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Entry 2016/12/08
Update

映画『浜辺の女』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

本日ご紹介する映画は、ジャン・ルノワール監督の『浜辺の女』です。

今年2016年6月から、東京のイメージフォーラムを皮切りに順次全国公開された、リマスター版『ピクニック』も、ルノワール監督作品でしたね。

『浜辺の女』は、残念ながら1946年当時は日本未公開作。時代を先取りし過ぎた作品なので、近年になって再評価が高くなっているフィルム・ノワールの隠れた秀作です。

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映画『浜辺の女』の作品情報

【公開】
1947年(アメリカ)

【脚本・監督】
ジャン・ルノワール

【キャスト】
ジョーン・ベネット、ロバート・ライアン、ウォルター・サンド、チャールズ・ビックフォード

【作品概要】
ハリウッド映画としては、いち早くPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状のある人物を主人公にした作品。

近年のアメリカ映画では、ベトナム戦争やアフガン紛争などのその事実を描いた作品は珍しくはないが、第二次世界大戦後間もない当時としては先見的な狙いと共に誠意ある作品と言えます。

また、ルノワール監督の父親が印象派画家だということもあってか、作品全体に「水」と「火」という芸術的エッセンスの演出に溢れています。

映画『浜辺の女』のあらすじとネタバレ

浜辺の女

主人公の沿岸警備隊のバーネットは、眠れぬ日を過ごしていた…。

なぜなら、乗船していた船舶が機雷と接触して爆破して沈没。一命を取りとめたものの、事故を思い起した悪夢に悩まされていたのです。

それを癒すのが、造船技師の娘イヴ・ゲディス。彼女とは婚約関係で結婚できる日を待ち望んでいました。

ある日、バーネットは馬に乗って浜辺を駆け抜けて沿岸警備に出ます。

浜辺の天気は変わりやすく、靄の立ち込める中、朽ちた難破船を壊して薪がわりに集めていた謎めいた女ペギー・バトラーと出会います。

彼女は人里離れた家に住み、バーネットを招きますが、ちょうどその時に帰ってきたのが、夫で盲目の画家トッド・バトラーでした。

トッドは、昔に画家として稼いだ金で慎ましやかな生活を送り、妻ペギーに不自由な身の回りの世話をさせていました。

やがて、バーネットは、美しいペギーに魅了されてしまいます。

さらには勝手な思い込みで、ペギーは不幸な妻で、夫に監禁されている身ではないかと考えるようになります。

ペギーへの思いが募ったバーネットは、トッドが視覚障害を装うことにより、妻との絆を強要して拘束していることを疑いある行動に出ます。

ある日、バーネットは、トッドを海岸の散歩に誘います。トッドの盲目が真実かどうか確かめるためです。危険な断崖に連れ出して、崖の近くでトッドを置き去りにします。

しかし、無事に家にトッドは戻ってきました。盲目は真実であり、そのことが証明されたペギーは、トッドと共に生きることをバーネットに言い出します…。

以下、『浜辺の女』ネタバレ・結末の記載がございます。『浜辺の女』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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しかし、燃える恋に身を焦がすバーネットは、今度は、強い風に湿気る海へと船釣りに誘います。

難破事故で精神的に辛い悪夢を見るバーネットと、盲目で不自由なトッドは、互いに身の危険を感じつつも船上で対峙します。

やがて、争いながら海に投げ出される2人でしたが、救難隊に保護されます。

その後、盲目のトッドは、自宅に放火。燃え上がる火の中で、視力のあった頃に描いた大切な絵画や、妻の肖像画を焼き尽くします。

その現場に慌てて駆けつけて来たバーネットとペギーを前に、トッドは、自分を縛ってきた過去の画家というプライドを捨て、妻と服従関係を解消して別れることを妻に告げます。

昔のように逞しい夫に戻ったトッドに、ペギーは忘れていた気持ちを再び強く思い出します。

トッドとペギーは、新たな夢を抱きニューヨークで出直そう去り、一方のバーネットは何もかも失しない互いの道を歩いていくのです。

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映画『浜辺の女』の感想と評価

浜辺の女

ルノワール作品の中では、異色作と呼ばれたり、否定的な感想も多い作品ですが、本当にそうなのでしょうか、

葛藤を抱えた人物たちの生き様を描きつつ、人物が生きる状況にある自然との対比が多く見られ、他のルノワール作品が持つ情感とも劣らない演出が見られる作品です。

冒頭の作品タイトルを、打ち寄せる波が洗い流すことで映画が始まり、やがて、主人公が悪夢で眠れない様子は、爆発で難破する戦艦と海底に沈むフラッシュバックで描きます。

他にも、浜辺の朽ちた難破船にかかる靄の中という幻想的なシーンで男女の出会わせたり、主人公が日常の通い慣れた道を迷せる暴風雨、敵対する男同士の船上の死闘など、登場人物たちの激しい心境を「水」と「火」のイメージで印象付けます。

このことで登場人物を、不吉な気配と共に非日常という狂気に満ちた方向へ展開させる見事な演出といえるでしょう。

ヌーヴェルヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォー監督は、「台詞以上に登場人物の行動こそが物言う純粋なフィルム」と高評価しています。

まとめ

浜辺の女

作品の終盤で、盲目の元画家トッドが自宅に放火。燃え上がる火の中で、視力のあった過去に描いた大切な絵画や妻の肖像画をを放り込みます。

自分を縛ってきた元画家という過去の自分を捨て、妻ペギーとの服従関係を消去しようとします。

この一連の行動と燃え盛る「火」は、トッドとペギーの2人の感情の激しさと、過去への執着心、そして未来へ向かう情熱を表現したのではないでしょうか。

それは、大戦中に祖国フランスを追われ、巨匠と呼ばれたルノワール監督が、言葉の通じないハリウッドで映画製作をしてきたことに重なります。

思いのままにならないもどかしさに苦労をしたあげく、周囲からは不作続きで病的なスランプだと言われたルノワール監督。

ラストシーンの燃え盛る火を背景に、トッドが画家から文筆家になると、タイプライターのみを手にして立つ姿は、映画作家としての強く生きるルノワール自身を、トッドの姿に感じ取れる興味深い作品です。

まさに、不死鳥のような復活を遂げたトッドは、奇しくも、この作品を最後にハリウッド映画を去り、後のルノワール監督が、再び『河』などで世界的名声を取り戻したことを予見させてくれます。

ぜひ、あなたの目でこの作品の賛否を確かめ、ルノワール監督の演出の一端を堪能してはいかがでしょうか。

隠れた秀作として一押しの1本です!

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