Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

【ネタバレ】ミステリと言う勿れ|映画あらすじ結末感想と評価解説。犯人の正体は?漫画“広島編”を描くドラマ続編でも整/菅田将暉の推理力は健在!

  • Writer :
  • 糸魚川悟

面倒くさすぎる性格の大学生、広島の地に立つ。

『月刊フラワーズ』で連載され、2021年には小学館漫画賞(一般向け部門)を受賞した田村由美による漫画シリーズ『ミステリと言う勿れ』。

2022年には菅田将暉主演で連続ドラマ化され、全話において視聴率10%越えを達成する人気ドラマとなりました。

そして2023年、先が気になる「続編」を予感させる終わり方をしたドラマ『ミステリと言う勿れ』が、ついに劇場版映画として帰ってきました。

今回は映画『ミステリと言う勿れ』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『ミステリと言う勿れ』の作品情報


(C)田村由美/小学館(C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

【公開】
2023年(日本映画)

【原作】
田村由美

【監督】
松山博昭

【脚本】
相沢友子

【キャスト】
菅田将暉、松下洸平、町田啓太、原菜乃華、萩原利久、鈴木保奈美、滝藤賢一、でんでん、野間口徹、松坂慶子、松嶋菜々子、伊藤沙莉、尾上松也、筒井道隆、永山瑛太、角野卓造、段田安則、柴咲コウ

【作品概要】
田村由美による同名漫画を『花束みたいな恋をした』(2021)の菅田将暉主演で映像化した連続ドラマの劇場版作品。

『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』(2010)を手掛けた松山博昭が監督を務めた本作には、『すずめの戸締まり』(2022)で声優としても活躍した原菜乃華や、「チェリまほ」こと「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」シリーズのメインキャストを務めた町田啓太などの注目キャストが出演しました。

映画『ミステリと言う勿れ』のあらすじとネタバレ


(C)田村由美/小学館(C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

【8年前】

猛スピードで道を走る車が、カーブを曲がり切れずにガードを突き破り、そのまま崖下へと転落。

車は大きな音とともに爆発・炎上し、乗っていた4人の男女は死亡しました。

【現代】

海岸で狩集汐路と会った犬堂我路は、「闇」の存在する狩集家に潜入し、汐路を守りながらその「闇」を覗く予定でしたが、自身が指名手配犯となったことから困難となります。

そこで我路は自身の代役として、知り合った大学生の青年・久能整を汐路に紹介しました。

広島に観光に訪れていた整は自身を尾行する汐路から、命と金のかかったボディガードの依頼を頼まれます。話が見えず困惑する整は、我路の紹介だという汐路の言葉に興味を惹かれているうちに、狩集家の遺言の場に連れてこられてしまいます。

狩集家の顧問税理士の真壁軍司と狩集家の顧問弁護士の車坂義家によると、汐路の祖父・狩集幸長の遺言には相続を受ける息子と娘の世代が全員死亡したことから、次なる当主は孫の世代から1人を選ぶと書かれているとのことでした。

「4人の候補者それぞれに狩集家の蔵の鍵が渡され、『それぞれの蔵において あるべきものをあるべき所へ 過不足なくせよ』というなぞかけの言葉を解き明かした者に相続が行われる」という条件を聞かされた整。

汐路は「狩集家では遺産相続時に必ず揉め事が起こり人が死ぬ」と言う祖父から聞かされたジンクスを語り、自身の父である弥が3人の兄弟と共に自動車事故で死亡したのも、遺産相続の揉め事が原因であると信じていました。

整は余計な問題が起きないように遺産相続候補者である理紀之助、新音、ゆらに汐路との話し合いを求めますが、競争相手であることを理由に話し合いには誰一人応じませんでした。

その日の夜、狩集の広大な家に泊まることになった整は玄関に魔除けの効果があるとされるアメジストドームが置かれ、空間の至る所にお札や祠のある狩集家に違和感を覚えます。

翌日、汐路に割当てられた蔵を捜索する整と汐路は蔵の中から9体の「日本人形」を発見。日本人形の服に描かれた花の柄から即座に整は人形が1年の各月を指していることに気づきますが、12ヶ月を揃えるためには「牡丹」「菊」「桜」が足りないことが分かります。

自身の蔵を見せることを条件として新音の蔵を覗いた2人は、新音の部屋には本物と偽造された物が対となった「有田焼」が大量にあることを知りました。

その日、蔵へと向かう途中に汐路の頭上から何者かから植木鉢が落とされ、また夜には何者かが階段に油を撒いたことで汐路と新音は階段から落下してしまいます。

不穏な空気が立ち込める中、ゆらが何者かによって「座敷牢」のある彼女に割当てられた蔵に閉じ込められたことが分かり、彼女の夫の一平と理紀之助が彼女を救出。

アリバイがなかったことから理紀之助が疑われることとなり、無実を証明するために理紀之助は自身の蔵の情報を開示。理紀之助の蔵には「血のついた日本刀」が多く置かれていましたが他に情報はなく、4人の候補者はそれぞれがそれぞれを疑い疑心暗鬼に陥り始めます。

夜、手をかければ崩れそうな柵の近くに短刀を埋める汐路に整は「それ以上はやってはいけない」と声をかけます。

ボディガード役を全うするために汐路を観察していた整は、落下してきた植木鉢も階段に塗られた油も、ゆらを閉じ込めた犯人も汐路であることを見抜いていました。

汐路は父の弥が運転する車の事故によって理紀之助、新音、ゆらの父親や母親が死亡したことを長い年月に渡って責められており、事故の原因が警察の発表した居眠り運転による事故ではなく遺産相続上のトラブルでの殺人と信じることで己を保っていました。

遺産相続の競争中に、殺人事件やそれに近い事故が起こることでより信憑性が上がると考えた汐路が一連の騒動を起こしており、彼女の抱えた強いトラウマの存在を知った理紀之助と新音とゆらは彼女の行動を許し、傷つけあうことなくなぞ解きをすることを誓います。

事件がひと段落したと判断した整は翌日に東京に帰ることを考えますが、コインランドリーからの帰路に何者かに車で轢かれそうになった上に、狩集家の代々の家族写真を見たことで考えを改めました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『ミステリと言う勿れ』のネタバレ・結末の記載がございます。映画『ミステリと言う勿れ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)田村由美/小学館(C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

4人の候補者と、汐路の初恋の相手であり義家の孫である朝晴を呼び出した整は、遺産相続時のトラブルで亡くなった過去の狩集家の人間が全員「天然パーマ」かつ「色白」の人間であったことを伝えます。

最初は冗談かと思う5人でしたが、狩集家には稀にその条件を満たした人間が生まれ、必ず弥のように老衰や病気ではない理由で死亡していると分かります。

轢き殺されかけた恨みから弥の死亡事故について調査を始めた整は、生前に弥が同じ特徴を持つ兄弟と「狩集家」と「死」の謎を調べ、それらを「USBメモリ」に保管していたことを突き止めますが、肝心のUSBメモリの発見には至りませんでした。

調査を続ける中、狩集家の真相を知り、その物語を舞台の脚本として用いた男性が自殺したことを知った整は、その舞台の物語を汐路たちに見せます。

戦後の動乱の最中、1人の鬼と2人の従者が本当の狩集家の人間を皆殺しにした上で、名前を乗っ取り大成した一族が、今の狩集家であった……。

物語の内容に汐路たちは動揺しますが、死体を埋めた場所とされる蔵の地下には夥しいほどの人骨が埋まっており、その物語が事実であることを知ってしまいます。

さらに物語では、少女を1人逃がしてしまった「鬼」は自身が偽物の狩集家であると露見しないように、自身と同じ特徴を持った子孫を殺害するように2人の従者と誓ったと語られていました。

真実を知ってしまった弥を、「鬼」のルールを現代でも忠実に実行する一族の誰かが殺害していたのだと知った整たち。

喫茶店に集合した整と4人の候補者と朝晴は、それぞれが持つ情報を開示する中で、「鬼」が恐れる「本当の狩集家の末裔」を発見した弥は、その情報をUSBメモリに保管していたことに行き着きます。

それ以上の情報が出ずに朝晴が帰宅した後、新音が飲み物をこぼす現場を見た汐路は、かつて自分が弥と最後に会った日に苛立ちからジュースを弥にこぼしたことを思い出します。その話を聞いた整はUSBメモリの場所に勘付き、「関係者全員にそのことを共有するように」と汐路に言いました。

一方、USBメモリの場所が厳島神社の鳥居付近にあることを知った犯人は、USBメモリをいちはやく発見しデータを読み出し、「本当の狩集家の末裔」の居処を知ります。

「本当の狩集家の末裔」の家を訪れた犯人はそこに火を放とうとしますが、駆け付けた刑事たちによって取り押さえられました。そしてその場に現れた整たちは、犯人であった朝晴に、偽造した嘘のUSBメモリを掴ませていたことを伝えます。

代々狩集家の顧問税理士を務めてきた「真壁家」と顧問弁護士の「車坂家」は、「従者」として「鬼」のルールを厳格に守り続け、謎に近づく者と「天然パーマ」かつ「色白」である狩集家の人間を殺害してきました。

言葉の節々の違和感から朝晴を警戒していた整は、汐路が弥との最後の日にこぼしたジュースこそが、弥を死に追いやった睡眠薬入りのジュースであることに気づき、汐路とともに朝晴を罠にかけたのでした。

罪をあっさりと認めた朝晴は、遺産相続の場で「なぞ解き」を使い4人の候補者に「本当の狩集家の末裔」を見つけ出させた上で始末しようと考えていたことを告白。そして口止めに現れた真壁軍司と車坂義家の制止を無視して2人が謎を知った脚本家を殺害したことを明かしました。

警察に連行されていく中、朝晴は「幼い汐路が弥の行動を全て教えてくれたおかげで弥を殺害できた」と言い残し、汐路は強いショックを受けてしまいます。

悲嘆に暮れる汐路を慰めようとする整は、4人の候補者にアメジストドームに隠されていた弥のUSBメモリを渡し、「本当の狩集家の末裔」のもとを訪問。

アメジストドームをはじめ石を用いたアクセサリーを作るその女性は、生前に弥の訪問を受け、正統な後継者として日本人形を貰ったことや、「『鬼』のルールの存在を自分たちが終わらせる」という約束を受けたことを語ります。

そして女性は汐路たち4人に、それぞれの親から注文を受けた、性格に合った石を使ったパワーブレスレットを渡しました。

事件が全て終わり、整を駅まで見送る汐路、理紀之助、新音、ゆら。酷く疲れた整は、帰りの新幹線で東京まで寝ることに決めます。

弥が我路と知り合いだったことから、大隣警察署にも事件の報せが届き、またも事件の場にいた整の存在に刑事一同は驚愕します。

一方、クルーザーで逃亡生活を続ける我路は、汐路から届いた事件解決と整の面倒くさい性格に言及したメールを読み、満足そうに微笑みました。

映画『ミステリと言う勿れ』の感想と評価


(C)田村由美/小学館(C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

人気エピソードを映像化した劇場版作品

神経質で面倒くさい性格の大学生・久能整が、巻き込まれた事件を解決していくミステリ漫画『ミステリと言う勿れ』。

ドラマ版から続く劇場版映画として公開された本作では、原作でも特に人気の高いエピソード「狩集家遺産相続問題」を主軸として物語が進行していきます。

整の豊富過ぎる知識量から来る、雑学と推理のマシンガントークは本作でも健在。論語における「君子の九思」から映画『サスペリアPART2』(1978)まで、物語に深く絡んでくる雑学は多岐に及んでいます。

ひとつひとつの知識に詳しければ詳しいほどに、本作での会話の意味を深く理解できるようになるため、知識を足した上での再鑑賞を何度も行いたくなるような楽しみがありました。

独自の視点で「家族」に着目した遺産騒動ミステリ


(C)田村由美/小学館(C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

横溝正史による小説『犬神家の一族』以降、旧来的な大家族による遺産相続に絡む殺人や推理劇は和製ミステリの定番ジャンルとなりました。

そんな何番煎じにもなり得る「遺産騒動ミステリ」ですが、現代の価値観を反映し家族の持つ歪な関係にも目を向けてきた『ミステリと言う勿れ』は、いずれの作品にもない新たな「遺産騒動ミステリ」を描いていました。

どこの誰が作ったかもはっきりとしない悪しき習慣を、正しいものとして盲信することの愚かさに焦点を当て、新しい時代に沿うことの意義を問う本作は、古い価値観を捨てきれない人にこそ直視して欲しい作品です。

まとめ


(C)田村由美/小学館(C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

原作では「広島編」とも呼ばれるエピソードの映像化作品である本作は、もちろん広島の観光名所も目白押し

大画面で広島観光気分を味わいながら、巻き起こる遺産相続を題材とした事件の謎を整とともに推理してみてはいかがでしょうか。

また鑑賞までの時間に余裕のある方はぜひ、『サスペリアPART2』を予習してから本作を鑑賞してみてください。

きっと整の感じた「違和感」の意味に気づくことができると思います。


関連記事

サスペンス映画

映画『水曜日が消えた』あらすじと感想レビュー。中村倫也演じる青年の7分の1の人生

映画『水曜日が消えた』は2020年6月19日(金)公開。 映画『水曜日が消えた』は、MVやCM、短編作などで注目される吉野耕平の初となる長編監督作品。 4年振りの映画主演となる中村倫也が、幼い頃の交通 …

サスペンス映画

『またヴィンセントは襲われる』感想と評価解説。カンヌ映画祭が奔出する不条理サバイバル・スリラーは“目が合えば”襲撃される!

映画『またヴィンセントは襲われる』は2024年5月10日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国公開 映画『またヴィンセントは襲われる』が2024年5月10日(金)よりヒューマ …

サスペンス映画

映画『浜辺の女』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

本日ご紹介する映画は、ジャン・ルノワール監督の『浜辺の女』です。 今年2016年6月から、東京のイメージフォーラムを皮切りに順次全国公開された、リマスター版『ピクニック』も、ルノワール監督作品でしたね …

サスペンス映画

映画『セブン』ネタバレ考察と評価感想。衝撃的なラスト結末は名作か胸糞か⁈凄惨な殺人に抗う刑事たちの人物描写

デヴィッド・フィンチャー監督×ブラッド・ピットのサスペンス映画 映画『セブン』は、『エイリアン3』(1992)や『ファイト・クラブ』(1999)を手掛け、『ソーシャル・ネットワーク』(2010)ではゴ …

サスペンス映画

映画『プラットフォーム』あらすじ感想と内容解説。スペイン発の結末まで本格的なミステリーは“極限の閉鎖空間”で起きる!

映画『プラットフォーム』は2021年1月29日(金)より新宿バルト9ほか全国順次ロードショー! 2019年のトロント国際映画祭で観客賞を受賞、2019年のシッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀作品賞 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学