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平成ガメラ3部作に見たシンゴジやウルトラマンとの関係性|邦画特撮大全3

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第3章


(C)1995 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂

2018年6月にTOKYOMXにて、3週間連続放映された“平成ガメラ3部作”。今回取り上げるのは、この“平成ガメラ3部作”です。

先月の放映に合わせ各作品ごとのレビューはすでに執筆しています。

今回は各作品のレビューからもれてしまった情報を中心に構成しました。

一部内容が重なりますが、併せて各作品のレビューも読んでいただけると幸いです。

(*コラムの文末に「平成ガメラ3部作」の各記事のリンクバナーの用意があります)

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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1965年に大映が製作した『大怪獣ガメラ』

そもそも、怪獣ガメラは『大怪獣ガメラ』(1965)でスクリーンデビュー。

東宝の怪獣王『ゴジラ』(1954)に対抗すべく大映が制作した怪獣映画のシリーズです。

シリーズの特色としてガメラは子どもの味方である点、怪獣と必ず対決する点があります。

これらの特色は平成3部作でも描かれました。また平成の世にガメラが復活した理由も、東宝が大森一樹監督の『ゴジラVSビオランテ』(1989)を嚆矢に復活したゴジラシリーズへの対抗なのです。

平成ガメラ・スタッフ奇縁

1989年に東宝が製作した『ゴジラVSビオランテ』

『ゴジラVSビオランテ』の監督は、8ミリカメラによる自主映画出身の大森一樹だったのに対し、『ガメラ 大怪獣空中決戦』の監督に選ばれたのが金子修介です。

金子監督は1978年に日活に入社。ロマンポルノや森田芳光監督の『家族ゲーム』(1983)の助監督などを経て1984年に監督デビュー。

大森監督とは対照的に撮影スタジオの中で育った監督なのです。

実は金子監督の大学の先輩が押井守監督。その縁で金子監督はテレビアニメ『うる星やつら』の脚本を手掛けています。

さらに『うる星やつら』の文芸制作は、ガメラ3部作の脚本家伊藤和典だったのです。

金子監督と脚本・伊藤和典のタッグにより『ウルトラQ』の映画リメイクが企画されましたが実現には至りませんでした。

代わりに実相寺昭雄監督・佐々木守脚本による『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』が制作されます。

時は流れ、1990年代。アメリカで円谷プロダクションが『ウルトラマンパワード』を製作しました。

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『ウルトラマンパワード』の最中、事態は動いていた

これに参加した日本側スタッフが伊藤和典(脚本・文芸設定)、樋口真嗣、前田真宏、三池敏夫(怪獣&メカニックデザイン)。

作品の撮影中、伊藤の元に金子監督から『ガメラ』の脚本オファーが行きました。

この段階で検討用台本が執筆されていました。岡田惠和によるもの、小中千昭と小中和哉が執筆したものの2つです。

ガメラが古代文明の生体兵器という設定は後者の検討用台本から引き継がれたものです。

余談ですが小中千昭がメインライターを担当した『ウルトラマンガイア』(1998~1999)に、伊藤和典は脚本をオファーされました。しかし色々な事情が重なりこれは実現しませんでした。

一方、金子監督は特撮監督を誰にするかで悩んでいました。

樋口は元々怪獣デザイン・絵コンテとして参加する予定でしたが、金子監督と話した結果、特撮監督も樋口真嗣が担当することになります。

金子監督は「この作品で樋口真嗣をスタアにする」というコンセプトを持って撮影に臨みました。

そして、樋口真嗣は現在日本を代表する特撮監督の一人となります。

平成ガメラ3部作の各作品の特長「シュミレーション」


(C)1996 KADOKAWA 日本テレビ 博報堂 富士通 日販

『ガメラ 大怪獣空中決戦』の特徴

第1作『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)は、自衛隊と怪獣が実際に戦ったらというシミュレーション的な面。

説得力のある論理的な展開や怪獣映画としての娯楽性。

これらのバランスが上手くとれた事により高い評価を得ました。

ガメラは子どもの味方(中学生の少女・草薙浅黄とガメラが交信)、ガメラ対怪獣ギャオスといったシリーズの特色も守られています。

『ガメラ2 レギオン襲来』の特徴「戦争」

第2作『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)は、企画当初から「今度は戦争だ」というコンセプトが設定されました。

そのため自衛隊と怪獣の総力戦が映画の柱に設定され、自衛隊VS怪獣(レギオン)という要素が前作より強化されました。

そのため全編にわたってレギオンと自衛隊の攻防が描かれます。

前作の敵ギャオスは昭和シリーズからリファインされた怪獣ですが、今作の敵怪獣レギオンはオリジナルです。

レギオンが環境を改造する生態系という設定は、実現しなかった『ウルトラQ』から引き継がれたものです。

『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』の特徴「世紀末と日本神話」

第3作『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』(1999)は、世紀末1999年公開という事もあり、ノストラダムスの予言、バブル崩壊後の失われた10年、新世紀を迎えるミレニアムなどの世相と相まって、終末的な雰囲気の強い仕上がりになっています。

ガメラとギャオスの闘いによって両親を失った少女・比良坂綾奈の視点から物語が描かれます。

比良坂綾奈という名前は、日本神話に登場する現世と他界の境目“黄泉比良坂”が由来だと考えられます。

国産みの男神イザナギが亡くなった女神イザナミに再会するために黄泉の国へ行きます。

イザナギは醜くなったイザナミの姿を見てしまい、イザナミの怒りを買ってしまいます。

イザナギは追手をまいて黄泉比良坂まで逃げる、というのが神話の大筋です。両親を失っている綾奈は、イザナギ同様過去に囚われているのです。

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他作品への影響・他作品からの影響

2016年に東宝が製作した『シン・ゴジラ』

平成3部作のガメラは、ギャオスに対抗するため超古代文明が造り上げた生物兵器と設定されています。

本作の後『ウルトラマンティガ』(1996~97)、『仮面ライダークウガ』(2000~2001)、2大ヒーローが復活しました。

両作品とも本作同様の超古代文明という設定がキーになります。

両作品ともシミュレーション的なアプローチをされている事もあって、確実にガメラ3部作の影響下にあると考えられます。

公開から二十余年が過ぎた2016年に公開された『シン・ゴジラ』。

監督・特撮監督は樋口真嗣が担当しています(総監督は庵野秀明)。

前田真宏、佐藤敦紀、三池敏夫、竹谷隆之ら平成ガメラ3部作に参加したスタッフの多くは『シン・ゴジラ』にも参加しています。

このように平成ガメラがその後の特撮作品にもたらした影響は非常に大きいのです。

次回の「邦画特撮大全」は…

平成がもうすぐ終わるということで、次回の邦画特撮大全の第4章では、昭和末期の特撮映画『竹取物語』『帝都物語』について紹介していきます。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら



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