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『光の指す方へ』あらすじ感想と評価解説。フィルム映画の光と音の中で再生していく若者をあたたかな視線で描く

  • Writer :
  • 谷川裕美子

『光の指す方へ』が2022年11月18日(金)よりシネマネコにて先行公開、12月3日(土)以降ユーロスペースほかにて順次公開

2021年に東京・青梅市にオープンした東京で唯一の木造建築の映画館・シネマネコを舞台に、若者の挫折と再生を描く『光の指す方へ』が、2022年11月18日(金)よりシネマネコにて先行公開、12月3日(土)以降ユーロスペースほかにて順次公開が決定しました。

本作が長編2作目となる今西祐子が監督を務めるヒューマンドラマです。

主演を『14の夜』(2016)の犬飼直紀が務めます。

初めての挫折に苦しみ葛藤を抱える主人公の晴斗が出会ったのは、カタカタと音を立てて回る懐かしきフィルム映画でした。

映画への愛に満ち溢れた本作の魅力をご紹介します。

映画『光の指す方へ』の作品情報


(C)Itoo office inc.

【公開】
2022年(日本映画)

【監督・脚本】
今西祐子

【出演】
犬飼直紀、松﨑映子、伊藤悌智、安達真由、西山咲子、戸張美佳、酒井麻吏、植吉

【作品概要】
脚本家としても活躍する今西祐子が監督を務めるヒューマンドラマ。高山市合併10年記念映画『きみとみる風景』(2015)に続く長編2作目となります。

実在する映画館シネマネコを舞台に不器用な主人公と周囲の人々の優しい存在が繊細に映し出されます。

主演は『14の夜』(2016)で主演デビューし、これからの活躍が期待される犬飼直紀。

主題歌「ひかり」は3rdシングル「花になれ」で話題を集めたシンガーソングライター指田フミヤの書き下ろしです。

劇中には老舗映写会社「鈴木映画」で長年活躍する映写機が登場。篠原哲雄監督作品『洗濯機は俺にまかせろ』(1999)(ディレクターズ・バージョン)の35mmフィルムが象徴的に投影されます。

映画『光の指す方へ』のあらすじ


(C)Itoo office inc.

友人たちが進路を決める中、大学受験に失敗した晴斗は、この状況を抜け出したいという思いを抱えながら浪人生活を送っていました。

フランスに出張する母から、映画館をオープンさせた姉のまどかの様子を見てくるようにいわれた晴斗は姉を訪ねます。

久しぶりに会った晴斗の不眠症を見抜いたまどかは彼を心配し、半ば強引に映画館の仕事を手伝わせることに。

企画でフィルム上映が行われることになり、初めて映写機の光を目にして感動を覚える晴斗。

晴斗は映写機に興味を持ち始め、姉の旧友で映写技師の圭吾からいろいろ教えてもらいます。

圭吾や子どもの頃から知る人たちとバイトを通して関わりを持つようになった晴斗は、人生につまずいてしまったという思いから解放されていき…。

映画『光の指す方へ』の感想と評価


(C)Itoo office inc.

映画への愛に満ちた再生の物語

木で作られたあたたかみある映画館。カタカタと音を鳴らしながら回る映写機。そこから放たれる懐かしさを感じさせる光。映画愛に溢れた心地よい映像に心が満たされていく一作です。

主人公の晴斗は大学受験に失敗して人生初の大きな挫折を味わい、姉のまどかは夢の映画館を立ち上げたものの厳しい経営状況や恋に悩みを抱えています。

彼らを癒したのは、古い映写機の存在でした。鬱々とした空気の中で生きていた晴斗は、映写機の魅力に引き寄せられるかのように興味を持ち始めます。晴斗のキラキラと輝く瞳から、そのワクワク感がはっきりと伝わってきて、純粋な心を持つ彼が愛おしく思えてきます。

作品の根っことして描かれるのは、姉と弟の強い絆です。

年の離れた姉のまどかは家を出ており、晴斗は母とふたりで暮らしていますが、忙しく世界を飛び回る母は不在がちで晴斗はほぼひとりきりで浪人生活を送っています。

裕福で立派な家に住んでいますがまるでモデルルームかのように殺風景で、まどかが開いた木造のレトロな映画館とは対照的です。

仕事に全力を注ぐ母とは異なり、まどかは弟の顔をしっかりみつめて彼が不安で眠れずにいること、ろくに食事もとっていないことに気づき、助けが必要であることを理解して弟に映画館のバイトをさせたり、栄養あるものを食べさせたりして丁寧に面倒をみてやります。

姉の愛情、周囲の人たちとの交流、そして初めて見たフィルム映画。まだ柔らかい晴斗の心は、試練に苦しみながら暗く深い底に沈みそうになっていましたが、そこにやわらかな光が差し込んだことで再生していきます。心と体に栄養を与えることが人にとってどれだけ大切かを教えられる作品です。

まとめ


(C)Itoo office inc.

フィルム映画のやさしい光と音にたゆたうかのように観る者を癒しあたためてくれる作品です。

人は誰もがなにかしら悩みを抱えて苦しんでいます。しかし互いに寄り添い、手を差し伸べて助け合うことで暗闇からすくい上げることができるに違いありません。

助けになってくれるのは人であったりモノであったり、思い出であったり深い眠りであったり、おいしい食べ物であったりすることでしょう。私たちは皆そのときどきに、思いがけないものに救われて生きていくものなのかもしれません。

映画の好きな方には特にぜひ観ていただきたい作品『光の指す方へ』は、2022年11月18日(金)よりシネマネコにて先行公開、12月3日(土)以降ユーロスペースほかにて順次公開です。

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