Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/03/19
Update

映画『奥様は、取り扱い注意』ネタバレあらすじと感想評価。ラスト結末も【綾瀬はるか×西島秀俊の愛か任務かのアクション炸裂】|映画という星空を知るひとよ58

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第58回

『劇場版 奥様は、取り扱い注意』は、テレビドラマ『奥様は、取り扱い注意』を映画化したものです。

佐藤東弥監督が手掛けた本作で、綾瀬はるかと西島秀俊が元特殊工作員と公安エリートの夫婦を熱演。ワケあり最強夫婦の葛藤と夫婦愛に加えて、ド迫力のアクション満載です。

テレビドラマでは衝撃的なラストを迎えましたが、映画はあのラストシーンから続きます。

「愛か任務か」と、最強夫婦が迎える究極の選択に注目する本作。ごく平凡な夫婦としての幸せそうな姿もふんだんに盛り込まれています。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『奥様は、取り扱い注意』作品情報

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
佐藤東弥

【脚本】
まなべゆきこ

【キャスト】
綾瀬はるか、西島秀俊、鈴木浩介、岡田健史、前田敦子、みのすけ、鶴見辰吾、六平直政、佐野史郎、檀れい、小日向文世

【作品概要】
映画『劇場版 奥様は、取り扱い注意』綾瀬はるかと西島秀俊が元特殊工作員と公安エリートの夫婦を演じた人気ドラマの劇場版。

『ごくせん THE MOVIE』(2009)「カイジ 」シリーズの佐藤東弥監督が手掛け、元特殊工作員の菜美役を綾瀬はるか、菜美を見張るエリート公安員の勇輝役には西島秀俊が扮しています。岡田健史、前田敦子、鈴木浩介、小日向文世らが脇を固めます。

映画『奥様は、取り扱い注意』あらすじとネタバレ

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

海沿いの小さな地方都市珠海市。

桜井久実(綾瀬はるか)は夫桜井裕司(西島秀俊)と二人暮らしです。のんびりした専業主婦の生活で優しい夫がいて、何不自由ない毎日ですが、最近よく夢を見ます。

暗がりのビルの中で、捕虜にされた仲間を取り戻そうと敵と久実。そこへ「おまえは兄貴の仇だ」と大柄なロシア人ドラグノフが現われ、バトルが始まります。

久実が苦戦を強いられ絶体絶命になったとき、突然目が覚めます。

あたりを見回すと、つけっぱなしのテレビに、やりかけだったバーチャルゲームが映っているだけ……。

ゲームのやりすぎで夢を見たと思えばそれまでですが、その割にはとてもリアリティがあるので、久実はいつも不思議に思っていました。

実は桜井久実と桜井裕司というのは、偽名です。

久実は、伊佐山菜美(綾瀬はるか)という名前で、特殊工作員という過去を持っています。菜美の夫・伊佐山勇輝(西島秀俊)は、現役の公安警察であることを隠しながら菜美を監視していました。

やがて愛する夫の正体が菜美にバレて、最強夫婦の派手な夫婦喧嘩が勃発しましたが、お互いの愛を再確認します。しかし、公安の監視下で生きていく未来を菜美は受け入れることができませんでした。

ちょうど半年前、街を揺るがすような大事件を菜美が解決し、菜美が敵地から戻ってくると、家には自分に銃を向ける勇気の姿がありました。

そして、その後ろから突如現れたスパイ集団によって、菜美は頭を撃たれ倒れました。病院で意識をとりもどした菜美ですが、それまでの記憶を失っていました。

勇輝に新しい任務が命じられたのは、そんな頃でした。

地方の珠海市で、新エネルギー源「メタンハイドレード」発掘事業がおこり、その裏でロシアと結託した国家レベルの陰謀が潜んでいる事実を、公安が突き止めたのです。

菜美の記憶が戻る様子がないか監視しつつ、この事実を明らかにして報告するのが、勇輝の新しい任務でした。

上司からの「公安の協力者にならなければ、あの女を殺せ」という一言が、勇輝の脳裏に響いています。

珠海市では、勇輝は高校の数学教師として勤務。

珠海市は新エネルギー源「メタンハイドレード」の発掘をめぐり、開発反対派と推進派の争いが激化し、市長選挙も間近に迫っていました。

推進派の現市長に新エネルギー源の調査会社横尾が媚びを売り、市長への新たな立候補者五十嵐が調査基地建設反対派のリーダーだったため、その派閥に嫌がらせをしています。

新任教師の勇輝は、同僚の矢部教師とともに、反対派の活動に協力していました。

一方、菜美こと久実は、記憶が戻らないので、本当の自分が誰か不安を抱えていますが、毎日買い物をして料理をし、夫勇輝の帰りを待つ日々を過ごしています。

そんなある日、久実は、暴漢に襲われる五十嵐を見かけ、記憶の奥底に潜んでいた正義感が目覚めます。知らず知らずのうちに、猛然と暴漢たちに向かって行きました。

2人ほど投げ飛ばしたときに頭を殴られ、気を失いかけます。その時、久実につけたGPSからその所在がわかった勇輝が助けに来ます。

久実は病院へ搬送されましたが、かすり傷程度で済みました。しかし、久実には、かすかに以前の記憶が戻った兆候がみられたのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『奥様は、取り扱い注意』ネタバレ・結末の記載がございます。『奥様は、取り扱い注意』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

退院し、再び元気を取り戻した久実は、いつもと同じように夕食を整えて、勇輝の帰りを待つかわいい奥様に戻ります。

そんな頃、久実は街で知り合った岩尾珠里という青年のダイニングバーを手伝うことになりました。

夜のバイトに出かける久実を車で送りながら、動向をチェックする勇輝。

久実がバイトに出る日に限って、新エネルギー開発推進派のヤクザ曲がりの連中が闇討ちにあうという事件が起こるようになりました。

黒装束に身をつつみ、たった1人で何人もの男をなぎ倒す人物。見た人によると、それは‟女”だと言うのです。

噂を知った勇輝は「菜美?」と思い、真実を確かめるべく、一層厳しく久実を見張ります。

その日、現れた闇討ちをする人物を勇輝はつかまえました。その正体は菜美ではなく、岩尾でした。

丁度その場に居合わせた矢部教師とともに岩尾の店に行き、久実も交えて理由を尋ねます。

岩尾は店に来る客から、開発推進派がかなり裏でロシアと癒着していること、警察にも賄賂を贈っているので、いくら被害届を出しても取り扱ってもらえないことなどを聞いていました。

新エネルギー源開発に関する秘密のデータの入ったドライブの存在もあり、それは開発調査船の船内に隠されていることもわかりました。

現市長は矢部教師の元妻。その本心はあくまで珠海市を良い街にしたいだけと信じる矢部は、市長選の対抗馬の五十嵐が暴漢に襲われて立候補を取り下げたこともあり、新エネルギー開発調査開始パーティーで直に市長に話すと言います。

開発中止の証拠としてドライブが必要なため、勇輝もそれを捜すために調査船で行われるパーティーに乗り込みました。

その頃、病院で記憶障害の治療を受けている久実のスマホに一本の電話が入ります。

外国語で「おまえの大事なものを殺してやる。死ぬことで苦しめ」という言葉に、久実は呆然とします。そして記憶を取り戻しました。

一方の勇輝。パーティー会場の部屋から遠ざかり、船底でやっと見つけたドライブを持ち去ろうとしたところ、外国の工作員たちに取り囲まれます。

得意の格闘技で闘いますが、銃を持った工作員に狙われ、あわやというときに、黒パンツの戦闘員姿の菜美が現れました。

「菜美! 記憶がもどったのか」。驚くとともに喜ぶまもなく、2人は肩を並べて工作員たちと闘うことになります。

激しい闘いのあと、菜美を仇と追うドラグノフが現れます。エレベーターに入ってしまい、バトルをしたまま、菜美とドラグノフは船内につくられた鉄骨造りの巨大なやぐらの最上階まで行きました。

海を真下に見下ろし、狭い櫓の上で、切れ味鋭いケリや投げ技を掛け合うという大格闘のすえ、ドラグノフの首を絞めてやっとのことで菜美は勝利します。

そこへ駈けつけた勇輝たち公安。ドラグノフにとどめを刺せない菜美の代わりに、勇輝の先輩にあたる神岡が発砲しました。

驚く菜美たちですが、逆に今度は神岡が公安に取り押さえられます。実は神岡は公安の情報を敵側に漏らしていたと言うのです。

誰か情報を漏らしている奴がいるが、誰だかわからない。だから、菜美はその誰かを見つけるための罠だったと言います。

結局、騙されたふりをして騙していたのは、菜美? 

公安の人間として生きる勇輝に菜美は言います。「私がなりたかったのは、あなたの奥様。愛しているのなら、私を撃って」。

勇輝は心を鬼にし、菜美が示す心臓の少し上、‟急所をそれた奇跡の位置”に狙いをつけて発砲。弾は見事に命中し、赤い花びらを散らして、黒い服の菜美は白波が煌めく海へと落ちて行きました。

それから3カ月。

港のオープンテラスでお茶を飲む菜美がいます。

自分を探しているような素振りのサングラスの男たちに気がつくと、菜美は不敵な笑みを浮かべ、さっそうとその場を去りました。

映画『奥様は、取り扱い注意』感想と評価

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

2017年に放送されたテレビドラマ『奥様は、取り扱い注意』は、最高視聴率14.5%、最高総合視聴率25.6%を記録。今回、印象深いラストシーンを用いた劇場版として、スクリーンに登場しました。

癒しの久実からハードな菜美へ

映画はテレビドラマのストーリーを引き継ぐ形で、元工作員の菜美が記憶を失い久実という名前で始まります。

菜美がバリバリに活躍したテレビドラマと異なり、映画では前半の主役は記憶喪失の久実です。綾瀬はるかは、久実を演じるにあたり、全く新しい役として受け止めたそうです。

久実は、記憶を無くしているので、自分のことも夫のこともわからず、今、目の前にあるものを大事にしていこうと思っている健気な女性です。

ファッションもパステル系のワンピースといったものが多く、癒し系の守ってあげたい女性として登場します。

相反する、菜美。これはもう一流の元特殊工作員。綾瀬はるかも慣れ親しんだキャラクターで、演じやすかったと言います。

また、幸せな新婚夫婦を演じている劇中の桜井家ですから、お料理場面も頻繁にでてきます。

8等分カットの白菜ステーキやハーブを効かせた料理に、キャベツをカットするシーン。繋がったキャベツには、主婦業に飽きてきているという気持が現れているそうです。

料理やファッションなど、本作の中で久実の日常を細かくチェックしていけば、久実から菜美への変化が見えてきます。

菜美の記憶が戻るのはいつで、その後はどうなるのか。

これがこの作品の一つのポイントですが、観客のそれぞれの視点で捉えられるようになっているのが面白いところでしょう。

菜美と勇輝のラブシーン

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

前半は静かな本作ですが、後半はガラリと雰囲気が変わって、派手なアクションが炸裂します。

もともとが特殊工作員と公安警察の菜美と勇輝の夫婦ですから、そのアクションは格闘技の王座奪回のチャンピオン戦と言ってもいいぐらいのレベルでしょう。

菜美のアクションはパンチ力では男性に劣るのは分かっているので、綾瀬はるか自らも経験した、東南アジアの伝統武術カリとプンチャク・シロットを用いています。

これは、素早い動きとしなやかな柔軟性に重点を置き、肘や膝、蹴りで相手に向かっていくアクション。運動神経の良い‟綾瀬はるか”ならではの、‟強い女性”のファイティングは必見です。

そんな強いヒロインの相棒には西島秀俊が扮します。アクションを得意とし、公安の人間の鋭さを持ちながら女性を優しく見守るキャラクターと言えば、彼しかいないでしょう。

テレビドラマも含め何回か共演を果たしている2人ですから、夫婦喧嘩のときも、敵に対する時も息はピタリと合っています。

本作において、後半のアクションシーンは、‟最強夫婦のラブシーン”と言い切れるほど、観客を魅了する場面となっていました。

まとめ

(C)2020映画「奥様は、取り扱い注意」製作委員会

『劇場版 奥様は、取り扱い注意』は、綾瀬はるかと西島秀俊が元特殊工作員と公安エリートの夫婦を演じた人気ドラマの劇場版です。

元特殊工作員とそれを監視する公安警察官がいつしか愛しあうようになってそれが発覚して、地上最強の夫婦喧嘩勃発と、テレビドラマの面白さをそのまま引き継いだ形の本作。

設定もストーリーも若干変化をもたせ、専業主婦になり切れない元特殊工作員の悩みも組み込んでいます。

「嘘つき!」「お互いさまだろ!」。

お互いに罵り合いながらも、愛しあう2人に突き付けられた「愛か任務か」の究極の選択は衝撃的であり、主役2人のスタントなしのスケールの大きなアクションとともに、じっくりと楽しめる作品です。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら




関連記事

連載コラム

映画『大脱出3』感想とレビュー評価。スタローン演じる脱獄プロフェッショナルに訪れる最大のピンチとは|すべての映画はアクションから始まる1

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第1回 脱獄のプロフェッショナル、レイ・ブレスリンが挑む3度目のミッション! 日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったア …

連載コラム

映画『デンマークの息子』あらすじと感想評価レビュー。衝撃の展開から結末で伝えたダイレクトなメッセージ【ウラー・サリム監督のQ&A収録】2019SKIPシティ映画祭6

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019エントリー・ウラー・サリム監督作品『陰謀のデンマーク(日本劇場公開名:デンマークの息子)』が7月14日に上映 埼玉県・川口市にある映像拠点の一つ、SKIPシティ …

連載コラム

映画『ゴッドスレイヤー 神殺しの剣』あらすじ感想と評価解説。結末は想像を絶する異世界バトルアクション爆誕|すべての映画はアクションから始まる28

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第28回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画 …

連載コラム

【感想考察】新感染半島 ファイナル・ステージ。前作エクスプレスでのゾンビパニックのその後を描く!|コリアンムービーおすすめ指南20

映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』は2021年1月1日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国公開! 韓国国内のみならず世界中で大ヒットを記録したゾンビパニックアクション『新感染 ファイナル・ …

連載コラム

【ネタバレ】ニキータ|結末考察とあらすじ感想。女性暗殺者が真に強くなり“愛と葛藤”のラストで出した“生きざま”|すべての映画はアクションから始まる33

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第33回 日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム『すべての映画は …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学