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『レイブンズ』あらすじ感想評価レビュー。浅野忠信映画は伝説の写真家・深瀬昌久の狂気と苦悩の生涯を活写|TIFF東京国際映画祭2024-7

  • Writer :
  • 松平光冬

映画『レイブンズ』は第37回東京国際映画祭・Nippon Cinema Now部門で上映!

『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』(2019)で長編デビューを果たしたマーク・ギルの監督作『レイブンズ』が第37回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門にて上映されました。

主演を務めた浅野忠信をはじめ、瀧内公美、古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀ら日本人キャスト陣が出演しています。

2025年3月にTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほかで全国ロードショーを迎える映画『レイブンズ』。

伝説の天才写真家・深瀬昌久の生涯を、最愛の妻にして最高の被写体だった洋子との50年にわたる関係とともに描いたダークファンタジー・ラブストーリーをレビューします。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2024』記事一覧はこちら

映画『レイブンズ』の作品情報


(C)
Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

【日本公開】
2024年(フランス・日本・ベルギー・スペイン合作映画)

【原題】
Ravens

【製作・監督・脚本】
マーク・ギル

【共同製作】
シリル・カダルス、石井恵、オリアン・ウィリアムズ、川村英己

【音楽】
テオフィル・ムッソーニ

【キャスト】
浅野忠信、瀧内公美、ホセ・ルイス・フェラー、古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀

【作品概要】
伝説の天才写真家として名を馳せ、2012年に78歳で亡くなった深瀬昌久の生涯を、『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』のマーク・ギル監督が描きます。

浅野忠信が深瀬役を、彼の妻だった洋子役を瀧内公美がそれぞれ演じます。その他のキャストは古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀など。

第37回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門で初上映され、2025年3月に日本での一般公開を予定しています。

映画『レイブンズ』のあらすじ


(C)Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

伝説の天才写真家・深瀬昌久。彼はその天賦の才の一方で、心を閉ざし、闇を抱えていました。

それは異形の《鴉(カラス)の化身》として現れ、芸術家への道を容赦なく説き、深瀬を悩ませます。

最愛の妻・洋子を被写体とした写真が評判を呼び、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で展覧会が開かれるなど、さらに注目を浴びる深瀬だったが……。

映画『レイブンズ』の感想と評価


(C)Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

天才と狂気の狭間を揺れる写真家

映画『レイブンズ』は、1934年に生まれ、2012年6月に78歳の生涯を閉じた写真家・深瀬昌久を主人公とした伝記ドラマです。

家族や飼っていた猫など、私生活に深く関わる存在を被写体に、「私写真」と称した作品を次々と発表。その被写体を荒々しく捉えた迫力に満ちた構図は天才的と評されます。

その深瀬を演じるのは、ハリウッドをはじめ国際的に活躍する浅野忠信。本作の監督マーク・ギルは『殺し屋1』(2001)に出演していた時からの浅野のファンで、「彼が出演を承諾しなかったら、この映画は撮らなかっただろう」と断言するほど熱烈にオファー。

演技に関しても「演出の必要がない」と浅野に一任したとのことで、彼もその意向を汲んで(?)アドリブ込みで演じたそう。それにより、時おり狂気な一面を醸し出す深瀬像が誕生しました。

面倒くさくも愛される男


(C)Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

前作『イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語』において、ギル監督は「ザ・スミス」結成前のモリッシーをとにかく内向的で、人と関わりを持とうとしない男として描きました。

本作の深瀬は、脇目も振らずカメラを構える。生活費を稼ぐためにクライアントの意向どおり広告写真を撮らなければならないのに、鴉(カラス)=「レイブン」の化身(ドッペルゲンガー)に急き立てられ、「自分は芸術を撮る」とついつい狂気な面を覗かせてしまう……。

2人とも、傍目から見れば面倒くさい人間でしょう。しかしながらモリッシーには手を差し伸べる女性たちがおり、深瀬にも飽きられつつも妻の洋子や後輩の正田といったサポートしてくれる人たちがいました。両者共に、理解ある母親に愛されていたという点も共通します。

表現することを生業とする者は、とにかく面倒くさい人間ばかり。でも、その面倒くささに市井の人は惹かれ愛する。中でも、そんな深瀬と愛を分かち合ったのが洋子でした。

屠場で黒装束に身を包んだ姿、白いウエディングドレスを纏った姿、そして毎朝出勤する姿など、ありとあらゆる彼女を被写体にしていく深瀬。「写真を撮る行為こそ、彼にとっての唯一の愛情表現」──ギル監督は、そんな不器用な男を俯瞰で捉えます。

しかし、そうしたレンズを通した関係もやがて破綻を迎えることに。そして深瀬は、カラスと“同化”していくこととなるのです。

まとめ


(C)Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

ギル監督によると「当初カラスの化身は登場させる予定がなかった」といいます。しかし、深瀬というキャラクターの内面を観客に見せる会話相手として、カラスを思いついたそう。

ここで興味深いのは、1978年発表の写真集『洋子』(朝日ソノラマ刊)のあとがきにて、作家の瀬戸内晴美(後の寂聴)が「何を考えているのかわからない人」と深瀬を評し、加えてこう添えている点です。

私にわかるのは、彼が肉眼を否定し、カメラがとらえる世界の中に現実に生きていて、普通人の目には見えないチミモウリョウの姿を覗こうとしていることだけがわかるのである。

人に害なす妖怪の総称である「チミモウリョウ(魑魅魍魎)」は、はっきりと姿は現さないが、私利私欲のために暗躍する者の例えにも用いられますが、カラスの化身は、深瀬の周囲を暗躍する魑魅魍魎に見えなくもありません。

化身の「カラス」に導かれるように、「被写体が紙の中でおさまりきらないで飛び出してくる」(瀬戸内)写真を撮るもう一匹の「カラス」。レイブンズたちが互いにもたらすものとは?

2025年3月の一般公開が待ち遠しい一作です。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2024』記事一覧はこちら

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。主に『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219







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