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Entry 2019/02/02
Update

映画『赤い雪 Red Snow』あらすじネタバレと感想。永瀬正敏と菜葉菜が実話を基にしたミステリー作品にダブル主演!

  • Writer :
  • もりのちこ

あの雪の日、記憶からも現実からも弟は消えた。人の記憶ほど曖昧なものはない ──。

「記憶はウソをつく」榎本博明著にもありますが、記憶が必ずしも真実ではないということに焦点を置いたミステリーサスペンス映画です。

強烈な体験の呵責、苦痛により、その間の記憶をすべて喪失してしまう経験。曖昧な記憶の中から抜け出せない恐怖。

30年前の子どもの頃の記憶が呼び起こす真実とは。映画『赤い雪 Red Snow』を紹介します。

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映画『赤い雪 Red Snow』の作品情報


(C)「赤い雪」製作委員会

【公開】
2019年(日本)

【監督・脚本】
甲斐さやか

【キャスト】
永瀬正敏、菜葉菜、井浦新、夏川結衣、佐藤浩市、吉澤健、坂本長利、眞島秀和、紺野千春、イモトアヤコ、好井まさお

【作品概要】
映像作家やアートディレクターとしても活躍する甲斐さやか監督が実話を基にしたオリジナル脚本のミステリーサスペンス映画。

短編『オンディーヌの呪い』で注目を集め、その映像美の高さは高い評価を得ており、本作は長編映画デビュー作となります。

永瀬正敏と菜葉菜のダブル主演のほか、井浦新、佐藤浩市、夏川結衣など名俳優たちの体を張った演技にも注目です。

映画『赤い雪 Red Snow』のあらすじとネタバレ


(C)「赤い雪」製作委員会

真っ白い空間。雪の中、赤い服を着た少年を追いかける自分。あるアパートの前で少年は姿を消します。ぼやける視界に、赤い色が染みのように広がります。

白川一希(永瀬正敏)は、いつもの曖昧で苦しい記憶から覚めます。記憶を消し作業に集中するかのように、器に漆を塗っていきます。

記憶の中の赤い服の少年は一希の弟です。30年前の雪の日、弟は姿を消しました。あの日、自分が弟を見失ったせいだと思い込み、心に深い傷を抱えています。

当時、弟を見失ったアパートに住んでいた女、江藤早奈江(夏川結衣)が少年誘拐の容疑者として浮上するも、証言が取れず真実は闇へと葬られていました。

その後、アパートから姿を消した早奈江の周りでは、不審な事件が続いていました。3人の男の死、そして火事。火事現場からは少年の白骨死体が発見されていました。

事件は時効をむかえ、残された家族の苦しみだけが残りました。

そんな一希の元に、事件の真相を追う記者、木立省吾(井浦新)がやって来ます。

事件の容疑者・江藤早奈江の娘、早百合(菜葉菜)の居所を突き止めた木立は、早百合こそがすべてを目撃していた人物だと彼女を追っていました。

早百合から真実を聞き出し楽になろうと誘う木立に、戸惑いを見せる一希でしたが、彼女に会うことを決心します。

一希の住む場所からすぐの島に暮らしていた早百合は、旅館で働いていました。

その風貌は決して華やかではなく、陰湿に満ちていました。

島のスーパーで万引きをし、旅館の泊り客の金を盗み、従業員からは陰口を叩かれ、男の噂も絶えない女です。

そして、早百合は年配の男と暮らしていました。宅間隆(佐藤浩市)は、母親の元恋人で、酒を飲んでは早百合を抱き、暴力を振るう最低の男です。

抵抗するも宅間から離れられない早百合は、何かしら負い目を感じているようにも見えます。

「被害者の兄」と「容疑者の娘」2人の30年前の記憶が蘇ります。

以下、『赤い雪 Red Snow』ネタバレ・結末の記載がございます。『赤い雪 Red Snow』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)「赤い雪」製作委員会

一希の記憶。鳴りやまない電話にでた子供の一希は、弟を迎えに行くことに。雪の中、弟を見つけ後を追いかけるも、アパートの前で見失います。

「どこまで見たんだ」と大人たちから質問攻めにあい「川の方へ行くのを見たかも」と答える一希。

冷たい川に入り弟の名を呼び続けた母親は、泣き叫びアパートの扉を叩きます。「あの女が犯人だ」と叫び散らす父親。冷たい視線が、一希に突き刺さります。

なぜか記憶に残る赤い血の色。それは漆の絞りの色にも重なります。鮮明で重さのある赤でした。

早百合の記憶。いつも押し入れに閉じ込められ、母と男の様子を伺っていた早百合。

押し入れの隙間から除く世界しか知りませんでした。親が寝静まってから抜け出し、水道の水を飲むも、母親に見つかり怒鳴られ、また押し入れに投げ込まれます。

大人になっても子供の頃の喉の渇きを覚えています。

見ていたことすべてを語って欲しいと迫る木立と一希を、早百合は無視します。それでも早百合の元に通う2人に、宅間は怒り、石油をまき散らします。

一触即発の事態です。悲しみに耐えられなくなった一希は、早百合を追い詰めます。

雪山に逃げ込む早百合。雪深い道に足を取られながらも懸命に逃げます。

「憶えているんだろ」鬼気迫る形相で追う一希。「何にも憶えていないの?」と反対に問われます。

「何も起きないはずだった」早百合の言葉になぜか胸がざわつく一希は、衝動のまま早百合に追いかぶさり、手にしていたビニール袋を被せ、彼女を殺そうとします。「本当のことを話せ」

命からがら逃げる早百合は「本当のこと。本当のこと?」とつぶやき、狂ったように笑いだします。もう一度、早百合に襲い掛かる一希。動かない早百合。

行き場を無くした一希の心の叫びが、雪山に響き渡ります。

「全部あんたが悪いんだろ」「私たちはパズルのピースのひとつなんだよ」

誰かの声。叫び。炎。そして、記憶。曖昧な記憶に酔うように、赤いコートをきた女の笑い声が聞こえます。

早百合が目を覚ますと、一希がそばにいました。

「僕は来ちゃ行けなかった。君はお母さんとは別人だ」立ち去る一希。

そのころ、雪山に宅間の姿もありました。人を引きずっています。

引きずられているのは、木立でした。殺人を繰り返す男、宅間は手慣れた風です。木立が持っていた運転免許証には違う名前が記載されていました。

以前殺した男の息子だろと、早百合に報告する宅間。「俺はお前ら母娘の尻拭いばかりだな」

島から戻った一希は、30年前弟が消えたアパートの前にやってきます。蘇る記憶は、今までの自分の記憶とは違うものでした。

アパートの中で、早奈江と話をしているのは自分でした。「今度は弟も連れていらっしゃい」そう話しかける女。そして押し入れから覗く幼い少女の目。

同時に思い出される幼い頃の感情。弟ばかり可愛がる母親に対する不満と、弟への嫉妬。

弟が消えたあの日。一希は、アパートの郵便受けの隙間から中を覗いていました。そこには、弟と弟を抱きしめる早奈江の姿が見えました。

弟は確かにあのアパートにいました。

自分が大人に付いた嘘、自分の嫉妬心が起こした罪、偽りの記憶で生きてきた自分の愚かさに押しつぶされます。

そこに、やはり自分の罪に押しつぶされた女、早百合がやって来ます。

2人は、罪を共有するかのように、一艘の舟で海へと出ます。寒い雪の降る海へ。

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映画『赤い雪 Red Snow』の感想と評価


(C)「赤い雪」製作委員会
記憶で苦しみ続ける人間の姿を通して、人の記憶の曖昧さ、そんな記憶に支配され生きている人の儚さ、脆さが痛いほど伝わってくる映画です。

さらに、幻想的な雪景色が、凍える寒さを思い起こさせ、恐怖を増幅させます。白い雪にシミのように浮かぶ赤い色。その赤は、血の色。

漆塗りのシーンで、黒の上に塗られる赤の漆のコントラストも印象的です。

本作で難しい役どころとなった、奈葉奈の気迫の籠った演技に圧倒されます。

堕落的な人生を受け入れ、出口のないトンネルを諦めながらひたすら歩く早百合。彼女の痛々しいようすを見事に演じています。

そして、宅間を演じた佐藤浩市の、背筋も凍る悪男の演技に気持ち悪ささえ覚えます。

名俳優たちの迫力ある演技に、息を付く暇もありません。

ストーリーは全体に暗く、堕落的で悲しみに満ちています。

さらに、美しい映像と音楽で、解き明かされていく真実の残酷さがより鮮明に心に刺さることでしょう。

まとめ


(C)「赤い雪」製作委員会
甲斐さやか監督の、実話を基にしたオリジナル脚本のミステリーサスペンス映画『赤い雪 Red Snow』を紹介しました。

人の記憶とは、白い雪が降り続けるように視界が朧げで、曖昧なものです。

雪の中に微かに見える赤色に、胸騒ぎが止まりません。重なっていく記憶と、蘇る記憶への恐怖があなたを襲います。

自分の記憶は、間違っていないと言えますか?雪の中に閉まって置いた方がいい記憶もあるのではないでしょうか。

真実の記憶を取り戻すとき、あなたは凍える恐怖を味わうことになるかもしれません。




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