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Entry 2019/03/27
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香港映画『みじめな人(淪落の人)』あらすじと感想レビュー。オリヴァー・チャン登壇の舞台挨拶リポート紹介も|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録15

  • Writer :
  • 加賀谷健

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第15回

今年で14回目の開催となる大阪アジアン映画祭。2019年3月08日(金)から3月17日(日)までの10日間、アジア圏から集まった全51作品が上映されました。

今回は3月14日にABCホールで上映された「コンペティション部門」選出作品の香港映画『みじめな人』を取りあげます。

【連載コラム】『大阪アジアン映画祭2019見聞録』記事一覧はこちら

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映画『みじめな人』の作品情報

【公開】
2018年(香港映画)

【監督】
オリヴァー・チャン

【キャスト】
アンソニー・ウォン、クルセル・コンサンジ、サム・リー、イップ・トン、ヒミー・ウォン

【作品概要】

香港の新星女性監督オリヴァー・チャンの長編デビュー作品で感涙必至のヒューマンドラマ。

香港電影金像奨で堂々の7部門にノミネートされています。

映画『みじめな人』のあらすじ

©︎ OAFF

工事現場で事故にあい、全身麻痺状態になってしまった初老の昌榮。

孤独な一人暮らしを強いられる彼のもとに、フィリピンから住み込み介護の家政婦イヴリンがやってきました。

彼女が広東語を話せないことから、昌榮はコミュニケーションにイライラをつのらせます。

ひたむきに介護を続けるイヴリンの態度に、気がつけば二人は親友のような関係になっていくのですが…。

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“HONG KONG NIGHT”の熱気

©︎ OAFF

上映前にはセレモニーが催されました。この日、会場は満席で大賑わい。はじめに香港特別行政区政府 駐東京経済貿易代表部シェーリー・ヨン首席代表から挨拶がありました。

次に出品された香港映画全6作品のキャスト・スタッフが壇上に集結し、客席がさらに沸き立ちます。

各作品の代表者からひと言ずつ挨拶があり、会場が十分に温まったところで『みじめな人』の上映がスタートしました。

映画『みじめな人』の意義

参考映像:『乱世備忘 僕らの雨傘運動』(2016)

2019年の香港電影金像奨で7部門にノミネートされている映画『みじめな人』は、香港映画史にとって間違いなく重要な意味をもつ作品でしょう。

オリヴァー・チャン監督は、香港映画界が長年失っていたローカルな作品作りの精神に原点回帰しています。

1997年の中国返還以降、香港映画の衰退は目に見える勢いでした。多くの巨匠監督たちが大陸に活路を求め、香港での製作本数自体が激減したのです。

それでも2014年に起こった「雨傘革命」が機運となって、新たに野心作が発表されるまでには盛り返してきています。

この革命が若い世代に及ぼした影響は計り知れません。オリヴァー・チャン監督もその影響をダイレクトに受け、映画製作の道を進む“覚悟”を固めたと言います。

とはいえ実際のところ、香港の市場規模には限りがあり、製作資金の出処も僅かなのが現状です。

香港政府の補助金によって製作される本数も年に2、3作品程度に止まっています。

しかし革命を経験したことによって社会に対するリアリティを持つようになった若い作家たちには、今まさに歴史の文脈の中で映画を作っているのだという意識があります。

何より彼らが志向するのは、自分たちは香港人であるという“アイデンティティ”の回復です。

失っていたものを取り戻そうとする強い気持ちが香港ローカルでの映画製作の原動力となり、政府の補助金を受けながら手探りでなんとか“活路”を見出そうとしています。

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アンソニー・ウォンの出演

参考映像:『ザ・ミッション 非情の掟』(1999)

アンソニー・ウォンの存在を世界に知らしめたジョニー・トー監督の映画『ザ・ミッション 非情の掟』。

特筆すべきはローカルな低予算映画にも関わらず、香港のスター俳優であるアンソニー・ウォンが出演していることです。

これはまだ無名の若手監督にとっては大きな後ろ盾となりました。

第12回大阪アジアン映画祭で見事グランプリを受賞した『誰がための日々』(2016)にノーギャラでエリック・ツァンとショーン・ユーが出演承諾していたように、香港映画にはスターシステムと作家性が破綻することなくバランスを取り合う希有な性質があります。

これは、かつてのジョン・ウー監督とチョウ・ユンファの関係性が如実に示していた香港映画の“伝統”なのです。

こうした豊かな土壌が香港映画を世界レベルにまで押し上げ、表現力の高い監督をいつの時代も輩出してきた最大の要因でしょう。

舞台挨拶リポート


©︎ OAFF

客席から鼻をすする音がやまないうちに始まった舞台挨拶には、オリヴァー・チャン監督と進行役の宇田川幸洋氏が登壇。

まず本作を製作した動機について尋ねられると、「社会的に弱い立場の人たちにレッテルを貼らずに、一般の人と同じであることを促すそうと思い、この映画を作った」と話すチャン監督。

香港映画らしい「心優しさ」を感じたという映画評論家の宇田川氏がメイベル・チャン監督の『誰かがあなたを愛してる』(1987)との類似を指摘すると、チャン監督は実際にこの作品を一番意識して作ったと告白しました。

さらに、フィリピン人の家政婦役探しには時間がかかったことや、現場で主演のアンソニー・ウォンさんの広東語スラングがあまりに激しく使えないこともあったというエピソードも紹介。

オリヴァー・チャン監督へ「香港映画のよき伝統が受け継がれている」などと、歓迎の言葉で締めくくられました。

まとめ

この日の上映会では客席が涙で溢れ返っていました。それだけこの作品には多くの人の心を動かす力があったということです。結果的に「観客賞」を受賞したことがその証左と言えるでしょう。

香港人のアイデンティティを伝える作品の上映を続けてきた、大阪アジアン映画祭の香港特集にこれほど相応しい作品もありません。

香港映画の素晴らしさを改めて感じさせる大変意義のある「HONG KONG NIGHT」上映。これは、4月14日に香港文化センターで授賞式が行われる第38回香港電影金像奨での主要部門受賞を大いに期待してよいでしょう。


【連載コラム】『大阪アジアン映画祭2019見聞録』記事一覧はこちら

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