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映画『マザー』あらすじ感想と評価考察。ノオミ・ラパス熱演のマザーテレサは“聖母か母か”に揺れる新たな姿を描く|TIFF東京国際映画祭2025-12

  • Writer :
  • 松平光冬

映画『マザー』は第38回東京国際映画祭にて最優秀芸術貢献賞を受賞!

『マザー』が、第38回東京国際映画祭コンペティション部門で上映されました。

聖母として知られるマザー・テレサをノオミ・ラパスが演じ、彼女の人間的側面に焦点を当てた意欲作をご紹介します。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら

映画『マザー』の作品情報

(C)Entre Chien et Loup, Sisters and Brother Mitevski

【日本上映】
2025年(ベルギー・北マケドニア合作映画)

【原題】
Mother

【監督・脚本】
テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ

【製作】
セバスチャン・デロワ

【製作総指揮】
ノオミ・ラパス、シルヴィア・フークス

【共同脚本】
ゴツェ・スミレフスキ、エルマ・タタラギッチ

【撮影】
ヴィルジニー・サン=マルタン

【編集】
ペア・K・キルケゴール

【キャスト】
ノオミ・ラパス、シルヴィア・フークス、ニコラ・リスタノフスキ

【作品概要】
ノーベル平和賞を受賞した聖人マザー・テレサの半生を、現代的な視点で描いた意欲作。

「ミレニアム」三部作(2009~10)、『マヤの秘密』(2022)のノオミ・ラパスがテレサを、シスターのアグニェシュカを『蜘蛛の巣を払う女』(2019)のシルヴィア・フークスが演じます。2人はエグゼクティブ・プロデューサーも兼任。

テレサの出生地である北マケドニア共和国を代表する監督テオナ・ストゥルガル・ミテフスカによる初の英語作品となり、第38回東京国際映画祭ではコンペティション部門として上映され、最優秀芸術貢献賞を受賞しました。

映画『マザー』のあらすじ


(C)Entre Chien et Loup, Sisters and Brother Mitevski

1948年、インドのカルカッタ(現コルカタ)のロレト修道女会に仕えていたマザー・テレサは、自らの修道会を設立しようとバチカンの修道会管轄庁に許可を求めていましたが、なかなか認可が下りない状況が続いていました。

そんな中、ついに管轄庁から認可の報が届き、喜びにあふれます。ところが、後継者として指名しようとしていたシスターのアグニェシュカの妊娠が発覚。

アグニェシュカが中絶を望んでいることを知ったテレサは、現実と信仰のはざまで葛藤し、精神的に追い込まれていき…。

映画『マザー』の感想と評価


(C)Entre Chien et Loup, Sisters and Brother Mitevski

1910年に旧ユーゴスラビア(現在の北マケドニア共和国)に生まれ、18歳で修道院の教師として当時のイギリス領インドに渡った後、貧富の差と飢えや病に苦しむインドの現実に直面し、民の救済に専念したマザー・テレサ。

人道支援活動のシンボルとしてノーベル平和賞を受賞し、97年に亡くなるとインドで国葬に付された、まさに“聖母”と称された人物です。

テレサが主人公の映画は過去にも製作されていますが、本作『マザー』は、より現代的な視点で彼女を描きます。“現代的な視点”というのは、ズバリ言うとフェミニスト的視点。

長らく仕えていたロレト修道女会を離れて自身の修道会の設立に動くテレサは、内心は彼女に留まっていてほしい神父のフリードリヒと駆け引きのような会話をしたり、後継者と目すシスターのアグニェシュカの説得にあたるなど、己の願望を成就すべく執念・野心を燃やす女性として描かれます。

前作『ペトルーニャに祝福を』(2019)でルッキズムや性差別に抗う女性を主人公にした監督のテオナ・ストゥルガル・ミテフスカは、元々テレサのドキュメンタリー映画を製作しようとリサーチをしているうちに、彼女の内にエネルギーや反抗心が秘められていると知り、ドラマ劇に転換したとのこと。

ドラマ劇への転換にあたり監督は、妊娠が発覚したアグニェシュカという架空の人物を配し、テレサに予期せぬ事態を与えます。

堕胎を望むアグニェシュカの考えはまさに神の教えに背く行為。しかし彼女が出産することは後継者を失うということになる――信仰か欲望か、神に仕えるマザー(聖母)か人間としてのマザー(母)か、テレサのバランスは大きく揺らいでいきます。

まとめ

11月1日の『マザー』上映後のQ&Aイベントでのテオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督/撮影:松平光冬

本作を観た者なら誰もが驚くのが劇伴。テレサの心象を表現する音楽として、なんとパンクロック風のエレキギターが鳴り響きます。

これに関して監督は、「信念を持って自身のやりたいことに進んだマザー・テレサの生き方はフリーダム。フリーダムと言えばパンクロックだから、その象徴として使った」と語ります。

「ミレニアム」三部作でパンキッシュなリスベット・サランデルを演じたノオミ・ラパスがテレサ役を務めたことも、パンクロック使用の大きな要素になったとか(ちなみにアグニェシュカ役のシルヴィア・フークスは、『蜘蛛の巣を払う女』でリスベットの双子の妹カミラを演じている)。

ニュース映像などでよく見られた、慈しみの笑顔で民に食事を与える姿からは想像もできない、人間味あふれる“聖母”を映し出した興味深い一作となっています。

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松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)


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