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映画『死のキッチン』あらすじ感想評価とQ&Aレポート。“ご馳走”で自分に危害を加えた男への復讐をする女の執念|TIFF東京国際映画祭2025-6

  • Writer :
  • 松平光冬

映画『死のキッチン』は第38回東京国際映画祭・コンペティション部門で上映!

タイ映画界を代表する監督ペンエーグ・ラッタナルアーンが2025年に発表した『死のキッチン』が、第38回東京国際映画祭コンペティション部門で上映されました。

左からダリル・ヨー、クリストファー・ドイル、ベラ・ブンセーン、ペンエーグ・ラッタナルアーン/撮影:松平光冬

10月31日の2回目の公式上映後、監督・脚本のラッタナルアーン、出演俳優のベラ・ブンセーン、撮影監督のクリストファー・ドイル、ならびにプロデューサーのダリル・ヨーらが参加して行われたQ&Aの模様を、作品レビューと併せてレポートします。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら

映画『死のキッチン』の作品情報


(C)185 Films

【日本上映】
2025年(タイ映画)

【原題】
Morte Cucina

【監督・脚本】
ペンエーグ・ラッタナルアーン

【製作】
ソーロス・スクム

【撮影】
クリストファー・ドイル

【編集】
パッタマナダー・ユコン

【キャスト】
ベラ・ブンセーン、クリット・シープームセート、ノパチャイ・チャイヤナーム、浅野忠信

【作品概要】
『6IXTYNIN9 シックスティナイン』(1999)、『わすれな歌』(2001)など、過去4作品が米国アカデミー賞外国語映画賞のタイ代表作品となったペンエーグ・ラッタナルアーンによるスリラー。

撮影監督を、2006年の『インビジブル・ウェーブ』以来のラッタナルアーン作品参画となったクリストファー・ドイルが担当。

『地球で最後のふたり』(2003)、『インビジブル・ウェーブ』に主演した浅野忠信がアーティスト役で出演。

2025年の第38回東京国際映画祭において、コンペティション部門上映されました。

映画『死のキッチン』のあらすじ


(C)185 Films

地方の伝統的なムスリム社会から追放され、ひとりで都会に出てきたサオは、バンコクの高級レストランのシェフとして充実した日々を送っていました。

そんなある日、サオの前に、過去に彼女を精神的にも肉体的にも傷つけた男性コーンが現れます。サオは自分のことを認識していないコーンに接近し、料理の技術を用いて復讐することを決意するのでした…。

映画『死のキッチン』の感想と評価

人を殺める手段は数あれど、それが“ご馳走”だったら……。本作『死のキッチン』は、そんな一風変わったスリラーです。

主人公でシェフのサオは、過去にトラウマを与えられた男性コーンに復讐すべく、毒物を用いずに豪勢な料理を、連日連夜食卓に並べていきます。

どんなに体に良い食材でも食べ過ぎれば逆効果になったり、食べることで体温が下がってしまう料理もあれば、一品一品は高級食材でも食べ合わせが悪いと血流や消化器系にダメージが来る恐れもあります。

当初こそ若々しく、筋肉隆々の身体の持ち主だったのに、サオの料理を満足そうに食べ続けていくうち、じわじわとやせ細っていくコーン。それでも目の前に出された料理があまりにも美味しそうなので、つい手が伸びてしまう…

とにかく出てくる料理が美味しそうに撮られているため、観る者が空腹状態だと辛くなること間違いなし。このあたりは、撮影監督の巨匠クリストファー・ドイルならではのカメラセンスでしょう。

映画『死のキッチン』Q&Aイベントレポート


Q&Aイベントの様子/撮影:松平光冬

10月31日に2回目の公式上映後、Q&Aイベントが行われました。

冒頭の挨拶で、主演のベラ・ブンセーンや監督のペンエーグ・ラッタナルアーンがコンペティション部門に選ばれたことに感謝の意を述べれば、撮影監督のクリストファー・ドイルは「映画に良作、駄作などない。大事なのはAIなどに頼らず真意で作ること。私たちは心を込めて作った」と映画制作に対する思いを語ったところでスタート。

オーディションでサオ役に抜擢されたブンセーンは、4、5番目という早い順番で受けていたことを明かしたラッタナルアーン監督。自身が演じたサオについて、ブンセーンは「同情するし、共感できる部分もありました」と語りました。


本作で主演を務めるまで演技経験がほぼなかったというベラ・ブンセーン/撮影:松平光冬

また、サオに復讐されるコーン役には、観ていて悲壮感が出ない俳優を求めていたものの難航。しかしドイルの結婚が決まったことで製作が一旦ストップしたため、キャスティングに時間をかけることができたとのこと。最終的にコーン役にクリット・シープームセートが決まったのは、撮影開始の1週間前だったという裏話も披露。

脚本も手がけたラッタナルアーン監督は、どのようにしてストーリーを構築したのかという質問に、「我々は儲かる映画を作らないといけないからね。そうなるとタイといえば料理かマッサージだから」として、盲目マッサージ師とシェフが主人公の脚本を同時進行で執筆し、先に上梓したシェフのストーリーで制作を進めていったそう。


「この映画の見てくれはさておき、自分の髪型の見てくれが気になっている」と語って場内を沸かせたクリストファー・ドイル/撮影:松平光冬

最後の質問として自身の映像哲学について聞かれたドイルは、30代のころに8ミリカメラ片手に台湾を旅して撮った映像を友人のエドワード・ヤンやホウ・シャオシェンに見せた際のエピソードを述懐。

加えて、「映像とはいろんな要素が混ざり合って一つの大きなプロセスになる。どういう人の顔を映し出していくのか、またはどういう素材で撮るのか、それらを組み合わせることでプロセスとなる。映画に疑問はない、あるのは答えのみだ」と説いた直後、茶目っ気たっぷりに観客に拍手を求めたところでイベントは終了となりました。

まとめ

「何か動きを出してほしい」というカメラマンのリクエストに対応したゲスト陣/撮影:松平光冬

「好きな相手を落とすには、手料理でその相手の胃袋を掴めばいい」とはよく言うものの、命まで掴まれてはたまったものではありません。

15年もの長きにわたって繰り広げられる、命を奪おうとしている女と命を狙われていることを知らない男の関係。しかし、とあるきっかけその関係に変化が訪れることとなります。

サオの行き着く先は? そしてコーンの運命は? 日本での一般公開に期待したいところです。

【連載コラム】『TIFF東京国際映画祭2025』記事一覧はこちら

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)





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