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Entry 2021/10/17
Update

Netflix映画『スヘルデの戦い』ネタバレあらすじ結末と感想評価。戦争アクションに見る“3人の人物の交錯”|Netflix映画おすすめ60

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第60回

2021年10月15日(金)にNetflixで配信された、オランダ・リトアニア・ベルギー合作の戦争アクション・アドベンチャー映画『スヘルデの戦い』。

第二次世界大戦時のスヘルデの戦いで、グライダーパイロットやナチス兵士、レジスタンスに仕方なく加担した女性たち3人の悲しく交錯する運命とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.が監督を、ヘイス・ブロムが主演を務めた、オランダ・リトアニア・ベルギー合作の戦争アクション・アドベンチャー映画『スヘルデの戦い』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

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映画『スヘルデの戦い』の作品情報


Netflix映画『スヘルデの戦い』

【配信】
2021年(オランダ・リトアニア・ベルギー合作映画)

【脚本】
パウラ・ファン・デル・ウースト

【監督】
マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.

【キャスト】
ヘイス・ブロム、ジェイミー・フラタース、スーザン・ラデル、テオ・バークレム=ビッグス、ヤン・ベイヴート、マルテ・シュナイダー、スコット・リード、ロバート・ネイラー、トム・フェルトン、ロナルド・カルター、ユストゥス・フォン・ドナーニー、クーン・ブリル

【作品概要】
『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(2012)のマティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.が監督を務めた、オランダ・リトアニア・ベルギー合作の戦争アクション・アドベンチャー作品です。

ファンタジーなテレビドラマシリーズ「王への手紙」のヘイス・ブロムが主演を務めています。

映画『スヘルデの戦い』のあらすじとネタバレ


Netflix映画『スヘルデの戦い』

第二次世界大戦中の1944年6月6日。連合軍(アメリカ・イギリス・カナダ)が、フランス・ノルマンディーに上陸。

敵対するナチス・ドイツ軍(以後、ドイツ軍と表記)との2ヵ月にわたる攻防戦の末、ドイツ軍は算を乱して後退していきました。

1944年8月11日。フィンランドと東プロイセンの侵略に有利な拠点として、エストニアを再占領することを目的としたソ連軍は、エストニア・ナルヴァ攻勢により、ナルヴァ奪取に成功。

ナルヴァにいたドイツ軍は、ナルヴァから16キロ南のブルーマウンテンにある3つの丘に構築した、タンネンベルク線へ撤退せざるを得ませんでした。

ドイツ海軍のオランダ人兵士マリヌス・ファン・スタベレンは、このナルヴァでの戦いで左半身を負傷してしまいます。

後日、搬送先の病院で目を覚ましたスタベレンは、両足を失ったドイツ軍の将校と会い、彼と親睦を深めていきました。

一方、連合軍は物資供給のために、早急に港を押さえる必要がありました。ドイツ占領下のフランス・パリやベルギー・ブリュッセル、ベルギー・アントウェルペンを次々と奪還し、連合軍はアントウェルペン港を解放。

アントウェルペン港の港湾施設は、従来の状態を保っていました。しかし港に通ずる、フランス・ベルギー・オランダを流れる国際河川、「スヘルデ川」の河口をドイツ軍が支配しているため、連合軍は港まで到達できませんでした。

1944年9月5日、ドイツ軍の一部が、スヘルデ川の南岸からオランダ・ゼーラント州フリッシンゲンへ退却。

ドイツに占領されたオランダの人々は、解放は目前であると考えていました。

9月16日、オランダ・ワルヘレン。しかし、連合軍はまだオランダに来ておらず、退却したドイツ軍が戻ってきてしまいました。

ワルヘレンを防衛するドイツ軍のベルクホーフ大佐は、ナチスの旗を掲げた市役所を訪問。

市長のオストヴェーンに、先日ドイツ兵とトラブルを起こした青年を見つけ出し、拘束するよう命じます。

オストヴェーンのもとで働いていたオランダ人女性トゥン・ヴィッサーは、職場内である噂を耳にします。

「犯人と疑われた無実の青年ウィムら3人が逮捕され、処刑されそうになっている」

ドイツ兵とオランダ人青年のトラブルの一部始終を見ていたトゥンは、帰宅後、地下室にいる弟ディルクに、ドイツ軍が犯人探しをしていることを伝えました。

ドイツ兵とトラブルになったオランダ人青年とは、ディルクのことだからです。

退却するドイツ軍の姿をカメラで撮影していたことがバレて、ディルクはドイツ兵とトラブルになり、カメラを壊された腹いせに、ドイツ軍の車に石をぶつけました。

ディルクはトゥンに、パン屋で働くトゥンの友人ヤンナへの伝言を頼みます。

「レジスタンス(対ドイツ抵抗組織のこと)に聞いて、隠れ家を手配して欲しい」

ヤンナはパン屋で働く裏で、レジスタンスと繋がっていました。トゥンはヤンナに、ディルクが捕まるかもしれないことを伝え、隠れ家を手配してもらうよう頼みます。

一方連合軍は、ドイツ軍が占領する地域へ一挙に進攻する計画、「マーケット・ガーデン作戦」を決行することにしました。

このマーケット・ガーデン作戦の内容は、ドイツへの進撃で大きな障害となる、オランダ国内の複数の河川を超えるために、空挺部隊を使用して同時に多くの橋を奪取するということでした。

この作戦を成功させ、オランダの港湾施設を使用可能状態にすれば、連合軍が抱える兵站問題を解決することができます。

イギリス人グライダーパイロットのウィリアム・シンクレアは、空挺部隊に加わって一緒に戦いたいと思い、指揮官である父親のシンクレア大尉にその許可を求めます。

シンクレア大尉は幼少期から十分な訓練を訓練を積んでいるとはいえ、危なっかしい操縦をする息子の身を案じて、地上に残るよう命じました。

しかしウィリアムは諦めきれず、上官であるトニー・ターナー中尉に「許可をとった」と嘘をつき、作戦に参加するイギリス軍の空挺部隊に加わります。

一方、すっかり傷が癒えたスタベレンは、戦線復帰しようと強襲部隊へ志願し、連合軍が侵攻してきているオランダへ派遣されることになりました。

そのことを知ったドイツ軍の将校は、未来ある彼の身を案じてコネを使い、ゼーラントにあるドイツ軍司令部の事務職に配属させます。

その日の夜。ドイツ軍の将校は、明日オランダへ旅立つスタベレンにそのことを伝えた後、病室の外で拳銃自殺しました。


Netflix映画『スヘルデの戦い』

9月17日、連合軍はマーケット・ガーデン作戦を決行。空挺部隊は24の飛行場から、軍機やグライダーに乗ってそれぞれ出発。

敵戦線の100キロ後方に上陸し、オランダ・アーネムを奪還しようとします。

しかし、ターナーとウィリアムが操縦するグライダーは、敵襲を受け左翼が破壊されてしまい、ドイツ軍によって水没させられたオランダの南西部にあるスハウウェン島へ墜落。

しかも墜落したところを敵に見られてしまったため、急いでその場から離れなければなりません。

ウィリアムは空挺部隊のヘンク・シュナイダーと、ナイジェルとジョンと協力し、重傷を負ったターナーを乗せたボートを引っ張り、近くの陸地にあった小屋に避難します。

一方、病院から帰ってきたヴィッサー博士は、突然家に訪ねてきたベルクホーフの左足に応急処置を施した際、ドイツ軍司令部に息子を連れて来るよう命じられました。

実は、ディルクが投げた石によって起きた事故で死んだのは、ベルクホーフが率いる部隊の兵士たちだったのです。

その後ディルクとトゥンは、今まで黙っていたドイツ兵とのトラブルについてヴィッサー博士に告白。親子3人で話し合った結果、ヴィッサー博士はディルクが自首したとしても、実刑判決ではなく、最悪終身刑にとどめてもらうよう、ベルクホーフに掛け合ってみることにしました。

トゥンを連れて、司令部へ足を運んだヴィッサー博士は、ベルクホーフにこう言いました。

「息子はテロリストではないし、不注意でやってしまったと反省している。息子には自首させるから、その代わり、逮捕された少年の釈放と、息子の処罰を最悪でも終身刑にとどめてほしい」

これに対しベルクホーフは、ドイツ兵や自分を治療してくれたヴィッサー博士への恩返しとして、「軽い刑に済むよう取り計らおう」と言いました。

以下、『スヘルデの戦い』ネタバレ・結末の記載がございます。『スヘルデの戦い』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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Netflix映画『スヘルデの戦い』

しかしその実、自首したディルクは、ベルクホーフにレジスタンスに加わっていたことがバレて、彼の部下たちに拷問されてしまうのです。

拷問から1時間後、激痛に悶え苦しみながら抵抗し続けていたディルクは、ついにレジスタンスのメンバー全員の名前を吐いてしまいました。

ディルクと彼が話した5人は処刑されることが決まり、ベルクホーフのアシスタントとして働いていたスタベレンは、敵と味方に分かれてしまったとはいえ、同じオランダ人であるディルクを救おうとします。

しかしスタベレンがトゥンに接触し、ディルクを救おうとしたことはすぐにバレてしまい、最前線に送り込まれてしまいました。

一方トゥンは、捕まった弟を救うべく、ヤンナに取り次いでもらってレジスタンスと接触し、弟が撮影した写真を直接手渡します。

さらにトゥンは、レジスタンスが必要とするスヘルデ川の河口周辺の地図を手配し、それを渡す代わりに弟を救ってくれるという取引をしました。

しかし、レジスタンスがヤンナ経由で地図を受け取った直後、彼らの元へドイツ兵が襲来。4人が捕まり、レジスタンスのピム・デン・オーエバーがその場から逃走しました。

それから間もなく、レジスタンスの4人とディルクは、最前線へ赴くスタベレンたちドイツ兵によって処刑されてしまいました。

ヴィッサー博士の懇願もむなしく、ディルクが処刑されてしまい、絶望するヴィッサー親子。トゥンはヤンナの元を訪ねると、そこには撃たれた腹の傷を抱えたピムもいました。

ピムは地図と写真を取り出し、トゥンたちにレジスタンスがしようとしていたことを伝えます。

ディルクが危険を冒してまで、ドイツ兵たちがスヘルデ河口北部(南北ヴェファラント及びワルヘレンからなる半島)の先端に、スヘルデ川河口要塞を構築していることを突き止め、スヘルデ川河口要塞をカメラで撮ってきてくれたこと。

向こう岸に連合軍のカナダ兵がいますが、彼らは塹壕に潜んで待ち構えているドイツ兵がいることを知らないため、このまま土手道を渡って侵攻すれば皆殺しにされてしまうこと。

ただ満潮時に、スヘルデ川の河口まで続く水路を使えば、連合軍はドイツ兵たちの背後をとり、奇襲をかけることが可能であること。

以上のことを話したピムは2人に、自分の代わりに連合軍のところへ行き、地図と写真を渡して欲しいとお願いします。


Netflix映画『スヘルデの戦い』

一方ウィリアムは、ターナーたちと共に小屋で一晩明かし、食料を恵んでくれた小屋の持ち主から聞いた、ゼーラントに向かったカナダ兵と合流しようとしていました。

しかしその道中、島の反対側にあるゼーラントへ向かうことを諦めたナイジェルとジョンが離脱。ボートを持っていかれてしまいます。

ウィリアムとヘンクはやむを得ず、皆で一晩明かした浸水した一軒家に、動けないターナーを残して、代わりのボートを探しに行きました。

結局、代わりのボートは見つからず、一軒家に戻るウィリアムたち。しかし一軒家には、ドイツ兵のフリッツとヘルマンがおり、フリッツがターナーを捕まえ、ヘルマンが家の中を物色していました。

ウィリアムはヘルマンを返り討ちにし、人質にとられたターナーを救出するべく、彼の頭に銃を突きつけるフリッツに、銃を下ろせと叫びました。

しかし味方をやられ、錯乱したフリッツは銃を下ろそうとせず、挙げ句の果てにターナーを射殺。

ウィリアムは即座にフリッツを殺し、ターナーを助けられなかった悔しさに打ちひしがれつつ、仲間を殺したドイツ兵への怒りに燃え、生かしておいたヘルマンも射殺しました。

その後、ヘルマンたちが乗っていたボートを引き、ウィリアムたちはゼーラントへ向かいました。

しかしその道中、今度はヘンクが離脱。1人になってしまったウィリアムは、ボートを漕いでゼーラントへ向かい、無事カナダ軍と合流しました。

しかしその日の夜、カナダ軍が対岸へ渡って侵攻する前に、対岸へ渡る土手道に地雷を仕掛けたドイツ軍によって、土手道の中央が爆破されてしまったのです。

同時刻、ボートを見つけて連合軍のところへ行こうとしたトゥンたちが、ドイツ兵に見つかってしまいます。トゥンはヤンナだけでも助けようと、地図と写真が入った鞄を彼女に託し、彼女が乗ったボートを押して遠ざけました。


Netflix映画『スヘルデの戦い』

翌朝。ウィリアムは仲良くなったカナダ兵のビルや、他のカナダ兵たちと一緒に、土手道を走って向こう岸へ渡ろうとします。

これに対し、ドイツ軍は向かってくる敵目掛けて攻撃を開始。ウィリアムたちはビルたちカナダ兵と共に、上手く隠れる場所を探しながら前進していきましたが、敵に近づけば近づくほど、犠牲者は増えていく一方でした。

やむを得ず後退する連合軍。ウィリアムはビルと一緒に後退しようとしますが、直前で撃たれてしまったビルはすぐには動けず、自分を置いて逃げるよう促します。

連合軍は大勢の犠牲者を出したものの、生き残ったウィリアムとカナダ兵たちは、対岸にある自陣へ無事帰還。

それと同時に、連合軍に救助されたヤンナは、震える手で衛生兵に鞄を手渡します。それから間もなく、ヤンナは静かに息を引き取りました。

ヤンナから貰った地図と写真を見て、向こう岸にいるドイツ軍の位置や武器を把握した連合軍は、干潮時を狙って二手に分かれ、ドイツ軍の前と後ろから奇襲を仕掛けることにしました。

全てはピムが考えていた通り。奇襲作戦が上手くいった連合軍は、スヘルデ川河口要塞にいるドイツ兵たちと銃撃戦を繰り広げ、次々と殺していきます。

その中で1人、ドイツ兵がスヘルデ川河口要塞から逃亡。ウィリアムが追いかけたそのドイツ兵は、スタベレンでした。

ウィリアムはスタベレンと対峙し、背後をとった彼に殺されそうになりましたが、彼は殺す気がないのか、銃を下ろしてその場から立ち去ってしまいました。

ウィリアムはスタベレンが去った後、撤収するカナダ兵たちと合流。その際、死んだかと思っていたビルの生存に気づき、衛生兵に手当てされている彼を見て安堵の笑みを浮かべました。

連合軍はこのスヘルデの戦いに勝利し、アルトウェルペン港へ渡り、ドイツ兵が残留する港周辺の街の制圧していきます。

その戦いの最中、街にいたスタベレンは、ドイツ兵に殺されそうになっているトゥンを救出するべく、2人がいる牢屋へ突入。スタベレンはドイツ兵と揉み合いの末、彼の顔をタコ殴りにして殴殺します。

トゥンを救うことは出来たものの、スタベレンはドイツ兵に撃たれた腹の傷が致命傷となり、彼女が止血するもむなしく、彼女を見つめて涙を流したまま死んでしまいました。

ウィリアムはそんな2人を呆然と眺め、そのまま2人に背を向け、他のカナダ兵たちと一緒に車に乗り込みます。

連合軍に保護されたトゥンは、街を制圧した彼らの隊列に加わり、一緒に別の場所へ向かっていきました。

1944年11月7日、連合軍によってワルヘレンが解放されました。連合軍の輸送船は、アントウェルペンに入港可能になりました。

それにより、連合軍によるドイツ軍への最終攻撃が始まります。ウィリアムたちが戦ったスヘルデの戦いでの死者は、連合軍が3,231名、ドイツ軍4,250名、戦いに巻き込まれた民間人2,283名でした。

1945年5月5日、オランダはようやく、ドイツから解放されました。

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映画『スヘルデの戦い』の感想と評価


Netflix映画『スヘルデの戦い』

葛藤するスタベレン

ドイツ兵としてこれまで戦ってきたスタベレンでしたが、ドイツ人ではなくオランダ人であるが故の葛藤がありました。

スヘルデの戦いでは、スタベレンは容赦なく機関銃の装填を手伝っており、相対したウィリアムにも、最初は本気で殺そうと銃口を突きつけています。

その一方で、スタベレンは捕まったディルクやレジスタンスに対し、同じオランダ人である彼らの処刑を聞いて激しく動揺していました。

そこでスタベレンは、他のドイツ兵のようにディルクたちを反逆者と思うのではなく、同じオランダ人だから助けなければと思ったのでしょう。

だからこそスタベレンは、こっそりトゥンにディルクの処刑のことを伝えに行きます。しかしドイツ兵に見られ、ベルクホーフにバレたことにより、ディルクたちの処刑を止めることは出来ませんでした。

同じオランダ人であるディルクたちを助けられなかった悔しさと懺悔、ドイツ兵としての使命や責務に抗えず、彼らを殺してしまった自分への怒りが入り混じった、スタベレンの葛藤が痛いほど伝わってきて辛いです。

1人になってしまったウィリアム


Netflix映画『スヘルデの戦い』

父親に反対されても諦めきれず、上官のターナーと一緒に、イギリス軍空挺部隊としてドイツ軍と戦うことを決めたウィリアム。そんな彼の戦いは、敵地である島への墜落から始まるのです。

それでもウィリアムとターナーは諦めず、「敵に殺されるぐらいなら溺死した方がマシ」「俺は死なない」と思って、ゼーラントへ行ってカナダ兵と合流する気満々でした。

そんな彼らとは対照的に、ヘンクたち3人は「そんなの無茶だ、敵に見つかって殺される運命しかない」という、諦めにも似た絶望を拭うことは出来ず、先に進むことを止めてしまいます。

ターナー亡き後、本当に1人になってしまったウィリアム。敵に殺された仲間の死と同じくらい、仲間が戦いを諦めて自分の元から去っていくことは、とても辛く悲しいのです。

孤独感を拭うかのように前へ進み、無事カナダ兵と合流できたウィリアム。そこで得た新たな友を失わずにすんだ彼の安堵の表情を見て、涙が出てくるほど感動します。

弟のためにレジスタンスに加担するトゥン


Netflix映画『スヘルデの戦い』

トゥンは、ドイツ兵とトラブルを起こした弟ディルクを救うため、父親と一緒にベルクホーフに彼の助命を懇願しました。

ディルクが自首し逮捕された後も、危険を冒してレジスタンスに協力してでも、彼を救おうとするトゥンの姉弟愛は感動します。

市役所で働くただの民間人が、連合軍とドイツ軍が睨み合う最前線へ行くなんて、足が竦んでしまうほど怖いはずです。それなのに、弟への愛だけでズンズン前へ突き進むトゥンは尊敬します。

まとめ


Netflix映画『スヘルデの戦い』

イギリス軍のグライダーパイロットとオランダ人ドイツ兵、弟のためにレジスタンスに加担したオランダ人女性、この3人の運命が悲しく交錯するオランダ・リトアニア・ベルギー合作の戦争アクション・アドベンチャー作品でした。

本作の見どころは、スタベレンとウィリアム、トゥンのそれぞれの視点で描かれた物語と、激戦が繰り広げられたスヘルデの戦いです。

スヘルデの戦いでは最初、ウィリアムたち連合軍は、ドイツ軍の塹壕やスヘルデ川河口要塞の位置を知らなかったため、湿地で足元が悪く遮蔽物もない場所での戦いで多くの犠牲が出てしまいます。

カナダ兵たちがドイツ軍の対空砲による砲弾や機関銃による銃撃で次々と殺されたり、体のどこかが欠損するほどの重傷を負っていく場面は、阿鼻叫喚な地獄図そのものです。

本作ではグロテスクな描写があるため、15歳未満の未成年者の視聴は推奨できません。さらに、15歳以上でも鑑賞する際は心の準備が必要でしょう。

恋愛関係にはならず、違う立場の3人の運命が悲しく交錯していく、スリリングな戦争アクション・アドベンチャー映画が観たい人に、特にオススメな作品です。

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