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Entry 2021/09/28
Update

『戦場にかける橋』ネタバレあらすじ結末とラスト感想。名作/傑作映画で知られるデヴィッド・リーンが巨匠としての貫禄で描く!

  • Writer :
  • 秋國まゆ

第30回アカデミー賞作品賞・監督賞・主演男優賞ほか7部門受賞!

捕虜のイギリス人兵士と日本軍人が橋を作る不朽の名作映画『戦場にかける橋』は、名匠デヴィッド・リーンが監督を務め、1957年公開に公開されたイギリスとアメリカ合作の映画。

第二次世界大戦中のタイとビルマの国境付近にある捕虜収容所で、日本軍の捕虜となったイギリス人兵士たちと、彼らを利用して橋を作りたい日本軍人たちの姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

戦時下における人間の尊厳や名誉、戦争のむごたらしさを描いた、1958年アカデミー賞で作品賞や監督賞など7部門受賞した傑作である、不朽の戦争ドラマ映画『戦場にかける橋』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。

映画『戦場にかける橋』の作品情報


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

【公開】
1957年(アメリカ映画)

【原作】
ピエール・ブール『戦場にかける橋』

【監督】
デヴィッド・リーン

【キャスト】
アレック・ギネス、ウィリアム・ホールデン、早川雪洲、ジャック・ホーキンス、ジェフリー・ホーン、ジェームズ・ドナルド、アンドレ・モレル、アン・シアーズ、ピーター・ウィリアムズ、ヘンリー大川、ジョン・ボクサー、パーシー・ハーバート、ハロルド・グッドウィン、勝本圭一郎

【作品概要】
『オリバー・ツイスト』(1947)や『ドクトル・ジバゴ』(1965)、『アラビアのロレンス』(1988)などを手掛けた、デヴィッド・リーンが監督を務めたアメリカの戦争ドラマ作品。

原作は、フランスの小説家ピエール・ブールが自身が体験したことを綴った、小説『戦場にかける橋』となっています。

「スター・ウォーズ」シリーズのアレックス・ギネスが主演を務め、共演は『チート』(1915)や『新しき土』(1937)などに出演する早川雪洲です。

映画『戦場にかける橋』のあらすじとネタバレ


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

1943年。第二次世界大戦下において、日本の同盟国であったタイ王国と、日本軍の占領下におかれたイギリスの植民地ビルマの国境付近に、日本軍管轄の捕虜収容所「第十六捕虜収容所」がありました。

その捕虜収容所では、日本軍と対峙する連合国軍の1国であるアメリカ海軍のシアーズ中佐をはじめ、捕虜となったアメリカ軍の兵士たちが連日、過酷な労役に従事していました。

シアーズと彼の部下ジェニングス中尉は、日本兵に煙草やライターを贈って買収し、捕虜収容所からの脱走を試みていました。

1943年2月。そんなある日、イギリス軍の将校ニコルソン大佐率いるイギリス軍の捕虜一隊が、第十六捕虜収容所に移送されてきました。

捕虜収容所の所長を務める日本軍の斉藤大佐は、整列したイギリス軍の捕虜一隊に対し、こう言いました。

「我が第十六捕虜収容所のそばを走っている鉄道は、近くタイのバンコクとミャンマーのラングーンを結ぶ」

「クウェー川(タイ王国西部の河川)にかける橋の建設のため、君たちイギリス人捕虜が選ばれ招集した」

「当然ここでは、将校も兵隊と同様に働いてもらう」「ここには有刺鉄線も、囲いも監視塔もない。だがそれらは、このジャングルの中の孤島からの脱走は不可能だからないだけだ」

これを聞いたニコルソンは、斉藤大佐が言った「将校も労役に使用する」ということは、戦時国際法としての傷病者及び捕虜の待遇改善のための国際条約「ジュネーヴ条約」で禁じられていることだと、斉藤大佐に異議申し立てます。しかし、斉藤大佐はこれを受け入れませんでした。

ゲリラ豪雨に見舞われた捕虜収容所の中で、ニコルソンはシアーズと知り合います。ニコルソンはシアーズから、「この捕虜収容所にいた他の国の兵士は、マラリアや赤痢、脚気などの病気や飢え。過労、銃弾による負傷、斉藤に歯向かった罰、自殺などで大勢が命を落とした」と聞きました。

そう話すシアーズも、何かの病気を患っており、病院に入院し、軍医クリプトンの治療を受けていました。

その日の夜7時、捕虜収容所にいるニコルソンたち将校が集まり、脱走について話し合う会議が開かれました。

「ジャングルの中の孤島から脱出するのは99%不可能だ」と主張するニコルソンに対し、幾度となく脱走を試みたシアーズは、「このままこの捕虜収容所にいても、行き着く先は墓場しかない。脱走を諦めることは死刑宣告されたことに等しい」と主張します。

これを聞いたニコルソンは、シアーズや他の将校たちにこう言いました。「イギリス軍はシンガポールで、司令部から降伏を命じられた。それによって脱走することは、軍律違反も同然」

「それと明日からの橋の建設工事は、日本軍ではなくイギリス軍が指揮を執る。彼ら日本軍に兵隊の指揮官は我々イギリス軍であることを忘れさせないように。兵隊も軍人であって、彼らの奴隷ではない」

翌朝、斉藤はニコルソンたちイギリス兵に、「日本人の技師である斉藤中尉が橋の建設工事の指揮を執り、彼の指揮下で5月12日までに橋の建設工事を終えるように。あまり日数がないため、将校も入れて全員で橋の建設工事に従事せよ」と命令を下しました。

これに対しニコルソンは、軍服の上着のポケットからジュネーヴ条約が記された文書を取り出し、斉藤に再び抗議し対立します。

頑なまでに将校の労役を拒否し、挙句の果てに斉藤の命令にも従わないニコルソン。病院からシアーズとクリプトンたちが固唾をのんで見守る中、斉藤は「3つ数えるまでに、君と将校たちが作業場へ行かなければ、機関銃を発射する」と宣告します。

機関銃が本当に発射されそうになったその瞬間、病院からクリプトンが飛び出し、斉藤に「非武装者を殺すのがあなたの掟か?」と非難しました。

これに対し斉藤は何も答えず、所長宿舎の中に消えていきました。クリプトンのおかげで、射殺を免れたニコルソンたちイギリス軍の将校でしたが、その後も機関銃の銃口を向けられたまま、炎天下の中で直立不動で延々と立たされました。

日没まで立たされた結果、ニコルソンは最も日照が強い重営倉「オーブン」に、彼以外の将校たちは1つの営倉にまとめて、それぞれ監禁されてしまいました。

その日の夜、シアーズがジェニングスと、1人の負傷兵と共に捕虜収容所を脱走。ジェニングスたちは日本兵に見つかり射殺されてしまいましたが、シアーズは逃げのび、川底へ落ちて姿を消しました。


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

それから3日後、斉藤は捕虜たちを監督するクリプトンを所長宿舎に呼び出し、シアーズたちが脱走したことを叱責しました。

さらに斉藤は、ニコルソンたちへの非人道的な行為と、三浦の稚拙な技術指導への怒りを爆発させたイギリス兵たちが、サボタージュしたせいで工事がなかなか進まないことに苛立っていました。

そこで斉藤はクリプトンに、5分間だけニコルソンへの面会を許可する代わりに、「何としてでもニコルソンたちを労役に従事させたい。将校を働かせないなら病院を閉鎖し、患者たちを建設現場に派遣させる」とニコルソンに伝えるよう命じました。

クリプトンは面会時間5分の間、ニコルソンに食料と飲み物を与え、彼の体調を気遣いながら、斉藤からの伝言を伝えます。

「このままでは将校たちはもちろん、イギリス兵たちも、将校たちの代わりに働かされる患者たちも皆、死んでしまう」

クリプトンはそう訴え、ニコルソンにジュネーヴ条約を遵守するという主義を捨て、斉藤に従うよう勧めましたが、ニコルソンは頑なに将校たちの労役を拒みました。

面会終了後、クリプトンは斉藤に、「医者として、ニコルソンへの非人道的な待遇を抗議する」と言い、万が一ニコルソンが死んでしまえば殺人と同罪だと非難します。

これに対し斉藤は、「そうなった責任はニコルソンにある。私は知らん」と突っぱね、所長宿舎へ戻っていきました。

1943年2月15日。斉藤は、整列したイギリス兵たちの前に立ち、「橋の建設が一向に進捗しないのは、労役を拒む将校たちのせい。だからお前たちも喜んで働けない」と非難しました。

その反面、斉藤は三浦の技術指導が稚拙なせいで、工事が進まないことを認め、彼の代わりに自分が現場の指揮を執ると言います。

斉藤はイギリス兵たちに、赤十字からの贈り物を与え、働く意欲を取り戻そうとしましたが、翌日以降も工事はなかなか進みませんでした。

そこで斉藤は、自分と対立するニコルソンにイギリス産のコンビーフやスコッチ・ウィスキーを振舞い、彼にこう言いました。

「工事完了期日の5月12日まで、あと12週間しかない。だから何としてでも人手が欲しいのだ」

「このまま期日に遅れてしまえば、捕虜たちを全員殺した後、私は自殺せねばならない」

しかしニコルソンは、斉藤の話を聞いてもなお首を縦には降らず、将校の労役を拒否し、こう宣言するのです。

「日本人よりも、兵隊に尊敬され実績もあるイギリス軍の将校の方が、捕虜たちの士気を高め工事を進めることができる」

痛いところを突かれた斉藤は、ニコルソンたちイギリス人を罵倒するしかできませんでした。

以下、『戦場にかける橋』ネタバレ・結末の記載がございます。『戦場にかける橋』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

3月10日。イギリス兵と将校たちが固唾をのんで見守る中、ニコルソンは斉藤に呼び出され、こう言われました。

「日露戦争で我々日本軍が勝利したこの日を、イギリス軍の祝日とし、ニコルソンも将校たちも宿舎に返すという恩赦を与えよう」

「恩赦の一部として、将校は労役につくには及ばないことにしてやる」

ジュネーヴ条約を遵守するという、己の軍人としての主義を貫き通したニコルソンに、何としてでも労働力が欲しい斉藤が根負けした瞬間でした。

所長宿舎から出てきたニコルソンの表情を見て、彼の勝利を悟ったイギリス兵たちは歓喜にわき、同じく営倉から解放された将校たちも交えて狂喜乱舞しました。

その後、衰弱していた体を充分回復させたニコルソンは、数名の将校を伴い、工事現場を視察。そこで彼が見たのは、長期にわたるサボタージュのせいで気が緩み、軍人としての誇りを奪われたイギリス兵たちの怠けきった作業風景でした。

そこでニコルソンは、イギリス兵たちには橋を作り完成させるという目標を与え、自分の仕事に誇りを持たせることで軍人としての誇りを取り戻させ、日本人にはイギリス軍の実力と仕事の能率を見せつけると決心します。

数日後、ニコルソンは日英両国の将校による会議を開きました。インドで橋の建設をした実績があるイギリス軍の将校、リーブス大尉とヒューズ少佐たちから現状の問題点を聞いたニコルソンは、地盤が弱い場所に橋を建てるという斉藤たちの選定ミスを指摘しました。

両岸に硬い岩床がある下流に橋を建設するという、ニコルソンの案が採用されたところで、彼は斉藤に新たな変更を提案します。

「斉藤たちが行った労働力の配分は不適切であるため、作業班の組替えが必要だ。班の数を増やして分担を決めれば、1日の総作業量が今より3割増しになるのは確実だ」

「だが兵隊の大半が橋で働くので、鉄道の方が人出が少なくなる。そこで鉄道班の増強のため、日本兵を貸していただきたい」

一方シアーズは、小さな集落の人々とイギリス軍の救助飛行艇に助けられ、無事脱走に成功。イギリス軍が管轄する病院で、女性看護師と恋に落ちるなど悠々自適な生活を送っていました。

あとはアメリカに帰国し、軍を傷病除隊するだけ。そう思っていたシアーズの元へ、イギリス軍316部隊所属の将校ウォーデン少佐が訪ねてきます。

ウォーデンの話によると、「捕虜収容所を脱走したシアーズに、日本軍の鉄道建設について話が聞きたいから、316部隊の本部へご同行を願いたい」とのことでした。

翌朝、シアーズは葛藤の末、316部隊の本部を訪問。するとそこで、ウォーデンからこう言われました。

「日本軍が橋を完成した後、イギリス領のインド帝国に進軍しようとしている。316部隊の兵士数名と君で“決死隊”を組織し、橋の地上爆破をしてそれを阻止したい」

「既に上官のグリーン大佐が、アメリカ海軍に連絡を取り、君の一時転籍の許可をいただいた」

そう話すウォーデンに対し、シアーズは最後の悪あがきをします。「実はアメリカ海軍の船が落とされ、日本軍に捕虜にされる前、一緒に助かった中佐がいた」

「だけど中佐は、日本に射殺されてしまった。俺は捕虜への待遇を考え、彼の服に着替えて中佐に成りすましただけの、ただの二等水兵でしかない。だからその辞令は無効だ」

シアーズがそう言うと予想していたのでしょう。1週間前にアメリカ海軍から送られたシアーズの履歴書を見て、ウォーデンたちは既に彼の本当の階級を知っていました。

「捕虜収容所から命からがら脱出した国の英雄が、階級を詐称していたなんて明るみに出たらマズい」と思ったアメリカ海軍は、厄介払いできると思い、喜んでシアーズの転籍を許可したのです。

だからシアーズは、ウォーデンが提案した道案内役を受け入れざるを得ません。ウォーデンから少佐としての待遇を保障するといわれたため、シアーズは志願兵として橋の爆破作戦に参加することにしました。

5月11日。ウォーデンと316部隊所属の将校チャップマン、ジョイス、シアーズによる決死隊は、橋の建設現場に近い村へパラシュート降下を実施。

ウォーデンたちは難なく着陸できましたが、チャップマンが大木に激突し死亡。さらに村の住民であり協力者のヤイによると、シアーズが知る道は日本兵の見張りがいて使えず、村の近くも日本兵が大勢いて泊まることが出来ないとのことでした。

そのためウォーデンたちは、ジャングルの中で野宿し、ヤイの道案内で徒歩で橋まで向かうことにしました。

5月12日。ウォーデンたちは炎天下のジャングルの中を歩き、休息をとってジョイスが持っていた可搬型ラジオを修理すると、イギリス軍本部からの暗号を受信します。

ジョイスが暗号を解読した結果、日本軍がクウェー川の下流で橋を建設していること、鉄道の開通にあたり、軍要人を乗せた特別車が5月13日午前に通過させる予定であることが判明。

さらにイギリス軍本部から、追加で汽車も爆破せよと命令が下ったシアーズたちは、夕方までに橋へ着こうと先を急ぎます。


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

その道中、休息をとった川でシアーズたちは4人の日本兵と遭遇。3人は射殺しましたが、1人がジャングルの中へ逃走したため、ジョイスが追跡します。

しかしジョイスは、人を殺すことに躊躇し、日本兵の前で硬直。駆けつけたウォーデンが日本兵を刺殺しましたが、その際左足首に銃創を負ってしまいます。

上手く歩けないウォーデンを、シアーズたち仲間が支えた結果、予定より早く橋に辿り着くことが出来ました。

ニコルソンたちが完成させた立派な橋の周囲を調べたシアーズたちは、「橋脚の水面下約3フィートのところに爆薬を、川の反対側に点火箱をそれぞれ仕掛け、電線で繋いで爆破させる」という作戦を考えました。

点火箱を仕掛ける者は、爆破したらすぐにクウェー川を泳いで戻って来なければなりません。その役は水泳が得意なジョイスが志願し、ヤイとシアーズが彼の補佐に回り、ウォーデンは迫撃砲を備え、3人の援護に回ることにしました。

5月12日の夜。橋の爆破作戦を知らないニコルソンは、橋の完成を祝った催しの中で、イギリス兵たちにスピーチを行いました。

「捕虜となり、ジャングルの中の孤島で苦難を乗り越え、橋を建設し鉄道を開通させたという偉業を成し遂げたことを誇りに思え。君たちの偉業は軍人にとっても民間人にとっても、全イギリス人の良い手本になるものだ」

「名誉を失うことなく、この僻地で生き抜いた君たちは、イギリス軍を敗北から勝利に変えたのだ」

イギリス軍が祖国の国歌を歌い上げる中、シアーズ・ヤイ・ジョイスは息を潜め、音を立てないように慎重に作業を進め、爆弾と点火箱を仕掛けました。

5月13日の朝。それぞれの場所で一晩を明かしたシアーズたち。目覚めた彼らは、川の水位が下がってしまったせいで、電線と爆弾が剥き出しになっていることに気づきます。

ジョイスは電線を隠すために砂をかけていると、橋の上では完成を祝した祝砲があげられ、汽車が橋へ徐々に近づいてきました。

斉藤と共に最終点検をしていたニコルソンは、橋脚に何かが取りつけられているのを発見。斉藤に報告し、汽車が通る前に下へ降りて調べます。

ニコルソンたちが電線を辿り、点火箱に気づくより先に、ジョイスは斉藤の背後を突き刺殺。ニコルソンはジョイスを取り押さえますが、彼から「同じイギリス軍将校だ。命令により、橋を爆破しに来た決死隊だ」と言われて驚き、慌てて橋の上にいる日本兵に援軍を要請します。

これを合図に、橋から降りて駆けつけた日本兵たちは一斉射撃を開始。しかし、日本兵の銃弾を受けジョイスは絶命し、日本兵の銃弾を受け瀕死のシアーズが駆け寄ってきたのを見て、ニコルソンは激しく動揺します。

ウォーデンからの迫撃砲を受け、意識が朦朧とするニコルソンは、皮肉にも点火箱の上に倒れ込んでしまいました。

それにより、汽車が通過しようとしていた橋が爆破。橋の上にいた日本兵も、橋から落ちた汽車もその乗客も犠牲となり、ニコルソンとシアーズも死んでしまいました。

ウォーデンはそばにいた荷物係の現地女性たちに、「仲間を捕虜にしないためには、こうするしかなかった」と言い訳するしかありません。

橋が見渡せる丘に立ち、鉄道の開通を見守っていたクリプトンは、爆破後の悲惨な光景を目の当たりにして、「馬鹿な、信じられん」と嘆くしかありませんでした。

爆破後のクウェー川を、橋を完成させたイギリス軍の功績を讃えた看板が、ゆっくりと流れていきました。

映画『戦場にかける橋』の感想と評価


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

捕虜になっても屈しないニコルソンたち

水も食料も与えられない、灼熱の中で狭い営倉に監禁される非人道的な罰を受けるニコルソンたちの姿。

クリプトン同様、生きるために軍人としての主義を捨てて降伏すべきだと言いたくなるほど、徐々に衰弱していく彼らの姿は痛ましくて、観ているのが辛くなります。

それでもニコルソンは、将校たちの中で一番辛く、死にそうになっているにも関わらず、ご馳走を振る舞ってでも仕事をさせたい斉藤に屈したりしません。

そうまでして、ジュネーヴ条約を遵守する軍人としての主義を貫き通すニコルソンに、彼なりの強い軍人魂を感じ、斉藤が根負けするのも頷けるほどでした。

捕虜となっても、軍人としての主義や信念を持ち貫き続けるニコルソンたちだからこそ、奴隷として扱われるのではなく、共に橋を建設する仲間として交流していくようになれたのでしょう。

すれ違うシアーズたち決死隊とニコルソン


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

ウォーデン率いる決死隊の目的は、あくまで日本軍のインド帝国侵攻を阻止するために橋を爆破することですが、彼らには捕虜として労役に従事しているイギリス兵たちを救いたい気持ちも少なからずあったはずです。

その証拠に、決死隊とニコルソンが戦うことになってしまった物語の終盤、ウォーデンは仲間とニコルソンの死を見て、「こんなはずじゃなかった」と激しく動揺しています。

ニコルソンがジョイスからそれを知らされる時は時すでに遅し、決死隊の作戦は実行に移されており、彼らの作戦を知ったニコルソンもウォーデン同様、激しく動揺していました。

もしも決死隊の橋の爆破作戦を、ニコルソンが知っていたなら、味方同士の彼らが争うこともなかったでしょう。

ニコルソンたちと、ウォーデンたち決死隊による味方同士の悲しいすれ違いに心が痛み、信じられない気持ちでいっぱいです。

まとめ


(C) 1957, renewed 1985, (C) 1995 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.

捕虜になったイギリス軍の一隊と、彼らを利用し鉄道開通のための橋を建設させようとする斉藤率いる日本軍の姿を描いた、アメリカの戦争ドラマ作品でした。

日本軍の視点で見ると、自分たちが捕虜を使って橋を完成させなければ、自殺するしかないという瀬戸際に立たされている状態。そのため斉藤たちは、非人道的なことをしてでも捕虜たちを従わせなければなりません。

斉藤が敵軍の将校に下手に出てお願いしたり、敵軍の将校たちに工事の主導権を握られたことを黙認するしかなかったりしたのは、とても悔しい気持ちでいっぱいだったことでしょう。

早川雪洲演じる斉藤が、勝利を祝うイギリス軍の影で、人知れず悔し涙を流していた姿を見ると、彼の悔しさと葛藤が画面越しに伝わってきて胸が痛いです。

橋の完成後、ニコルソンと斉藤が一緒に橋の下の異変を調べに行くところを見ると、対立していた2人が和解し心の距離を縮めたのが窺えて感動します。

戦争という極限状態の中で、日英両軍がそれぞれの立場で葛藤していく戦争ドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

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