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Entry 2019/07/09
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【ラース・クレヴバーグ監督インタビュー】映画『ポラロイド』に至るまでの短編作品の演出法から影響を与えたJホラーまで

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  • Cinemarche編集部

映画『ポラロイド』は、2019年7月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開!

一台のポラロイドカメラが巻き起こす悪夢のような心霊現象を描いたホラー映画『ポラロイド』


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

監督を務めたのは、2019年のリブート版『チャイルド・プレイ』でも演出をとったノルウェー出身の新鋭ラース・クレブバーグ監督。彼自身の2015年制作の短編ホラー映画をもとに、自ら長編初監督作品に仕立て直したハリウッド・デビューとなる作品です。

映画『ポラロイド』の日本公開にあたり、ラース・クレブバーグ監督にインタビュー取材を行いました。

ラース監督は何故、ポラロイドカメラをホラー作品にアイテムに用いたのか?

また、これまでの短編作品にまつわる独自の演出方法や、自ら長編ハリウッド・リメイクにあたりブラッシュアップさせたポイント。そして映画制作に影響を与えた監督たちのエピソードまで大いに語っていただきました。

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「ポラロイドカメラ」と「写真」


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──ホラー映画の制作にあたり、ポラロイドカメラをアイテムに使用した理由は?

ラース・クレブバーグ監督(以下、ラース):現代の若者は、テクノロジーの発達によってもたらされたスマートフォンやSNSの中毒になっています。

この映画ではあえてポラロイドカメラという、古いアイテムを使用することによって、その現象に対して問題提起をしたかったのです。例えば、中田秀夫監督の映画『リング』でVHSのビデオテープを使用していたようにね。

今回はヴィンテージカメラの名機という、フォルムも美しいポラロイドカメラSX-70を用いて、それを手にした子どもたちが、自分自身を最高に美しい姿として写したい、撮りたい、ということを、モチーフにすると面白いんじゃないかなとひらめいたんです。


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──よく「全ての写真は遺影である」と例えられ、時に写真は“死の匂いをまとうようなイメージ”もありますが、ラース監督は「写真」というメディアに何を強く感じますか。

ラース:たしかに、写真には死のイメージを感じるものがあるね。でも私自身は、写真の面白いところに、流れていく時間のなかでのある瞬間や、本質を留めるようなものだと考えています。特にポラロイドカメラをはじめとするアナログカメラにはそのように感じています。

なかでも、ポラロイドと言うのは、修正が効きません。それは、Photoshopを使って修正して…というように、自分たちがねらった通りの形では残せないし、もちろんネット上にアップもできません。

今は、1日の何百枚も写真を撮ることができるけれども、それはアナログで撮ったときとは同じ意味を持っていないと感じます。

写真というのは、人生の一瞬を切り取り、そしてそれがいつまでも残っていくようなもの。1番残るのは、動画ではなくて、写真なのではないか。遺影というのはまさにそうで、人間の記憶において最も価値のある形、それが写真なんじゃないかと思いますね。

原点としての“2つのショートフィルム”

ラース・クレブバーグ監督の短編作品『The Wall』

──ラース監督の短編作品『The Wall』は、壁を挟んで見えない者と、少年がペットボトルで交信を行いますが、監督は見えないもの(未知なるもの)と出会う意味をどのように考えていますか?

ラース:まず、未知なるものに対して非常に興味をそそられます。それが人間の本質でしょうね。

人は自分の想像を超えたものに惹かれるし、映画において、UFOや、幽霊、ミステリーなど、誰かが行方不明になったり、喪失したり、異次元の世界にに連れていかれてしまったり…そう言った主題は、長い間、映画の1テーマになってきました。

作り手としては、キャラクターたちの動きが、こちらの意図しない形で観客に伝わり、予想以上のインパクトを感じ取ってくれる面白さもあります。

ラース・クレブバーグ監督の短編作品『ポラロイド』

──また、もう1本のラース監督の短編映画『ポラロイド』では、見えない存在を助長させるために「音響効果」にかなり工夫が見られますね。

ラース:短編を制作するなかでも、音響効果にはこだわってきました。私自身、音響はとても力を入れている部分で、特に短編の『ポラロイド』のなかでは、映像や言語で表現できにくいものを、音響デザインを通して表現していきました。

例えば、霊的なもの、超自然の雰囲気だったり…。「存在」を音楽ではなく音響で表現するために、かなりの時間をかけて設計してきました。

また音によって、作り手は観客を作り手が意図する方向に導くことができます。アルフレッド・ヒッチコック監督が述べていたマクガフィンのように、ある種「操る」方法ともいえます。

メイキング画像:演技指導をおこなうラース・クレブバーグ監督


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──ヒッチコック監督の名前が出ましたが、サスペンス手法の影響はいかがでしょう。

ラース:ヒッチクック監督の大ファンですし、『サイコ』をはじめとするヒッチコックの映画からはすごく良い影響受けています。

ヒッチコックは、視覚的言語だけを用いて、観客が目を見張るような瞬間(場面)を作り上げています。常に新しい技を用いて、未知の映像を作り出してきた素晴らしいストーリーテラーでもあるし、それらの映像から観客の恐怖心を作り出す、まさに巨匠だと思うよ。

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憧れの存在・スピルバーグ監督


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──2本の短編作品は、北欧出身のラース監督らしい映像であったものの、どこかスピルバーグ映画の要素を感じますね。

ラース:私が彼を尊敬する一番の理由は、カメラを通して物語を綴れるというところです。それを自分の映画作りにも反映できないかと常に考えているし、まさにカメラを通して物語を綴っていくことや視覚的要素を重視しています。

ストーリーテラーというのは、物語をレンズを通して、映像という虚構や優れた画面を作り出し、かつそれだけに留まらず物語を進行させていくことを言います。

私の映像作りには、画家の影響も受けています。例えば、カラヴァッジオや、ムンクらの画家が作り出す「光」の表現が、僕のインスピレーションの源になっています。

スピルバーグ監督は、家族を喪失した10代の主人公や未知なるものと出会うという映画作品を多く制作していて、自分が意識している以上に、精神的に彼の影響を受けているんじゃないかなと思っています。

ハリウッド版『ポラロイド』の意外な秘密?


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──今回、短編作品の『ポラロイド』を自ら長編にしたことで大きく異なった内容や、エピソードありますか。

ラース:短編だからこそできた、カメラの長回しだったり、少しずつ緊張感を高めていく手法というのが、長編の場合は行うことができません。

ハリウッド版ではキャラクターが増えたことや、展開を早めに作っていく関係でそれらが少し失われたかなと思っています。ただ、88分の作品にすることや、脚本作りなどかなり成功したと自負しています。


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──短編長編いずれの『ポラロイド』でも、雪が降るショットが北欧らしい印象を持ちました。ハリウッドへ行かれても、出自のノルウェーの風土や質感などを大切にされ、工夫していることなどありますか?

ラース:ノルウェーのみならず、日本的なホラーの要素を大切にしたいという気持ちがありました。

ノルウェー的な映画でありながら、日本文化や語り、幽霊の存在を画面に織り込み、またアメリカの雰囲気も付加したい。長編では、寒い雪が降る環境に、日本の色彩、雰囲気とそこにアメリカのハイスクールを設定に加えることで、北欧、日本、アメリカのコンビネーションが保たれました。

日本の清水崇監督『呪怨』や、もちろん中田秀夫監督『リング』、そして『仄暗い水の底から』の影響を受けているし、これからもJホラーの影響を受け続けていくと思うよ。

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日本の観客へのメッセージ

メイキング画像:撮影中にポラロイドカメラを構えるラース監督


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──日本ではラース監督の『ポラロイド』と『チャイルド・プレイ』は同時公開ですが、この2作品の共通点と相似、あるいは全く違っている要素は何でしょう?

ラース:共通点はホラー映画であるということと、最高の主人公が出演しているってことかな(笑)。

どちらの映画の主人公も周囲に馴染めない、グループには入れずに孤立していて、だからこそ観客は感情移入する、応援したくなる。これは私自身も、すごく共感できるキャラクターでもあるのです。

一方、違いといえば、『チャイルド・プレイ』は、誰もが知っている80年代を代表するホラー映画のアイコン的なもので、敵役として出てくる。一方で『ポラロイド』は、日本のホラー映画が元になっている。そういう質の違いがあります。


(C)2019 DPC SUB 1A1, LLC

──日本のラース監督ファンにメッセージをください。

『ポラロイド』を観て、大いに怖がってほしいです。この作品は日本のホラー映画の影響を非常に強く受けています。

物語の流れのなかに、日本のホラー映画を入れてみたいという思いから、作られた作品です。

だからこそ、日本の観客のみなさんに「怖い」と感じてもらえたら、本当に嬉しく光栄に思います。

インタビュー/出町光識

ラース・クレヴバーグのプロフィール

1980年、ノルウェー生まれ。

大学にて映画制作の学士号を取得し、卒業後に脚本・監督を務めたショートフィルム『The Wall』(2012)がパームスプリングス国際映画祭で上映される。

2015年には、プロトタイプとなる16分のショートフィルム『Polaroid』がトレモリノスファンタスティック映画祭 最優秀ショートホラーフィルム賞を受賞。

長編映画は自らリメイクした『ポラロイド』が初めてとなり、この夏公開を迎えるリブート版『チャイルド・プレイ』でも監督を務めました。

映画『ポラロイド』の作品情報

【公開】
2019年(アメリカ映画)

【原題】
Polaroid

【監督】
ラース・クレヴバーグ

【キャスト】
キャスリン・プレスコット、グレイス・ザブリスキー、タイラー・ヤング、サマンサ・ローガン、ハビエル・ボテット、ケイティ・スティーブンス、マデリン・ペッチ、プリシラ・キンタナ、キーナン・トレイシー、ミッチ・ピレッジ

【作品概要】
『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』のロイ・リーが製作を務めたホラー映画。

演出は『チャイルド・プレイ』のリブート版の監督を務めたラース・クレブバーグ。また2015年に自身が制作した短編ホラー作品を基に長編初監督作品として仕上げました。

また脚本を書いたのは、コメディアンとして知られたブレア・バトラー。

映画『ポラロイド』のあらすじ

カメラ好きの多感な女子高校生バード・フィッチャーは、バイト仲間のタイラーに代わりアンティークショップで店番をしていました。

店に戻ったタイラーは、ヤードセールで見つけた古いポラロイドカメラをバードにプレゼントします。

70年代に製造された珍しいSX-70だったため、バードは大喜びで早速タイラーを撮影します。

カメラの裏には過去の所有者のものであろう「R・J・S」の頭文字。帰宅後、バードは、仲の良いケイシーから仮装パーティーへ誘われます。

バードは交通事故で負った怪我の痕を隠すスカーフを首に巻いているため、学校でからかわれ人付き合いが苦手でした。

最初は躊躇するものの、気になる男子生徒のコナーも来ると聞き、バードはパーティーへ行くことにします。

カップルのミナとデヴィンも一緒に4人はパーティーが開かれるエイヴリーの家へ向かいます。車中、バードはふとタイラーを撮影した写真に、黒い影が映り込んでいることに気が付きます。

ポラロイドに関心を寄せたコナーと2人きりで話をしていたバードは、ミナ、デヴィン、コナー、そしてケイシー4人の写真を撮ってあげました。

シャッターを押したバードは、フラッシュが光った瞬間背後に黒い影が浮かぶのを目撃します。

エイヴリーもポラロイドカメラに興味を持ち、続けて自撮りしました。そこへ警察官がバードを探してやって来ます。

ペンブローク保安官からタイラーが殺害されたと聞かされるバード。

ふと撮影した写真を見ると、タイラーの背後に写っていた影は消え、今度はエイヴリーが自撮りした写真に黒いものが写っています。

翌朝、ケイシーから連絡を受けたバードは、エイヴリーが階段から落ちて死亡したと聞かされ…。

映画『ポラロイド』は、2019年7月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開!

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