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Entry 2022/07/22
Update

『天上の花』映画原作ネタバレあらすじと感想評価。愛憎劇の結末を描いた“三好達治抄”とは⁈

  • Writer :
  • 星野しげみ

小説『天上の花―三好達治抄―』が映画化され、2022年冬公開!

三好達治、萩原朔太郎とその妹の慶子が織りなす純粋で凄まじい「愛」と「詩人の生」を、朔太郎の娘の視点で描いた小説『天上の花―三好達治抄―』

1966年の発表からすでに56年の時を経ましたが、2022年秋に開催される萩原朔太郎の大回顧展「萩原朔太郎大全2022」の記念映画『天上の花』として公開されます。

監督は片嶋一貴、キャストは三好達治に東出昌大、美貌の慶子は入山法子という豪華な顔ぶれが揃いました。


(C)2022「天上の花」製作運動体

小説はもとより映画では戦争の時代に翻弄された人々の痛みと葛藤、男女の交じり合わない恋愛がいつの日か激情とともに、制御できなくなってゆく様子が鮮明に描かれています。

映画『天上の花』は、2022年初冬に新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

映画公開に先駆けて、小説『天上の花―三好達治抄―』をネタバレ有りでご紹介します。

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小説『天上の花―三好達治抄―』の主な登場人物

【萩原葉子】
作者。父は萩原朔太郎。

【三好達治】
朔太郎を師とする作家をめざす貧乏書生。

【慶子】
葉子の美人の叔母。萩原朔太郎の末妹。達治に惚れ込まれる。

小説『天上の花―三好達治抄―』のあらすじとネタバレ

大正15年。小学校へ上がる前の作者・萩原葉子は、父朔太郎、母、それに妹と四人で大森に住んでいました。

萩原朔太郎を師と仰ぐ貧乏書生の三好達治が家に来るようになったのは、その翌年ごろからでした。

人見知りの強い作者は父を訪ねてくる客が嫌いでしたが、三好さんだけにはいつの間にか馴れてしまっていました。

葉子が小学校二年生になったころ、四人家族だったところへ叔母が加わり、五人家族になりました。

叔母は、父の末妹で二度目の結婚に破れて郷里の前橋から上京してきた慶子。丸顔の美人で当時、24、5歳でした。

外見を着飾る母と比べ、叔母は鏡に向かうこともないのに、母よりもずっと美しかったのです。

そんな美貌の叔母・慶子に三好は恋心を抱き、身体の具合を悪くし寝込んでいた慶子に、高価なバナナを持って見舞います。

三好は、夏のカスリに裏地をつけて袷にして着ているような貧乏書生でしたので、その身分でのバナナは不相応なものでした。

三好は朔太郎を通して、慶子に結婚を申し込んだものの、最初から相手にしてもらえません。

朔太郎は三好の才能を見越し、将来性のある青年だと勧めましたが、慶子の両親(作者の祖父母)は、「一定の職業についていない書生の身分で、大事な娘を欲しいとは、何と己知らずな人間か」と、三好に絶縁状を送りつけていました。

その後、昭和4年に葉子の両親は離婚をし、葉子と妹は父朔太郎に連れられて前橋の祖父母の家へ。三好が大阪の実母の所へいっている間のことでした。

昭和8年。朔太郎、祖母、葉子と妹、それに叔母の慶子は前年に新築した世田谷の家に住んでいました。

ある日、その家に詩人の佐藤惣之助が現れます。父に後妻の相手を紹介しようと訪れた惣之助は、慶子に一目ぼれをし、プロポーズをしました。

しかし慶子の心を獲得するには、祖母を納得させることが絶対条件でした。それから惣之助の涙ぐましい祖母のご機嫌取りが始まります。

三好よりは安定した収入があることが幸いし、その後まもなく2人は結婚式をあげます。惣之助は2度目。慶子は3度目の結婚でした。

昭和15年、惣之助はハルビンに出兵。無事に帰国した後、朔太郎が急逝肺炎で急逝しました。高血圧症を病んでいた惣之助は、「この次はぼくの番だよ」と言い、あっけなくこの世を去りました。

傷心の慶子の元へ、朔太郎の通夜から告別式まで通い詰めた三好から、励ましの手紙が届きます。

三好は当時佐藤春夫の姪と結婚し二児の父となっていました。しかし、慶子と再び交流を持つようになると、慶子に家庭のぐちをこぼすようになり、「家庭がつまらない」と言いました。

妻とうまくいっていなかった三好は、慶子の夫惣之助が死んだその日から、今度こそ慶子を自分のものにしようと思っていたのでした。

三好は妻子との別居を決心し、福井県三国町の森田別荘を借りる手はずを進めていました。

朔太郎の三回忌の日に、実家に戻った慶子を訪ね、あなたを16年何カ月思い続けてきたと慶子にプロポーズしました。

迷う慶子に祖母は、「本当に好きなら妻との籍をちゃんと抜いてから迎えに来い」と言うように助言しました。

慶子がそれを三好に伝えると、三好はすぐに実行しました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『天上の花―三好達治抄―』ネタバレ・結末の記載がございます。『天上の花―三好達治抄―』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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時は太平洋戦争の真っ只中。三好の熱心な愛の告白を受け、慶子はついに三国行を決心します。

買い出しや疎開する人で混雑する東京駅から汽車に乗り、予定より遅れて金沢駅に着きました。疲れ切った慶子をホームでずっと待っていたらしい三好が見つけ、「よく来てくれました」とねぎらいました。

それから2人が向かったのは、三好が借りた別荘。それは、海岸沿いに建つ離れ小島のような丘の上にぽつんと建つ暗い感じの一軒家でした。

崩れ落ちた白い土蔵の壁、何もない伽藍洞のような家。その中にあるコレクションを嬉しそうに説明してくれるのですが、愛情を示す言葉をかけない三好に、慶子は落胆します。

台所にあった米櫃の米が3日分ぐらいしかなかったことも、今後の暮らしについての慶子の不安を掻き立てました。

台所にはガスも水道もありませが、慶子に苦労はさせないと言った三好は、自ら家事をします。料理ばかりか炭も起用におこし、採れたてのススキとウニを毎日のように食べさせてくれました。

ですが、慶子にベタ惚れの三好なのに、酒が入ると人が変わったように気難しくなりました。

気に入らないことがあると、慶子に当たり散らします。月々の生活費もまともにくれない暮らしに、「着物の1枚ぐらい買ってほしい」とつい慶子も愚痴がでます。

越前三国に疎開した2人に待っていたのは、このような過酷な日常生活でした。

2人きりの暮らしを大切にしたいと思う三好は、現実的で奔放な慶子と生活費のことでもめるようになり、慶子に暴力を振るうようになります。

いたたまれなくなった慶子は三好に隠れて、東京に戻るための準備を始めました。それを察した三好は慶子が逃げないよう、荷物を押えてしまいます。

慶子が寝込んだあと、2人の友人の畠中をよび「彼女の愛を取り戻すにはどうしたらよいのか」と懇願します。

慶子はまた手荷物だけを持って家を飛び出しましたが、またしても三好にみつかってしまいます。

「あなたの暴力と貧乏にはこれ以上我慢できません」と言う慶子に、三好は「あなたという人は何という人か」と、異様な絶望的な声を出しました。

その後三好の猛烈なビンタが慶子を襲いました。その結果、顔がはれ上がり、変わり果てた慶子の姿を見て、周囲の人もようやくこのままではいけないと動き出します。

慶子は3月に祖母が疎開している安中へ発ちました。三国へ来てから10カ月目のことでした。

慶子に去られた三好は、半狂乱になるほどの苦しみ様でした。慶子から取り上げた着物と長襦袢とで慶子の寝姿を綴り、自分の万年床の右側に添えるほどに。

それから6年たった昭和25年。岩波文庫に入る、朔太郎の詩集の編集を三好がしてくれることになり、葉子は久しぶりに三好と会います。

朔太郎の版権は全て祖母が握っており、いくつか出版された著作物の収入も祖母が全部親類に分配していました。

祖母と気のあわない葉子はその頃貧乏暮らしをしていたので、朔太郎の版権のことでなんとかならないかと三好に相談したのです。

叔母慶子との騒動があったにもかかわらず、三好は葉子に優しかったと言えます。

昭和30年の朔太郎詩碑の除幕式の時も、昭和34年の朔太郎祭でも、三好と慶子は顔をあわせていますが、意識して目をそらすでもなく、ごく自然な様子をしていました。

その後、葉子は朝日新聞から依頼のあった「父の手紙にみる離婚と、犀星との友情」についての原稿を書きましたが、掲載された文章をみて、珍しく三好は立腹しました。

犀星と朔太郎の出会いの表現に酷い間違いがあるというのです。それでも三好は、別の機会に「葉子ちゃん、しっかりしなさいよ」と励ましてくれました。

昭和39年4月。三好は狭心症で世を去りました。

新聞の死亡欄で気がついた葉子が三好の下宿にかけつけると、三好の別れた最初の妻の子・達夫が出迎えてくれました。

達夫は結婚して子どもを授かっています。初孫を抱いて三好は嬉しそうだったと言います。

カーテンをおろしたままの三好の下宿には、三好の16年間の独居生活が偲ばれました。

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小説『天上の花―三好達治抄―』の感想と評価

タイトルになっている「天上の花」は、仏教においては伝説上の天界の花を意味し、燃えるような色を持つ赤い花「曼珠沙華」、別名「彼岸花」と呼ばれる花をさしています

真っ赤なその花(白い花もありますが)は、情熱の象徴であり有毒性をもつと言われています。

そんなタイトル通りの恋愛を描き出した『天上の花―三好達治抄―』

詩人であり、翻訳家、文芸評論家など幅広い顔を持つ三好達治の燃えるような愛の様子が鮮明に描かれています。

小説の中では、こんなに愛しているのにどうしてわかってくれないのかと、三好は我を忘れ愛する慶子に乱暴しました。

本当に乱暴したのかどうかは不明ですが、これが三好なりの愛の表現とするなら、誰もが怖い愛情表現と思うでしょう。

DV男はいつの世も女性から怖がられ嫌われます。三好がそれに気がついた時はすでに遅く、せっかく自分の元に来てくれた慶子は実家へ帰ってしまいます。

行き場を失った三好の愛……。小説の後半では晩年の彼の姿も描かれていますが、胸にくすぶり続ける慶子への思慕が寂しい独居生活へと導いたのに違いありません

切なすぎるほど激しい2人の愛憎劇は、男女間に存在する愛の戦いというのに相応しいものでした。

映画『天上の花』の見どころ

小説『天上の花―三好達治抄―』は、『いぬむこいり』(2017)の片嶋一貴監督が手がけました。

三好達治には『草の響き』(2021)などで唯一無二の存在感を放つ東出昌大、萩原朔太郎の妹で美貌の慶子は、新たな境地を切り拓いた入山法子が演じます。

毒のある「天上の花」を食したような、激しい恋愛に身を焦がす三好達治

愛に翻弄される彼をクールな風貌の東出昌大がどう演じるのかと、期待は高まります。

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映画『天上の花』の作品情報


(C)2022「天上の花」製作運動体

【公開】
2022年(日本映画)

【原作】
萩原葉子:『天上の花―三好達治抄―』(講談社文芸文庫)

【監督】
片嶋一貴

【脚本】
五藤さや香、荒井晴彦

【キャスト】
東出昌大、入山法子、浦沢直樹、萩原朔美、林家たこ蔵、鎌滝恵利、関谷奈津美、鳥居功太郎、間根山雄太、川連廣明、ぎぃ子、有森也実、吹越満

まとめ

映画『天上の花』の原作小説『天上の花―三好達治抄―』をネタバレありでご紹介しました。

著者である萩原朔太郎の娘・萩原葉子によって、萩原の家族と三好達治の一連の出来事が小説化されています。

戦争真っ只中の混乱の時期から動乱の戦後を生き抜いた人々の激しい「愛」と「憎しみ」の恋愛模様に驚くことでしょう。

三好達治の人生を垣間見るような本作の映画『天上の花』は、2022年初冬に新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開



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