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Entry 2022/04/21
Update

【ウディ・ノーマン インタビュー】映画『カモン カモン』で乗り越えた“壁”と役者として忘れてはいけない“記憶”

  • Writer :
  • 河合のび

映画『カモン カモン』は2022年4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー!

ムーンライト』『ミッドサマー』など数々の話題作を生み出す気鋭の映画会社「A24」が、『JOKER/ジョーカー』で一躍その演技力が再評価されたホアキン・フェニックスを主演に迎え製作した映画『カモン カモン』

NYでひとり生活するラジオジャーナリストのジョニーが、ある出来事を機に世話をすることになった9歳の甥ジェシーの存在に戸惑い、衝突をしながらも真正面から向き合うことによって、新たな絆を見出していく様を描いた感動のヒューマンドラマです。


(C)Maggie Shannon

この度の劇場公開を記念して、主人公ジョニーと共同生活を送ることになった彼の甥・ジェシー役を演じられたウディ・ノーマンさんにインタビュー

ご自身のそれまでの演技に対する意識に変化が訪れた場面、ジェシーという少年を演じる中での「壁」やそれを乗り越えられたきっかけ、役者として活動する中で忘れてはいけないと考えている「記憶」など、貴重なお話を伺いました。

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演技を通じてジェシーと接する中で


(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

──マイク・ミルズ監督からは、ジェシーがどのような少年だと当初聞かされたのでしょうか。

ウディ・ノーマン(以下、ウディ):年齢と比べるととても賢いけれど、内向的で物静か。ただ相手とのコミュニケーションに慣れてくると、自己を主張したり強く自信を持ち始めます。一見すると大人しいんですが、親しくなると自分をうまくさらけ出せる少年だとミルズ監督は教えてくれました。

──そんなジェシーと演技を通じて触れ合う中で、ウディさんご自身はジェシーをどう捉えられていったのでしょうか。

ウディ:『カモン カモン』の撮影があった頃、僕は周りの友だちがあまり聞いていないような音楽を好んで聴いていました。そういう意味では「周りと少し違う」という感覚を抱くことがあったので、変わったところのあるジェシーには共感できる部分がありましたし、そもそも当時の僕は内向的な性格だったんです。

その後だんだんと僕の性格は外向的になっていき、音楽もより幅広いジャンルを聴き始めたんですが、当時は「僕とジェシーの間には、似ている部分があるな」と強く感じていました。だから実際にジェシーを演じた際にも、そうした彼との共通点をよく意識していました。

「叫ぶ」もまた自然な行動だった


(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

──本作への出演において、特にウディさんの記憶に深く刻まれた場面はありますか。

ウディ:僕自身が「役者として演じる」ということに対して、考え方の変化が生まれた場面があります。それは、薬局で歯ブラシを買おうとする場面です。

僕はそれまで、映画などの作品で演じる際に「相手に対して叫ぶ」というお芝居をあまり快く思っていなかったんです。そのせいであの場面のお芝居でもなかなかうまく声をあげられなかったんですが、それを乗り越えられたことで自分に自信を持つことができました。

叫ぶと、声がマイクを通じて不自然に割れてしまいますよね。本作に出演するまではそれをずっと気にしていたんですが、「実生活においても叫ぶと声が“割れる”のは普通の現象で、自然なことなんだ」と気づけたため、叫ぶ演技に対しても躊躇がなくなったんです。

「叫ぶ」「怒鳴る」という行動も演技の一つであり、相手に感情を伝えるにあたって大切な行動の一つなんだと学べた場面になりました。

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ホアキン演じる伯父ジョニーの姿から甥ジェシーを知る


(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

──「叫ぶ」という演技への意識の変化の他に、ウディさんが『カモン カモン』へのご出演を通じて得られた学びはありますか。

ウディ:「役に入り込む」ということ自体ですね。

当時の僕とジェシーの間には多くの共通点がありましたが、同じように異なる点も多くありました。自分自身を持って演じると同時に、全く知らない人物にもなり切らなくてはならない。そこが本作での大きな壁でもありました。


(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

──その壁はどのように乗り越えられたのでしょうか。

ウディ:やっぱり、時間ですね。時間をかけてジェシーという人物をより深く知っていくことによって、壁を乗り越えられました。そしてジェシー自身だけでなく、そばにいる伯父のジョニーとの関係性、そしてジョニーを演じるホアキンさんのお芝居を見つめる中で「どうジェシーを演じたらいいのか」の答えが見えてきました。

特にNYに行った場面の撮影で、すべての「光」を掴めたような気がしました。

役者という「普通の人間」であることを忘れない


(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

──役者というお仕事は「人の記憶に残る仕事」であり、同時に「人の記憶になる仕事」でもあるといえます。『カモン カモン』へのご出演という記憶を経たウディさんは、今後どのような役者になりたいとお考えでしょうか。

ウディ:役者という仕事に対しては、今の自分が持っている言葉だけではとても言い表せないほどの情熱を持っています。また映画業界という場所も好きなので、これからも仕事を続けていきたいと思っています。

ただ、自分の実力や人気で威張るような役者、みんなの上に立っては周りを見下して「僕が一番偉いんだ」と思うような役者には全く憧れていません。

役者はただ「演技が好きな人間」というだけで、決して特別な人間じゃないんです。だから、僕自身も「普通の人間」として演技を続けていきたい。

今の僕は「イギリス出身の普通の男の子」で、たまたま演技が好きで、たまたま幸運に恵まれて『カモン カモン』という映画に出演することができた。そのことをこれからも忘れずに、役者として活動していきたいと思っています。

インタビュー/河合のび

ウディ・ノーマン プロフィール

イギリス出身。2015年、TVドラマ「法医学捜査班 silent witness シーズン18」にて俳優デビュー。以降、イギリスを拠点に俳優活動を行う。

『エジソンズ・ゲーム』(2017/アルフォンソ・ゴメス=レホン監督)では主演のベネディクト・カンバーバッチの息子役を演じた。そのほかの主な出演作にTVドラマ「ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語」(2017/Stars)、「トロイ伝説:ある都市の陥落」(2018/BBC・Netflix)、「レ・ミゼラブル」(2018/BBC)、「宇宙戦争」(2019/BBC)、「風の勇士 ポルダーク シリーズ5」(2019/BBC)など。

また公開待機作に、アンドレ・ウーヴレダル監督の『Last Voyage of the Demeter(原題)』、サミュエル・ボーディン監督『Cobweb(原題)』がある。

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映画『カモン カモン』の作品情報

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
C’mon C’mon

【監督・脚本】
マイク・ミルズ

【キャスト】
ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト

【作品概要】
『人生はビギナーズ』『20センチュリー・ウーマン』など身近にいる大切な人をテーマに描き続けるマイク・ミルズ監督が、父親となった自身の体験に着想を得て描き出すヒューマンドラマ。

ミルズを反映させたジョニーを演じるのはホアキン・フェニックス。子供に振り回されるキャラクターを軽やかに演じて、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『JOKER/ジョーカー』の狂気のイメージを180度覆しました。

撮影監督をヨルゴス・ランティモス監督作『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞撮影賞にノミネートされたロビー・ライアン。モノクロの映像で現実世界と寓話を見事に調和させています。またサウンドトラックには、ミルズ監督が短編映画を手掛けたこともある人気ロックバンド「ザ・ナショナル」のアーロン・デスナーとブライス・デスナーが参加しました。

映画『カモン カモン』のあらすじ


(C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニー(ホアキン・フェニックス)は、妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から頼まれ、9歳の甥・ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を数日間みることに。

LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。

好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。

仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。

編集長:河合のびプロフィール

1995年生まれ、静岡県出身の詩人。

2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、2020年6月に映画情報Webサイト「Cinemarche」編集長へ就任。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける。


photo by 田中舘裕介





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