第37回東京国際映画祭ガラセレクション部門『ルート29』
東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献するミッションに則る東京国際映画祭。開催37回目となる2024年は、10月28日(月)に開会され、11月6日(水)まで開催されます。
今回はガラセレクション部門より、森井勇佑監督の『ルート29』をご紹介します。
人との付き合いがへたな主人公のり子が風変わりな女の子ハルを連れて旅に出ます。姫路と鳥取を結ぶ一本道の国道29号線での様々な出会いや道中次第に深まるハルとの絆によって、からっぽだったのり子の心に感情が満ちていく、優しい時間が流れる感動の物語。
のり子は綾瀬はるか、ハルは大沢一菜がそれぞれ演じています。日本の原風景と外国の絵本を彷彿とさせる映像世界が融合した、これまでになかったファンタジックなロードムービーとなりました。
映画『ルート29』は、2024年11⽉8⽇(⾦)全国公開です。
【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2024』記事一覧はこちら
映画『ルート29』の作品情報
【日本公開】
2024年(日本映画)
【監督・脚本】
森井勇佑
【撮影監督】
飯岡幸子
【編集】
早野亮
【⾳楽】
Bialystocks
【キャスト】
綾瀬はるか、大沢一菜、市川実日子、河井青葉、渡辺美佐子
【概要】
芥川賞受賞作家・今村夏子の短編小説を映画化した『こちらあみ子』(2022)の森井勇佑監督作品。
詩人・中尾太一の『ルート29、解放』からインスピレーションを受け、映画の舞台となる姫路と鳥取を結ぶ国道29号線を旅する女性と少女の物語です。
主役ののり子役は『奥様は、取り扱い注意』(2021)『リボルバー・リリー』(2023)などの綾瀬はるか、ハルは『こちらあみ子』(2022)の大沢一菜がそれぞれ演じています。
映画『ルート29』のあらすじ
他人と必要以上のコミュニケーションを取ることができない孤独な女性・のり子は、鳥取の町で清掃員として働いています。
ある日、彼女は仕事で訪れた病院の入院患者・理映子から「娘のハルを連れてきてほしい」と頼まれました。
のり子は、清掃会社の車を無断で拝借し、何かに突き動かされるように姫路へと向かいます。
姫路でやっと見つけたハルは風変わりな女の子で、初対面ののり子に「トンボ」というあだ名をつけました。
のり子とハルは姫路と鳥取を結ぶ国道29号線を進むなかで、さまざまな人たちと出会いながら互いの絆を深めます。
からっぽだったのり子の心は、次第に喜びや悲しみの感情で満たされていくのですが……。
映画『ルート29』の感想と評価
孤独な女性・のり子と風変わりな少女・ハル。ハルの母だと名乗る女性から、ハルを捜してくれるように頼まれたのり子が一大決心をして、ハルを捜し出し、母のところへ連れて行こうとします。
国道29号線を辿る旅は、車で出かけたはずなのに途中から徒歩の旅になりました。着の身着のまま、野宿のする旅の途中で、2人はさまざまな人たちと出会い、のり子は徐々に‟普通の人間らしい感情”を持ち始めます。
こんなのり子を演じるのは、『奥様は、取り扱い注意』(2021)『リボルバー・リリー』(2023)などで華麗なアクションを魅せた綾瀬はるか。
キレの良いアクションもこなす綾瀬はるかが、天性の明るさを隠し、ぼーとした無表情の暗い女性・のり子を演じ切りました。
相棒のハルは、森井勇佑監督が『こちらあみ子』(2022)の‟あみ子”役に抜擢した、大沢一菜です。あみ子に続きハルでも、少し変わった個性的な少女を演じました。
山を通り抜けるルート29。そこで出会う予想もしない出来事に、頻繁にのり子とハルは呆然と立ち尽くすことになります。
間合いをとって佇むその姿から連想するのは、異次元の世界へ迷い込んだ旅人! 夢か幻かと現実性のかけた旅で、2人がいつの間にか心を通わせるのもわかる気がします。
旅をすれば人は成長すると言えるのかも知れません。のり子とハルの不思議感いっぱいの「ルート29の旅」は、心温まる余韻を残してくれます。
まとめ
『こちらあみ子』(2022)の森井勇佑監督が手がけた『ルート29』をご紹介しました。
他人と必要以上のコミュニケーションを取ることができない孤独な女性・のり子が、風変わりな少女ハルとともにルート29を旅します。
途中でさまざな人と出会い、夢とも現実ともつかない不思議な体験をする2人。いつの間にかハルと深い絆ができ、空っぽだったのり子の心に、涙や笑いといった喜怒哀楽の感が湧いてきます。
果たしてこのロードムービーの終着地には何があるのでしょう。辿り着く結末をお楽しみに。
映画『ルート29』は、2024年11⽉8⽇(⾦)全国公開です。
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星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。