Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2023/09/30
Update

『キリエのうた』あらすじ感想と評価解説。広瀬すずとアイナ・ジ・エンドがドラマティックに演じる少女たちの13年の軌跡|映画という星空を知るひとよ172

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第172回

2023年10月13日(金)より全国公開される映画『キリエのうた』

チイファの手紙』(2020)『ラストレター』(2022)『love Letter』(1995)の監督・岩井俊二と、音楽・小林武史による新たな“音楽”の映画です。

キリエ役を務めるのは、映画初主演のアイナ・ジ・エンド。また『ライアー×ライアー』(2021)の松村北斗(SixTONES)が夏彦、『世界のおきく』(2023)『イチケイのカラス』(2023)の黒木華がフミ、『流浪の月』(2022)の広瀬すずがイッコを演じます。

苦難に翻弄されながらも、出逢いと別れを繰り返す男女4人の13年間にわたる愛の物語『キリエのうた』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『キリエのうた』の作品情報


(C)2023 Kyrie Film Band

【日本公開】
2023年(日本映画)

【監督・脚本・原作】
岩井俊二

【音楽】
小林武史

【主題歌】
Kyrie『キリエ・憐れみの讃歌』

【キャスト】
アイナ・ジ・エンド、松村北斗、黒木華、広瀬すず、村上虹郎、松浦祐也、笠原秀幸、粗品(霜降り明星)、矢山花、七尾旅人、ロバートキャンベル、大塚愛、安藤裕子、鈴木慶一、水越けいこ、江口洋介、吉瀬美智子、樋口真嗣、奥菜恵、浅田美代子、石井竜也、豊原功補、松本まりか、北村有起哉

【作品概要】
本作『キリエのうた』は、監督を岩井俊二が務め、音楽は小林武史で奏でる音楽映画。壮絶な運命と無二の歌声を宿した主人公・キリエの音楽がつなぐ13年に及ぶ壮大な愛の物語です。

主演は2023年6月に惜しまれながらも解散した、楽器を持たないパンクバンド「BiSH」の元メンバーで、現在はソロで活動するアイナ・ジ・エンド。さらにメインキャストとには松村北斗(SixTONES)、黒木華、広瀬すずといった豪華俳優陣も集結しています。

第28回釜山国際映画祭「A Window on Asian Cinema」部門の招待作品。

映画『キリエのうた』のあらすじ


(C)2023 Kyrie Film Band

東京の街の片隅で、ハスキーな声で路上ライブをする一人の女性がいました。

彼女は、普段は“声”を出せないのに“歌”は歌えるという、住所不定の路上ミュージシャン・キリエ(アイナ・ジ・エンド)。

そんなキリエを路上でみかけた派手な服装のイッコ(広瀬すず)は、キリエを自宅と称する家に招きます。

実はイッコとキリエは、高校時代の友人でした。本名と過去を捨てたイッコは、歌のうまいキリエのマネージャーとなります。

イッコとキリエの路上ライブを繰り広げる日々が続きます。

キリエが時折り思い出すのは、小学校時代に傷心のキリエに寄り添ってくれた小学校教師のフミ(黒木華)と、行方のわからなくなった婚約者を捜す青年・夏彦(松村北斗)のことでした。

たて糸と横糸がかみ合っていくように、13年にわたる4人の軌跡が徐々に描き出されていきます。

映画『キリエのうた』の感想と評価


(C)2023 Kyrie Film Band

歌うことでしか“声”を出せない住所不定の路上ミュージシャン・キリエと、過去と名前を捨ててキリエのマネージャーとなるイッコ。『キリエのうた』の物語は、この2人を中心に展開します。

ある出来事で普通の“声”が出せなくなったキリエ。人の話は聞けて筆談はできるのですが、思うように言葉を声に発せません。意志表示も乏しいため、いつも一人ぽっちでした。

そんなキリエですが、不思議なことに歌を歌う時だけは声が出せたのです。しかも、皆が驚くような太いハスキーボイスで、一度聴いたら忘れられない心の奥に響く不思議な声でした。

キリエを演じるのは、ソロ活動をしている歌手のアイナ・ジ・エンド。映画初主演を飾るアイナは本作の主題歌を歌唱するほか、6曲の劇中曲を制作しました。劇中とはいえ、ライブ風景などの場面を通じて圧巻のパフォーマンスが披露され、観る者を楽しませてくれます。

キリエのマネージャーを務めるのはイッコという女性。実はこの2人は、北海道の高校時代の友人でした。彼女たちが高校生の時に何があったというのでしょうか。また、そんな2人が学校を卒業して以来の再会を東京で果たすというのも謎めいています。

小学生のキリエを助ける教師のフミと青年の夏彦の存在も、キリエの過去の秘密に大きな意味合いを持っています。

キリエの友人イッコを演じるのは広瀬すず天真爛漫でポジティブ、それでいてどこか謎めいたイッコを、爽やかに演じています。地味なキリエと真逆な印象のイッコはいいコンビでした。

北海道の雪の中でのロケをはじめ、新宿中央公園での野外ライブロケなど、臨場感あふれる映像も人々を魅了することでしょう。

映画では、キリエの過去につながる伏線はあちこちにひかれ、彼女たちの現在・過去を交互に映し出しながら、物語は展開していきます。

そこには、運命に翻弄され過去の心の傷を抱えながらも、出会いと別れを繰り返し、力強く生きていく男女の姿がありました。

まとめ


(C)2023 Kyrie Film Band

岩井俊二監督が原作・脚本から手がけた音楽映画『キリエのうた』をご紹介しました。

歌でしか声を出せないキリエは、歌っている時に存分に自分の心の叫びを込めています。また劇中では、オフコースの『さよなら』や久保田早紀の『異邦人』などの昭和の名曲も披露しています。

キリエの歌と楽曲が複雑に入り組んだ物語を彩り、⼼奪われる作品となっています。キリエの歌を、ぜひ聞いてあげてください。

映画『キリエのうた』は2023年10月13日(金)より全国公開!

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




関連記事

連載コラム

伊藤沙莉映画『ちょっと思い出しただけ』感想評価と解説。池松壮亮とW主演で恋愛ラブストーリーを松居大悟監督が描く|TIFF2021リポート3

『ちょっと思い出しただけ』が東京国際映画祭2021観客賞受賞! 2021年、舞台を日比谷・有楽町・銀座地区に移し実施された東京国際映画祭。2021年1月以降に完成した長編映画を対象に、世界各国・地域の …

連載コラム

『トラフィック』あらすじ感想評価レビュー。実際に起きた絵画窃盗事件をベースにヨーロッパの経済格差に迫る|TIFF東京国際映画祭2024-5

映画『トラフィック』は第37回東京国際映画祭で主演女優賞受賞! 2021年の第34回東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞した『市民』(邦題『母の聖戦』)のテオドラ・アナ・ミハイ監督の新作『トラフィック』 …

連載コラム

『火だるま槐多よ』あらすじ感想と評価解説。大正時代の鬼才画家・村山槐多を独創的に佐藤寿保監督が描く|映画という星空を知るひとよ182

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第182回 「村山槐多って知ってますか?」。こんな街頭インタビューで始まるピンク映画出身の佐藤寿保監督作品『火だるま槐多よ』。 22歳で夭逝した大正時代の画家・ …

連載コラム

『ある惑星の散文』あらすじ感想と評価解説。深田隆之監督が横浜ロケハンからシナリオ発想した初劇場公開作|映画という星空を知るひとよ101

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第101回 神奈川県横浜市の本牧を舞台に、人生の岐路に立つ2人の女性が織りなすささやかな物語を描いたドラマ『ある惑星の散文』。 濱口竜介監督の『偶然と想像』(2 …

連載コラム

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】13

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】(2021年2月下旬掲載) 【細野辰興の連載小説】『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の一覧はこちら CONTE …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学