は部屋を出る決意を。

彩佳は意を決して自分も働きたいと夫に告げます。

美穂はキラキラした生活にしがみついてパパ活をしていた生活をやめ、社会で地に足つけて働く決意をします。

そして、まみも自分は今、幸せだと胸を張って自分らしく生きていく決意をするのでした。

映画『ずっと独身でいるつもり?』の感想と評価


(C)2021日活

さまざまな事情抱え、それでも闘い生きていこうとする女性たちの姿を描いた映画『ずっと独身でいるつもり?』。

30代半ばになり、周りから「いつまで独身でいるつもり?」と聞かれることが増え、一人でいることに不安を感じ始めるまみ。

その不安は自分が人にでいることの寂しさからの不安よりも、周りから可哀想だ、結婚できない売れ残り、本人に問題があるのではないかという目で見られ続けることに対する不安なのではないでしょうか。

皆と同じように結婚して〝普通の幸せ〟な生活を送ればそう言われることはない。

それが自分にとっても幸せなのだとまみは思おうとした、しかしまみにとっての幸せは公平と結婚すること、ではなかったのです。

「うるせえよ、そんなの一番私が考えています」「魔が射したの」

終盤のまみの心の叫びに共感する人も多いかもしれません。

本作は2013年に刊行された雨宮まみのエッセイを、おかざき真里が2014年から2015年にかけて連載したコミックが原作になっています。

田中みな実演じるまみが書いたエッセイは10年前に書かれたものであり、原作も10年ではないですが前のものです。

ここ数年で女性の働き方をはじめ、女性を取り巻く環境、考え方は変化してきています。

独身女性まみの仕事と恋人、両親などさまざまな狭間で揺れ動く様子や、なんちゃってイクメンの夫に不満を言えない彩佳の様子など本作で描かれる女性たちを取り巻く状況はどこかテンプレート化してしまった構図のような印象を受けます。

しかし、それは少しずつ女性を取り巻く状況が変わりつつあるなかで未だに改善していない、今もなお同じ生きづらさの中で闘っている人がいるということの表れなのではないでしょうか。

一方で、松村沙友理演じるパパ活で生計を立てる美穂は原作コミックにはいなかったキャラクターです。

美穂のキャラクターや、「ずっと独身でいるつもり?」という配信番組、SNSで心情を呟く由紀乃、フォロワーが多くSNSではお洒落な主婦だが、実際は不満を抱えつつも言えない彩佳など、劇中に出てくるSNSの存在は非常に現代らしいと言えます。

現代を生きる私たちにとって切り離せないSNS。それはSNS上の理想、虚構と現実という歪みを生じさせることもあります。

キラキラした投稿で溢れるパパ活女子の美穂ですが、実際の部屋は散らばったもので溢れ、一部分だけ綺麗なブランド品で飾られています。

その様子からも美穂の飾り立てた生活の虚無さが物語が進むにつれ際立っていきます。

現代の人々が抱える生きづらさとSNSも、もはや切り離せないものなのかもしれません。

まとめ


(C)2021日活

田中みな実主演、私らしく生きるために悩み、闘う女性らのリアルを描く映画『ずっと独身でいるつもり?』。

さまざまな事情を抱えながらも必死に生きている彼女らの姿は、現代を生きる人々の共感を呼び、応援歌となるでしょう。




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