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Entry 2023/10/28
Update

【ネタバレ】トゥルーホラー悪魔が私に殺させた|感想評価と解説。実話“アーニー・ジョンソン事件”で起きた“悪魔の概念”に憑かれた者の悲劇|Netflix映画おすすめ139

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第139回

今回ご紹介するNetflix映画『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』は、1981年2月16日コネチカット州で実際に起こった、アメリカ史上初にて唯一「弁護側が裁判にて“悪魔の憑依”を理由に無罪を主張した」という奇妙な殺人事件のドキュメンタリー映画です。

本作では、この事件の発端となった「悪魔に取り憑かれた」という11歳の少年と家族に関わった世界的に有名な霊能研究家・霊能者のウォーレン夫妻にまつわる疑惑にも迫ります。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』の作品情報

【配信】
2023年(イギリス映画)

【原題】
The Devil on Trial

【監督・脚本】
クリス・ホルト

【作品概要】
脚本・監督を務めたクリス・ホルトは、アメリカ国内のメディア関連対象の賞である「ピーボディ賞」を受賞し、英国アカデミー賞に3回ノミネートされた経歴を持つイギリスの作家・監督・プロデューサーです。

本作は実際の音声や写真、ホームビデオや、当事者による証言に基づいた再現ドラマで構成されています。また本作で扱われている実際の事件は、アメリカのテレビドラマや『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』としても劇映画化されています。

映画『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』のあらすじとネタバレ

「ブルックフィールドの事例1980年8月14日」と題された録音テープからは、この世の者とは思えない唸り声と、なだめようとする母親に「お前はクズだ」と子が罵り不気味に笑う声が流れます。

そして、唸り声の主に向かいポラロイドのシャッターが切られます……そこに写ったのは、虚ろな表情の少年が大人たちに押さえつけられている姿でした。

“善人と悪魔の戦い”……アメリカ・コネチカット州のある家に現れ、11歳の少年デヴィッドに取り憑き数十年が経った今、“悪魔”は弁明のためにカメラの前で証言します。

「悪魔に憑依された」という11歳の少年の出来事は、“悪魔の憑依”を承認させる裁判へとつながり、全米にニュースで報道されます。

その裁判はコネチカット州ブルックフィールドで起きた殺人事件の裁判です。友人を殺害した犯人は「悪魔に憑依されたから」と供述し無罪を主張したのです。

この事件を担当した刑事は、その供述を冗談と一蹴し、酔っぱらった末のいざこざによる刺殺事件に過ぎないと思っていました。

しかし、この刺殺事件には「悪魔に憑依された」という11歳の少年が大きく関わっており、彼にとってこの黒歴史は、大人になっても語りたくないトラウマになっていました。

少年は大人になりカメラの前に座り「あのことは誰にも知られてはいけない、家族の秘密だった」と自分に何が起こっていたのか……ゆっくり語り始めます。

11歳のデヴィッド・グラッツェルは両親と姉のデビー、二人の兄カールとアランと平凡で幸せな日々を暮らしていました。

デヴィッドは家族のことを忠実に伝えてほしいと念を押します。のちに根も葉もないことをでっちあげられ、家族のことが捏造されて伝えられたからだと話します。

姉のデビーにはアーニーという恋人がおり、結婚して暮らすための良い物件を見つけ、家族総出で引越しの手伝いをすることになります。

デヴィッドは新居に着くなり、家に奇妙な感覚を覚え気味の悪さを感じました。それでも引越しはお構いなしに進み、彼は主寝室の掃き掃除を頼まれます。

他の家族は別の部屋の掃除や片づけで分散しますが、デヴィッドが動揺しながら外へ飛び出していくのを、デビーが別の部屋の窓から見かけました。

どうしたのかと尋ねるとデヴィッドは「家に帰りたい」と訴えます。母のジュディが全部済んでからと言っても、彼は一刻も早く家から離れたいと感じます。しかし、その理由を家族に話そうとはしませんでした。

帰宅した晩、家族は普通に夕食を済ませますが、兄のアランはその晩のデヴィッドについて「機嫌が悪かった」と振り返り、就寝前にデヴィッドがその理由を話し始めます。

引越しの手伝い時、デヴィッドが一人で主寝室の掃除をしていると、何かの気配を感じました。その気配は静かにデヴィッドに近づき、彼をベッドに押し倒しました。

そしてデヴィッドが顔を横に向けた時に、ハロウィンの悪魔のような、目が石炭の塊のように真っ黒な何者かを見て「気をつけろ」と言われたと明かしました。

デビーが「何に気をつけろと言われたのか」と聞くと「お前の魂がほしい、だからすぐに迎えに行く」と言われたと話します。

アーニーがデヴィッドに「薬でも飲んだのか?」と聞くほど、誰もその話を信じませんでした。ジュディは早く寝るよう促し家族は就寝しますが、デヴィッドだけは寝つけずにいました。

家の外に何かの気配を感じて見に行くと、暗い藪の中に何者かがいるのを見た気がしますが、目をそらしてもう一度見た時には何もいませんでした。

デヴィッドの訴えで不安に駆られたジュディは、地元の教会のデニス神父に電話をかけました。そしてデヴィッドの話をし、家を清めてほしいと相談します。

デヴィッドはジュディのことを信心深い母だと言い、自分たちもカトリック教会で聖餐式や堅信礼を受けていたので、神と悪魔の存在を信じていたと話します。

しばらくしてデニス神父が家を訪れ、家を清める儀式を行います。全ての部屋を清め終わり、家族は安堵しますが、それは恐怖の始まりに過ぎませんでした。

以下、『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』ネタバレ・結末の記載がございます。『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

就寝し静まり返った家に、デヴィッドの絶叫が響き渡ります。家族が慌ててデヴィッドの部屋に集まり、ジュディが彼を抱きしめると「お仕置きされる……」とデヴィッドは恐怖に怯えていました。

そして突然、家が轟音とともに大きく揺れ始め、照明が点滅したります。やがてドアをノックする音が聞こえると、デヴィッドが「奴が来た!」と叫びました。しばらくしてノックの音も揺れも収まりますが、恐怖と不安が家族たちを襲い、誰かの助けが必要だと思い始めます。

そんな時、多くの“悪霊”と対峙し有名になっていた、心霊研究家のウォーレン夫妻がテレビ番組に出演していました。

心霊関連の番組だけではなく、バラエティなどでもひっぱりだことなった夫妻ですが、ウォーレン夫妻の知名度を上げたのは、“アミティビル”の事例が映画化されたことだと、孫のクリスが振り返ります。

トークショーでロレインは多くの相談の手紙が届くと話します。それを見たデビーはウォーレン夫妻のオフィスに電話をします。対応に出たのは夫のエドで、彼に助けを乞いました。

デヴィッドが医師の診察を受けていないと知ると、訪問する時に一緒に連れて行くと告げ、1980年の夏、夫妻と医師が揃ってグラッツェル家にやってきました。

デビーとジュディは夫妻の訪問を喜び、自信に満ちたエドと優しく明確なロレインに、良い印象を持ち大きな信頼を寄せます。

医師の診断によるとデヴィッドに「精神の異常はなかった」と告げます。ウォーレン夫妻はテープレコーダーを準備し、デヴィッドに事情を話させ録音を開始しました。

エドは悪魔は自分の力を誇示したがるから、もしいるなら何かしてくるはずだと構えていました。エドは話を聞くだけでなく、実際に自分で体験しないことは信じない人物でした。

そしてエドは悪魔に対し「存在するならテーブルを3回叩け」と挑発します。すると、床を激しく叩き、揺らすほどの振動をその場にいた全員が体験します。

デヴィットはウォーレン夫妻が来たことで、悪魔を怒らせてしまったと怯えます。ロレインは部屋の中を歩き回り、霊の波動を探りながら、誰に取り憑こうとしているのか探します。

ロレインは家に侵入しているのは“霊”などではなく“悪魔”の方だと分析し、それは黒い塊となってデヴィッドの隣に立っているとエドに耳打ちします。

孫のクリスは祖父が分析した、悪魔が降臨する過程には順序があることを語り、それが最終段階の人への完全憑依であり、デヴィッドがすでに憑依されていると判断します。

悪魔に憑依されたデヴィッドは体を支配され、意識や意志を失くし暴言を吐き暴力的になると言い、神父を呼ぶよう指示します。

ジュディは神父による清めは済んでいるというと、記録を多く残し証拠として大司教に提出し、それをブリッジポードの大司教が見て、判断するためだと教えました。

ウォーレン夫妻は状況は深刻だと告げ、録音用のテープデコーダーを渡し、デビーはポラロイドカメラを購入します。

夏休みになっていた頃、アメリカは大統領選のまっただ中でした。デヴィッドに異変が現れたのは、テレビで候補者の討論が中継されていた時です。

突然デヴィットが失神し卒倒してしまいます。ジュディは慌ててデヴィットに声をかけますが、11歳の少年の声とは思えないおどろおどろしい声で「お前は死ぬ」と脅します。

その一部始終が録音され、写真に収められ、こうしてグラッツェル家はデヴィッドの監視と記録に追われる日々となっていきました。

そしてある日、転機がきました。誰もいないところでデヴィッドが暴れ出し、空中で何かを掴むような行動をします。彼は何者かに首を絞められ、それを解こうともがいていました。

デヴィッドには首を絞められている感覚以外、その時の記憶がありませんでした。家族は対処する術を失い、家族全員がデヴィッドから攻撃され、精神的に追い詰められ疲弊していきます。

そんな中、父親だけが置かれている状況に否定的で、その場から避けるように仕事を口実に家庭から距離を置き、ジュディを孤独にさせました。

手に負えなくなってきた頃、グラッツェル家は再びウォーレン夫妻に連絡し、二人は家族と再会します。しかし、デヴィッドの状況は最悪になっていて、本人が先か家族が先か、誰かに死が来ることを予告します。

とうとうエドは除霊する時が来たと判断し、教会にそれまでの記録を提出し、悪魔祓いのできる枢機卿の依頼を始めました。

しかし実際の教会は、ウォーレン夫妻とは関わりたくありません。神と悪魔の存在を説き、困っている人々を救うのが聖職者の仕事なはずが、その悪魔の存在に疑問を抱いていたのがローマ教会だからです。

教会が除霊の儀式を避けたため、悩める人々がウォーレン夫妻に助けを求めます。夫妻があらゆる証拠を集め、突きつければ教会は悪魔の存在を認めなければなりません。大司教はすぐにグラッツェル家の問題を把握し、ブリッジポードの教会で除霊式が行われることになりました。

しかし儀式が始まると、デヴィッドは神父の目の前で悪魔に憑依された姿を現し、その存在を知らしめます。床を揺らし体をありえない方向に曲げ、子どもとは思えない力で抵抗し、醜い声で神父を汚い言葉で罵ります。

儀式は進みますが除霊の儀式に効果はなく、デヴィッドはさらに酷く暴れ、見かねたアーニーが押さえつけ「彼に構うな!僕が代わりになる」と叫びます。ウォーレン夫妻は予想外の行動に戸惑い、悪魔に立ち向かってしまったと嘆き、アーニーが呪われてしまったと告げます。

その後、グラッツェル家に以前のような平穏が訪れました。ところがそれは、一時のことでしかありませんでした。

ロレインはブリッジボード警察に出向き、除霊式のことを詳細に説明し「“ナイフ”を使った事件になる」と犯罪の可能性を警告して去ります。そして、その警告は現実となりました。

デビーはアーニーと暮らすために働き出し、その職場の上司アランはアーニーの友人でした。職場の近くにアパートを借り、平穏に生活していたデビーとアーニーでしたが、ロレインは「災いはすぐにはこない。アーニーが弱ってくるのを狙っている」と話します。

除霊の儀式から5ヶ月経った1981年2月、事件は起きます。アーニーはアランとワインを飲んでいましたが、アパートの前で口論となり職場から少し離れた場所で、アーニーはアランをナイフで刺殺してしまいます。

通報で駆け付けた警察にアーニーは逮捕されますが、取り調べの中で「悪魔が刺した」と供述します。事件を担当したのはコネチカット州の刑事グレン・クーパーで、ロレインから「ナイフを使った事件が起きる」と忠告された人物でした。

アーニーには事件の記憶がなく、警察に拘束されている理由もわからないほどに混乱していました。そして、この殺人は悪魔の憑依によるものだと“無罪”を主張する裁判に発展します。

担当したマーティン・ミネラ弁護士は、非科学的なことに否定的で困惑気味でした。しかしウォーレン夫妻やブリッジボードの教会への調査で、悪魔の存在を認めざるを得ない状況になり、法廷で“悪魔”の存在を証明し、アーニーを無罪にする裁判が進みます。

この裁判は多くのメディアも注目しましたが、証拠のないものを取り上げることには慎重でした。教会やウォーレン夫妻を取材し、デヴィッドが憑依されていた時の音声を入手します。

それがラジオで放送されると、肯定派と否定派の意見がぶつかり物議を醸し出します。このことをきっかけにグラッツェル家の真実と、ウォーレン夫妻の裏の姿を浮き彫りにしていきました。

カールはジュディのことを些細なことで怒り、彼女は超常現象に興味はあったが、カトリックの敬虔な信者ではなく、教会に通うことはなかったと語りました。

ウォーレン夫妻の孫クリスは祖父母の繫栄には、実証例によるメディア進出にあると言ったように、グラッツェル家での事も例外なく、祖父母の思惑の術中にあったと話します。それを裏付けるようにグラッツェル家では母のジュディとデビーが、ウォーレン夫妻の華やかな暮らしに感化されていきました。

アーニーの裁判は「殺人」としては無罪となったものの、「過失致死」により懲役20年の“有罪”という判決が出されました。

裁判が終わるとジュディは“時の人”になっていました。テレビに出演しインタビューを受け、最終的にハリウッドへ飛び立ちました。そこにはウォーレン夫妻の姿があり、ロレインは彼女に「金持ちになれる」と吹聴します。やがて本の出版の話が持ち上がります。

しかしグラッツェル家の人々は蚊帳の外になり、ウォーレン夫妻側だけで話が進み4500ドルを手にしますが、ウォーレン夫妻は8万1000ドルを手に入れます。

やがてグラッツェル家の人々は、ウォーレン夫妻に騙されていたのだと気づきました。そして、グラッツェル家は離散してしまいます。

アーニーはデビーと獄中婚し、減刑されたのちに出所すると、デビーが亡くなるまでの間ともに暮らしました。彼の信仰心は深くなり、今も祈りを支えにしています。

長男カールはグラッツェル家の内情を話し始めます。ジュディの死後に遺品整理をした時に、彼女に精神疾患があり薬を処方されていたことを知ります。またジュディはその薬を料理に混入させ、家族に食べさせていたことをメモに告白していました。

カールはジュディの料理を食べていた家族に、薬の影響がでて思考が不安定になり、子どもだったデヴィッドに強い副反応が出ていたのではという疑惑を持ちました。

しかしデヴィッドはその話を信じず、ジュディの愛情を信じ、父の家業を受け継いで仕事に打ち込む彼は「怠け者のところに悪魔は取り憑く」と話すのでした。

映画『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』の感想と評価

「“悪魔”の存在」を認めた裁判とは

ドキュメンタリー映画『トゥルーホラー: 悪魔が私に殺させた』は、“アーニー・ジョンソン事件”という実際の事件が起きた過程の真実を映した映画です。

副題にも「悪魔が私に殺させた」とあるように、裁判での争点は「“悪魔”は実在するのか」を実証するかのような事件でした。

ドイツでも同様の事件で、過失致死罪として禁固6ヶ月・執行猶予3年の有罪の判決が言い渡された裁判がありました。有罪でありながら、悪魔の存在を認めた形の判決と言われています。

ドイツで発生した、アンネリーゼ・ミシェルという女子学生の“悪魔憑き”によるものと思われた死亡事故。教会は悪魔憑きを認め、悪魔祓いを施したもののアンネリーゼは死亡し、裁判へと発展した事件です。

アーニーの弁護士はこの裁判を参考にし、量刑も同様と考えたのでしょう。しかし、結果的にはアーニー・ジョンソン事件の判決の方が重く下されました。

この実話は多数書籍化され、『エミリー・ローズ』(2007)として映画化もされています。

カトリックへの敬虔な心を蝕むもの

カトリック教会の教えの中には悪魔の存在を使って、神の偉大さや奇跡を通じて「信仰の必要性」を説くものもあります。それゆえに“悪魔”の存在を否定する言動はご法度ともいえます。

しかし科学が進歩した現代においては、“悪魔の仕業”と呼ばれる現象も、科学的に証明できる時代に入り、否定も肯定もできない時代に入っています。

ドイツでの事件に関しても、女性が敬虔なクリスチャンであったことからも、宗教的ヒステリーを発症し精神障害となり、周囲の精神障害に対する誤認や保護者の怠慢、虐待によるものと位置づけています。

『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』の証言者たちの話を見ても、酷似している要因があります。違っているのは当時、ウォーレン夫妻がセンセーショナルに登場し、二人の存在が事件を“霊障”と助長していたことです

ウォーレン夫妻がカトリック教に除霊させるのは、自分たちの見解を認めさせるための手段だったのでしょう。「教会は悪魔の存在を否定しない」と知っているからです。

しかし近年のカトリック教会は、古代に行われていた儀式を執り行うことには、慎重にならざるを得ないと理解しています。科学が発展した時代の流れとともに安易に拒否したり、承諾できない立場となったからです。

つまり悪魔祓いが成功しても失敗しても、世間に混乱がおきます。成功すれば教会の信用は安定する反面ビジネスにもつながり、失敗すれば信用が下がりバッシングが待っているからです。

このように慎重な教会を説得するため、多くの証拠が必要でした。夫妻がデヴィッドに起きる現象を記録させたのも、一家を自分たちの術中にはめるための準備ともとれました。

グラッツェル家の人たちはウォーレン夫妻をそのように判断していました。そして、母ジュディが家族に薬を飲ませていたとすれば、不幸な偶然が重なり招いてしまった事件なのだと感じます。

まとめ

映画『トゥルーホラー:悪魔が私に殺させた』は、実際にあった“アーニー・ジョンソン事件”を振り返り、悪魔に取り憑かれた真実と1980年代に注目された、心霊研究家・霊能者の夫婦に見え隠れする闇の部分も追及します。

冒頭にテロップで紹介された「“善人と悪魔の戦い”」。それは「善人=グラッツェル家の人たち」「悪魔=ウォーレン夫妻」を意味するのでは……と最後に連想させました。

「気の持ちよう」という言葉がありますが、本作で描かれた悪魔の存在を巡る事件は、悪魔にではなく、“悪魔の仕業”という概念に取り憑かれてしまった人々の悲劇といえます。

ロレインが「悪魔は弱った頃に憑依する」と言いますが、何かをきっかけにアーニーの心が悪に支配され、悪魔の仕業という概念によって罪を犯しました。

ロレインには本当に霊能力があったのかもしれませんが、彼女自身が悪魔に憑依され思考を奪われ、詐欺的な行為を重ねていたようにも思わせます。そして彼女の力を利用したのが、夫エドだったともいえるでしょう。

神や悪魔は「気の持ちよう」でいかようにも捉えられる。ならばどんな困難が起きても、何かのせいにするのでなく、自信の気持ちが強ければ乗り越えられる……そう思わせてくれるドキュメンタリーでした。

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