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Entry 2021/02/20
Update

映画『セイビング・レニングラード』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。第2次世界大戦の実話に基づくソ連軍シークレットミッションを描く

  • Writer :
  • 秋國まゆ

旧ソ連軍が決死の脱出作戦に挑む戦争サバイバル・アクション

アレクセイ・コズロフが製作・脚本・監督を務めた、2019年製作のロシアの、第2次世界大戦におけるソ連軍が決行した作戦を描いた戦争サバイバル・アクション映画『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』。

第2次世界大戦中の独ソ戦で、ソ連第2の都市レニングラードがドイツ軍に包囲されてしまい、飢餓の危機に陥って孤立した200万人の市民を救出しようとするソ連軍。具体的にどのような作戦だったのでしょうか。

張り詰めた緊迫感でソ連軍が決行した“奇跡の脱出作戦”を描いた、ロシアの戦争サバイバル・アクション映画『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』のネタバレあらすじと作品情報をご紹介いたします。

映画『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』の作品情報


(C)AVK LLC, 2019

【公開】
2019年(ロシア映画)

【脚本・製作・監督】
アレクセイ・コズロフ

【製作】
アルカディ・ファティーブ

【キャスト】
アンドレイ・ミロノフ=ウダロフ、マリア・メルニコワ、アナスタシア・メルニコワ、ゲラ・メスキ、ヴァレリー・デグテヤ、ヴィタリー・キシュチェンコ

【作品概要】
アレクセイ・コズロフが製作・脚本・監督を務めた、ロシアの戦争サバイバル・アクション作品す。

アンドレイ・ミロノフ=ウダロフが主演を務め、マリア・メルニコワやアナスタシア・メルニコワら豪華キャスト陣が出演しています。

映画『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』のあらすじとネタバレ


(C)AVK LLC, 2019

ナースチャは、第2次世界大戦における独ソ戦で起きた、レニングラード脱出作戦について、インタビューされていました。

その時ナースチャは、かつての恋人コースチャ・ゴレロフから贈られた、腕時計をインタビュアーたちに見せます。

それはこの80年間、一度も壊れることがなかったものです。

ナースチャはコースチャが出征する1時間前に、ラドガ湖にある小さな写真館で、2人で写真を撮っていました。

当時写真を買う余裕がなかったナースチャは、コースチャから腕時計を貰い、朝になったら質屋に腕時計を売り、写真を買うよう言われます。

しかし、敵からの空襲により写真館はなくなり、写真もネガも全て失ってしまったのです。

時を遡ること1941年9月16日、ナースチャは当時、1カ月前に出会った士官学校出身のソ連軍砲兵隊に所属する兵士、コースチャと交際していました。

ナースチャはコースチャと一緒に、このソ連の第2の都市、レニングラード(現サンクトペテルブルク)を出て船旅に出る約束をしていました。

ナースチャの母親マーリヤは、娘が恋人と一緒にこの街を出ていくことに寂しさを感じながらも、嬉々として出ていく彼女を自宅アパートから見送ります。

その直後、ナースチャの父親サーシャが自宅アパートに戻ってきました。

生物学者であるサーシャは、売国奴として逮捕され、先程釈放されたばかりでした。

しかし、サーシャは釈放されて早々、前線へ行くよう軍に命じられました。

サーシャは前線に行く前に、ナースチャの顔を一目見ようと、自宅アパートに戻ってきたのです。マーリヤはそんなサーシャと、縁を切っていました。

それはマーリヤがドイツのスパイの妻では、いずれ編集者の仕事を失って、ナースチャの将来の為にならないと思ったからです。

サーシャはマーリヤの気持ちを知っていながらも、これまでずっと、彼女に手紙を送り続けていました。

マーリヤは蒸かした芋と砂糖を上着のポケットに入れて渡し、すぐさま前線へ向かうサーシャを見送ります。

その後、ドイツ軍は200万人以上の人口を誇るレニングラードを包囲しました。ドイツ軍は1週間前、レニングラードの最大の食糧庫を攻撃します。

ドイツ軍はこのまま包囲攻撃を続け、1カ月以内に市民を飢餓状態に追い込もうとしました。さらにドイツ軍は、ネヴァ川を封鎖し、全艦隊を撃破します。

これによりソ連軍は、10数隻の荷船を使って、唯一の脱出経路であるラドガ湖から、市民を脱出させようとしました。

そのため、ソ連軍はこの数日のうちに、市街地から湖岸へ市民を移動させます。これを知ったドイツ軍は、すぐさま空襲しようと企みました。

ソ連軍の現場指揮官のゴレロフ大佐は、空襲を回避するためにある作戦を思いつきます。

それは、夜21時に荷船752号に乗って出港し、朝7時までに敵が包囲する水域を脱出し、無事対岸へ着くというものでした。

さらにゴレロフ大佐は、752号に1500人の市民や兵士を乗船させ、車両も含めて対岸まで運ぶよう、752号の船長に命じます。

船長は対岸まで12時間かかるところを、10時間以内に航行するだけでも無理があるのに、その上そんなに乗せたら最初の波を受ければすぐに沈没すると訴えました。

ゴレロフ大佐は、これしか市民を救出させる方法はないと言い、この命令を強行させます。

ゴレロフ大佐の指示に従い、水兵は軍学校の生徒や海軍医学校の生徒、合計340人を先に乗船させました。

それを岸から見ていたコースチャは、部隊を一旦離れ、ナースチャを連れて乗船します。

コースチャは荷船の特等席へナースチャを案内し、自分が所属するコゴロティ中隊長率いる砲兵隊へ戻ろうとしました。

そこへ突如、岸はナチス空軍からの空襲を受けます。乗船準備を見守っていたゴレロフ大佐の元へ、前線にいた兵士が早馬に乗って現れました。

その兵士はゴレロフ大佐へ、「昨日一個師団が敵にやられました、生存者は10名ほど。次の攻撃に備えるため、士官候補生の応援が必要です」と伝えます。

これに対し、ゴレロフ大佐はコゴロティ中隊長を呼び、乗船を中止して前線の援護に行くよう命じました。

ただコゴロティ中隊長が指揮する砲兵隊は、機関銃がありません。銃剣となるライフル銃も、1人10発ほどしかありませんでした。

これを聞いたゴレロフ大佐は、砲兵をレニングラードに残し、医学生と測量技士を乗船させることにしました。

コゴロティ中隊長の代わりに、砲兵隊を指揮していたマーキン曹長は、この指示を聞き、乗船しようとしていたコースチャを含む砲兵隊を岸に戻らせます。

再び岸に戻り、整列した砲兵隊の元へ、ゴレロフ大佐の側近コーリョが駆けつけました。ゴレロフ大佐がコースチャを呼ぶよう、命じたからです。

ゴレロフ大佐は、やって来たコースチャのずぶ濡れの隊服から、水兵の制服に着替えるよう言い渡します。

それは、ゴレロフ大佐が息子であるコースチャを、凄惨な光景が広がる前線には行かせない、荷船に乗って安全な場所へ避難して欲しいという親心からでした。

最初はこの指示に納得がいかなかったコースチャでしたが、その後聞いたゴレロフ大佐からの言葉で、水兵に扮して乗船することを決心します。

ナースチャは752号のデッキから、砲兵隊が岸に戻っていくところを見て、コースチャを心配して下船しようとしました。

そこへコースチャが現れ、ナースチャは彼と一緒に752号へ戻ります。

しかしナースチャは、自分を乗せるために40年前に戦死した兵士の娘だと嘘を言ったり、隊を離れて水兵に成りすまして乗船するコースチャのことが信用できません。

コースチャは、そんなナースチャと喧嘩してしまいます。

ナースチャがコースチャから離れた隙を狙って、彼女を追いかけて車ごと乗船した1人の男が近寄ってきました。

その男の名はバディモ・ペトローチブ、売国奴のサーシャへの捜査を担当した、内務人民委員部の大尉です。

ナースチャはペトローチブ大尉が6月に家宅捜査しに来た際、6月だというのに黒い手袋をつけていたのが印象的だったため、彼の事を覚えていました。

ペトローチブ大尉はナースチャに嫌味を言い、その後来たコースチャと自己紹介した後、2人の元から立ち去っていきます。

一方ドイツ軍は、ソ連の海軍が数時間以内に再び、付近の水路を利用するために上陸するという情報を入手しました。

そこでドイツ軍は、752号がラドガ湖を脱出することを阻止するため、湖に見えるものは全て破壊しようとします。

裕福な市民が無理を言って載せたグランドピアノで、ペトローチブ大尉が演奏する音がデッキに響く中、コースチャはナースチャの理解を得ようと奮闘していました。

しかしナースチャはコースチャから、自分と一緒にいるために隊を離れたことを聞かされ、ますます怒って拒絶します。

その頃、砲兵隊とサーシャがいる前線部隊は、水路が必要なレニングラードのため、敵軍がいるネフスキー・ピャタチョクを取り戻そうとしていました。

小舟に乗って岸まで渡る際、マーキン曹長はコースチャから取り上げた腕時計を、別の兵士アンドリホに渡します。

マーキン曹長たちとサーシャが駆けつけた前線では、想像以上に凄惨な光景が広がっていました。

丘の上にいるドイツ軍が、機関銃や迫撃砲、手榴弾を使って前進してくるソ連軍を次々と殺していくのです。

マーキン曹長たちは迎撃する暇もないぐらいの猛襲を受け、身を隠しながら前進するだけでも精一杯でした。

その中でもアンドリホは、擦り傷だらけの裸足で前線を駆け抜けていました。

それは、岸で仲間とビーチバレーをしていた際、市民の飼い犬にゲートルを盗まれてしまったからです。

ソ連軍の兵士は、次々とドイツ軍の猛襲の餌食となって死んでいきます。

ボロボロになりながら前線を駆けていたサーシャは、内臓が飛び出るほど負傷した兵士を助けようとしていました。

しかし、サーシャが安全な場所へ兵士を動かしていたその瞬間、敵軍からの爆撃を食らいます。

その衝撃で吹き飛んだサーシャは、すぐさま兵士の元へ駆けつけましたが、兵士は爆撃を食らって上半身が吹き飛んでいました。

サーシャはその後も負傷した兵士を助けながら、前線を駆け抜けていきます。すると逃げ込んだ先で、サーシャはマーキン曹長たちと遭遇しました。

その頃マーリヤは、編集部で仕事をしてから、自宅アパートへ帰ります。そんなマーリヤに、隣人は今朝、サーシャが帰ってきたことを話しました。

マーリヤは急いで自宅アパートへ入りましたが、サーシャの姿はありません。

愕然とするマーリヤは、窓際に置かれた椅子に腰かけ、これまでサーシャが自分宛に送ってきてくれた手紙を1通1通読んでいきました。

前線を指揮するソ連軍の大佐は、マーキン曹長に「30分だけ時間を稼ぐ。その間に自分の部下を連れて、丘の上にいる機関銃を撃つ敵兵を攻撃してこい」と命じます。

マーキン曹長はアンドリホと大佐の部下を連れて、丘を目指して銃撃戦の中を駆け抜けていきました。

先行するマーキン曹長は、丘の上にいた敵兵を引き摺り下ろし、泥沼の中で死闘を繰り広げていきます。死闘の末、マーキン曹長は敵兵を泥沼の中に沈めて殺しました。

アンドリホは少しでも役に立つべく、丘の上にいた敵兵に銃を発砲しますが、弾を外して窮地に陥ります。

マーキン曹長がそんなアンドリホの悲鳴を聞きつけ、助けに駆けつける前に、2人についてきていたサーシャが機関銃で敵兵を殺して助けました。

アンドリホはサーシャにお礼を述べた直後、自分の後ろから現れた敵兵に射殺されます。その敵兵を、マーキン曹長は殺した敵兵から奪った機関銃で射殺しました。

マーキン曹長はアンドリホの死を確認後、彼の腕に着けられたコースチャの腕時計を持ち、サーシャを連れて前進していきます。そんなマーキン曹長に、大佐は次の命令を言い渡しました。

それは、「じきに支援部隊が来る。後方部隊が掩護するから、部下と負傷兵を連れて安全な川岸まで撤退しろ」というものでした。

一方752号では、乗船していた水兵は、名簿に載っていないコースチャ以外は全員、戦場へ駆り出されていきます。

その光景を見ていたペトローチブ大尉は、コースチャが命令に背いてこの場にいるのは、ナースチャの入れ知恵かと嫌味を言いました。

それを否定するコースチャに、ペトローチブ大尉はサーシャがどんな人物か語り出します。サーシャはドイツのスパイであり、爆破計画を主導した人物だったのです。

その証拠となる本が3冊もあり、さらに犯行を認めたサーシャの供述書が、ペトローチブ大尉が752号に載せた車の中にありました。

レニングラードから出なきゃいけなくなったのも、この事態を招いたサーシャの責任だと、ペトローチブ大尉は話します。

ここまで話した後、ペトローチブ大尉はコースチャに、対岸に到着後はナースチャと一緒に、特別課へ連行すると脅しました。

752号から降りた水兵たちが前線へ向かい、それとすれ違うように、負傷兵たちを連れたマーキン曹長が浅瀬を歩いて、小舟で撤退しようとします。

しかしサーシャは、岸まで来たものの、戦場に残ると言い出し、踵を返して前線へ戻っていってしまうのです。

以下、『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』ネタバレ・結末の記載がございます。『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)AVK LLC, 2019

その頃ゴレロフ大佐は、荷船752号が作戦通り航行しているため、このまま朝7時頃に対岸へ到着したら、次の荷船を出港させると軍の上層部に伝えます。

その時、上層部へ気象予報感からの伝令が到着しました。それによると、752号がこれから行く区域では、高波と風力9の強風が吹くと予想されるとのことでした。

実際、その予報は的中し、752号は嵐と荒波に襲われていました。

嵐の中、航行する752号のデッキには、ペトローチブ大尉によって柱に両手を縛りつけられたコースチャと、車の中に避難するペトローチブ大尉がいました。

そこへ、海軍医学校の女生徒が乗組員と共に現れ、車の中に避難しようとします。

しかし、女生徒が車の中に入った直後、その乗組員は荒波に飲み込まれてしまいました。

女生徒はそのまま、乗船前からいい雰囲気だったペトローチブ大尉と熱いキスを交わします。

そこへ女生徒のクラスの教官が現れ、今すぐ船倉に戻らなければ、彼女を除名処分にすると怒鳴り散らしました。

それに怯えて女生徒が車から出た瞬間、デッキを飲み込むほどの高波が押し寄せ、彼女たちに襲い掛かります。

752号から落ちそうになる女生徒、コースチャは無視をするペトローチブ大尉ではなく、近くにいた女教官にロープを解いてもらい、彼女を助けに行きました。

女生徒が不安と恐怖から、コースチャに縋りつく場面を、コースチャを心配してデッキに出てきたナースチャに目撃されます。

コースチャは女生徒から離れ、ナースチャの誤解を解こうと、船倉に戻っていく彼女を呼び止めました。

その船倉内では、天井や窓、出入り口の扉から水が入り込んできてしまい、市民はパニック状態に陥ってしまいます。

操舵室にいる船長は、乗組員に「このまま進路は変えずに進むため、水を汲みだしてくれと伝えろ」と命じました。

乗組員はライトの光を点灯させ、船倉の状況を伝えた乗組員へその旨を伝えます。

しかし、ソ連の海軍隊員とコースチャが協力して、ホースを使って給水作業をしても、水は全然引いていきません。そこで船長は救難信号を送ります。

救難信号を受け取ったゴレロフ大佐は、全船舶にその事を伝えますが、誰も救助に行ける状況ではありませんでした。

ゴレロフ大佐は葛藤の末、片道分の燃料しかない小舟に乗って、752号の救助へ向かいます。

1941年9月17日の早朝、コースチャたちの懸命な給水作業のおかげで、 徐々に水が引いていきました。

荒波だったラドガ湖は、緩やかな波へと変わります。未だ水浸しの船倉内で、ナースチャたち市民は、無事対岸へ着けるよう祈りました。

752号の航路を予測し、先回りしていたドイツ軍は、ナチス空軍のハンスとその部下が乗る戦闘機2機で、752号へ空襲するよう命じます。

戦闘機2機によって、突如空襲を受ける752号、デッキにいたコースチャは、船倉にいた海軍からライフル銃と弾を貰いました。

コースチャは軍学校の生徒にもライフル銃と弾を手渡し、指示を出して一緒に戦闘機を撃ち落とそうとします。

その直前、ナースチャはコースチャを呼び止め、熱いキスで和解した後、彼を送り出しました。

ナチス空軍は、船倉やデッキに容赦なく攻撃します。その結果、女生徒は車の中で首に被弾して即死、船長とペトローチブ大尉は頭を負傷しました。

コースチャの指示によって、1機を航空不能に追い詰め、ナチス空軍を退けさせます。

その隙にソ連の海軍中尉は、752号が遭難して市民が湖に投げ出されることを防ぐため、デッキに積んだものを全て海に捨てて、少しでも752号を軽くしようとしました。

しかしペトローチブ大尉は、「この車はエストニア政府のものだ。資料や公文書を運んでいる」と言って拒否します。

そんなペトローチブ大尉が、海軍中尉やコースチャと言い争っていると、裕福な市民が仲裁に入りました。

裕福な市民は、大事なグランドピアノを捨ててもいいと言います。

海軍中尉やコースチャ、海軍学校の生徒たちは力を合わせ、ラドガ湖へグランドピアノを落として捨てました。

これを見たペトローチブ大尉は、勝手にしろと不貞腐れます。デッキにある積み荷は全てラドガ湖へ捨て、少し軽くなった752号でも、油断はできません。

そこで海軍中尉は、船倉にいた女子供を操舵室へ避難させます。

コースチャはまだ船倉にいるナースチャも入れようとしますが、海軍中尉に満員だからと断られました。

ここまで話した年老いたナースチャは、ずっとデッキで敵と戦ってくれたコースチャこそ、真の英雄だとインタビュアーに話します。

ナチス空軍の兵士ハンスは、高度が保てずラドガ湖に墜落した部下の為に、752号を撃沈しようと再び空襲しました。

デッキや船倉は再び空襲され、海軍学校の生徒たちやペトローチブ大尉は滑り落ちるようにラドガ湖へ投げ出されます。

752号へ向かって航行していたマーキン曹長は、デッキからハンスを射殺し、墜落させたコースチャを誇らしげに見ていました。

752号からラドガ湖へ投げ出された海軍学校の生徒やペトローチブ大尉、市民の200人以上は、近くにいたタグボートの船長によって無事救助されました。

マーキン曹長は、コースチャとナースチャを救助し、彼に腕時計を返して、2人まとめて強く抱きしめます。

一方、編集部に戻ったマーリヤは、部下から752号がドイツ軍の空襲を受け、沈没したという噂があることを聞きました。

マーリヤは、噂よりもソ連軍公式の情報を信じると気丈に振舞いましたが、娘の身を案じて1人涙します。

752号周辺に、まだ救助されていない市民がいないか捜索していたゴレロフ大佐は、コースチャと出港前にした会話を思い出していました。

あの時、ゴレロフ大佐はコースチャに速記録を渡し、「荷船752号は、人を運べないと周りの誰もが信じているようだ。だが荷船を出さなければ、私は明日銃殺されるだろう。これは市民を救う唯一の方法だ。ラドガ湖に客船はないが、人々を脱出させなければならない。だから荷船の使用を決め、目一杯人を乗せることにし、それに息子を乗ると、皆に伝えた。この速記録にそう記してあるから、私の決定はもう覆せない」と伝えていたのです。

ゴレロフ大佐は、荷物に捕まって泳いでいた犬を救出し、抱きかかえます。

無事対岸に着いたコースチャたちは、先に着いていたぺトローチブ大尉と再会しました。

ペトローチブ大尉にはもう2人に嫌味を言う気持ちはなく、2人を特別課へ連行する気もありません。

ペトローチブ大尉はコースチャたちに別れを告げ、車に乗り込みました。

後日、天井や窓が壊れ、室内に雪が入り込んでいたナースチャの自宅アパートで、凍死したマーリヤの遺体が発見されました。

80年前に起きたこの2日間の出来事を話したナースチャは、最後に「街の包囲は872日間続いた。父はネフスキー・ピャタチョクで戦死し、母は歩ける限り編集の仕事を続け、1942年12月に自宅アパートで凍死した」とインタビュアーに語ります。

そしてナースチャは752号で同じ体験をした市民や、軍関係者と遺族たちと共に、自分たちやその家族、レニングラードを守るために街中を歩いてデモ活動をしました。

自分の子供に車椅子を押して貰っているナースチャが持つ写真たてには、コースチャが1942年8月4日に死んだことが記されていました。

エンドロール前、「1941年9月17日、荷船752号は攻撃を受け、1200人以上が犠牲となった。200人以上を救助したタグボートの船長は、赤星勲章を受章した」というテロップが流れます。

映画『セイビング・レニングラード 奇跡の脱出作戦』の感想と評価


(C)AVK LLC, 2019

ドイツ軍に包囲されたレニングラードからの、旧ソ連軍と市民の脱出劇は、ドキドキハラハラする場面ばかりでスリル満点でした。

マーキン曹長やサーシャが向かった戦いの前線では、想像以上に凄惨な光景が広がっています。

進軍するソ連軍の兵士が、丘の上にいるドイツ軍に悉く殺されていくのです。

劣勢に追い込まれたソ連軍、その中でのマーキン曹長の活躍と、サーシャの懸命な救助活動は涙ぐましいものでした。

マーキン曹長が撤退した一方、サーシャは戦場に引き返し、その後の姿は劇中で描かれていませんでしたが、ナースチャの口から彼の戦死が語られ、愕然としました。

そんなサーシャが家族を想って宛てた手紙が読まれていくところはもちろん、ゴレロフ大佐の息子への想いが語られる場面は、親子愛を感じて涙します。

コースチャとナースチャの恋愛模様は少ないですが、戦いの中で2人の愛と絆を感じ、思わず2人に絶対生き残って欲しいとスクリーンの前で祈る人も多いことでしょう。

ナチス空軍vs荷船752号の攻防戦と、前線での戦いはどちらも迫力があるので、戦争サバイバル・アクション映画好きにはたまらない、大興奮すること間違いなしです。

まとめ

コースチャとナースチャの初々しいカップルと、1500人の兵士と学生と市民が、荷船752号に乗って敵軍の包囲網から脱出する、戦争サバイバル・アクション作品でした。

父親のゴレロフ大佐の無茶な指示に翻弄されたコースチャですが、752号では大活躍し、見事ナチス空軍の戦闘機2機を撃破したのは素晴らしかったです。

ゴレロフ大佐を演じるヴィタリー・キシュチェンコの影ながら支援する姿も格好良く、とてもハマり役でした。

ソ連軍の強い絆に感動しますが、ナチス空軍の兵士ハンスとその部下の絆も心にグッときます

親子愛とドキドキハラハラするスリルを味わいながら、ドイツ軍が包囲したレニングラードから、決死の脱出作戦に挑んだ旧ソ連軍の勇姿を観たい人に、とてもオススメな戦争サバイバル・アクション作品です。

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