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映画『裏窓』ネタバレ感想と解説評価。カメラワークを駆使したヒッチコックがグレースケリーの美しさを覗き見る|電影19XX年への旅10

  • Writer :
  • 中西翼

連載コラム「電影19XX年への旅」第10回

歴代の巨匠監督たちが映画史に残した名作・傑作の作品を紹介する連載コラム「電影19XX年への旅」。

第10回は、『めまい』や『白い恐怖』など、多くの名作を映画史に残したアルフレッド・ヒッチコック監督作品『裏窓』です。

事故で足を骨折し、身動きの取れなくなったカメラマンのジェフは、暇をつぶすために窓から隣人の様子を見ることに夢中になっていました。

いつものように覗いていると、喧嘩ばかりしている夫婦の妻が姿を消し、その夫は雨の日に何度も家を出入りするのを目撃します。ジェフは殺人事件を疑い、証拠を掴もうとするのですが…

裏窓という限定的な場所で織りなされていく人間模様と殺人事件の真相を追う物語のサスペンス映画です。

【連載コラム】『電影19XX年への旅』一覧はこちら

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映画『裏窓』の作品情報


(c)1954 Samuel Taylor and Patricia Hitchcock O’Connell. Copyright Renewed.

【公開】
1954年(アメリカ映画)

【原題】
Rear Window

【監督・制作】
アルフレッド・ヒッチコック

【キャスト】
ジェームズ・スチュアート、グレース・ケリー、レイモンド・バー、セルマ・リッター、ウェンデル・コーリイ

【作品概要】
『めまい』(1958)や『白い恐怖』(1945)のアルフレッド・ヒッチコック監督作品。裏窓から隣人の生活を覗いていたカメラマンのジェフが、殺人を思わせる状況を見たことがきっかけで証拠を探すために奔走するサスペンス映画。

『素晴らしき哉、人生!』(1947)のジェームズ・スチュアートと『モガンボ』(1953)のグレース・ケリーが、主演を務めています。

映画『裏窓』のあらすじとネタバレ


(c)1954 Samuel Taylor and Patricia Hitchcock O’Connell. Copyright Renewed.

世界各地を飛び回るカメラマンのジェフは、レースの撮影をしていたところで、カー同士の接触に巻き込まれ、左足を骨折しました。

骨折した左足にはギプスが巻かれ、ジェフは7週間も身動きが取れません。夏場の暑い室内で、刺激のない日々に退屈しています。

唯一の楽しみといえば、部屋の裏窓から他人の生活をのぞき見ることだけでした。若いバレリーナや才能の無さに悩まされるピアニスト。暑さを凌ぐため、窓を開けっぱなしでそれぞれの生活をしていました。

ジェフはリザという、若く美しい女性を愛していました。リザもまたジェフを愛し、結婚を迫っていました。しかしジェフは、カメラマンとして不安定な人生を送っていることから、結婚を引き延ばしていました。

ジェフの身を世話する看護師のステラは、そんなジェフを責めます。いくらステラに結婚をすればいいと言われても、ジェフは態度を変えません。

モデルとして成功をするリザと、カメラマンとしてまだまだ成功しているといえないジェフの間では、確かに差がありました。

リザは豪勢な料理を持ったシェフを連れて、ジェフの家を訪ねました。何の変哲も無い日なのに、わざわざ盛大に祝うリザに、ジェフは驚きます。

ジェフがファッションのカメラマンをすれば、生活は安定するとリザが勧めます。ジェフはそれも相手にしません。それどころか、鞄一つで過酷に飛び回る生活にリザは耐えられないと話します。

2人は住んでいる世界が、まるで違いました。

リザといても窓の外に夢中なジェフは、リザに窓から見える住人の紹介をしていきます。

誰かと一緒にいる想定をして1人で寂しく酒を飲む女性のミス・ロンリーハート。いつも水着でいる太った女性のミス・グラマー。裕福そうな男性にチヤホヤされている女性の女王蜂。

ジェフは勝手にあだ名まで付けていました。窓から見える住人は他にも、売れないピアニストや夢を追うバレエダンサー。犬を飼う夫婦。引っ越してきたばかりの新婚夫婦や、喧嘩ばかりしているセールスマンの夫とその妻がいました。

セールスマンの妻は病気で、床に伏せていました。

ジェフはますます隣人覗きにハマり、商売道具であるカメラや双眼鏡を使って、より詳細を知ろうとしていました。

リザやステラは、憑かれたように覗きをするジェフを止めます。悪い予感が当たるから占い師になれば良かったと語るステラは、いつかジェフが警察のお世話になると言います。

そして、雨が降る夜のこと。ベランダで眠っていた夫婦は、慌てて室内に飛び込みました。そんな中セールスマンは大きな鞄を持って、何度も外に出ては部屋に戻ってを繰り返していました。

不審に思ったジェフは、セールスマンの監視を始めます。のこぎりを手にするセールスマンや、その日から妻の姿がないことに気付いたジェフは、名前も知らぬ隣人に殺害の疑いをかけます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『裏窓』ネタバレ・結末の記載がございます。『裏窓』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(c)1954 Samuel Taylor and Patricia Hitchcock O’Connell. Copyright Renewed.

窓の外に気を取られているジェフを、リザは呆れた様子で見ていました。しかし、殺害の疑いがあると話すと、リザもそれを信じるようになりました。

更に見ていると、セールスマンが大きな鞄をロープで縛っていました。リザは動けないジェフの代わりに、セールスマンの名前を調べます。

彼がソーワルドという名前であると判明すると、ジェフは知り合いの刑事ドイルにこの話をします。しかしドイルは、窓から見える情報だけで殺害を断定はできないと言いました。

念のために、管理人に聞き込みをしましたが、いなくなった妻は田舎に帰っただけだと言われます。

それだけでなく、田舎の妻からだと思われる手紙も見つかったことから、ジェフは自分の推理が間違っていると気が付きました。

その頃、ソーワルドは荷造りをしていました。長距離の電話をし、妻のものと思われる鞄の中から、宝石を取り出します。

大事な宝石を置いて旅行はしない。女性は皆同じだと、リザは語ります。再び、ソーワルドの疑惑に火が付きました。

物的証拠となると思われたトランクは、ドイルが調べていましたが、それも、妻に当てられたものであると思われると、ドイルは話します。

ソーワルドの庭を掘っていた犬が、首を折られて死んでいました。悲痛の叫びを飼い主が近所中に響かせると、皆、顔を出してその様子を見ます。

しかしその中には、ソーワルドの姿だけがありませんでした。ジェフはそれで、ソーワルドの犬殺しを確信しました。

犬が掘った庭に何かがあると踏んだジェフは、リザとステラに庭の掘り返しを頼みます。その間、ソーワルドの気を引くため、ジェフは手紙にてソーワルドの犯行を指摘しました。

電話をすると、何が目的なのかを聞かれます。金はないと言うソーワルドにジェフは、ホテルに来いと指示します。

ソーワルドが慌てて部屋を飛び出すと、リザとステラが庭を掘り返します。しかしそこには、何もありませんでした。

さらなる証拠を求めて、リザは庭や階段を使って、開きっぱなしの窓からソーワルドの部屋に侵入します。

ステラは、ソーワルドが戻ってきたら電話を鳴らして欲しいという伝言をジェフに伝えました。

一方ミス・ロンリーハートは、大量の睡眠薬に手をかけていました。ようやく男性を部屋に呼べたにも関わらず、ムードも無いまますぐに身体を求められ、ビンタをして逃げられてしまったからです。

ステラもジェフも、ミス・ロンリーハートを心配します。すると、ソーワルドが帰っているのにも気が付かず、リザの侵入はバレてしまいます。

ジェフは急いで警察に電話をし、リザは不法侵入で捕まりました。証拠を見つけたと窓から合図をすると、ソーワルドが合図の先であるジェフと目が合いました。

ジェフはドイルに電話をし、リザを釈放するよう頼みます。もう一度電話が鳴ると、それはドイルからではなく、ソーワルドからの電話でした。

ジェフは部屋で1人、ソーワルドを待ち構えます。足を怪我しているため、身動きも取れないジェフは、フラッシュを持って抵抗しようとします。

しかしそれも、一瞬目を眩ませるだけの時間稼ぎにしかなりません。窓際に追い詰められたジェフは、窓から落とされてしまいそうになります。

その時、ソーワルドの部屋を警察やリザが訪ねました。ジェフが叫ぶと、異変に気が付いた警察達はジェフの元へと急ぎます。

ジェフは窓から落とされ、ソーワルドは逮捕されました。ジェフは両足を骨折してしまいました。

その後、リザはソーワルドの側で、『ヒマラヤを越えて』というタイトルの本を読んでいます。

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映画『裏窓』の感想と評価


(c)1954 Samuel Taylor and Patricia Hitchcock O’Connell. Copyright Renewed.

ほとんどをジェフの部屋から見た隣人や、ジェフの室内という限定的な箇所で撮影されたカメラワークを駆使した映画『裏窓』。

“覗き”という行為を否定していたステラやリザも、結局は他人の生活を覗き、その快楽が強調されて描かれていました。

断片的な情報で、あれやこれやと人格まで推測する……。現代ではリアリティショーの視聴者も感じている、ある種、神の視点を握ったような全能感を、ジェフやリザは味わっています。

その結果、殺人を起こしたと思われるソーワルドの逮捕に成功しました。しかし劇中では、ソーワルドの殺人を確信できるシーンは映されていません。

もしかするとソーワルドはただ、指輪を返して欲しいとジェフに迫っていただけなのかもしれませんし、またあるいは、本当に妻を殺していたのかもしれません。

このようにジェフの主観性で物語が進むからこそ、確かなものをあえて描かないようにしています。これはさらに、ラストのソーワルドとジェフが対峙するシーンで、絶大な効果を与えています。

ラストまでは窓の外やジェフの部屋しか映していなかったカメラが、逆にソーワルド達隣人の側から、ジェフを映すのです。

ジェフを見る側と決めて進んでいた映画は、そこで型を破りました。だからこそ、手に汗握る緊張感が生まれます。

不安定な日々を過ごすジェフは、他人と代わりたいと望みながら双眼鏡やカメラを覗いていました。

裏窓を通して他人の人生を覗く行為は、我々が劇場で映画を見るようです。映画という存在、ひいては自分の日常を忘れられるという、娯楽の意味自体を描いているような作品です。

まとめ


(c)1954 Samuel Taylor and Patricia Hitchcock O’Connell. Copyright Renewed.

世界で活躍するモデルのリザを演じたグレース・ケリーの美しさには、つくづく圧倒されます。ヒッチコックはグレース・ケリーの存在感を際立たせるため、衣装も事細かく決めました。

それは、本来交わることなどあり得ない対極であるジェフをも魅了できることが納得できる、本当に息をのむほどの存在感でした。

ジェームズ・ステュアートは、色気や誠実さ、それに怪我をして体を拭かれている時の弱々しさなど、実在する人物のような細部まで徹底された演技を見せています。

舞台を限定させ、主人公の妄想じみた推理からサスペンスを成立させるという、ヒッチコックの名人技が光った素晴らしい映画でした。

次回の『電影19XX年への旅』は…


TM & (C) Warner Bros. Entertainment Inc.

次回は、ヒッチコック監督作品『ダイヤルMを廻せ』(1954)を紹介します。どうぞ、お楽しみに。

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