誘拐事件を通して人生の幸せを鋭く追及する社会派ミステリー!
作家・塩田武士氏によるミステリー小説『存在のすべてを』。平成3年に起きた「二児同時誘拐事件」の真相を新聞記者が30年越しに追う社会派ミステリーです。

(C)2027「存在のすべてを」製作委員会 (C)塩田武士/朝日新聞出版
主人公の新聞記者がたどり着いた30年前の誘拐事件の真実。それは本当の親子愛とは何かと考えさせられるものでした。
ネグレストの家庭で育った少年が誘拐されて、初めて人の愛に触れ、温かな家庭の生活を送ります。誘拐は犯罪ですが、この少年にとっては人生の転機であり、誘拐されている間は幸せなひとときだったのです。
何が子供にとって幸せなのかと、深く考えさせられるミステリー小説『存在のすべて』が、『護られなかった者たちへ』(2021)『糸』(2020)『ラーゲリより愛を込めて』(2022)の瀬々敬久監督によって実写映画化決定。
2027年2月5日(金)の映画公開に先駆けて、小説『存在のすべてを』をネタバレ有りでご紹介します。
小説『存在のすべてを』の主な登場人物
【門田次郎】
54歳の大日新聞支局長。30年前の二児同時誘拐事件を当時新人記者として取材し、現在再び事件の真相を追う
【内藤亮】
誘拐事件の被害者の一人。現在は如月脩という名前で新進気鋭の写実画家として活躍している
【土屋里穂】
34歳。亮の高校時代の同級生で、画商の娘。父の画廊を手伝っている。
【木島茂・塔子】
亮の祖父母。
【野本貴彦・優美】
貴彦は写実画家で優美はその妻。
小説『存在のすべてを』のあらすじとネタバレ
平成3年(1991年)12月、神奈川県内で二人の児童がほぼ同時に誘拐されました。これは、警察組織を極度の混乱に陥れる事件でした。
まず事件の発端は、小学6年生の男子が連れ去られました。神奈川県警が全勢力を挙げてこの事件の捜査に乗り出す中、ほぼ同時期に、横浜市に住む4歳の男児、内藤亮を誘拐したという脅迫電話が亮の祖父の元にかかってきました。
実はこの2つの誘拐事件は、意図して行われ、警察の捜査能力を分散させ、確実に身代金を奪取するための、犯人による狡猾な計画だったのです。
警察は2つの事件に翻弄されます。新人記者として事件を取材をしていた門田次郎も同様でした。結果として2つの事件の身代金の受け渡しは失敗し、警察は犯人を取り逃がしてしまいます。
一人目の小学生は無事に保護されたものの、もう一人の被害者である内藤亮は、犯人と共に行方をくらましてしまいました。
それから3年がたち、内藤亮の祖母の家に、突然成長した内藤亮が帰って来ました。
7歳になった亮は、行儀作法や学習能力もしっかりとして、普通の育ちの良い男の子になっています。
亮の母親はシングルマザーで荒れた生活をしていて、誘拐された当時の4歳の亮は育児放棄に近い状態だったのに、明らかに手厚い愛を受けて育てられたと思われます。
内藤亮が過ごした3年間は、監禁や虐待といった、誘拐事件から連想される悲惨なものではないようです。ですが、亮はその3年間については固く口を閉ざし続けました。
小説『存在のすべてを』の感想と評価

(C)2027「存在のすべてを」製作委員会 (C)塩田武士/朝日新聞出版
誘拐事件の被害者である少年が、その後どのような運命が待っているのかと、気になって一気読みしてしまう小説でした。
誘拐されて行方不明になった少年・内藤亮が、3年後にきちんと躾や教育をされた少年となって祖父母の元へ帰って来ます。
身内や警察が誘拐されてからどんな暮らしをしていたのかと聞いても、亮は何も語りません。
そのまま、年月がたち、あることがきっかけで再び亮の誘拐事件を調べた新聞記者・門田が、ついにその事件の真相にたどり着きました。
作品は、被害者・内藤亮が祖父母の元へ帰されるまでの空白の3年がとても美しく描かれています。
子供のいない野本夫婦は愛情をこめて亮を育てました。亮の乳歯が抜ければ大切に保管し、絵の才能があるとわかれば好きなように絵をかかせます。
一方の亮もこれまでとは全く違った環境のもとで、今までにない幸福感を味わっていました。七夕の短冊に書かれた亮の願いには、胸があつくなります。
両者にとって幸せな3年間でしたが、亮の将来を思い、野本夫婦は彼を肉親の元へ送り届けました。
本作は、誘拐事件そのものを暴くミステリーではなく、誘拐されて行方不明になった被害者の人生ドラマに焦点をあてた作品でした。
育児放棄をする実の母親よりも、より深い愛情をもって亮に接する野本夫婦。亮が親愛の情を持って恩人と思うのも無理はありません。
読後は、誘拐犯としての罪が野本夫婦にあるならば、育児放棄をし続けた亮の実母の罪はないのかと、問いたくなることでしょう。
映画『存在のすべてを』の見どころ

(C)2027「存在のすべてを」製作委員会 (C)塩田武士/朝日新聞出版
昭和最大の未解決事件をモチーフにした『罪の声』などの作者塩田武士の社会派ミステリー『存在のすべてを』を、『護られなかった者たちへ』(2021)や『ラーゲリより愛を込めて』(2022)の瀬々敬久監督が映画化。
新聞記者・門田次郎は、『ドライブ・マイ・カー』(2021)などで人気実力とも発揮した西島秀俊。
また、小説後半から登場する亮の同級生・土屋里穂役に、『流浪の月』(2022)や『宝島』(2025)の広瀬すずが抜擢されました。
映画では、若き画廊のオーナー・土屋里穂となっており、「二児同時誘拐事件」の被害者だった少年と高校生時代に特別なつながりがあった重要な役どころです。
実力派の2人の俳優によって、30年前の誘拐事件から見えてくる、深い人生ドラマがよりリアルに表現されることでしょう。
被害者、内藤亮は誰が演じるのか。それもまた楽しみです。
映画『存在のすべてを』の作品情報
【日本公開】
2027年(日本映画)
【原作】
塩田武士『存在のすべてを』(朝日新聞出版刊)
【監督】
瀬々敬久
【キャスト】
西島秀俊、広瀬すず
まとめ

(C)2027「存在のすべてを」製作委員会 (C)塩田武士/朝日新聞出版
「二児同時誘拐事件」の真相を新聞記者が30年越しに追う社会派ミステリー『存在のすべてを』を、ネタバレ有りでご紹介しました。
未解決の誘拐事件から30年。当時の被害者の一人は、誘拐されてから3年後に親族の元へ帰ってきました。ですが、犯人は捕まっていません。被害者もその3年間のことは何も言いません。
なぜ、被害者は誘拐されている間のことを話さないのでしょう。そこには被害者と事件関係者との深い絆があったのです。
本作は映画化され、2027年2月5日(金)に、全国ロードショー。犯罪事件の裏にある‟実の親子ではない深い愛”のリアルな表現に期待が高まります。




































