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Entry 2023/03/22
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映画『TAR/ター』あらすじ感想と評価解説。ケイト・ブランシェットは主演作で“天才指揮者リディアター”を怪演|映画という星空を知るひとよ147

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第147回

トッド・フィールド監督とケイト・ブランシェットの最強タッグが放つ驚愕のサイコスリラー『TAR/ター』

⾳楽界の頂点に上りつめたと言えるベルリンフィル初の⾸席⼥性指揮者ター。彼女は圧倒的な天才指揮者であり、同時に絶対的な権⼒者としてオーケストラを⽀配しています。けれども、その周囲に少しずつ不穏な空気が流れ始め……。

ターを演じるのは、2023年度アカデミー賞《作品賞》《監督賞》《主演⼥優賞》など主要6部⾨にノミネートされたケイト・ブランシェット。全身全霊で演じ切った‟天才指揮者ター”の怪演に驚愕します。

映画『TAR/ター』は5月12日(金) TOHO シネマズ日比谷他全国ロードショー

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映画『TAR/ター』の作品情報


(C)2022 FOCUS FEATURES LLC.

【日本公開】
2023年(アメリカ映画)

【原題】
Tár

【監督・脚本】
トッド・フィールド

【撮影】
フロリアン・ホーフマイスター

【音楽】
ヒドゥル・グドナドッティル

【キャスト】
ケイト・ブランシェット、ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス、ジュリアン・グローヴァ―、マーク・ストロング

【作品概要】
『TAR/ター』は、天才的な才能を持った女性指揮者の苦悩を描いたドラマ。『イン・ザ・ベッドルーム』(2001)や『リトル・チルドレン』(2006)を手がけたトッド・フィールド監督がまとめました。

主人公リディア・ターには、『アビエイター』(2004)『ブルージャスミン』(2013)でアカデミー賞を2度受賞しているケイト・ブランシェット。

第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、ポルピ杯(最優秀女優賞)を受賞し、第80回ゴールデングローブ賞でも主演女優賞(ドラマ部門)に輝きます。

第95回アカデミー賞では、作品、監督、脚本、主演女優ほか計6部門でノミネートされました。

映画『TAR/ター』のあらすじ


(C)2022 FOCUS FEATURES LLC.

世界最⾼峰のオーケストラの⼀つであるドイツのベルリン・フィルで、⼥性として初めて⾸席指揮者に任命されたリディア・ター。

彼⼥には天才的な能⼒とそれを上回る努⼒、類稀なるプロデュース⼒があり、⾃⾝を輝けるブランドとして作り上げることに成功します。

今や作曲家としても、圧倒的な地位を⼿にしたターですが、マーラーの交響曲第5番の演奏と録⾳のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいました。

「作曲の調⼦は?」「良くないわ」「嫌な⾳が聞こえるの」

誰もいない部屋で鳴り響くメトロノームとピアノの不協和⾳。

不穏な空気感に同調していくように起こる、不可思議な現象と嫌な幻聴にターは悩みます。

そんな時、かつてターが指導した若⼿指揮者の訃報が⼊り、ターはそれに関わるある疑惑をかけられます。

頂点まで駆け上がっている天才指揮者が次第に追いつめられていきます。

映画『TAR/ター』の感想と評価


(C)2022 FOCUS FEATURES LLC.

オーケストラをバックに颯爽とタクトをふる‟リディア・ター”。まるで音楽の申し子のような彼女は、世界最高峰のオーケストラで⼥性として初めて⾸席指揮者に任命された天才的な指揮者です。

そんな‟リディア・ター”は、フィールド監督が創造したキャラクターでもありました。またそのキャラクターは、‟唯一無二のアーティスト、ケイト・ブランシェット”に向けて作られたと言います。

フィールド監督は、子どもの頃から自分の夢を持ち続け、その夢が叶った途端、悪夢に転じるというキャラクターについてずっと考えていたそうです。その発想が、‟リディア・ター”というキャラクター誕生の元となりました。

誰もが憧れる輝かしい天才の履歴を遺すリディア・ターですが、次第に作曲に行き詰まり、私生活にも不協和音が響くようになり、その前途に陰りが見えるようになります。

自信に満ち溢れ、生き生きとオーケストラをまとめるター。新曲の作曲に苦しみピアノの前で悩むター。恋人や以前指導した若手指揮者のゴシップに揺れるター。

さまざまな顔のターを、ゴールデングローブ賞4度目の受賞、べネチア国際映画祭女優賞、全米・NY・LAの批評家協会賞と名だたる賞を独占した俳優ケイト・ブランシェットが、見事に演じ切りました。

天国から地獄へ。180度転じる人生をあゆむターをぜひケイト・ブランシェットに演じてほしいという、フィールド監督の願いは、実現されたと言えます。

豊かな表現力で演じた等身大のターの姿は、観客の注目をあびるに違いありません。

まとめ


(C)2022 FOCUS FEATURES LLC.

天才女性指揮者と評判の‟リディア・ター”の物語。音楽を愛し音楽に生きた彼女が、その音楽によって自滅への道を辿り始めます

タクトを振るう姿も徐々に狂気を伴うター。頂点に上り詰めようとする者のみが知る栄光と挫折の傷痕は、ターの豹変ぶりにも表れます

ケイト・ブランシェットのために用意されたともいえるターの役です。彼女がタクトを振って、身体全体で表現する感動や苦しみの怪演をご堪能下さい。

映画『TAR/ター』は5月12日(金) TOHO シネマズ日比谷他全国ロードショー

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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