サム・ライミによって描かれる
異色すぎ・新感覚すぎなマーベル・ヒーロー映画!
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022)によって「マルチバース(多元宇宙)」の世界が開かれ、登場不可能とされていたキャラクターたちが次々と登場可能となったマーベル映画の世界。
作品を重ねるごとに世界観が広がっていくMCUの作品群に2022年、シリーズ最大のスケールで描かれる狂気の物語が誕生しました。
今回は、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』から地続きの作品となる映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)をネタバレあらすじを交えてご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の作品情報
【原題】
Doctor Strange in the Multiverse of Madness
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【監督】
サム・ライミ
【脚本】
ジェイド・バートレット、マイケル・ウォルドロン
【キャスト】
ベネディクト・カンバーバッチ、エリザベス・オルセン、キウェテル・イジョフォー、ベネディクト・ウォン、ソーチー・ゴメス、マイケル・スタールバーグ、レイチェル・マクアダムス
【作品概要】
アメリカンコミック『マーベル・コミックス』を映像化する企画「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」の28作目となる作品。
2000年代に「スパイダーマン」シリーズを3作制作し世界的大ヒットを記録したサム・ライミが監督としてシリーズに初参加したことで話題となりました。
映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』のあらすじとネタバレ
「マルチバース(多元宇宙)」の接合点を怪物から逃れ走るストレンジと少女は、到達部にある何者をも破壊できる「善の書」へと近づいていました。
しかし怪物の力はストレンジの予想よりも強く、追い詰められたストレンジはマルチバースを守るために少女を殺害し力を奪おうとしますが失敗、怪物に殺害されます。
少女が怪物に襲われそうになった瞬間、星型のポータルが開き少女とストレンジを吸い込みました。
悪夢から目を覚ましたストレンジは、魔術師としての覚醒とサノスによる消失の5年間で新たな恋人を見つけ、結婚することとなったクリスティーンの結婚式に参列。
その式の最中、夢で見た少女がタコ型の怪物(ガルガントス)に襲われている現場を目撃したストレンジは、駆け付けた魔術師仲間のウォンとともにガルガントスを撃退します。
アメリカ・チャペスと名乗る少女から事情を聞くストレンジとウォン。アメリカは恐怖を感じた時のみマルチバースを行き来するポータルが作り出せる能力を持っており、その能力を狙った何者かに彼女は行く先々で襲われていることを知ります。
アメリカはその言葉の証明として、一緒に次元を渡った別の宇宙のストレンジ(ディフェンダー・ストレンジ)の死体を見せます。その後、ストレンジは別宇宙の自分自身を埋葬します。
悪の手にアメリカの能力が渡れば、マルチバースが危機に陥ることを悟ったストレンジは彼女を守ることを決めますが、ディフェンダー・ストレンジが自身の命を奪おうとしたことから、アメリカはストレンジを信じ切れていませんでした。
アメリカをウォンに預け、魔術師の聖域「カマー・タージ」へと移送したストレンジは、ウエストビューで住民を洗脳した咎を背負い1人農園で過ごすワンダのもとを訪ねて援護を依頼します。
しかしストレンジはワンダの言葉の違和感から、彼女こそがアメリカの能力を狙い各次元に怪物を送り込んでいた犯人であることに気づきました。
ワンダは過去の戦いで家族全員を失い、別宇宙の自分が子供と共に幸せに生きていることに強い憧れを抱いており、アメリカの力を手中に収めてマルチバースを自分のものにしようとしていたのです。
脅迫にも応じず、アメリカを渡すことを拒否するストレンジ。対してワンダは大量の魔術師が控えるカマー・タージを襲撃。魔術師たちはワンダに応戦しますが、理性を失った彼女は次々と魔術師を殺害。アメリカを保護する本堂へと到達します。
ストレンジとウォンの魔術もワンダには歯が立たず、追い詰められたストレンジはアメリカが出現させたポータルへと彼女とともに飛び込みました。
ポータルで別宇宙のニューヨークへと渡った2人はこの宇宙のストレンジを訪ねようとしますが、この宇宙のストレンジはサノスとの戦いで死亡しており、「サンクタム」を守っていたのはストレンジと敵対関係にある魔術師モルドでした。
この宇宙のモルドはストレンジとアメリカを歓迎しますが、話を聞く最中に2人を昏睡させ拘束します。
その頃ワンダは「禁断の書(ダークホールド)」の中でも危険とされる、別の宇宙の自分自身の精神を乗っ取る「ドリームウォーク」を用いて、ストレンジが逃げた宇宙のワンダを支配下に置こうとしていました。
しかし魔術師によって「禁断の書」を破壊されてしまったワンダは、生き残っていたウォンに対し「生存した魔術師の命」と引き換えに「禁断の書」の原点であるワンダゴア山への案内を命じます。
ワンダゴア山の邪神を埋葬した墓で「禁断の書」の魔術を手にしたワンダは、ウォンを山から投げ落としたのち再び別宇宙への介入を始めました。
映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の感想と評価
サム・ライミ色全開で描かれる闇と狂気の戦い
本作はマーベルコミックの代表的人気キャラクターを映画化した『スパイダーマン』(2002)で大成功を収め、今のアメコミ映画人気の土台を作ったとさえいえるサム・ライミが制作しました。
しかし、「ロード・オブ・ザ・リング」で大成功を収めたピーター・ジャクソンが『ブレインデッド』(1993)などのスプラッタホラーの監督としてカルト的人気があったように、サム・ライミは『死霊のはらわた』(1985)での成功後はカルトホラー監督として人気となります。
そんなサム・ライミが監督を務めた本作は、ホラー監督としての彼のセンスが遺憾なく発揮されており、人体の切断をはじめとした死亡演出がシリーズの中でも多彩。
作品全体にホラーとしての要素も散りばめられていますが、一方で「スパイダーマン」シリーズで培った「ヒーロー映画」の魅力の引き出し方を最大限に使い、MCUとしての面白味を損なわない新感覚の「ドクター・ストレンジ」映画となっていました。
多元宇宙の解放で出会うさまざまなヒーロー
マルチバースへの旅がメインとなる本作では、シリーズの中でも特に多くのキャラクターが新登場や再登場を果たします。
予告編の段階で話題となっていた『X-MEN』(2000)でパトリック・スチュワートが演じた「プロフェッサーX」だけでなく、「Disney+」で配信されたアニメ『ホワット・イフ…?』に登場したペギー・カーターによる「キャプテン・アメリカ」や、「ファンタスティック・フォー」シリーズの「ミスター・ファンタスティック」も登場。
その他にも「ブラックボルト」などのヒーローや、「ガルガントス(シュマゴラス)」などのヴィランを始めとしたMCU未登場のキャラクターがストレンジの前に現れた本作は、原作ファンからアメコミ映画ファンまで、さまざまなファンに向けたサービスが散りばめられていました。
中でも大注目となるのが、エンドクレジットの中に挟まれる次元を切り裂く女性の登場。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)でフュリオサを演じたシャーリーズ・セロンが演じた彼女は「クレア」という原作キャラクターであり、原作ではのちにストレンジのパートナーとなります。
「ストレンジは帰ってくる」というエンドクレジット後の言葉通り、次作のキーキャラクターとなること間違いなしの要注目の人物です。
まとめ
「アベンジャーズ」のひとりが悪に堕ち、ストレンジと壮絶な戦いを繰り広げる『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』。
間違いなくシリーズの中でも大きな変換点となる本作は、関連作となるドラマ『ワンダヴィジョン』を鑑賞の上で挑んでいただきたい作品。
人を愛するがゆえに道を外れることと、人を護るために道を外れること。
その違いと正義を問いかける、サム・ライミ監督色全開の異色なマーベルヒーロー映画として必見の作品です。