夫のDVから逃れた女性たちが理不尽な現実に立ち向かう姿を描いたサスペンス!
第66回江戸川乱歩賞作家・佐野広実の小説『シャドウワーク』は、配偶者や親から暴力を受ける女性たちが身を寄せるシェルターを舞台に描く物語です。
ひどいDVを受けて夫から逃げ出した主人公・紀子と、同じように夫からDVを受けている女性警察官・薫。それぞれの目線でストーリーは展開します。
繰り返される夫からのDVから逃れても、そのフラッシュバックに苦しむ女性たちが、自分たちの命と将来を守るために立ち上がる様に、勇気をもらえることは間違いありません。

(C)佐野広実/講談社 (C)2026「シャドウワーク」製作委員会
2025年にはドラマ化もされた本作が、このたび映画化が決定。監督・脚本を手がけるのは『君は永遠にそいつらより若い』(2021)の吉野竜平。吉岡里帆と奈緒がダブル主演を果たします。
2026年9月25日(金)の映画公開に先駆けて、小説『シャドウワーク』をネタバレ有りでご紹介します。
小説『シャドウワーク』の主な登場人物
【宮内紀子】
30代の主婦。夫の清明から長年暴力を受け、DV被害者のシェルターに入居。
【志村昭江】
DV被害者のシェルターを運営し、その“ルール”を司る女性。
【間宮路子】
シェルターを立ち上げた共同運営者。看護師として勤める病院で紀子と出会い、シェルターを紹介する。
【北川薫】
夫・晋一からのDV被害を受けている警部補。
【北川晋一】
薫の夫。警察庁刑事局捜査第二課に所属するエリート。
【宮内清明】
紀子の夫。
【今井美佳子】
館山の海岸で溺死体として発見された女性。
【西山千栄子】
シェルターの住人を法的にサポートする弁護士。
小説『シャドウワーク』のあらすじとネタバレ

佐野広実『シャドウワーク』(講談社刊)
夫・宮内清明からのDV被害に苦しむ紀子。DVで受けた怪我で3度目に入院した病院の看護師・間宮路子と知り合いました。
その後、行政が用意したシェルターに身を寄せますが、ある日そこを出て、間宮路子に導かれて、江ノ島近くのシェルターに辿り着きます。
そこは志村昭江と路子が運営する、DV被害者の女性のための秘密のシェルターでした。施設には、奈美、洋子、雅代という女性たちが住んでいました。
シェルターには独自のルールがあり、家事の分担はすべて“持ち回り”でした。平日は昭江が経営するパン屋で働き、夜はゲームへの参加が義務づけられていました。
紀子は夫・清明から受けた暴力の記憶に苦しみ続けていましたが、奈美、洋子、雅代と共にパン屋で働くうちに少しずつ心を開き、本来の自分を取り戻し始めます。
一方、館山の海岸で女性の腐乱死体が発見され、刑事の北川薫と新人刑事荒木悠真が身元調査にあたっていました。
遺体は美容整形のカルテから今井美佳子という女性と判明。彼女が過去に激しいDVを受けていた事実が浮かび上がります。
実は薫も同じ刑事の夫・晋一から激しいDVを受けていて、その圧力に苦しんでいました。薫は女性の死を自殺と判断する上層部に反発し、美佳子の同居人である松原幸次を追及しますが、警察内部の圧力に阻まれます。
その後、松原は心不全で死亡。事件性はないとされますが、薫は納得できず独自に調査を続けます。
美佳子の過去を辿る中で、彼女がかつて夫から暴力を受け、一時保護施設に入所していたことが判明し、その際に担当していた看護師が間宮路子であったことが明らかになりました。
シェルターでは、昭江が弁護士・西山千栄子を入居者に紹介し、離婚調停を進めるよう支援しています。昭江は自分と路子もかつてDVの被害者だったこと、シェルターで出会ったことを打ち明け、自らの25年前の出来事を告白しました。
その頃、溺死体で発見された今井美佳子の遺骨を寺に預け、引き取り手を探していた刑事の北川薫は、居場所を突き止められた夫からのいやがらせにあっていました。それでも薫は、今井美佳子の担当看護師だった間宮路子と面会します。
路子は「退院後は彼女と会っていない」と答えますが、通話履歴から美佳子が退院後も路子と連絡を取っていたことが判明し、薫は彼女に疑念を抱きます。
直後、薫は路上で何者かに襲撃され、全治3か月の重傷を負います。そのことについて、夫・晋一の関与を疑う薫ですが、当日晋一にはアリバイがあり、実行犯は別にいると思われました。
一方、シェルターで暮らす紀子は、昭江と路子が何事かを密談しているのを耳にし、施設が秘密裏に犯罪計画を進めていることを察知します。
ある日、紀子は仲間たちと共に遠方の町へ赴きます。その町で一人の男性を訪ね、路子は弁護士を、紀子は調査員を装って、訪ねた男性に離婚の示談交渉を持ちかけました。紀子には、男性の飲み物に睡眠薬を混ぜるという、もう一つの役割が与えられました。
やがて男性が意識を失うと、雅代と洋子が加わり、路子の指示で注射器を用いて体内に空気を注入し、男性を死に至らしめました。
淡々と進められるその行為を目の当たりにした紀子は、衝撃を受けます。帰宅後、紀子は昭江から「持ち回り」の意味を知らされます。
昭江たちは半年から1年に1度の割合で、全国の仲間と連携しながら、「DV夫」を自然死に見せかけて殺害していました。自分たちの夫を殺してもらう代わりに、見知らぬ誰かの夫を殺害するという仕組みでした。
その男性は2日後に発見され、心不全として処理されました。同じ日に、奈美の夫も別の仲間によって自然死に偽装されて亡くなったことが、弁護士の西山から報告されました。
小説『シャドウワーク』の感想と評価
夫からのDV被害を受けている女性たちがその支配から逃れ、自分の道を歩もうとします。ですが、執念深い夫からの追跡やフラッシュバックした被害を受けた記憶が、常に彼女たちを襲って苦しめます。
そんな実情は、被害者でないとわかりません。殺人や暴力は許されないものなのに、夫婦間や家庭内のこととなるとプライバシー問題となり、法や行政の力が奥深くまで及ばないのが現状と思われます。
本作でも、DV被害女性それぞれの家庭内で起こっている実情は、被害者が逃げ出すことも出来ないほどの恐怖と洗脳を植え付けています。
こんなことをする加害者は、誰も裁くことができないのでしょうか? 法では裁くことが出来ないから、闇の仕事人のように彼女達が自ら天の裁きを下すことになったと言えます。
「シャドウワーク」とは、社会や経済の基盤を支えるために絶対必要でありながら、公式な労働として評価されず、無報酬で行われる隠れた労働のこと。
本作では、シェルターで暮らすDV被害者たちの裏の仕事を指しているのでしょう。
妻といっても一人の人間であり、夫の私有物ではありません。はき違えた理念を持ち妻にDVを繰り返す夫には、恐怖と人間不信を感じます。
また、そんな夫に対して天罰を下そうとする彼女たちが法を犯す道を歩んでも、それは天命と思わざるを得ません。
人間の倫理観を問われる作品で、主人公たちはそれぞれ自分の行いについて悩みますが、ラストは威風堂々。正当防衛とも思える彼女たちの「シャドウワーク」は、清々しさを与えてくれました。
映画『シャドウワーク』の見どころ

(C)佐野広実/講談社(C)2026「シャドウワーク」製作委員会
小説『シャドウワーク』は過去に「連続ドラマW」でドラマ化もされていますが、このたび吉野竜平監督によって映画化され、2026年9月25日(金)に全国公開も決定しました。
映画では、紀子を『正体』で第48回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した吉岡里帆、刑事・薫を東京ドラマアウォード2025 主演女優賞を受賞した奈緒が演じています。
傷ついた心と身体を癒してくれるシェルターに身を置く紀子は、シェルターでの違和感を感じ取ります。そこへ、ある事件を追う女性刑事・薫がやってきて、次第にシェルターの秘密が暴かれることになりました。
シェルター内における秘密についての紀子と薫の対立は、「殺されない」生き方をを求める女同士の争いでもありました。吉岡里穂と奈緒の正面切っての対決が楽しみです。
映画『シャドウワーク』の作品情報

(C)佐野広実/講談社(C)2026「シャドウワーク」製作委員会
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作】
佐野広実『シャドウワーク』(講談社)
【監督・脚本】
吉野竜平
【キャスト】
吉岡里帆、薫、美保純、酒井若菜、ファーストサマーウイカ、佐月絵美、北村匠海、原嘉孝、風吹ジュン
まとめ
小説『シャドウワーク』をネタバレ有りでご紹介しました。DV被害者である女性たちがその加害者たちから逃げ、新たな人生を歩もうとする物語です。
そこで描かれているのは、DVに対する激しい怒りと悲しみ、そして生への希望でした。
DVから逃れて胸をはって新たな人生に進む女性たちの悩みながらも力強い生き様に感動することでしょう。
本作は、映画化され、2026年9月25日(金)にTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開となります。スリル満点のサスペンスが今から楽しみです。
































