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Entry 2021/03/18
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映画『エクソシスト ビギニング』ネタバレあらすじ感想と評価解説。魔人パズズと妻の魔人ラマシュトゥとは ⁈|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー28

  • Writer :
  • からさわゆみこ

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第28回

深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。

そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第21回は、映画『エクソシスト ビギニング』です。

本作は1973年に公開され世界中にオカルトブームをまき起こした、映画『エクソシスト』で、悪魔に憑りつかれた主人公のリーガンに、悪魔祓いを施したメリン神父にフォーカスし、彼がエクソシストとなったきっかけを描いた作品です。

監督は『エルム街の悪夢4』(1989)が、ハリウッド初監督でこの作品のヒットによりブルース・ウィリス主演のヒットシリーズ『ダイ・ハード2』(1990)、シルベスタ・スタローン主演『クリフハンガー』(1993)などが代表作となった、レニー・ハーリンが務めます。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら

映画『エクソシスト ビギニング』の作品情報

(C)2004 Morgan Creek Productions.

【公開】
2004年(アメリカ映画)

【原題】
Exorcist: The Beginning

【監督】
レニー・ハーリン

【脚本】
ウィリアム・ウィッシャー、アレクシ・ホーリー

【キャスト】
ステラン・スカルスガルド、 ジェームズ・ダーシー、イザベラ・スコルプコ、レミー・スウィーニー、アンドリュー・フレンチ、ジュリアン・ワダム、デイビッド・ブラッドリー、アラン・フォード、ラルフ・ブラウン、アントニー・カメルリング

【作品概要】
主演は『The Simple-Minded Murderer』(1982)で、ベルリン国際映画祭の男優賞を受賞し、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのビル・ターナー役、第76回ベネチア国際映画祭で賛否両論をまき起こしながら、ユニセフ賞を受賞した『異端の鳥』(2020)に出演した、ステラン・スカルスガルドがメリン神父役を演じます。

共演は『007 ゴールデンアイ』(1995)のボンドガール、イザベラ・スコルプコがドクター・サラ役、『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(2011)のジェームス・ダーシーがフランシス神父役を務めます。


映画『エクソシスト ビギニング』のあらすじとネタバレ


(C)2004 Morgan Creek Productions.

おびただしい数の兵士の遺体が横たわり、それに群がるカラスのいる砂漠に、1人の司教がさまよい歩いている。

彼は怯え切った表情のまま祈りを唱え、ある若き神父の亡骸を見つけるとに近づいた。

神父の手元には悪魔を模った像の頭が転がっていて、司教がそれを拾おうとしたとき、突然神父は司教の腕を掴み、何かを訴えると絶命します。

風が吹き荒れる中、司教の目の前には軍の兵士や先住民が、逆さの十字架にはりつけとなった地獄絵図が遥か遠くまで広がっていた。

第二次世界大戦の終戦から4年が経った1949年、世界中の遺跡を巡る、聖像(イコン)を専門の考古学者ランカスター・メリンは、エジプトのカイロに辿り着いていました。

メリンがバザールの酒場で酒を飲んでいると、収集家の秘書をしているという男のセメリエが、「電報を打った」がと声をかけてきます。

セメリエの用件は東アフリカで発見された、5世紀ころの教会の遺跡から、古代神話に出てくる悪魔の彫像を捜し、持ってきてほしいというものでした。

メリンは5世紀ころの東アフリカにはまだ、キリスト教は広まっていないと話すが、セメリエは実際にイギリスが発見し調査がはじまっていると、古い悪魔の顔の革細工のようなものを出します。

セメリエは「それと同じような顔をした彫像を持ち帰ってくれ」というと、興味を示したメリンに現金を差し出し、発掘にメリンが参加する許可まで取り付けていると告げます。

ケニアのナイロビにあるイギリス軍司令部に、メリンは訪れ軍隊の行進訓練の足音を聞きながら、神父をしていたころのことを思い出しかけていました。

発掘担当者のグランヴィル少佐は遺跡の場所を、トゥルカナ地方のデラーティだと説明していると、部屋に宣教師のフランシス神父が入ってきます。

フランシスは遺跡への同行者です。彼は神学校時代にメリンの書いた、儀式に関する著作は力作だと敬意を示しました。

彼は布教で訪れたタイミングで遺跡が見つかり、教皇庁から“汚されないように見張れ”と命ぜられたと話します。

フランシス神父は誰がどんな目的で建てた教会なのか、教皇庁の記録には残っていない教会で、手探りな状況だとメリンを頼りにしました。

メリンとフランシスは通訳のチューマに、発掘現場まで案内されます。途中多くの小さな十字架が立ち並ぶ墓地にさしかかりました。

チューマは50年前に流行した、疫病で死んだ者達の墓だと説明します。メリンが何人亡くなったのか聞くと「村人全員だ」と答えます。

現地の村に到着すると酒場で現場監督のジェフリースと、医師のサラ・ノバックに会います。

顔に奇妙な疱瘡があるジェフリースは、建物はしっかりしているが、誰も教会に近づこうとしないため、調査作業は進んでいないと伝えます。

ジェフリースは多くを語らず5分後に現場へ行くと言って酒場を出ました。メリンはなぜ村人は教会に近づかないのかと、サラに聞くと「悪霊がいると信じているから」と答えます。

サラは悪霊の存在を信じていないが、メリンは“神父”だから信じるかと問われると、今は考古学者だと答えます。フランシス神父がメリンを神父だと紹介していたのです。

フランシスは布教活動に使っているホテルのオーナー、エメクイと2人の息子兄ジェームスと弟のジョセフにも「神父」としてメリンを紹介します。

メリンとフランシスは教会のある遺跡現場へ向かいます。メリンは屋根の部分だけ出土した教会に近づき、壁に付いた土を掃い装飾されたタイルを見ると言います。

「何か変だ・・・。1500年も経っているのに風化していない。まるで完成してすぐに埋められたようだ」

以下、『エクソシスト ビギニング』ネタバレ・結末の記載がございます。『エクソシスト ビギニング』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2004 Morgan Creek Productions.

メリンがチューマにジェフリースはどこか声をかけると、遺跡の周囲にハイエナの群れが現れます。チューマは昼間でもよくハイエナは現れると話します。

すると今度は作業をしている村人に異変がおこり、卒倒するとけいれんし始めます。チューマは介抱するためその場に残ります。

仕方なくメリンが探しに離れようとしたとき、発掘中の岩場にジョセフが通り過ぎるのをみつけ、あとを追います。

ジョセフは“岩を集めている”と言うと、メリンは発掘用の“コテ”をジョセフにあげました。

メリンはジェフリースに教会の中に入ることはできないか訊ね、自分は入らないがチューマは屋根から入ると言われます。

メリンが教会の中に入ると、あとからフランシス神父も入ってきます。教会の中は守護神像があり、壁には宗教画が描かれていました。

壁画には堕天使ルシファーが描かれています。そして、フランシスは「神を讃える場なのに、槍が下に向けられている」と、言います。

フランシスが全体を照らすと、その背後にさらに奇妙なものが現れました。十字架に磔になったキリストが、逆さに吊るされていたのです。

キリストは守護神像に囲まれた中央にあったようですが、十字架が根元で人為的に折られたようでした。

メリンはチューマに自分達よりも先に入った者を知らないか訊ねると、学者ベシオンの名をあげます。メリンは彼に会いたいと言うと、精神を病み無理だと教えます。

チューマはベシオンが使っていたテントを案内します。テントの中にはベシオンが描いたものとみられる、地獄のような絵が散乱していました。

その中にはメリンがセメリエから捜してくるよう言われた、悪魔の彫像の絵もあります。そして、テントにはアラム語で「悪魔が地上に現れ、大勢が死ぬ」と、血のような赤で書かれていました。

メリンはサラのところに行き、ベシオンを治療したか訊ねますが治療はしておらず、重度の精神疾患だったと話します。

人が遺跡に近寄らない原因はそれかと訊ねると、多くの人が姿を消し行方不明になっていると言います。

テントでケガをしたメリンはサラから手当をうけていると、サラのうでに刻まれた数ケタの数字を見てしまいます。それはナチスの収容所で付けられる刻印でした。

サラは収容所で夫と出会い、結婚し一緒にアフリカへ来たと話します。ところが収容所でサラが受けた仕打ちのことを話すと、とたんに冷淡になってしまったと告白します。

そして、サラはメリンに神父を辞め、考古学者になった理由を聞きます。メリンは“実態のないものに虚しさを感じた”と答え、サラは「神は地獄から見るべきかも」と言います。

メリンはナイロビまでベシオンに会いに行くと告げると、サラは病院長をしているジオネッティ神父に会うよう伝えます。

その晩、フランシス神父が壁に掛けたキリスト像に祈りを捧げ目をあけると、その十字架が逆さになっており動揺します。元に戻しても彼が部屋を出ると、また逆さになります。

一方、メリンは部屋でベシオンの描いた悪魔の絵を見ていると、神父だった時の忌まわしい記憶に苦しめられます。

ドイツ兵が教会に集った無抵抗の市民を銃殺し、1人の将校がその娘にも銃口を突きつけ「メリン神父、今日は神はいない」と、言い発砲したのです。

宿の中庭ではオーナーの息子ジェームスが、ペットの猿と井戸の水を飲んでいます。そこに弟のジョセフが来て、置き忘れた“コテ”を取ろうとしますが、兄に奪われてしまいます。

兄弟が返して返さないの言い合いをしていると、猿が激しく鳴き叫び騒ぎ出し、どこからともなくハイエナが飛び出してきて、猿を嚙み殺しジェームスに襲いかかろうとします。

ジェームスは父親を呼んでこいと怒鳴りますが、ジョセフは出てきた数頭のハイエナの背後から傍観しています。

ハイエナたちはジョセフには目もくれず、ジェームスだけに襲いかかり、腕や足、首を食いちぎり連れ去ってしまい、ジョセフは失神し倒れてしまいました。

翌日、聖ヨハネ療養所へ出向いたメリンは、背中を向け何かしているベシオンの部屋にきます。扉は施錠されており人を呼ぼうとすると、扉は自動的に開き彼は中に入ります。

メリンはベシオンに彫像の絵を描いているが、彫像はどこにあるのか訊ねると、彼は背中を向けたまま笑うだけです。しかし、おもむろに「メリン神父だな?」と話しかけます。

名前を言われたメリンは驚き、どこで知ったのか聞くと、激しく扉が閉まりベシオンの足下には血がしたたり落ちます。

立ち上がり振り向いたベシオンの胸には、ガラスの破片で傷つけた鍵十字の印がありました。

彼は胸に手をあてると「自由になれる。今日は神はいないぞ。神父」とメリンしか知り得ない言葉を発すると、持っていたガラス片で頸動脈を切り、自死してしまいました。

メリンはジオネッティ神父になぜ、自分の名を知っていたのか問いかけます。ジオネッティは「神の教えを忘れたのか?彼は悪魔と接した」と言います。

メリンは悪魔の乗り移りなら信じないと言います。ジオネッティは“接しただけ”と言い、1647年にフランスの修道院でおきた“悪魔祓い”の話しをします。

4人の神父が悪魔祓いに行ったが、そのうちの3人は憑りつかれ命を失い、“接しただけ”の1人もベシオンのように、正気を失ってしまったと話します。

最後にジオネッティはまだデラーティに悪魔は残り、心を支配するため巧みに嘘をつくから気をつけるよう助言し、メリンに“ローマ儀式書”を手渡しました。

メリンは神父じゃないから悪魔祓いなどしないと反抗しますが、ジオネッティは「今でも神父だ。信仰が君を救う」と告げました。

メリンはベシオンの描いた絵の真相を探るために、再び教会に入ると逆十字の下にある、棺台の縁から風を感じこの中に何かあると考え、蓋をこじ開けようと試みます。

メリンが棺台の蓋を動かすと、空洞が現れ地下に続く階段がありました。メリンが中へと進んでいくとベシオンの描いた悪魔の石像をみつけます。

その胸の真ん中には何かが収まっていたようなくぼみがありました。

その頃、村では族長の妻が子供を出産しますが、ウジの湧いた状態の死産でした。そして、サラにもナチスからうけた拷問により、生理もないのに出血するという異変が起きていました。

サラはメリンにこの村には邪悪な者がいると訴えます。メリンは地下には人間をいけにえにした神殿があると話し、教会は清めるために建てられたと推測します。

翌朝、ジェフリースの姿は消え、酒場に折れた歯と血だまりが残っています。フランシスは族長の妻が死産したのは、白人のせいだと恨んでいると伝えます。

フランシスは村人から襲われることを恐れ、用心のため軍の小隊を呼んでいました。

メリンは疫病で死んだ村人の墓は誰が作ったのかと、疑問を抱き葬儀中の族長のところへ向かいます。

メリンは族長に50年前の疫病のことを訊ねると、族長は疫病などではなく、教会の悪霊の仕業だと語ります。

そして、エメクイの子(ジョセフ)に乗り移り、力を増していると警告し、発掘を中止しなければ襲うと忠告しました。

メリンが真実を話すよう言うと、族長は見ていればすぐにわかると返し葬儀にもどると、死産した子は“火葬”されます。

火葬する習わしでありながら、墓を作ることに違和感を感じたメリンは、墓を掘り起こすと埋められていたのは、十字架の彫られた空の棺だけでした。

メリンはフランシスに、教会の指示で作らされたのではないかと疑問をぶつけ、事実を話すようつめ寄ります。

フランシスは観念し、1500年前、この地に2人の神父が率いた軍隊が“悪魔の起源”をさがしに訪れ、憑りつかれ兵士同士が殺し合うという、大量殺戮があったことを話し始めます。

生き残った1人の神父が、祖国の皇帝に報告するとそこに教会を建てて埋め、悪魔を封じ込め記録も消し去れと命じました。

ところがその記録が教皇庁に手紙として残っていて、1893年に住民の協力を得て調査をはじめたが、次々と住民が姿を消したため、誰も近寄らないよう疫病で死んだことにしたのです。

そして、偶然イギリス軍が遺跡をみつけてしまい、フランシスはこの地が、“ルシファーが天を追われ落ちた場所”、ではないかと思い調査したいがために黙認したのです。

ジェフリースの遺体は神殿の中でみつかりました。小隊のグランビル少佐は村人の仕業だと思い、銃を取り出し外にでます。

外では村人が騒ぎをおこしていました。族長は兵士たちに「おまえらは害悪。平和なこの地に悪魔を連れてきた」と言います。

それを聞いていたグランビルは族長に銃を向け発砲し、殺害してしまいました。チューマは村人が悪魔はジョセフの中にいると信じ、殺す気だとメリンに伝えます。

メリンはジョセフをナイロビの療養所に連れて行こうとしますが、突然砂嵐が迫ってきて逃げられなくなります。教会に隠そうとフランシスは言い、メリンは“ローマ儀式書”を彼に渡し託します。

遺跡と村では兵士と村人が一触即発の状態になっています。メリンはサラを探して気配がした彼女の部屋に入ると、壁には悪魔の絵と胸に彫像が埋め込まれていました。

散乱した部屋のベッドに、ベシオンとサラの挙式写真をみつけたメリンは、2人が夫婦だったことで、サラも教会に入ったと悟ると、悪魔はサラに乗り移っていると確信します。

ジョセフの悪魔祓いを始めたフランシスの背後に、豹変したサラが現れ襲いかかり、外では軍と村人との戦いが始まり、やがて敵味方ない殺戮となっていきました。

メリンが教会にたどり着くとフランシスの姿はなく、ローマ儀式書、聖水、ロザリオが残されていました。

メリンは状況を把握し、神に疑念を抱いた罪を悔い改め懺悔し、再び神に忠誠を誓うと目の前にジョセフが現れ、その頭上に悪魔に憑りつかれたサラの姿がありました。

サラはジョセフを使ってメリンを地下洞窟へ誘き寄せ、悪魔に憑りつかれたサラと改心したメリン神父は対峙することになります。

映画『エクソシスト ビギニング』の感想と評価


(C)2004 Morgan Creek Productions.

映画『エクソシスト ビギニング』は、「エクソシスト」で救世主となったメリル神父の過去に迫ったストーリーでした。「エクソシスト2」でもこのメリル神父は謎の存在として登場し、1人のアフリカ人少年を悪魔から救い、成長して存在している・・・という、くだりが出てきます。

その少年が“ジョセフ”なのかと思いましたが、「エクソシスト2」で言われる少年の名前は“コクモ”なので、これとは繋がりませんでした。

「エクソシスト」シリーズは、リーガン、サラと女性に憑りつく悪魔が出てきますが、その題材となっている悪魔は主に“パズズ”と呼ばれる魔人で、『エクソシスト ビギニング』に出てくる彫像もパズズです。

魔人パズズと妻の魔人ラマシュトゥ

メソポタミア文明から誕生した、魔人パズズはその醜い顔によって、あらゆる悪魔をもたじろがせた力があったため、魔除けに使われていたともいわれています。

また、パズズには妻がいたともいわれ、それが“ラマシュトゥ”と呼ばれる魔の女神です。ラマシュトゥはパズズと別れたあと、宿敵関係になったと言い伝えられています。

ラマシュトゥは生まれたばかりの赤ん坊や妊婦に興味を持ち、子供を誘拐したり、妊婦から胎児を引きずりだし喰らう悪魔だといわれ、犬などの獣も巧みに操ります。

ラマシュトゥはパズズの醜い顔を恐れたので、メソポタミア時代では、幼い子供のいる母や妊婦は護符として、パズズを持ちラマシュトゥから保護していました。

また、ラマシュトゥは男性を誘惑する、“淫魔”とも呼ばれているので、エクソシストに登場する悪魔は“ラマシュトゥ”という説も考えられるでしょう。

この2つの悪魔が元夫婦で敵対していたと知ると、ベシオンがサラに対して冷淡になったことで、夫婦関係が微妙になったサラに憑依した要因とも考えられます。

もう1つの『エクソシスト ビギニング』


(C)2004 Morgan Creek Productions.

「エクソシスト」シリーズといえば、製作に関わった関係者に不幸が起こるという、曰くつきの作品です。本作に関しては当初、監督がジョン・フランケンハイマーで決っていたところ急逝し、ポール・シュレイダーによって撮影されました。

ところが完成したものを見た製作会社から、“恐怖”が少なく地味な仕上がりだとダメ出しがあり、レニー・ハーリンの監督でシーンが追加され再構成し、劇場公開がされたという経緯がありました。

よって、映画『エクソシスト ビギニング』には2パターンあり、DVD化し仕上がりの違う2つの“ビギニング”を見比べる・・・といった企画も持ち上がりましたが、それは幻となりポール・シュレイダー作品は、2005年期間限定で劇場上映がされました。

ポール・シュレイダー監督のビギニングも気になりますが、“地味”という意味では、2019年の監督作品『魂のゆくえ』のような精神に訴えるイメージを思い浮かべます。

やはり、「エクソシスト」シリーズは一筋縄ではいかない、曰くの多い作品だといえるでしょう。

まとめ


(C)2004 Morgan Creek Productions.

映画『エクソシスト ビギニング』は、第二次世界大戦時にナチスの残虐行為により、神に仕える神父でありながら、その片棒を担がされてしまったメリンが、自責の念と神の存在に疑念を抱き、神父を辞め葛藤の末、悪魔と対峙したことで、エクソシストとしての一歩を踏みだしました。

何を信じていいのかわからない。自分でさえも信じられなくなる・・・生きているとそういう壁や場面にぶつかることもあるでしょう。

逃げていてもなんの解決にもならないことや、疑心暗鬼は和を乱すということを映画『エクソシスト ビギニング』は、疑似的にそれを感じさせました。

【連載コラム】「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」記事一覧はこちら






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