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無法松の一生(1958)|ネタバレあらすじ感想と結末の解説評価。三船敏郎が演じた純粋無垢な男の“美しすぎる一生”

  • Writer :
  • 谷川裕美子

侠気あふれる男の愛し抜いた人生を描く傑作

1943年製作の同名作品を、三船敏郎を主演に迎えて稲垣浩監督が自らリメイクした傑作です。第19回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しました。

高峰秀子、芥川比呂志、笠智衆ら名優が出演しています。

無法松と呼ばれる豪快な松五郎の愛の一代記です。人を愛するとはどういうことなのかを強く問いかける名作の魅力についてご紹介します。

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映画『無法松の一生』の作品情報


(C)1958 東宝

【公開】
1958年(日本映画)

【原作】
岩下俊作

【脚色】
伊丹万作、稲垣浩

【監督】
稲垣浩

【出演】
三船敏郎、芥川比呂志、高峰秀子、笠原健司、松本薫、笠智衆

【作品概要】
稲垣浩監督が坂東妻三郎主演で1943年に製作した第一作を自らリメークして生み出しました。第19回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、第32回キネマ旬報ベスト・テン第7位に輝く傑作です。

無法松と呼ばれる豪快で愛すべき男・松五郎の、愛に満ちた人生をあたたかく切なく描き出します。

主演の『七人の侍』(1954)の三船敏郎をはじめ、『二十四の瞳』(1954)の高峰秀子、芥川比呂志、『東京物語』(1953)笠智衆ら名優が顔を揃えています。

映画『無法松の一生』のあらすじとネタバレ


(C)1958 東宝

明治三十年。九州・小倉に、ばくちで国を追われていた「無法松」こと車夫の富島松五郎が戻ってきました。

けんかで頭をけがして帰った松五郎が一部始終を話すのを、面白がって車座になって聞き入る人々。相手は警察官だったと知った松五郎は、それではかなうはずがないといってみんなといっしょに大笑いします。

芝居小屋へのいやがらせにマス席でにんにくを焼き始めた松五郎は、止めようとする従業員たちと大げんかになりました。

仲裁に現れた結城親分から、見物人たちへの迷惑についてどう思うかと問いただされた松五郎は、素直に頭を下げて謝ります。親分は松五郎の竹を割ったような性格に恐れ入り、両者は無事に和解しました。

日露戦争勝利に湧くころ、車夫の松五郎は木から落ちて泣いている吉岡敏雄少年を助けます。医者まで運んでくれた松五郎に少年の母・良子が礼を渡そうとしますが、人の役に立ちたかっただけだと言って彼はかたく固辞します。

少年の父・吉岡大尉は松五郎の名を聞いて大笑いし、司令官にお前呼ばわりした彼の武勇伝を楽し気に妻と子に話しました。

吉岡大尉は豪快な松五郎を屋敷に招き、かわいがります。追分歌を朗々と歌う松五郎は、良子を前にすると顔を赤らめて声が出なくなってしまう純情な面もありました。

楽しく過ごす中、大尉は寒気を訴えます。雨の中での演習で風邪をひいた大尉は、妻子を残して急死してしまいました。

良子はその後も松五郎を頼り、息子を鍛えてほしいと頼みます。たこあげがうまくいかない敏雄をみつけると、客をほっぽってでも面倒をみてやる松五郎。

彼は泣き虫な敏雄を前に、子供のころ自分が一度だけ泣いた話を始めます。継母にいじめられていた松五郎は、離れた地で働く父に幼いながらひとりで怖い思いをしながら会いに行ったことがありました。

やっと父親に会えたときだけ泣きじゃくったと話し、敏雄を励まします。

敏雄の運動会にも松五郎は喜んで加勢し、飛び入りした徒競走では見事に一等賞になりました。敏雄が大声で松五郎を応援する姿を見て良子はとても喜びます。

天涯孤独な松五郎にとっては、吉岡母子の役に立つことが生きがいでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには映画『無法松の一生』ネタバレ・結末の記載がございます。映画『無法松の一生』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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大正三年。敏雄のために良子は後家のままでいました。中学4年になった敏雄は他校生とケンカするほどすっかりわんぱくになり、良子は心配しますが、松五郎はたくましくなった坊に目を細め、自ら参戦してケンカの仕方を教えます。

敏雄をボンボンと呼ぶのやめて「吉岡さん」と呼んでほしいと言われた松五郎は、他人のようだといって肩を落とします。

高校進学のために敏雄が小倉を離れ、松五郎と良子はすっかり寂しくなります。松五郎は老け込み、数年ぶりに酒を飲むようになりました。彼は酒で父を亡くしていたため、自分も突然酒で死ぬのではないかと恐れていました。

心配した仲間に結婚をすすめられますが、松五郎は一蹴。彼の心の中にはいつも良子の姿がありました。

夏休みになり、祇園祭に太鼓を聞きたがる先生を連れて敏雄が小倉に帰ってきます。本場のたたき方を見たいという先生のために、松五郎は自らバチを手にします。

良子への想い、敏雄への愛情などさまざまな感情があふれ出すなか、松五郎は情熱的にたいこをたたき続けます。

その後、松五郎が良子のもとを訪れます。敏雄の結婚を想像して話す良子の話を聞きながら松五郎は涙を流しました。なにかあったのかと心配する良子になにも答えず、彼は吉岡大尉の写真に手をついて頭を下げます。

「俺は寂しかったんだ。もうお目にかかることはない。俺の心は汚い。奥さんにすまん」そういって松五郎は泣きながら去って行きました。

大雪が降った翌日。敏雄の通っていた小学校の校庭で倒れている松五郎がみつかります。幼い敏雄との運動会や、美しい良子のほほえみなど楽しい思い出の数々に包まれながら、彼は旅立ちました。

彼が残した柳行李の中には、吉岡家からもらったご祝儀が封も開かず宝物のようにしまわれており、敏雄と良子のためにコツコツと貯めた通帳も残されていました。

なにもしてあげられなかったと言いながら、良子は泣き崩れました。

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映画『無法松の一生』の感想と評価


(C)1958 東宝

無法松という名の天使

古きよき時代の日本の美しい生活が切々と描かれた名作です。

車夫の松五郎が引く人力車。美しい着物姿の女性たち。遠い地で働く父に会いにひとりで行く松五郎少年を見守る市井の人々のあたたかさ、そこで食べさせてもらったうどん。渡された新しい草履。

祭りに集まる質素な姿をした子供たち。大きな氷を削って作るかき氷。大きなたいこの響きに集まる人々。

世界的にもヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞という高い評価を得た一作ですが、日本民話を映し出したかのような美しい生活を描く世界観が驚きと感動をもって受け入れられただろうことは想像に難くありません

主人公の無法松こと松五郎は天使のように汚れのない魂の持ち主です。

貧乏暮らしの上、継母からのいじめに遭い、学校にろく通わせてもらえなかった彼は車夫をしていますが、周囲からはその豪胆な性格と竹を割ったような男らしい性格が認められ、境遇さえよければきっと出世しただろうと言われていました。

そんな彼が、ひょんなことから吉岡大尉の息子・敏雄を助け、その後急死した大尉に変わって夫人の良子と敏雄を守る存在になっていきます。

しかし、敏雄が成長して離れて行った寂しさと、彼がいなくなった後バランスが崩れてしまった良子との関係に松五郎は苦悩するようになり、駆け抜けるようにこの世を去ってしまいます。

純粋すぎる松五郎は、清らかな良子を求めてしまう自分を受け入れることができませんでした。彼はこの世を生きるには美しすぎたのでしょう

そんな魅力あふれる松五郎を三船敏郎が生き生きと光る瞳で演じきっています

運動会徒競走に飛び入りして優勝する姿、敏雄のけんかに乗り込んでいく姿、どれも素晴らしく輝いており、凛々しくたいこを叩く姿には思わず惚れ惚れしてしまいます。

そして何よりも、最後に良子に別れを言いにいった日の彼の純粋な涙に魅了されずにいられません

聖女のような存在の良子を求める気持ちを、松五郎は罪悪ととらえてしまいます。とても自然な思いなのに、汚い思いだと断じて自分を切り捨ててしまうのです。

敏雄を大尉の息子として育て上げることを使命に生きてきた良子もまた、松五郎を男として受け入れる考えそのものにふたをしてきました。

彼の思いに気づいていても、あるいは自分の本心に気づいたとしても、見て見ぬふりをするしかなかったに違いありません。

すすめられた座布団にさえ座らない松五郎。少ないはずの賃金を良子親子のために大切に貯めて死んでいった無法松。彼の一途な思いは、すべての人たちの胸を締め付けます。

それなのに、悲しい結末を迎えても尚、彼の姿はやはり清々しく、そんな美しい生き方に羨望を抱かずにはいられないのです

まとめ


(C)1958 東宝

世界のミフネと呼ばれる名優・三船敏郎が演じた、愛に生きた純粋すぎる男を描く『無法松の一生』。

主人公の松五郎の迎えた最期は、一般的には幸せと呼ばれるものではないかもしれません。

しかしそこには誰もが認めずにはいられない命の輝きがあり、こんな風に生きたいと思わされる魅力がつまっています

あなたは観終えた後、どんな思いを抱くでしょうか。無法松を哀れと思うでしょうか。それとも羨ましい生き方だと感じるでしょうか。

ぜひご覧になって確かめてみてください。




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