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Entry 2020/09/13
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映画『ミッドウェイ』あらすじネタバレと感想レビュー。2020年公開のローランド・エメリッヒが描く“勝者無き海戦”

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

ラストメッセージ「海はすべて覚えている」が全てを物語る。

太平洋戦争の明暗を分けた戦い「ミッドウェイ海戦」を、日米双方の視点で描く映画『ミッドウェイ』をご紹介します。

『インデペンス・デイ』のローランド・エメリッヒ監督が、20年のリサーチと最新の戦史研究に基づき「ミッドウェイ海戦」を映画化。“日本の運命を変えた3日間”を鮮明に描きだしています。

エド・スクレイン、パトリック・ウィルソン、ウディ・ハレルソンに豊川悦司、浅野忠信、國村隼という日米の実力派俳優を起用しての迫真の演技が織りなす人間ドラマ。ローランド・エメリッヒ監督ならではの迫力の戦闘シーン満載です。

映画『ミッドウェイ』は、2020年9月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー。

映画『ミッドウェイ』の作品情報

Midway©2019 Midway Island Productions,LLC ALL Rights Reserved.

【日本公開】
2020年(アメリカ映画)

【原題】
Midway

【監督】
ローランド・エメリッヒ

【キャスト
エド・スクレイン、パトリック・ウィルソン、ウディ・ハレルソン、マンディ・ムーア、ルーク・エヴァンス、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、デニス・クエイド、ルーク・クラインタンク、アーロン・エッカート、ニック・ジョナス、ダレン・クリス、キーアン・ジョンソン

【作品概要】
『インディペンデンス・デイ』(1996)『2012』などで知られる、ローランド・エメリッヒ監督により、太平洋戦争において日米の命運を分けたとされる「ミッドウェイ海戦」を映画化。エド・スクレイン、パトリック・ウィルソン、ウディ・ハレルソンなど実力派俳優陣に加え、日本から豊川悦司、浅野忠信、國村隼らが出演し、話題を呼びました。

太平洋戦争における一大海戦を日米双方の視点で開戦後の一連の出来事を通し、「ミッドウェイ海戦」に至るまでとその結末を描いています。

映画『ミッドウェイ』のあらすじとネタバレ

Midway©2019 Midway Island Productions,LLC ALL Rights Reserved.

1937年、駐在武官として日本に滞在していた海軍将校、エドウィン・レイトン(パトリック・ウイルソン)は任期を終え、帰国しようとしていました。

日米海軍の親交を深めるため、催された帰国する米海軍将校の送別会で、レイトンは日本帝国海軍総司令官、山本五十六(豊川悦司)と言葉を交わします。

レイトンは山本が日本国内で米国を敵視し、会戦の風潮が大きくなる中、会戦に慎重なことを知ります。

そして山本はレイトンにあまり日本を刺激しないように米本国で発言をしてほしいと頼み、レイトンも山本の意を受け、尽力を約束します。

しかし、2人の思いとは裏腹に4年後の1941年、太平洋戦争が勃発することとなります。

1941年12月7日。アメリカ海軍、空母エンタープライズの操縦士、ディック・ベスト(エド・スクレイン)は哨戒飛行を終え、着艦する際に訓練と称し、エンジンを切り、フラップを使用せずの着艦を行いました。

そのことを上官であるウェイド・マクラスキー(ルーク・エヴァンス)に知られ、続く哨戒飛行から外されます。

その頃、ハワイ州オアフ島、真珠湾に突如、日本軍の戦闘機が襲来。

太平洋艦隊情報部に着任していたレイトンはその知らせを聞き、自宅から基地へ向かいます。

日本軍の攻撃が止み、そのあとには破壊された艦船や基地施設、兵士たちの死体が残され、地獄のような様相を呈していました。

アメリカ海軍太平洋艦隊司令長官・キンメルはレントンから事前に日本軍の攻撃を示唆されていました。

しかし、その話を取り合わずに攻撃を防げなかったことの失態を認識し、更迭を覚悟し、レイトンに後任の司令長官には強く警告することを勧めます。

真珠湾攻撃の知らせを聞いたベストは、太平洋上に潜伏しているであろう日本軍の艦隊を攻撃するべく出撃します。

しかし、日本軍の艦隊は見つかりませんでした。

真珠湾に帰港したエンタープライズの甲板からベストは変わり果てた基地の姿を目にします。

その後、妻のアン・ベスト(マンディ・ムーア)の無事を確認します。

しかし、友人が沈没した戦艦アリゾナに乗っていたことを知り、回収された友人の遺体を目にし愕然とします。

数日後、真珠湾攻撃に沸く日本軍本営に向かった山本は、山口多聞(浅野忠信)から真珠湾攻撃を指揮した南雲忠一(國村隼)が、米軍に対しより深刻な打撃を与える機会をあえて逃がしたことを話し、南雲の更迭を進言します。

しかし、山本は真珠湾攻撃の立役者として名が知れた南雲を更迭することは海軍内でも不興を買い、一丸となって戦いができなくなるため処分を下すことができません。

また、本営は真珠湾攻撃で米海軍に対する打撃は十分と考え、以降、陸軍主体の戦闘に切り替える決定をします。

本営の決定に不満を感じながらも、次の機会に米海軍に決定的な打撃を与えるため、山本は山口にミッドウェイを標的にした次の作戦の立案を指示します。

米海軍大将チェスター・ニミッツ(ウディ・ハレルソン)は大統領命令を受け、新たな太平洋艦隊司令に就任します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ミッドウェイ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ミッドウェイ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

Midway©2019 Midway Island Productions,LLC ALL Rights Reserved.

ニミッツはレイトンに日本海軍の次の目標を探るよう指示します。

同時にニミッツはマーシャル諸島の日本軍基地の攻撃を指示、空母エンタープライズ、ヨークタウンを派遣します。

1942年2月1日。エンタープライズ、ヨークタウンから飛び立った攻撃機は日本軍基地を爆撃、この時ベストも出撃し、大きな戦果を挙げます。

これに勢いついた米軍は爆撃機を用いて日本本土を空襲する作戦を立案、ジミー・ドゥーリトル(アーロン・エッカート)率いる爆撃機隊を日本に向かわせます。

4月18日、ドゥーリトルらの乗る爆撃機16機は空母ホーネットから発艦、日本を目指します。

日本にたどり着いたドゥーリトル達は東京を含む日本各地を爆撃、日本海を飛び越え、中国へ離脱。山本は日本本土を襲われたことに衝撃を受けます。

また、事態の深刻さを受け止め、山口にミッドウェイ進攻作戦を開始させます。

一方、レイトンは傍受した日本海軍の暗号通信を解読した結果、ミッドウェイが次の攻撃目標ではないかと考えます。

しかし、断片的に解読した通信から推測した内容であるため信憑性が低く、報告を受けたニミッツは信じられません。

また、この時、日本海軍は珊瑚海へ艦隊を向けており、ワシントンの米海軍参謀本部は珊瑚海こそが次の攻撃目標だと考えていました。

レイトンはそのことを聞き、珊瑚海に向かっている戦力が少ないことから、もっと大きな攻撃目標に向け日本海軍は準備しており、それこそがミッドウェイだと確証します。

レイトンの熱意に押されたニミッツは、参謀本部を説得するだけの証拠を準備するように指示を出しました。

数日後、レイトンは日本海軍の暗号通信の中に「作戦目標には真水がない」という内容の通信を傍受します。実はレイトンが、ミッドウェイ基地の浄水装置が故障したと偽の情報を流していたのです。

このことから、日本海軍の目標がミッドウェイであるとワシントンを説得する事に成功します。

ベストは来るべき決戦に向け、航空部隊の指揮官に抜擢されます。

操縦技術は一流ながら、破天荒な性格のベストに初め、部下は非協力的でしたが、ベストの励ましや何事にも動じない姿にやがて部下はベストを慕うようになります。

しかし、ある日、偵察飛行を行うため、エンタープライズから離陸する際、部下が離陸に失敗、ベストは部下を失いました。

部下の死に責任を感じるベストですが、妻のアンや上官のマクラスキーに励まされます。やがて、エンタープライズにミッドウェイに向かう日本艦隊を迎撃する命令が下ります。

しかし、兵士たちは珊瑚海での海戦で米海軍は日本海軍に敗北したことや、日本海軍が米軍以上の戦力を有することに不安を感じていました。

決戦が目前に迫る中、ベストは部下たちを鼓舞し、勝利して生還することを誓い合います。

Midway©2019 Midway Island Productions,LLC ALL Rights Reserved.

6月5日、ついにミッドウェイ海戦が幕を開けます。

日本艦隊から発艦した航空機部隊によりミッドウェイ基地は爆撃を受け、大きな被害を受けました。しかし、空母赤城に座乗する南雲は更なる打撃を与えるべく二次攻撃の準備に入ります。

ヨークタウンから発艦した航空機隊は日本艦隊を発見し、攻撃をしますが艦隊に打撃を与えることはできませんでした。

ベストとマクラスキーは発進命令を受け、日本艦隊を壊滅させるべく、エンタープライズを飛び立ちます。

その頃、米海軍の潜水艦ノーチラスは日本艦隊を発見。単艦で攻撃を仕掛けますが、駆逐艦、巡洋艦の攻撃を受けてしまいます。

空母「飛龍」に座乗する山口は駆逐艦「嵐」にノーチラスの撃破を命じ、艦隊はミッドウェイに向け進めます。

情報部からもたらされた情報に従い、日本艦隊を探すベストとマクラスキーですが、艦隊は見当たりません。

しかし、マクラスキーはノーチラスを追い払い、艦隊に合流しようとする嵐を発見しました。マクラスキーは日本艦隊を発見するため嵐の追跡を開始。

こうして日本艦隊を発見したマクラスキーたちは攻撃を開始します。

この時、日本艦隊は航空機の装備を換装しており、米海軍の航空機部隊を迎撃することができません。各空母の高射砲で航空機隊を迎撃しますが、空母「加賀」「蒼龍」が被弾します。

日本艦隊の被害が拡大する中、山口は戦闘に参加せず上空を飛ぶ航空機を見つけます。

それはマクラスキーに遅れ、到着したベストとその部下たちでした。

ベストは未だ被弾していない「赤城」に向かって垂直降下し爆弾を投下、見事に命中します。被弾した赤城は、換装中だった航空機の魚雷や爆弾にも引火し、たちまち火の手が回ります。

やがて艦隊指揮官の南雲は、赤城からの退艦を余儀なくされます。

日本艦隊は空母3隻を失う被害を被りましたが、無傷であった飛龍を指揮する山口は、航空機隊に米艦隊の攻撃を指示します。

エンタープライズに帰艦したベストとマクラスキーは残る飛龍を撃破するべく再びの出撃命令を受けます。

しかし、その時マクラスキーは負傷していた出撃ができず、エンタープライズから指揮を執ることになります。

ベストは日本海軍航空機隊により轟沈するヨークタウンを見ながら、飛龍へ向かいます。飛龍上空に到着したベストは高射砲の雨をかいくぐり、爆弾を投下。飛龍は深刻な被害を被ります。

山口は蒼龍が戦闘不能であることを悟ると、部下たちに退艦を促し、自身は飛龍と運命を共にすることを決意します。

乗組員の退艦後、山口が残る飛龍は駆逐艦の雷撃を受け、太平洋に沈んでいきます。

その後、エンタープライズら米艦隊は、撃破した日本艦隊の後方に戦艦を有する第二艦隊があることを知ります。戦艦相手では分の悪い米艦隊は後退を決意しました。

その頃、日本第二艦隊の旗艦である戦艦「大和」に座乗する山本は、空母4隻の撃沈と山口の戦死を聞かされます。

空母主力の米艦隊を追い、撃破すべきと上申する部下たちに、山本は決断を迫られます。

その頃、レイトンは日本艦隊の暗号通信を傍受します。そこには艦隊が撤退することが記されていました。この知らせを聞いたニミッツは米軍の勝利を確信します。

こうして、ミッドウェイ海戦は幕を閉じました。

映画『ミッドウェイ』感想と評価

Midway©2019 Midway Island Productions,LLC ALL Rights Reserved.

日米双方の視点で一大決戦を描いた本作『ミッドウェイ』は、史実に基づくが故の深い人間ドラマと、ローランド・エメリッヒならではの迫力の戦闘シーンで描かれた一大スペクタクル作品となっています。

本作で目を引いたのは、航空機での戦闘シーンで、コクピット目線で描かれている演出です。

特に、ベストが駆る航空機が垂直降下により空母「飛龍」へ突入する場面は必見。次々と打ち上げられる高射砲の砲弾でだんだん視界が遮られながらも高度を下げてい様子は思わず歯を食いしばるほどの迫力と臨場感を感じさせます。

また、人間ドラマにおいても各登場人物の戦う理由を垣間見ることができました。

とりわけ、エド・スクレイン演じるベストが一介の操縦士から昇任して部下を持ち、その部下の事故による死に苦悩し、それでも他の部下を鼓舞し決戦に臨む姿からは、一人の人間としての成長を感じます。

そして、戦争という過酷な状況でも希望を持ち、戦い抜こうとする姿勢に感動を覚えます。

まとめ

Midway©2019 Midway Island Productions,LLC ALL Rights Reserved.

「戦争には勝者はなく敗者しかいない、なぜならどちらの命も失われるからだ」そう語ったのは本作『ミッドウェイ』のインタビューを受けたローランド・エメリッヒ監督でした。

エメリッヒ監督は戦争の悲惨さを観客に伝えるため、どちらか一方の視点ではなく双方の視点が必要だったと考え、未だかつてない斬新な戦争映画の製作に踏み切りました。

本作で感じられたのは、どちらにも“正義”や“信念”があり、そのどちらが正しく、誤っているというものではないこと、また、どちらにも戦う理由があったという事でした。

だからこそ、過去に起きた戦争は空しく、二度と起こしてはならないのです。

終幕に表示された「日米の全将校に捧ぐ、海はすべて覚えている」というメッセージがそのことを物語っているようです。

この作品はローランド・エメリッヒなりの反戦のメッセージともいえるでしょう






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