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Entry 2021/01/05
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燃えよデブゴンTOKYO MISSION|ネタバレあらすじと感想評価。ドニーイェン扮する太っちょ刑事が東京で大暴れ!|すべての映画はアクションから始まる22

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第22回

日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。

第22回は、2021年1月1日公開のドニー・イェン主演作『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』です。

【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら

映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』の作品情報

(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

【日本公開】
2021年(香港映画)

【原題】
肥龍過江(英題:Enter the Fat Dragon)

【監督】
谷垣健治

【脚本】
ウォン・ジン

【製作】
ドニー・イェン、ウォン・ジン、コニー・ウォン

【キャスト】
ドニー・イェン、ウォン・ジン、ルイス・チョン、テレサ・モウ、ニキ・チョウ、竹中直人、丞威、渡辺哲、ジェシカ・ジャン、チェイニー・リン、葉山豪、バービー

【作品概要】
「るろうに剣心」シリーズ(2012~21)のアクション監督として知られる谷垣健治が監督を務めた、アクションコメディ。

「イップ・マン」シリーズ(2008~2020)や『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のドニー・イェンが特殊メイクによる激太りの刑事に扮し、日本を舞台に大暴れします。

日本からも、竹中直人、丞威、渡辺哲、バービーといったキャストが参加しています。

映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』のあらすじとネタバレ


(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

香港警察のフクロンは、並外れた身体能力で事件を解決する熱血刑事ですが、正義感が強すぎるあまりに同僚から疎まれていました。

そんなある日フクロンは、売れない女優をしている恋人ホーイとの結婚費用を引き出そうと銀行に向かった際、強盗一味と出くわします。

逃走する強盗の車に飛び乗って乱闘を繰り広げるも、例によって熱が入りすぎ、警察署にそのまま車で突っ込んでしまう事態に。

あわや署長をひき殺しかけたとして、フクロンは資料管理室への左遷を命じられ、おまけに約束をすっぽかされ激怒したホーイから別れを告げられてしまいます。

デスクワーク中心となり、さらに失恋のショックで暴飲暴食を重ねたフクロンは、わずか半年で体重が倍の120キロに激増。

(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

それでも現場担当に復帰したいフクロンは、出世して警視になった同僚のファンに嘆願し、日本で起こっている麻薬抗争に関与しているという日本人AV監督の渡辺を、東京まで護送する任務を与えられます。

東京に向かう飛行機の中で、やはり仕事で東京に行くホーイと、クライアントである日本人の島倉と会ったフクロンは、到着して警視庁の遠藤警部と通訳担当のマギーに渡辺を引き渡すことに。

ところが護送中に立ち寄ったインターチェンジで渡辺の命を狙う謎の集団が現れたことで、どさくさに紛れて渡辺を逃がしてしまいます。

仕方なくフクロンは、新宿の歌舞伎町で甘栗を売っている、ファンの知人で元刑事のシウサーの世話になる事に。

早速フクロンは、シウサーの元恋人で飲食店を営むフォンワーが借金取りに襲われる危機を救うも、駆け付けた警官は、フォンワーの店を荒らした借金取りたちを捕まえずに解放してしまいます。

そんな中、遠藤から渡辺を捕らえたという報せを受けたフクロン。しかしその後に目にしたのは、東京湾で死体となった渡辺でした。

渡辺は再び逃走して、麻薬を大量に摂取したのちに溺死したと語る遠藤の説明に納得がいかないフクロンは、シウサーの協力の下、渡辺の自宅に向かいます。

そこで発見したスマホには、築地市場でマグロに麻薬を隠し入れる島倉を隠し撮りした映像が残っていました。

ヤクザである島倉が証拠隠滅のために渡辺を殺したと断定し、2人は築地に向かいます。

(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

築地市場では組長の東野が主宰し、部下の島倉が取り仕切るイベントが開かれており、そこには東野に気に入られてコンパニオンとして招かれていたホーイの姿が。

麻薬が隠されたマグロを発見したフクロンが島倉たちを捕らえようとするも、駆け付けた遠藤ら警察は、またもや見て見ぬふりをするのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』のネタバレ・結末の記載がございます。本作をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

ホーイに「私の生き方を邪魔するな」と言われ、加えて日本の警察の対応に落ち込むフクロンでしたが、シウサーとフォンワーの仲を取り持ったことで、自分もホーイとやり直したいと決意。

ホーイを呼び出し久々に食事をしながら、「また一緒に暮らせるのなら警察を辞めてもいい」と告げるフクロン。

しかし、その場で突如地震が起き、店内の人間の安否を気遣うフクロンの姿を見たホーイは、「警官のあなたを必要とする人たちはたくさんいる」と答えるのでした。

それから数日後、島倉は一向に自分を認めてくれない組長の東野を殺害、その現場を見たホーイを捕らえます。

そして、隠し撮り映像が収められた渡辺のスマホをシウサーが持っていると知り、刺客を送り込みます。

元刑事としてのプライドを取り戻したシウサーは必死に応戦、多勢に無勢となり絶体絶命のピンチになりますが、駆けつけたフクロンにより撃退に成功。

現場に到着するもやはり刺客たちを逮捕しようとしない遠藤は、フクロンに責められ、ついに島倉との癒着を認めます。

「いずれ報いを受ける」というフクロンの忠告通り、遠藤は直後に車に轢かれて絶命。

事件は解決したかと思いきや、島倉から「証拠のスマホを渡さなければホーイの命はない」という電話を受け、フクロンは指定場所の東京タワーに向かいます。

タワー内の高級レストランに飾られていた武器の釵(サイ)を持って襲いかかる島倉に対し、フクロンもヌンチャクで応戦。

タワー外の鉄骨にまで飛び出してのアクロバティックな攻防の末、ついに島倉を倒しました。

すべては終わり、ホーイと無事ゴールインしたフクロンでしたが、体型は変わることはありませんでした――

名作クンフーアクションコメディを現代リブート


(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

香港の功夫(クンフー)映画ファンなら、『燃えよデブゴン』というタイトルに耳なじみがあるでしょう。

1978年にサモ・ハン・キンポーが主演したアクションコメディで、日本でも“サモ・ハン=デブゴン”のイメージを決定づけた一本です。

そんな有名作のタイトルがついた本作『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』は、太ったメイクを施したドニー・イェンが2015年に出演したマットレス寝具のCMが製作のきっかけとなりました。

「イップ・マン」シリーズで“宇宙最強”の異名を持つアクションスターのドニーがおデブキャラになるというギャップが評判を呼び、CMを監督した谷垣健治がそのまま映画版の監督も務めることに。

そのため本作は、原題も『肥龍過江(Enter the Fat Dragon)』と78年版と同じですが、内容はリメイクというより現代版リブートといった方が適切でしょう。

また本作はオリジナル版と違って主人公のフクロンが太ってしまうこと自体にさほど重要性はなく、そのため最初の企画段階では、フクロンを元の体型に戻すか否か熟考したといいます。

結果として、ドニーの妻で本作のプロデューサーを務めたシシー・ワンの、「痩せてめでたしめでたしというのは、必ずしも正解にはならない」というアドバイスを受け、フクロンを太ったままで終わらせています。

この、「デブで何が悪い」「太っていてもカッコいい」という着地点もまた、ダイバーシティ化が叫ばれる現代を感じさせます。

ドニー・イェン出演のマットレス寝具のCM

贅沢に盛り込まれたオマージュとパロディ


(C)2020 MEGA-VISION PROJECT WORKSHOP LIMITED.ALL RIGHTS RESERVED.

ブルース・リーやジャッキー・チェンなど名優のアクション映画を観て育った谷垣監督だけに、本作はそれらへのオマージュにあふれています。

78年のオリジナル版は言わずもがな、さらにそのオマージュ元となる『ドラゴンへの道』(1972)や、ジャッキーやサモ・ハン、ユン・ピョウが日本ロケを敢行した『香港発活劇エクスプレス 大福星』(1985)。

他にも、同じく日本ロケが話題となったハリウッド映画『ブラック・レイン』(1989)のエッセンスも混ざれば、谷垣がスタッフで参加していた『新宿インシデント』(2009)、さらには『SPL/狼よ静かに死ね』(2005)や『導火線 FLASH POINT』(2007)といったドニー主演作のセルフパロディまで盛り込むサービスぶりです。

また、日本が舞台の外国映画にありがちな勘違い日本描写を逆手にとってギャグにしたり、日本の事なかれ主義を揶揄しているあたりは、日本人である谷垣監督ならでは。

往年の香港アクション映画のテイストを目指したと監督本人が言うだけあって、ベタベタなギャグやツッコミどころも込みで楽しむと良いでしょう。

次回の『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。

【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら





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