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Entry 2024/05/25
Update

【ネタバレ】映画デデデデ後章|あらすじ感想考察と結末の評価解説。おんたんと侵略者の正体は?ラストが原作漫画が違う理由は“少しだけズレた世界線”

  • Writer :
  • 糸魚川悟

滅亡が迫る世界で、動き出すそれぞれの物語。

現代の日本で「滅亡」が近い「かもしれない」事象が発生した時、人々はどのような日々を過ごすことなるのでしょうか。

コロナ禍のように一時はパニックとなりながらも、次第にその危機感はマヒしていき、新たな環境での日常が進んでいくことになるでしょう。

突拍子もない「SF」でありながらも現実味のある雰囲気を描いた、浅野いにおの人気漫画をアニメ化した映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』

今回はその完結編となる、『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』(2024)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』の作品情報


(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

【日本公開】
2024年(日本映画)

【原作】
浅野いにお

【アニメーションディレクター】
黒川智之

【脚本】
吉田玲子

【キャスト】
幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子、和氣あず未、白石涼子、入野自由、内山昂輝、坂泰斗、諏訪部順一、津田健次郎、竹中直人

【作品概要】
『ビッグコミックスピリッツ』にて2014年から2022年まで連載された、浅野いにおによる人気漫画を前後編に分けてアニメーション映画化。

ぼくらのよあけ』(2022)の監督を務めた黒川智之がアニメーションディレクターを務め、『猫の恩返し』(2002)『リズと青い鳥』(2018)など多くのアニメ映画で脚本を務める吉田玲子が脚本を担当しました。

映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』のあらすじとネタバレ


(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

戦闘兵器「直仁」からの攻撃で多くの侵略者が死亡し、生き延びた侵略者たちは街に潜伏。

しかし、仲間と侵略者を狩る小比類巻や、存在を隠蔽しようとする政府の手によって侵略者は惨殺されていきます。

大学に入学した門出と凰蘭、亜衣と凛はオカルト研究会の尾城先輩に勧誘され、なんとなくでサークルに所属することになり、学内で知り合った漫画『イソベやん』が好きなふたばとも仲良くなります。

ふたばは、政府が隠蔽し切れなくなった侵略者の殺戮に憤慨し、東京を中心に活動する侵略者保護を訴える団体「SHIP」に共感していました。

ある日、侵略者の「母艦」が目の前に浮かぶ現代で、なおもUFOを探す尾城先輩の研究資料を読むために彼の家へ向かった凰蘭は、そこで大葉圭太と出会います。

風邪をひいている大葉がクシャミをすると、文字通り頭がズレました。二人は大葉が侵略者であることを確信すると同時に、門出へ情報を共有します。

大葉はかつて侵略者の一人でしたが、3年前に侵略者が母艦で襲来した日「8.31」の際に瀕死の重傷を負い、同じく付近で重傷を負っていた「人間」の大葉に移植されることで生き延び、人間社会に溶け込んでいました。

大葉は門出と凰蘭のシェアハウスに同居することとなり、門出が高校時代の担任・渡良瀬に告白するも来年に東京を去ることを理由に振られる一方で、凰蘭は大葉との仲を深めていました。

一方で政府とつながるS.E.S社の宝田は、長期間の母艦の浮遊を可能にしている未知の元素「ファンタジウム元素(F元素)」を解析。建設中の新国立競技場の下に、要人のみを地球上から脱出させる「方舟」を準備していました。

母艦が白煙を上げ始める中、政府は侵略者の存在を公に認めた上で「侵略者の駆除」を民営化させる法案を成立させ、侵略者の駆除は日常化していきます。

逃げ回る侵略者の一人を小比類巻から救った大葉は、母艦の「炉」が崩壊に近づいており、「本国」は母艦の侵略者たちを元から捨て駒にするつもりで、メンテナンス用のパスワードすら共有していなかったと聞きます。

母艦が墜落すれば、搭載している大量のF元素によって母艦に乗った侵略者も人類も全滅は避けることはできない。大葉は、すでにこの世界の運命が「滅亡」に向かっていることを知ります。

その後、大葉に他者と記憶を共有する装置を差し出された凰蘭は、装置を使って記憶を共有します。大葉は凰蘭の過去を追体験することになり、彼女がこれから迎える「滅亡」を門出のために引き起こした張本人だと知りました。

夏。オカルト研究会の合宿として小田原付近の海沿いへと行くことなった門出たちは、ふたばの同郷の友人・マコトと大葉も入れたメンバーで海を楽しむことになりました。

新国立競技場のお披露目式が迫る中、方舟の利権を狙い宝田はCIAによって暗殺されます。一方で夏合宿は始まり、マコトの計らいで大葉と二人きりになった凰蘭は、大葉のことが好きであることを自覚しキスしました。

しかし大葉は、母艦襲来前から侵略者の目撃情報があったこの地に来てから、凰蘭の様子がおかしいことに気づいていました。

夜。姿を消した凰蘭を探すマコトに対して、大葉は自身が侵略者であることを告白した上で、自分の知る真実を装置で共有することにしました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』のネタバレ・結末の記載がございます。『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

【過去】

凰蘭は小学生時代、門出とともに夏合宿で侵略者と遭遇。その後、侵略者の持つ装置を持った門出が要人の襲撃事件を起こし、その事件をきっかけに門出が自殺した過去を持っていました。

凰蘭は侵略者に門出を生き返らせる装置を求めますが、侵略者でもその願いに答えることはできず、代わりに「並行世界の自分自身」に意識を移す装置が存在し、現在は墜落した小田原付近にあると語ります。

その装置を使って、並行世界の凰蘭と門出が侵略者と出会わないようにすれば、「過剰な力を持った門出が暴走しない未来」へと至る世界線を作ることができます。

しかし侵略者は、調査員である自分が凰蘭たちに出会わなかった場合、侵略者は数年後に母艦に乗って地球に現れ、その結果並行世界に生きる人類は「滅亡」するかもしれないとも忠告します。

凰蘭は「門出ともう一度会えるなら、自分が世界を滅ぼした極悪人になろうが構わない」と言い、その意気込みを聞いた兄・ひろしとともに装置へと向かいます。

並行世界へと意識を移す前にひろしからアドバイスをもらった凰蘭は、引っ込み思案な自分を捨ててエキセントリックな性格を演じることで、並行世界における「小学生時代の門出と侵略者の遭遇」を回避することに成功。

しかし、結果として侵略者たちは母艦に乗ってこの世界に現れ、門出が生き延びた代わりに人類の滅亡が近づくことになってしまいます。

実は侵略者は過去に地球を離れた元地球人であり、調査員から「知能を持たない生物のみが住んでいる」と報告を受けた母艦の侵略者たちは、新たな居住地を求め地球に現れたのでした。

【現在】

大葉は記憶が蘇った凰蘭が、打ち捨てられた装置を使ってふたたび並行世界に移動するのではないかと危惧していましたが、彼女を海辺で見つけることに成功し一行は民宿へと戻ります。

新国立競技場のお披露目式の最中、突如新国立競技場が方舟ごと浮遊、大気圏を離れます。

人気ジャーナリストの三浦は、装置によって殺害した侵略者の記憶を奪った小比類巻から情報を得ており、生放送ニュース番組の最中に「東京から逃げろ」と警告し拳銃で自死。

東京では東京脱出を目論む人たちによって首都高は渋滞し、新幹線は満員状態となり身動きが取れない状態となっていました。

「人類も侵略者も救いたい」と考え始める大葉は、凰蘭の記憶の中で侵略者が記憶を読んでいる第三者に向けて、母艦のメンテナンス用のパスワード「トモダチ」を伝えている様子を見つけます。

夜に合宿先を抜け出した大葉は、止めようとする凰蘭を振り払い母艦へと向かっていきました。

翌日。大葉が母艦に近づくと、「高次元の存在」によって世界の空にピンク色の光がかかります。ニューヨーク・北京・パリでも目撃された光はシャボン玉のようなものを吐き出し、触れた生物を爆破して殺害し始めました。

母艦に辿り着いた大葉は侵略者に招き入れられますが、小比類巻によって妨害を受けます。

小比類巻は侵略者よりもさらに高次元の存在による光によって世界は滅亡し、生き残った自身が救世主となる未来を夢想しており、母艦の崩壊を止めようとしている大葉に襲いかかります。

侵略者たちの加勢によって小比類巻は母艦から振り落とされ、大葉は急いで炉心に向かいパスワードを打ち込みますが、すでに母艦の崩壊は食い止められない状態でした。

合宿が終わり小田原から東京に戻ろうとする凰蘭は、パーキングエリアの中で「もしも自分が世界を滅ぼす存在だったら」と門出に問いかけると、門出は凰蘭のことを「絶対の存在」と評し、「自分はどれだけ凰蘭が責められても傍にいる」と伝えました。

制御を失った母艦は巨大な爆発を起こし、母艦直下の東京はひろしや渡良瀬などの「東京で生きていた人間」を飲み込み消滅しました。

母艦から落ちながらも海で生き延びていた小比類巻は、本来であれば光によって人類は滅亡していたが、大葉の介入によって被害が東京だけで留まったことに気づきます。

16日後。東京に戻っていなかったことで助かったオカルト研究会のメンバーたちは、再び小田原の民宿に戻って避難生活を過ごしていました。

すると、海を寂し気に眺める凰蘭と門出の前に負傷した大葉が現れ、ふたりとの再会を果たすのでした。

映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』の感想と評価


(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

「日常の中の滅亡」を描き切った完結編

地球を滅ぼしかねない母艦が、頭上を周回する東京での日常生活を描いた前章に続く形で公開された『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』。

「日常」と「死」が同居している空気感は唯一無二でしたが、これは物語の主軸となる門出と凰蘭が母艦の物語に関わらないからこそ作り出せる空気感であり、完結編となる後章ではこの空気感を持続させるのは難しいと考えられていました。

しかし、後章では「滅亡」の引き金を引いた凰蘭の過去や、「滅亡」を避けるために動く大葉の存在がありながらも、あくまでも門出と凰蘭は「滅亡」に関わる物語からは蚊帳の外であり、二人の物語は「日常」をベースに進んでいくことになります。

世界が滅亡するかもしれないという雰囲気の中で季節のイベントを楽しむ、「日常」と「死」を同居させた雰囲気を最後まで貫き通した、浅野いにお節が随所に光る物語の完結編として秀逸と言える作品でした。

守ること=傷つけること


(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

侵略者を殺戮して回る小比類巻は、反政府活動を行うふたばに対して「誰かを守ることは他の誰かを傷つけること」と忠告します。

その言葉が指し示すように、本作で迎えることになる「滅亡」は主人公の一人である凰蘭が、亡くなった門出を救うために並行世界を改変したことから発生したものでした。

凰蘭は門出の死の運命を変えることに成功した代わりに、自身を大切に想い行動し続けてくれた兄・ひろしを始め、東京に住む人々や母艦内の侵略者全員の命が奪われることになります。

物語の中で登場人物が意図せずこの行動を行うと、作品そのものに批判的な意見を受けがちではありますが、凰蘭はそのことを分かった上でなお門出を救う行動に出ており、彼女にとっての門出の存在の大きさが分かる物語になっていました。

「誰かを守ることは時に、誰かを傷つけることに直結し得る」という、知ってはいても深く考えることのなかった真理を改めて考え直すことのできる作品でした。

まとめ


(C)浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee

アニメーション映画として描かれた『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』は「映画と原作漫画で異なるラストを迎える」と宣伝がされていました。

映画と原作漫画では母艦の崩壊後の日本の描写が大きく異なり、崩壊後に登場する人物の人選も大きく変わっています。それは、『デデデデ』に登場した並行世界という設定に基づいた「二つの世界線」を描こうとしたためでしょう。

どちらのラストも『デデデデ』のラストを締めくくるに相応しいものとなっているため、原作漫画か映画の片方のみを鑑賞した方は、ぜひもう片方の「あり得たかもしれないラスト」を鑑賞してみてください




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