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Entry 2021/03/14
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映画『大綱引の恋』感想評価と内容解説レビュー。三浦貴大と知英で描く伝統行事と恋愛模様の“青春”|OAFF大阪アジアン映画祭2021見聞録4

  • Writer :
  • 桂伸也

第16回大阪アジアン映画祭上映作品『大綱引の恋』

毎年3月に開催される大阪アジアン映画祭も今年で16回目。2021年3月05日(金)から3月14日(日)までの10日間にわたって、アジア全域から寄りすぐった多彩な作品が上映されます。

今回はその中から、特別招待作品部門作として3月5日(金)に上映された日本映画『大綱引の恋』(2021)をご紹介します。

『大綱引の恋』は新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほかにて2021年5月に公開が予定されています。

【連載コラム】『OAFF大阪アジアン映画祭2021見聞録』記事一覧はこちら

映画『大綱引の恋』の作品情報


(C) 2020 映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

【日本公開】
2021年(日本映画)

【監督】
佐々部清

【キャスト】
三浦貴大、知英、比嘉愛未、中村優一、松本若菜、西田聖志郎、朝加真由美、升毅、石野真子、金児憲史、金井勇太、伊㟢充則、安倍萌生、月影瞳、小倉一郎、恵俊彰、沢村一樹

【作品概要】
鹿児島県薩摩川内市の伝統行事「川内大綱引」を題材に、大綱引に青春を捧げる青年と周囲の人たちとの人間模様を描く。

昨年逝去された佐々部清監督が作品を手掛けました。キャストに、近年『ゴーストマスター』などでの個性的な演技が光る三浦貴大をはじめ、ヒロインを『レオン』『殺る女』『どすこい!すけひら』などの知英が担当。さらに比嘉愛未、朝加真由美、升毅、石野真子らが名を連ねます。また本作の企画・原案も務めた西田聖志郎も主人公の父親役として出演し印象的な演技を見せました。

映画『大綱引の恋』のあらすじ


(C) 2020 映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

鹿児島県薩摩川内市の伝統行事「川内大綱引」で、幼いころからその中心の「一番太鼓」の大役を務めることを夢見ていた有馬武志(三浦貴大)。

しかし成長するにつれその夢は薄らぎ、大学進学を機に東京に就職、しかしその道も諦め、現在はとび職の親方で大綱引の師匠でもある父の寛志(西田聖志郎)のもとで働く毎日を過ごしていました。

ある日、会社で事務を担っていた武志の母・文子(石野真子)が「定年退職」を口実として、会社や家事の仕事を放棄し始めたため、会社も有馬家も一気に大混乱となり、文子にいかに皆が頼っていたかを思い知らされます。

一方、武志はまた別の日にあるきっかけで韓国人研修医ヨ・ジヒョン(知英)と対面、さらに偶然にも別の機会で二人は再会し、徐々に惹かれ合うようになります。

そして大綱引の日が近づいてきました。武志の住む上方地区の「一番太鼓」は会社の同僚に決まりました。対する下方地区の役は武志の幼馴染。ところが期日が迫るころ、とんでもないことが……。

映画『大綱引の恋』の感想と評価


(C) 2020 映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

「伝統」はそれを引き継いできた者からすると身近なもの、無くてはならないものである一方、それを引き渡される者には、理解できないこともあります。本作ではこの留意すべき点に対して、「伝統」というものを肯定も否定もしない描き方をしています。

興味深い点として本作では、行事の裏舞台、行事を行う前のあいさつ回りなどの場面が、ドラマの中に組み込まれています。

「川内大綱引」は平たくいえば綱引き合戦ではありますが、この行事のルールとして、自分の地区の引き手を何人でも集めることができます。

つまりその人数の多さも当然勝敗に影響してくるわけで、引き手集めのあいさつ回りは行事前の重要な仕事となります。本作ではあふれる思いとともに、この仕事に取り組む人たちの表情を、あますところなく捉えています。

この作品で描かれる「勝負に挑む」という行為は、ある意味現代的な「報酬の有無に従って動く」という割り切った対人関係とは全く異なり、人同士のつながりや思いのみがそのまま勝負や行事の盛り上がりに影響していくわけです。

そこには例えば観光案内などで書かれる「行事の由来」的な内容では書ききれない、「伝統」が今にまで引き継がれてきた理由が見えてきます。

このように場所に根付く「伝統」の存在意義を、本作ではメインキャストを取り巻く人間模様とうまく絡み合わせて描いています。

古来の行事はとかく神事的な面がクローズアップされがちですが、本作はそんなメディアなどの簡略化された情報では知りえることが難しい「伝統」の存在意義を、人間ドラマを通して丁寧に描いています。


(C) 2020 映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

またメインキャラクターである日韓のカップリングという構成は、佐々部清監督が過去に手掛けた『チルソクの夏』を髣髴します。

もちろん佐々部監督は、本作では監督の務めのみを行っているため、本作と『チルソクの夏』の直接的なつながりはありません。

しかし二作を並べてみると、両作のメインキャスト二人の関係がそのまま「時代の移り変わりとともに変化していく、日韓のお互いに対する意識のようなもの」にダブって見えるような興味深い空気感もあります。

両国の距離は時ととも理解を深め近づいているようでありながら、何かどこかで超えるのが困難でもある見えない壁が存在します。本作の三浦、知英が演じた役柄同士の関係は、そんな日韓の関係を示しているようでもあります。

この関係を表すためには、二人の表情を的確に映し出すことが重要となります。

実際には、日本でも多くの支持を集める韓国人女優の知英がうまくバランスをとり、三浦もこのバランス感覚を十分に理解して演技していますので、二人の演技は作品のメッセージ性をさらに印象深いものとしています。

まとめ


(C) 2020 映画「大綱引の恋」フィルムパートナーズ

ポスタービジュアルにもありますが、本作は三浦の躍動感あふれる肉体美も見どころの一つです。

大学時代はライフセイバー部で活躍した経歴もあり、大正製薬「リポビタンD」のCMにも抜擢されたこともあるだけに、上半身の筋肉の付き方はなかなかのものですが、三浦がこのように肉体美を披露した映像作品は意外にも少なく、映像としては貴重な印象があります。

そしてこの三浦らをフィーチャーしたクライマックスでの「大綱引」の模様は圧巻です。

役者陣はもとより自身の地区の勝利を信じて必死に綱に向き合う人々の姿、緊張した現場における人々の表情、そして勝負が終わった後の喜びや落胆の表情は、困難に立ち向かうことへの勇気がもらえると同時に、勝ち負けだけではない「ライバルがいること」の大切さを知らされるようでもあります。

こういった空気はまさしく映像のアングルの作り方をはじめとした構成作りによるところも大きく、その意味で本作はまさしく、佐々部監督が最後に残したメッセージや映画に込めた自身の思いの表れといえるでしょう。

『大綱引の恋』は新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほかにて2021年5月に公開。

【連載コラム】『OAFF大阪アジアン映画祭2021見聞録』記事一覧はこちら





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