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Entry 2021/05/12
Update

映画『白波』あらすじ感想と評価解説。長尾淳史監督が琵琶湖の離島で少年の成長を描く|インディーズ映画発見伝7

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第7回

日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い秀作を、Cinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」。

第7回を迎えたコラムでは、長尾淳史監督の映画『白波』をご紹介いたします。

琵琶湖に浮かぶ淡水有人離島で母と2人で暮らす中学生の響介。

島から出たいと願うも、喘息が治るまでは外に出てはいけないと母に言われ、不満や息苦しさを感じていた最中、島で不発弾が見つかります。

閉鎖的な島で暮らす少年の葛藤と成長。母子の愛憎と島の閉塞感を豊かな自然と共に描き出します。

本作はカナザワ映画祭2017期待の新人監督、熱海国際映画祭ニュージェネレーション部門、京都国際学生映画祭Japan Focus部門など国内映画祭で上映されました。

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら

映画『白波』の作品情報


(C)白波製作委員会

【公開】
2017年(日本映画)

【監督】
長尾淳史

【プロデューサー】
岩坪拓磨

【キャスト】
川崎拓斗、関根愛、大宮将司、難波江基己、岡西茂、杉尾真理子、BOSS戸田

【作品概要】
監督を務める長尾淳史は大学入学を機に映画作りを始め、第14回JCF学生映画祭映画部門へ『マインドギア』を出品し、短編部門・準グランプリ、ベストアクター賞、大阪観光局長賞の三冠を達成。

映画『白波』は大学在学中に作られ、カナザワ映画祭2017期待の新人監督、熱海国際映画祭ニュージェネレーション部門、京都国際学生映画祭Japan Focus部門など国内映画祭で上映されました。

映画『白波』のあらすじ

琵琶湖に浮かぶ淡水有人離島で母と2人で暮らす中学生の響介。

響介は島から出たいと望んでいますが、喘息を患っている響介を心配する母は島から出ることはもちろんのこと一人で外出することもよく思いません。

厳しい母に対し、響介は不満を感じています。

ある日、島で不発弾が見つかります。島の住人達は不発弾をどうするべきか、会議で話し合うもなかなか意見がまとまりません。

小さな島で見つかった不発弾は島の大人達、そして響介と母にも影響をもたらしていきます…

映画『白波』感想と評価


(C)白波製作委員会

本作は架空の島を舞台に、少年の葛藤と島の閉塞感を描いています。

響介は喘息を患い、他の子達のように過ごせないこと、島の外に出られないことに閉塞感を抱き、家から出ないように厳しく言う母に対して不満を感じていました。

一方、母も小さな島で女手一人で響介を育てていますが、働き詰めで島の住民の目も厳しい状況で自分も頑張っているから響介にも分かってほしいと思っています。

不発弾が見つかったことで、処理を頼んで爆発でもしたら風評被害で島で獲れた魚が売れなくなることを心配する大人達。

小さい島で閉塞感にとらわれた大人達は保守的で、子供達に対しても島で生活することを押し付けているのです。

響介は、母が妊娠中も煙草を吸っていたと知らされ、自分は愛されて産まれた子ではなく、喘息になったのも煙草のせいだと思うようになってしまいます。

母が煙草を吸ってしまったのは、妊娠したものの相手の男性に捨てられ、島の住民は島の過疎化の救世主だと言われ、妊娠したことを恨んでしまいます。しかし、お腹の鼓動を感じ大切に思うようになったのです。

決して母は響介のことを愛していないわけではありません。

島から出たいと願う響介に対し、喘息が治るまでの辛抱だ、と言い続ける母を、響介は自分の責任で喘息にさせてしまったからと思っています。母と響介は次第にすれ違っていきます。

島の青年わたるは父親の言いなりで漁師として働き始めたものの、自分のやりたいことを親に邪魔されるのはおかしいと感じ島を出ることを決意し、わたると話した響介の心も揺らぎ……。

母と響介の愛憎を描きながらも親子として2人が繋がっている象徴として、臍の緒が繋がった響介が胎内の中で浮遊している場面が描かれています。

その一方で、母の胎内にいる響介を描くことで、更に閉塞感を抱いている響介の心情が浮き彫りになっています。

思春期の頃は親が頭ごなしに自分を批判していると感じやすく、親も感情的になってしまう部分もあります。後になってお互いにすれ違っていただけだと気づくこともあるでしょう。

そのような思春期の誰もが経験したような葛藤を島を舞台に閉塞感と共に描き出しています。

いつ爆発するかもわからない不発弾の存在も、響介の中にある不満や閉塞感などいつ爆発してもおかしくない様子を表しているのかもしれません。

まとめ


長尾淳史監督(c)Cinema Discoveries

琵琶湖に浮かぶ淡水有人離島を舞台に、喘息を患う少年の葛藤と成長を描いた映画『白波』。

島から出たいと願うも許されず、いつ治るかわからない喘息…思春期の少年が感じる閉塞感を島という環境の大人達の様子や、母の胎内の映像による演出で印象的に描きます。

更に島で見つかった不発弾の存在が映画全体の不穏さ、いつ爆発するかわからない緊張感を演出し、響介自身の不満や閉塞感を浮き彫りにします。

《長尾淳史Twitter》

次回のインディーズ映画発見伝は…


(C)映像工房NOBU

次回の「インディーズ映画発見伝」第8回は、2021年6月1日(火)に最新作『女たち』が上映される予定の内田伸輝の映画『ふゆの獣』。

第11回東京フィルメックス最優秀作品賞を受賞、ロッテルダム国際映画祭コンペティション部門、香港国際映画祭、台北映画祭など国内外多数の映画祭で上映されました。

求めても求めても、追いかけても追いかけても、つかまえられない暴力的で美しい恋愛を描いた映画です。

次回もお楽しみに!

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら






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