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Entry 2021/12/13
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映画『眉村ちあきのすべて(仮)』あらすじ感想と評価解説。松浦本監督がセルフプロデュースアイドルとしての規格外ムービーを魅せる|インディーズ映画発見伝28

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第28回

インディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い映画をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」第28回

本コラムでは、松浦本監督の映画『眉村ちあきのすべて(仮)』をご紹介いたします。

自ら会社「会社じゃないもん」を設立し、セルフプロデュース型の弾き語りトラックメイカーアイドルとして活動している眉村ちあきに密着したドミュメンタリーかと思いきや、フィクションも交え、次第にSF、青春映画……と、一つのジャンルの枠にとどまらない規格外の映画となっていきます。

眉村ちあき自らエグゼクティブプロデューサーを務め、眉村ちあき株式会社設立時より公式動画、ミュージックビデオの監督を担当した松浦本が監督を務めました。

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら

『眉村ちあきのすべて(仮)』の作品情報


(C)会社じゃないもん

【公開】
2020年(日本映画)

【監督・脚本・撮影】
松浦本

【エグゼクティブプロデューサー・音楽】
眉村ちあき

【キャスト】
眉村ちあき、徳永えり、品田誠、月登、小川紗良、嶺脇育夫、南波一海、吉田豪

【作品概要】
3人組アイドルグループ・Star-Bright★REXでアイドルを始めた眉村ちあきは、解散後ソロアイドルとして活動を始めます。セルフプロデュース型の弾き語りトラックメイカーアイドルとして活動し、自ら会社「会社じゃないもん」を設立します。

精力的にライブ活動を行い、インディーズとして『目尻から水滴3個、戻る』、『ぎっしり歯ぐき』などのCDを発表し、2019年5月に発表した『めじゃめじゃもんじゃ』からはトイズファクトリーと契約しメジャーとして音楽活動を行なっています。

ライブを企画し、ワンマンライブも意欲的に行い、2020年12月14日、眉村ちあき日本武道館LIVE『日本元気女歌手〜夢だけど夢じゃなかった〜』を開催しました。

アイドル活動の他にもバラエティ番組への出演や、女優として映画『夢の音』(2019)では主演を務めました。

また、NON STYLE石田明が脚本を担当した『クソみたいな映画』(2020)の主題歌や自身が出演した映画『夢の音』(2019)の主題歌や劇中歌、『10万分の1(2020)の挿入歌なども手がけています。

監督を務めたのは、眉村ちあき株式会社設立時より公式動画、ミュージックビデオの監督を担当している松浦本監督。きりゅう映画祭2015にて短編映画『一万円札』(2015)がきりゅうアワードグランプリを受賞しました。

眉村ちあき自ら本作のエグゼクティブプロデューサーを務めました。

始めはドキュメンタリー映画のように語られ、次第にSF、青春映画と一つのジャンルの枠にとらわれない本作。フィクションパートには、『ずっと独身でいるつもり?』(2021)、『ボクたちはみんな大人になれなかった』(2021)の徳永えり、『飢えたライオン』(2018)の品田誠が出演するほか、『DIVOC-12』(2021)、『海辺の金魚』(2021)など監督・女優として活躍する小川紗良が本人役で出演しています。

『眉村ちあきのすべて(仮)』のあらすじ


(C)会社じゃないもん

地下アイドルとして3人組グループStar-Bright★REXでアイドル活動し、現在はセルフプロデュース型の弾き語りトラックメイカーアイドルとして活動している眉村ちあき。

脅威のスピードで新曲をリリースし、連日ライブに出演、音楽性においても「天才」と一目置かれる彼女の様子をインタビューも交えながら追っていきます。

密着ドキュメンタリーかと思いきや、突如舞台は東京の地下にある研究都市に移り変わりまるでSF映画のような世界観が広がっていきます。

これから何が始まるのか、本当の『眉村ちあき』とは何なのか……

『眉村ちあきのすべて(仮)』の感想と評価


(C)会社じゃないもん

眉村ちあきとは…

初めて眉村ちあきのCDを売り出したタワーレコード店の店長や、インタビューアー、阿佐ヶ谷家劇場のオーナーなどのインタビューで語られる眉村ちあきのこと。

自身で作詞作曲だけでなく、編曲までもこなし、更にはライブ、イベントのブッキングまで行なってしまう異色の存在。

ソロアイドルになる前のStar-Bright★REXの頃から知り合いであった阿佐ヶ谷家劇場のオーナーと共に会社「会社じゃないもん」を設立、記者会見を行い、会場に来ていたファンに株を物販で譲渡するという唯一無二のアイドル眉村ちあき。

密着ドキュメンタリーかのように展開していくかと思いきや、突然眉村ちあきが語り出します。

「眉村ちあきは1人ではなく、何人もの眉村ちあきがいるのです」

場面は変わり、ドキュメンタリーではなく東京の地下に存在する秘密の研究施設。そこで行われていたのが「乃亜建設計画」。

クローンの実験が成功し、何人もの眉村ちあきがさまざまな分野で活躍するべく訓練を受けています。

研究所の所長役を品田誠、クローンのオリジナルを監視する研究者役を徳永えりが演じ、女優・監督として活躍する小川紗良が本人役で登場します。

観客が想像し得ないSF展開に舵を切ったかと思えば、最終章は閉じ込められていたオリジナルの眉村ちあきが自身の殻を破り新たなことに挑戦しようとする姿を描き出します。

SF映画から青春映画へと移り変わっていく、ジャンルの枠にとらわれない規格外な本作は冒頭で語られていた自身で何でもこなし、新たなものを取り入れていくアイドル・眉村ちあきそのものを表しているかのようです。

規格外のアイドル・眉村ちあきのファン、そして眉村ちあきを知らない人にとっても、彼女の魅力に引き込まれてしまうようなパワーのある映画です。

まとめ


松浦本監督(C)Cinema Discoveries

自ら会社「会社じゃないもん」を設立し、セルフプロデュース型の弾き語りトラックメイカーアイドルとして活動している眉村ちあき自身が、エグゼクティブプロデューサーを務めた映画『眉村ちあきのすべて(仮)』。

ドキュメンタリー、SF、青春……と、一つのジャンルの枠にとどまらない規格外な映画になっており、映画そのものが自身で作詞作曲、編曲、そしてライブのブッキングまでこなし、何かしていないと気が済まないアイドル・眉村ちあきそのものを表しているかのような映画になっています。

松浦本Twitter
眉村ちあきTwitter

次回のインディーズ映画発見伝は…

次回の「インディーズ映画発見伝」第29回は、坂本ユカリ監督の『レイのために』を紹介します。

次回もお楽しみに!

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