今明かされる、伝説のブリティッシュ・ロックバンド“ザ・スミス”の誕生前日譚。
1980年代前半のイギリスに颯爽と現れ、世界のミュージックシーンを席巻したバンド、ザ・スミス。
そのボーカリストであるスティーヴン・モリッシーが、バンドを結成するに至る経緯を追ったヒューマンドラマ、『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』が、2019年5月31日(金)よりシネクイントほかで全国ロードショーされます。
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映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』の作品情報
© 2017 ESSOLDO LIMITED ALL RIGHTS RESERVED
【日本公開】
2019年(イギリス映画)
【原題】
England is mine
【監督】
マーク・ギル
【キャスト】
ジャック・ロウデン、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、ジョディ・カマー、シモーヌ・カービー、キャサリン・ピアース、アダム・ローレンス、ローリー・キナストン、ピーター・マクドナルド
【作品概要】
1982年に結成され、わずか5年で解散した伝説の英国バンド、ザ・スミス。
本作では、バンドの中心人物となったボーカリストのスティーヴン・モリッシーの、若き日を描きます。
モリッシーを演じるのは、『ダンケルク』(2017)で一躍注目を集めた、イギリス出身のジャック・ロウデン。
モリッシーを音楽の世界に誘うこととなる美大生のリンダー・スターリング役に、テレビドラマ「ダウントン・アビー」シリーズのジェシカ・ブラウン・フィンドレイ。
その他、モリッシーに言い寄る同僚の女性クリスティーンに、テレビドラマ「キリング・イヴ/Killing Eve」で殺し屋を演じブレイクしたジョディ・カマーが演じます。
監督・脚本は、『ミスター・ヴォーマン』(2012)で第86回アカデミー賞短編映画賞にノミネートされ、本作が長編映画デビューとなるマーク・ギルが手がけました。
映画『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』のあらすじ
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1976年マンチェスターのストラットフォード。
高校を中退した17歳のスティーヴン・パトリック・モリッシーは、地元で行われるライブに通っては、批評を有力音楽紙ニュー・ミュージカル・エクスプレス(NME)に投稿する毎日を送っています。
そんなある日、父親が母エリザベスと別れて家を出てしまったことで、モリッシーも家計を助けるべく、内国歳入庁でファイル整理の仕事に就きます。
しかし就職しても職場に馴染めず、仕事をサボって詩を書いてばかり。
しかもボーカリスト志望にもかかわらず、引っ込み思案な性格が災いし、一向にバンドメンバーができない有様でした。
そんな時、マンチェスターでセックス・ピストルズのライブに行ったスティーヴンは、そこで美大生のリンダーと出会います。
彼女の後押しでバンド結成に本腰を入れることにしたスティーヴンは、レコードショップの掲示板で知り合ったギタリストのビリーと楽曲制作を開始。
一見順調なスタートを切ったかに見えたスティーヴン、ですが…。
イギリスの伝説的ロックバンド『ザ・スミス』とは
参考映像:ザ・スミス「昏睡状態のガールフレンド」PV
1982年に、モリッシーとギター担当のジョニー・マーとの出会いからスタートするザ・スミスは、ベースのアンディ・ルーク、ドラムのマイク・ジョイスというメンバーを揃え、翌年5月にシングル「ハンド・イン・グローヴ」でデビューします。
モリッシーによる、過去の文学や映画、テレビドラマなどから巧みに引用した歌詞は、労働者階級出身ならではのイギリス社会を批判した内容として、若者の支持を獲得。
続くシングル「ディス・チャーミング・マン」と「ホワット・ディファレンス・ダズ・イット・メイク?」を含んだファーストアルバム『ザ・スミス』がUKチャートの2位にランクインし、セカンドアルバム『ミート・イズ・マーダー』でついにチャート1位に輝きます。
ちなみに「ザ・スミス」というバンド名は、モリッシー曰く「イギリスで『スミス』は一番多い姓名で、世界中のあらゆる人たちに語りかけるという意味合いを込めた」とのこと。
1986年発表のサードアルバム『ザ・クイーン・イズ・デッド』も高い評価を得ますが、この頃に契約レコード会社とのトラブルが勃発し、それに伴い、多忙なスケジュールやアメリカのセールスの不調などから、メンバー間にすれ違いが生じます。
なかでもモリッシーとマーの深刻な確執が決定打となり、日本でのライブも実現することなく1987年9月に解散(モリッシー個人としては1991年に初来日)。
しかし、活動期間こそ短かったものの、彼らの曲は今なお愛され続けており、挿入曲として映画でも使用されています。
近年だと、『(500)日のサマー』(2009)や『バンブルビー』(2019)で彼らの曲が使われており、特に後者では主人公のお気に入りとして、「ビッグマウス・ストライクス・アゲイン」と「昏睡状態のガールフレンド」の2曲が効果的に使われています。
モリッシーが“毒舌家”と呼ばれる所以
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メディアがモリッシーの名を挙げる際、必ずと言っていいほど付くのが、“毒舌家”というフレーズ。
本作の宣伝でも「毒舌モリッシー」と呼ばれているように、ザ・スミス結成以降は、元々マスコミ嫌いということもあってか、その“舌好調”ぶりに拍車がかかり、多方面に思いの丈をぶつけまくっています。
彼の発言やインタビューをまとめた本も出版されていますが、あまりにも多い語録の中から、いくつかをここで抜粋。
「ザ・ラモーンズには意義や重要性が全く無い。何も言うことはないし、すっぱりキレイに忘れ去られるべきだと思う」
(1976年、「Melody maker」への投稿)
「僕は以前、デュラン・デュランのミュージックビデオなんか酔っぱらったヤギでも作れると言ったけど、最近じゃ死んだヤギでも十分なんじゃないかと思うようになった」
(1988年、「The Catalogue」)
「オアシスのシングルは…ほとんど悲惨と言っていい。世界からスポットライトを浴びている時は、革命的で創造的なレコードを作るべきだった。(中略)オアシスは僕にとって可愛すぎるよ」
(1997年8月、「Slitz」)
「現代社会で肉を食べることは動物や地球にとって殺害行為。近い将来、チーズバーガーを食べることは、教会で喫煙するのと同じく違法行為となるだろう」
(2014年2月、「Billboard.com」。彼は11歳からベジタリアンになっている)
どの発言も刺激が強いながらも、こうした頑固にしてブレることのない価値観や、抱える葛藤を臆面もなく出せる素直さに、ファンは共感するのです。
ダメダメかつ魅力的なモリッシー
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そんなモリッシーを本作で演じる、ジャック・ロウデン。
『ダンケルク』での英国軍パイロット役や、『Fighting with My Family(原題)』(2019)ではプロレスラー志望の青年を演じる、今注目の若手俳優ですが、ハッキリ言って風貌はモリッシー本人には似ていません。
それどころか、本作でのモリッシーは口数も少なく、内向的で協調性がない音楽オタクとして描かれており、後に彼が雄弁な毒舌家になるとは、にわかには信じられないかも。
しかし、劇中でも音楽雑誌へ辛口批評を投稿していたり、何よりも、時おり発する言葉がいちいち皮肉めいているあたりは、やっぱりモリッシー。
さらに、全身から醸し出す気だるくてアンニュイな雰囲気も、モリッシー本人を彷彿とさせます。
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ニートで、働き出しても遅刻しまくりで、仕事をサボっては詩を書いて自分の殻に閉じこもる――そんなダメダメなモリッシーを取り巻く女性たち。
最初にモリッシーにバンド結成を促すアンジーや、職場でモーションをかけてくるクリスティーン、そして音楽センスを見出して後押しするリンダー(彼女は後にフォトコラージュアーティストとして名を成すことに)。
絵に描いたようなモテモテぶりが鼻につくかもしれませんが、そんな「放っておけない」という母性本能をくすぐる魅力もまた、モリッシーに備わっていたといえます。
さらにもう一人、彼の才能を信じ応援するのが、母性の塊ともいえる母のエリザベス。
図書館勤務だった母の影響で文学好きとなったモリッシーもまた、エルヴィス・プレスリーやジョン・レノン同様に、母性によって音楽人生を歩んでいくのです。
世界に受け入れられない若者の“はじまりの物語”
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「ザ・スミスを始めた時、間抜けでいやらしくて女々しいスティーヴン・モリッシーは死んだんだ」と、本人は後に述懐しています。
そんなモリッシーがザ・スミスを結成するきっかけとなる、ギターのジョニー・マーとの出会い。
その時の様子を、ジョニーは自伝等で記していますが、本作ではその内容にかなり即して再現しているあたりは、ファンなら嬉しいのではないでしょうか。
世界に居場所がないという葛藤を抱え、「間抜けでいやらしくて女々しかった」モリッシーが、いかにして“はじまり”を見つけるのか。
なりたい自分の姿をひたすら追い続ける若者に迫った青春映画、『イングランド・イズ・マイン モリッシー,はじまりの物語』は、2019年5月31日(金)よりシネクイントほかで全国ロードショー!