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Entry 2021/11/12
Update

【ふくだももこ監督インタビュー】映画『ずっと独身でいるつもり?』田中みな実の見たことがない表情が楽しめる作品

  • Writer :
  • 咲田真菜

映画『ずっと独身でいるつもり?』は2021年11月19日(金)より全国ロードショー!

『女子をこじらせて』の雨宮まみによるエッセイを『サプリ』のおかざき真里が漫画化し、共感を呼んだ伝説的コミックを原作とする本作。

田中みな実、市川実和子、徳永えり、松村沙友理が揺れる20代・30代の女性の姿をコミカルに、時に毒々しく演じています。


(C)2021 日活

このたび本作を手がけたふくだももこ監督にインタビューを敢行。なぜ今「結婚」をテーマにした作品を撮ったのか、本作への想いを語ってくださいました。

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「結婚」という王道のテーマに挑戦


(C)2021 日活

──本作は、現代女性が直面するさまざまな問題を描いた作品です。ふくだ監督が、いわば王道ともいえる「結婚」をテーマに撮ろうと思ったのはなぜですか?

ふくだももこ監督(以下、ふくだ):田中みな実さんを撮りたいと思ったところが大きな理由の一つです。

正直、原作を読んだ時の私は、結婚について考えるフェーズは過ぎ去り“結婚はしなくてもいい”、”結婚せずに子どもを育てる”と、自分の中ではっきりと答えが出ていたので「私が撮る意味があるのだろうか?」と思いました。しかしどちらかと言えば私の考えは少数派で、そもそもみんなが「結婚をしたい」「するのが当たり前」と思っているのはなぜなのだろうという疑問を持ちながら撮影していこうと思ったんです。

原案となったエッセイを書かれた雨宮まみさんのことを考えると、この作品をやるべきだったのかという葛藤は今もありますが、私のまわりでは「これは私の話…!?」という反応が多いので、そう言ってくださる人たちのために、撮ることができてよかったと思います。

──原作となったおかざき真里さんの漫画とは内容が違い、原作にはないキャラクターも登場していますが、その意図は何でしょうか?

ふくだ:結婚をする・しないに縛られていない人を一人登場させたいと考えました。比較的他の登場人物より年齢が下で、結婚を軽くみているというか、金持ちの男性と結婚すればいいというような、結婚観が少し違う人物にするといいのでは……と脚本を書いた坪田文さんが、松村沙友理さんが演じる美穂というキャラクターを作ってくれました。美穂はイキイキしているので、めちゃくちゃ好きですね。

これまでにない田中みな実の魅力満載


(C)2021 日活

──田中みな実さんを撮りたいという思いが、本作を手がけた大きな理由だとおっしゃいました。実際に撮影をしてみて、田中さんの印象はいかがでしたか?

ふくだ:これまで見てきた田中さんの芝居で印象的だったのはテレビドラマ『M 愛すべき人がいて』(2020)でした。強烈なキャラクターだったので、今回の作品では「一体どんな表情をしはるんやろう、どんな温度感で芝居をしはるんやろう」と楽しみにしていました。

撮影の初日、田中さんが演じる本田まみが、一人で部屋にいる場面を撮りました。その時に田中さんは、かなり低めな温度感で芝居をされたので、こういう感じもいけるんや……と思い、とてもいいなと思いました。きっと田中さんのこれまでに見たことがない表情、等身大のキャラクターをこの作品で見ることができると思います。

実はこの作品の話を受ける前にも、キャスティング案に田中さんの名前が書かれていることがありました。やはり世の中に求められている方なのだと肌で感じていたので、今回ご一緒できて幸運だったと思っています。

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「男性VS女性」の構図は避けたかった


(C)2021 日活

──市川実和子さんが演じる佐藤由紀乃は、とても嫌なタイプの女性でした。そんな役を市川さんはリアルに演じていましたね。

ふくだ:市川さんはとにかく佇まいが素敵で、どこから撮ってもかっこいいんです。ただ由紀乃のやっていることはえげつないので、投稿するコメントの内容などはできるだけマイルドにはしました。

市川さんご自身はサバサバしていて素敵な方で、私から「こう演じてほしい」ということはあまり言わなかった記憶があります。由紀乃の雑然とした部屋にたばこや青汁といったアイテムがあることで、市川さんの中で由紀乃の人物像が腑に落ちたんだと思います。何より市川さんが由紀乃というキャラクターを好きでいてくれたので、のびのびと演じてくださり、それが楽しかったです。


(C)2021 日活

──その中でも異色な存在だったのは、徳永さんが演じている高橋彩佳で、物語の中で唯一の既婚女性です。

ふくだ:彩佳の夫は、育児に協力するふりをしているだけの人。しかも彩佳は、同級生の由紀乃に嫌味を言われたりして、ただ子どもを育ててインスタで人気があるだけなのに、なんでこんなこと言われないといけないのか?とあまりにも彩佳がかわいそうだなと思いました。

徳永さんは実感を込めてお芝居をする方なので、脚本上のキャラクターよりも質量を持った演技をしてくださいます。瞳をふるわせることの出来る俳優で、脚本には書かれていない情緒を豊かに表現してくれました。


(C)2021 日活

──演じるまみの恋人を演じられた稲葉友さん、彩佳の夫を演じられた松澤匠さんなど、男性キャストも生き生きとしていました。男性キャストを描くにあたり意識したことはありますか?

ふくだ:本作のような物語は、どうしても男女の対立構造になってしまうじゃないですか。なので男性のキャストに言っていたのは、彼らは決してただの嫌な人間ではなく、男性中心社会の中に巻き込まれてしまったからこその辛さがあるはず……と。

まみの父親が「男はそういうところがあるからなあ」と言う場面がありますが、これこそが男性が背負わされている“呪い”だと私は思っています。こうしたことは社会全体の問題なので、一概に男女の対立構造として描きたくはありませんでした。

スクリーンの中へ行きたいと思った中学時代


(C)2021 日活

──ふくだ監督は映画監督、小説家としてご活躍です。映画監督を目指すきっかけは何でしたか?

ふくだ:父が映画好きだったので、休みの日はいつも車で国道沿いの映画館へ連れて行ってもらいました。中学2年生の時に『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003)を観て、織田裕二さんが演じる青島俊作にどハマりしました。映画館で三回くらい見て私も「スクリーンの中」へ行きたいと思いました。

それは俳優になるという意味ではなく、スクリーンに映っていない、見えないところにいっぱい人がおって、たぶんそこはめっちゃ楽しいんやろうなと、中学生なりに感じたからだと思います。

またしばらくして『かもめ食堂』(2006)を観て、邦画の幅の広さを感じました。『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』とは全く違うテンションの作品で「ほとんどなにも起こらないけど、こういうのも映画なのか」と驚きました。この作品は、父が珍しく京都の小さい映画館へ連れて行ってくれたのですが、その映画館のスクリーンの小ささだったり、お客さんとの一体感だったり、色んな要素が合わさって「映画って、おもしろいな」と思った記憶があります。

もともと物語を書くのが好きで漫画を描いていましたが、漫画は一人で描く作業である一方で、映画はクレジットにたくさんの人の名前があります。みんなで一緒に作品を作ることはさぞかし楽しいだろうと思い、映画の道を目指しました。

──小説家よりも映画監督になろうと思ったことが先なんですね。

ふくだ:そうですね。小説はそれまで全然書いたことがなくて、学校を卒業したものの映画監督になる方法が分からず諦めようと思っていた時に、小説を書き始めました。それを読んだ先輩が「これ面白いから賞に出しなよ」と言ってくれて、そこから映画と小説が同じタイミングで世に出ることになりました。

──高校を卒業後、日本映画学校(現・日本映画大学)へ進学されました。どんな学生でしたか?

ふくだ:在学時代は、めちゃくちゃエネルギーを使っていたという記憶があります。朝電車で学校に行っただけで眠くて、教室の前のベンチで寝て、だけど常に頭の中はグルグルと何かを考えていましたし、忙しかったので当時の記憶があまりないですが、今思うと、まわりに迷惑なくらいずっとイライラしていました。

1年生の時、担任の先生に「お前は生徒を相手にするのではなく、先生を相手にする気でいろ」と言われ、とりあえず先生と生徒、全員に名前を覚えてもらおうと活動していました。

学生が作品を発表する場があるのですが、その時に私は、全作品に手を挙げて「××ゼミのふくだももこです」と自己紹介してから、ほとんどの作品に対してまくしたてるように「ここがあかん」とダメ出し、好きだと思った作品は、言葉を尽くして褒めちぎりました(笑)。めっちゃ嫌な奴やったなあと思います。「またあいつかよ」って思ってた人、絶対いっぱいいると思う。

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当たり前に存在している人たちを描いていきたい


(C)2021 日活

──ふくだ監督が考える「結婚」とは何でしょうか?

ふくだ:私は今回の作品を撮るにあたり、既婚の友だちに「なぜ結婚したのか」ということを聞いてみました。すると、そもそも結婚をすることは当たり前という前提のもと、たまたま結婚したいと思った時に、結婚したい相手と出会えたからなんですよね。「なぜ結婚をするのか」という前提を疑問に思っていた友だちは、その時話を聞いた中にはいなかったです。

そして、そもそもなぜ条件が整わないと結婚ができないんだろうと感じました。名字を変えたくない人、同性を愛する人など、たくさんの人が結婚のために心を引き裂かれないといけないのはなぜかと思い、“結婚したいと思う人が、全員なんの迷いもなく結婚できるような制度になること”が必要だと思います。

──今後はどんな作品を撮りたいですか?

ふくだ:今回の作品を撮って反省していることは、あまりにもセクシャリティに偏りがあるということです。この作品の中では男女の恋愛しか描かれていないので、今後はむしろヘテロセクシャルの人が少数派になるような作品も撮っていきたいと思っています。

私自身、まずは女性の苦しさや不平等を第一に伝えるということを使命として持っていますが、例えば今後また結婚がテーマであるとするならば、当たり前に生きている人たち、身体に障がいがある人や、恋人が同性の人、恋愛をしない人も当たり前に作品の中に登場させていきたいです。

──改めて作品の見どころをお願いいたします。

ふくだ:この作品には4人の女性が出てきますが、私は彼女たちを分断したいとは全く思っていなくて、女性たちの連帯を描きたかったのだと思います。肩を組むような力強いものではなく“ゆるい連帯”。

「ゆるい連帯」の具体的な場面として、私がこの映画の中で好きなのは、まみが彩佳家族のベビーカーを階段でおろしてあげるところです。困っている人を手伝う。たったそれだけのこと。こうしたことを世の中の人たちが当たり前にやっていけば、目に見えていい社会になっていくと思っています。

インタビュー/咲田真菜

ふくだももこプロフィール

1991年生まれ、大阪府出身。2015年、若手映画作家育成プロジェクト(ndjc)に選出され、短編映画『父の結婚』を監督、脚本。2016年、小説『えん』がすばる文学賞を受賞し小説家デビュー。

2017年、小説『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』を発表。2019年、山戸結希企画・プロデュースのオムニバス映画『21世紀の女の子』で『セフレとセックスレス』を監督。また『父の結婚』を自らリメイクした『おいしい家族』で長編監督デビュー。

監督作として『君が世界のはじまり』(2020)、ドラマ『深夜のダメ恋図鑑』(2018/テレビ朝日)、『カカフカカ』(2019/MBS)、演劇『夜だけがともだち』など映画・TV・舞台演出と幅広く活動中。また本作が自身の出産後初の監督作品でもある。

映画『ずっと独身でいるつもり?』の作品情報

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
ふくだももこ

【原作】おかざき真里(原案:雨宮まみ)「ずっと独身でいるつもり?」(祥伝社フィールコミックス)

【脚本】
坪田文

【キャスト】
田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えり、稲葉友、松澤匠、山口紗弥加、藤井隆、橋爪淳、筒井真理子

【作品概要】
婚活、結婚、出産、子育て……華やかな都会で生きる女性たちの孤独や寂しさ、もがき、苦しみなどをふくだももこ監督×いま最も旬の女優主演により紡いだ、女性の共感度満点の物語が誕生しました。

田中みな実、市川実和子、徳永えり、松村沙友理が揺れる20代・30代の女性の姿をコミカルに、時に毒々しく演じています。

映画『ずっと独身でいるつもり?』のあらすじ


(C)2021 日活

10年前に執筆したエッセイから一躍有名ライターとなった本田まみ(田中みな実)36歳、独身。自立した女性の幸せの価値を赤裸々に綴り、読者の支持を得ましたが、それに次ぐヒット作を書けずにいます。仕事にやりがいを感じながらも周囲から「ずっと独身でいるつもり?」と心配されています。

一方、まみが出演する配信番組をきっかけに交錯する女性たち……まみの書いたエッセイを支えに自立した生き方を貫く由紀乃(市川実和子)、夫への不満を抱えながらインスタ主婦を続ける彩佳(徳永えり)、パパ活女子として生計をたてつつも、若さを失うことにおびえる美穂(松村沙友理)。

それぞれ異なる生きづらさを抱える4人が踏み出した小さな一歩とは?





咲田真菜プロフィール

愛知県名古屋市出身。大学で法律を学び、国家公務員・一般企業で20年近く勤務後フリーライターとなる。

高校時代に観た映画『コーラスライン』でミュージカルにはまり、映画鑑賞・舞台観劇が生きがいに。ミュージカル映画、韓国映画をこよなく愛し、目標は字幕なしで韓国映画の鑑賞(@writickt24)。

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