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Entry 2020/06/16
Update

デッド・ドント・ダイ|内容考察と映画解説。ゾンビパニックに込めた現代社会への警告コメディとは

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

ジム・ジャームッシュ監督ゾンビを撮る。映画『デッド・ドント・ダイ』の魅力

アメリカの田舎町に突如現れたゾンビと、町にいるたった3人の警察官の戦いを軸に、群像劇が展開される映画『デッド・ドント・ダイ』

カンヌ国際映画祭の常連として知られる、鬼才ジム・ジャームッシュが、新境地としてゾンビ映画に挑んだことでも話題の、本作の魅力を紹介します。

ジャームッシュ作品常連のマーレイ、ジャームッシュ組参加となるドライバーのほか、ティルダ・スウィントン、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、イギー・ポップらが顔をそろえる。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

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映画『デッド・ドント・ダイ』の作品情報

(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.

【日本公開】
2020年公開(アメリカ映画)

【原題】
The Dead Don’t Die

【監督・脚本】
ジム・ジャームッシュ

【キャスト】
ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニー、スティーヴ・ブシェミ、ダニー・グローヴァー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ロージー・ペレス、イギー・ポップ、サラ・ドライバー、RZA、キャロル・ケイン、オースティン・バトラー、ルカ・サバト、セレーナ・ゴメス、トム・ウェイツ

【作品概要】
アメリカの田舎町、センターヴィルを舞台に、ゾンビに挑む警察官の戦いを描いたホラー・コメディ。

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1986)や『ブロークン・フラワーズ』(2006)などで知られる、ジム・ジャームッシュが、ジャームッシュ作品常連のビル・マーレイや、『パターソン』(2016)にも出演したアダム・ドライバーなど、実力派俳優を迎え、ゾンビ映画に挑んだ意欲作。

イギー・ポップや、サラ・ドライバーなど、大御所がゾンビとして登場していることでも話題になっています。

映画『デッド・ドント・ダイ』のあらすじとネタバレ


(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.

アメリカの田舎町センターヴィル。センターヴィルの警察官、クリフとロニーは、小さな町をパトロールしていました。

この日も、森の中で暮らす風変わりな男ボブが、農場を営むフランクの鶏を盗んだと通報を受けます。クリフはボブから事情を聞き出そうとしますが、逆に猟銃で威嚇射撃をされ逃げ出します。

ロニーはボブの行動を問題視しますが、クリフはボブを古くから知っており「問題ない」と放置し、逆に通報者のフランクに対して「ろくでもない奴」と言い放ちます。

センターヴィルでは、原因不明の白夜が続いており、磁場が狂っているらしく、全ての時計が止まっていました。

また、数日前から鳥や猫などの動物が、町から姿を消しています。警察署に戻ったクリフとロニーは、女性警官のミンディと町の異変について話します。

ロニーは「悪い結末の予感がする」と語ります。また、葬儀屋に突然現れた正体不明の女性、ゼルダも「不可解な人物」として話題になっていました。

その夜、月は紫の光を放ち、不気味に輝いていました。その光に呼応するように、墓から男女2人のゾンビが蘇り、町にある唯一のダイナーを襲います。

ゾンビはダイナーの従業員2人を襲った後、ダイナーに置かれたコーヒーを飲み始めます。

次の日、ダイナーの常連客、ハンクの通報を受けたクリフは、ダイナーに駆け付け、酷い状態の死体を目にします。

そこへ遅れて駆け付けたロニーは「これは、ゾンビだ」とクリフに伝えます。

クリフとロニーは、町の住人に警戒するように伝えて回りますが、クリフはフランクだけ無視しようとします。

そこへ、都会からゾーイ、ジャック、ザックの3人の若者が、センターヴィルへやって来ます。

3人の若者は、町でガソリンスタンドを営むオタク青年、ボビーを小馬鹿にするなど、センターヴィル全体を下に見ている態度を取っており、ロニーの「夜に外へ出てはいけない」という忠告も、あざ笑うように受け流します。

その夜、月の妖しい光はさらに強くなり、墓から大勢のゾンビが蘇りました。ゾンビの大群は、何かを求めるように墓場から町へと降りて行きます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『デッド・ドント・ダイ』ネタバレ・結末の記載がございます。『デッド・ドント・ダイ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.

大勢のゾンビが蘇った夜、センターヴィル警察署でも、死体安置所に置いてあった女性の死体が蘇ります。

突然の事にクリフとミンディは取り乱しますが、ロニーは冷静に鉈で、ゾンビの頭を破壊します。ですが、町にはゾンビが溢れており、3人は警察署の中から町の様子を傍観するしかありませんでした。

葬儀場で働く謎の女性ゼルダは、突然蘇った死体を、日本刀で一刀両断し、そのまま警察署を訪ねます。

ゼルダの「この後は、どうします?」という問いにクリフは、パトロールに出ると伝え、クリフとミンディ、ロニーの3人は警察署をゼルダに任せて、ゾンビが溢れる街へとパトロールに出ます。

町をパトロールする中で、ゾンビたちは生前の行動パターンに縛られている事が判明します。

生前、お菓子好きだったゾンビは、お菓子を販売しているお店を襲い、スポーツ好きだったゾンビは、運動場でスポーツを続けています。中にはWi-Fiを求めて、ひたすら町を彷徨うゾンビもいます。

3人はモーテルに宿泊した若者の様子を見に行きますが、すでにゾンビに襲われた後でした。町では、溢れたゾンビに対して、住人たちは抵抗をします。

ボビーとハンクは工具店に立てこもり、ゾンビたちに抵抗しますが、裏口から侵入され襲われてしまいます。

フランクも、自宅の農場に侵入するゾンビを、片っ端から狙撃していきますが、数の多さに抵抗しきれませんでした。

パトロールをしていたクリフとミンディ、ロニーは、墓場に侵入してしまい、ゾンビの大群に囲まれてしまいます。

パトカーの中に籠城していましたが、ミンディがゾンビと化した祖母の姿を目撃し、パトカーの外に出て襲われてしまいます。絶体絶命の状況の中、ゼルダが墓場に現れます。

ゾンビたちはゼルダに反応しパトカーから離れますが、ゼルダは突然飛来したUFOに乗り込み、そのまま飛び去ってしまいます。

何一つ状況が理解できないまま、クリフとロニーは意を決して、ゾンビの集団に戦いを挑みます。しかし、数の多さに圧倒され、2人も襲われてしまいます。

その状況を、遠くからボブが眺めており「物質主義のゾンビ共が」と吐き捨てます。

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映画『デッド・ドント・ダイ』感想と評価

(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.

アメリカの田舎町を舞台に、突然蘇ったゾンビによる、パニックを描いた映画『デッド・ドント・ダイ』

近年のゾンビものでは、ゾンビが発生した原因が何かしらのウィルスだったり、ゾンビが走ってきたりするのが定番となっています。

『デッド・ドント・ダイ』では、ゾンビが発生した原因が明確になっておらず、突然、墓から出て来たゾンビが、ゆっくりと歩き回るという、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』を彷彿とさせる、王道的なゾンビ映画となっています。

本作の監督、ジム・ジャームッシュは「ゾンビ」というジャンルを新たに開拓するのではなく、建て増しをすることを考え、王道的なゾンビの表現になったことを語っています。

ですが、本作のゾンビが他と違うのは、生きていた頃に執着していた物に、死んだ後も縛られている点です。

一番最初に出現したゾンビはコーヒーを求め、他にはスポーツやファッション、Wi-Fiを求めて彷徨うゾンビもいます。

とはいえ、ゾンビたちはキッチリと人を襲う為、笑ってはいられないのですが、何故、このようなユニークなゾンビが登場したのかは、本作の登場人物、世捨て人のボブの視点で明らかになります。

ボブは、世間から離れ森の中で生活している変わり者で、ゾンビ騒動の一部始終を覗く傍観者です。

ボブからすれば、消費社会の中で生活し、物欲にまみれた世間の人間の方が異常で、彼からすれば生者もゾンビも変わらない、自分の欲にまみれた怪物なのです。

本作でゾンビは発生した理由は謎と前述しましたが、アメリカの企業がある工事を始め、それが原因で地軸がズレたことが原因らしい、という事は語られます。

このことが事実であれば、欲や利益にまみれた工事が、ゾンビを発生させたこととなり、世界に蔓延する物欲主義が原因であるといえます。

実は、この「物欲にまみれた世界の危険性」が、ジム・ジャームッシュが本作に込めたテーマであり、警告でもあると語っています。

ジョージ・A・ロメロのゾンビは、差別問題、階級制度などへの批判が込められていましたが、『デッド・ドント・ダイ』では、消費社会や物欲主義という大きな問題を、ゾンビ映画で表現し、かなり直接的なメッセージで語られています。

本作はゾンビ映画ではあるのですが、ゾンビの頭を飛ばしても、血ではなく黒い煙が出るなど、直接的な残虐表現は抑えられています。

また、ビル・マーレイやアダム・ドライバーの、いい意味で力を入れていない演技が、全体的にユルイ感じを出しており、どちらかというとコミカルで、決して恐怖を感じる作品ではありません。

本作はリラックスしながら楽しめ、ジム・ジャームッシュからの、警告ともいえるメッセージに、最後は別の意味で怖くなる、他に無い唯一のゾンビ映画となっています。

まとめ

(C)2019 Image Eleven Productions,Inc. All Rights Reserved.

本作はコメディ映画なので、直接的な残虐表現も少なく、何も考えずに楽しめる作品です。

警告ともいえるメッセージが込められていますが、ジム・ジャームッシュは「説教くさい作品にしない」という部分を心掛けました。

その為、いろいろとお遊びの場面があり、例えばアダム・ドライバーが演じるロニーの車のキーに、「スターウォーズ」シリーズの戦艦、スターデストロイヤーのキーホルダーが付いていたり、ゾンビに追い詰められて車に籠城したクリフとロニーが、本作の脚本について話し始めたり、いわゆる第四の壁を無視したネタも満載です。

物語の鍵を握っていると思われたゼルダが、いきなりUFOに乗って立ち去る辺りも、状況が全く飲み込めず笑うしかありませんでした。

とにかく遊び心満載なので、よっぽどゾンビが苦手な方でなければ、肩の力を抜いて楽しんでいただきたい作品です。






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